電子契約に関わる3つの法律と概要|法的効力・法律上の注意点などについて解説

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電子契約を締結する際には、契約成立に関する法律上の要件を満たしているか、注意深く確認する必要があります。電子契約の法的効力に関する法律上の根拠・電子契約に関する法律の内容・締結時の注意点などについて弁護士が解説します。
ゆら総合法律事務所
阿部由羅
執筆記事
取引・契約

電子契約を締結する際には、契約成立に関する法律上の要件がきちんと充足されているかについて、注意深く確認する必要があります。特に電子契約は非対面で締結されることも多いため、契約成立に関する事情を証拠化しておくことも重要です。

 

この記事では、

 

  • 電子契約の法的効力に関する法律上の根拠
  • 電子契約に関する法律の内容
  • 電子契約締結時の法律上の注意点

 

などについて、弁護士の視点から解説します。

 

電子契約が有効である法律上の根拠

電子契約に不慣れな方は、紙の契約書と同様の法的効力が認められるのかどうか、不安に感じるかもしれません。しかし結論としては、当事者同士が合意のうえで電子契約を締結すれば、法的効力は問題なく認められます。

契約自由の原則|方式は問わない

法律上、契約は一方当事者の申込みに対して、相手方が承諾の意思を表示した段階で成立します(民法522条)。そして「契約書」は一般的に、契約締結の申込みと承諾の意思表示が1つの書面に表れたものと捉えることができます。

 

(契約の成立と方式)
第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

引用元:民法第522条

 

契約締結の申込みと承諾の意思表示には、法律上特に形式が定められているわけではありません。したがって、契約締結は書面による必要はなく、口頭の合意によっても可能ですし、電子上のやり取りでも当然成立し得るというわけです。ただし、契約の有効な締結が認められるには、当事者本人が契約締結に向けた有効な意思表示を行ったことが必要になります。

 

会社同士が電子契約を締結する場合には、後述するように、契約締結権限の確認を確実に行うことが重要です。

電子契約と紙の契約に法的効力の差はない

電子契約と紙の契約は、締結の形式が違うだけで、契約書の内容が当事者に対して法的拘束力を有する点はどちらも変わりません。ただし以下に掲げる契約書類などについては、法律上書面(紙)の作成が要求されており、完全電子化は認められないので注意が必要です。

 

・定期借地契約・定期建物賃貸借契約(借地借家法22条、38条1項)

・宅地建物売買等媒介契約(宅建業法34条の2第1項)

・マンション管理業務委託契約(マンション管理の適正化の推進に関する法律73条1項)

・労働者派遣契約(労働者派遣法26条1項、同施行規則21条3項)

 

電子契約と「文書成立の真正の推定」との関係

紙の契約書の場合、民事訴訟法228条4項により、本人または代理人の署名または押印のある文書は真正に成立したものと推定されます。

 

(文書の成立)

第二百二十八条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。

2 文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。

3 公文書の成立の真否について疑いがあるときは、裁判所は、職権で、当該官庁又は公署に照会をすることができる。

4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。

5 第二項及び第三項の規定は、外国の官庁又は公署の作成に係るものと認めるべき文書について準用する。

引用元:民事訴訟法228条

 

これに対して電子契約の場合は、「署名または押印」ができないので、同規定による推定が働きません。しかし電子契約には、一定の要件を満たす電子署名を施すことによって、その真正な成立に関する同様の推定効が認められます(電子署名法3条)。

 

電子契約の真正な成立に関する推定効が認められるための電子署名の要件については、次の項目で詳しく解説します。

 

第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

引用元:電子署名法3条

 

電子契約に関する法律①|電子署名法

ここからは、電子契約に関するルールや制度を定める法律について、主なものの概要を解説します。電子契約は非対面・オンラインで締結するため、契約締結の有効性が法的な問題になりがちです。各法律では、電子契約締結の有効性に関わる事項を法的に裏付けるさまざまな制度を設けています

 

一つ目の電子契約に関する法律は、「電子署名法」(正式名称:電子署名及び認証業務に関する法律)です。電子署名法は、主に電子署名に関するルールと、電子署名の本人性に関する認証業務の認定制度について規定しています。

電子署名による電磁的記録の真正な成立の推定

電子署名法上の「電子署名」とは、電子契約などについて行われる措置であって、以下の要件をいずれも満たすものをいいます(電子署名法2条1項)。

 

①当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること

②当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること

 

上記の要件に加えて、電子署名が「これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る」という要件を満たす場合には、電子契約の真正な成立が推定されます(同法3条)。

 

つまり、電子署名法上の要件を満たす電子署名には、紙の契約書における署名や押印と同様の法的効力が与えられているのです。電子署名が「本人だけが行うことができる」ものであることを示すには、電子証明書などが用いられることが実務上多数となっています。

 

しかし、法律上電子証明書の利用が必須とされているわけではないので、他の方法によっても上記の要件を満たすことはあり得ると考えられます。たとえば、二段階認証が有効に機能している場合などには、電子署名の本人性が認定される可能性が高いでしょう。

特定認証業務に関する認定制度

特定認証業務とは、電子署名について、「本人だけが行うことができる」ものとして省令の基準に適合していることを認証する業務をいいます。特定認証業務を行おうとする事業者は、主務大臣(総務大臣・経済産業大臣・法務大臣)の認定を受けることができます(電子署名法4条)。

 

(認定)

第四条 特定認証業務を行おうとする者は、主務大臣の認定を受けることができる。

2 前項の認定を受けようとする者は、主務省令で定めるところにより、次の事項を記載した申請書その他主務省令で定める書類を主務大臣に提出しなければならない。

一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

二 申請に係る業務の用に供する設備の概要

三 申請に係る業務の実施の方法

3 主務大臣は、第一項の認定をしたときは、その旨を公示しなければならない。

引用元:電子署名法4条

 

この認定を受けた事業者を「認定認証事業者」と呼んでいます。認定認証事業者は、特定認証業務について行政のお墨付きを得た事業者として認識されます。したがって、電子署名の本人性について認定認証事業者による認証が与えられれば、電子契約締結の有効性はより確実となるでしょう。

 

ただし、認定認証事業者としての認定はあくまでも任意であり、認定を受けていなくても特定認証業務は行うことは法律上可能です。仮に認証認定事業者ではない事業者から認証を受けた場合であっても、その電子署名が「本人だけが行うことができる」ものであると客観的に認められる場合には、文書の真正な成立に関して推定効が認められることはあり得ると考えられます。

 

電子契約に関する法律②|電子委任状の普及の促進に関する法律

企業が当事者となって契約を締結する際には、代表者の代わりに、従業員などに対して締結権限を授与する場合があります。

その際に作成されるのが「委任状」です。

電子契約締結の際の「委任状」とは

電子契約を締結する際にもこの「委任状」が活用されますが、その際委任状も併せて電子化することができれば、契約実務のオンライン化がいっそう進展することになります。

 

しかし、電子署名法に基づく認定認証業務には、会社から従業員などに対する授権の事実を認証することは含まれていません。よって、電子委任状に関する認証業務については、「電子委任状の普及の促進に関する法律」という別の法律でルールが定められています。

 

電子委任状の普及の促進に関する法律の概要
法人の代表者等が使用人等に代理権を与えた旨を表示する「電子委任状」の普及を促進するための基本的な指針について定めるとともに、法人等の委託を受けて電子委任状を保管し、関係者に提示等する「電子委任状取扱業務」の認定の制度を設けること等により、電子商取引その他の高度情報通信ネットワークを利用した経済活動の促進を図る。

引用元:総務省

 

電子委任状取扱業務とは

電子委任状を一方当事者から預かって保管し、相手方などに提示する業務をいいます(同法2条3項)。電子委任状によって有効な授権があったことを、第三者である事業者が確認したうえで相手方に提示するプロセスを経ることにより、電子委任状の信頼性が増すと考えられています。

 

電子委任状取扱業務を行おうとする事業者は、電子署名法上の認定認証事業者と同様に、主務大臣の認定を受けることができます(同法5条1項)。この認定を受けることは、あくまでも電子委任状取扱業務を行う事業者の任意です。

 

(電子委任状取扱業務の認定)
第五条 電子委任状取扱業務を営み、又は営もうとする者は、主務大臣の認定を受けることができる。
2 前項の認定を受けようとする者は、主務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書その他主務省令で定める書類を主務大臣に提出しなければならない。

引用元:電子委任状の普及の促進に関する法律第5条

 

しかし、国の認定を受けている事業者を通じて電子委任状を提示することにより、電子委任状に対する信頼性はいっそう高まるといえるでしょう。

 

電子契約に関する法律③|商業登記法に基づく電子認証制度

商業登記法12条の2においては、法務局が発行する電子証明書により、会社に関する一定の事項を証明してもらえる「電子認証制度」が定められています。

商業登記法に基づく電子認証制度により電子証明書を取得すると、

 

・会社の存在

・代表権の存在

・代表者の同一性

 

など、会社に関する基本的な事項(corporate capacity)を一挙に証明することが可能です。

 

(電磁的記録の作成者を示す措置の確認に必要な事項等の証明)
第十二条の二 前条第一項に規定する者(以下この条において「印鑑提出者」という。)は、印鑑を提出した登記所が法務大臣の指定するものであるときは、この条に規定するところにより次の事項(第二号の期間については、法務省令で定めるものに限る。)の証明を請求することができる。ただし、代表権の制限その他の事項でこの項の規定による証明に適しないものとして法務省令で定めるものがあるときは、この限りでない。

引用元:商業登記法12条の2

 

会社同士の取引実務においては、corporate capacityのチェックのために数多の書類がやり取りされることが慣例化していますが、電子認証制度の活用によって大幅な簡略化が期待されます。

 

ただし、法務局の電子証明書は商業登記に基づいて発行されます。そのため、代表者や支配人の代表権を証明することはできますが、従業員などに対する授権を証明することはできません。従業員などに対する授権の証明については、前述の電子委任状によって行うことになります。

 

電子契約を締結する際の法律上の注意点は?

電子契約を締結する場合、非対面・オンラインという性質上、法的には契約締結の有効性が主に問題となります。特に、権限ある者によって有効に契約が締結されたかどうかという観点はきわめて重要です。

 

上記の観点から、電子契約を締結する際にどのようなことに留意すべきかについて解説します。

有効な契約締結権限に基づいて契約が締結されているかを確認する

法人を相手方として電子契約を締結する場合、相手方が有効な契約締結権限に基づいて契約締結を行っているかどうかをチェックする必要があることは、紙の契約書と同様です。

 

電子署名法上の電子署名を用いることは、契約締結権限を確認するための有効な方法であるといえます。しかし念には念を入れるため、

 

・取締役決定書(または取締役会議事録)

・会社の現在事項全部証明書

・corporate capacity全般に関する相手方からの表明保証

 

などを確認・取得して、相手方の契約締結に向けた意思表示の有効性を確かめるべきでしょう。特にリモートで締結する電子契約の場合には、corporate capacity checkの重要性はいっそう高まるといえます。

電子サインを利用する場合は締結前後の事情を証拠化

電子署名を用いずに、電子サインで契約締結の対応をする場合も考えられます。この場合、文書の真正な成立が推定されないので、契約の成立に関する間接事実を証拠化しておくことが推奨されます。

 

たとえば、

・相手方代表者とのメール上のやり取りを保存する

・契約締結後、相手方が契約に従って行動していた事実を示す証拠を残しておく など

 

契約が有効に成立したことを推認させる事情を積み上げておきましょう。万が一相手方から契約の有効性について疑義が呈されたとしても、上記の間接事実によって反論が可能となる場合があります。

 

なお、

・取引金額が大きい

・会社の組織や権利義務に重大な影響を与える など

 

重要な契約書については、電子サインではなく電子署名を利用する方が無難です。

 

電子契約の真正な成立が否定された場合の対処法は?

電子契約の真正な成立が否定された場合、契約内容の当事者に対する法的な効力は失われてしまいます。もっとも、電子契約に記載された内容全体が無効になるとは限りません

 

それというのも、契約締結前後の事情を総合すれば、一部の条項についてはすでにメール・口頭などでの合意が成立していたと判断できるケースがあるからです。しかし少なくとも、電子契約の真正な成立が否定されてしまえば、契約内容が当事者の予期せぬ形に修正されてしまうことは避けられません

 

そのため、実際に電子契約を締結する際には、契約の有効性が確保されるように慎重な配慮が要求されます。

 

まとめ

電子契約の法的効力は、原則として紙の契約書と変わりませんが、契約が有効に成立したかどうかについては特に注意深く確認する必要があります。

 

電子契約の有効な成立を裏付ける法的な制度としては、

・電子署名法に基づく電子署名と認定認証事業者による認証制度

・電子委任状の第三者を通じた提示と事業者の認定制度

・商業登記法に基づく電子認証制度

 

などがありますので、自社のニーズに応じて適宜活用しましょう。

 

電子契約が有効に締結されたかどうかを法的な観点からチェックするためには、電子契約に詳しい弁護士に相談することをお勧めいたします。契約は重要な法律関係を規定するものですので、締結方式の不備によって契約が無効となる事態は避けなければなりません。

 

弁護士は、電子契約に関する法律上の留意点を踏まえたうえで、後の当事者間におけるトラブルの発生を防ぐためのアドバイスをしてくれます。

 

電子契約の導入を検討中の事業者の方は、一度弁護士までご相談ください。

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