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独占禁止法(どくせんきんしほう)とは、市場競争を促進させるために定められた法律で、正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」です。
公正かつ自由な競争を促し、事業者が自主的な判断に基づいて自由な活動が可能となることを目的としています。
独占禁止法では6つの規制が設けられており、違反した場合は民事責任・行政処分・刑事罰などを受ける可能性があります。
企業として適切な事業活動をおこなっていくためにも、独占禁止法の制度内容について押さえておきましょう。
本記事では、独占禁止法の規制内容や対象企業、違反した場合の罰則や処分などを解説します。
独占禁止法とは、市場競争を促進させるために定められた法律です。
1947年に制定され、2009年・2013年・2016年・2019年には法改正もおこなわれています(独占禁止法の改正について|公正取引委員会)。
公正取引委員会ホームページによると、独占禁止法の基本概要としては以下のとおりです。
以下では、独占禁止法が定められている目的や、対象となる企業などについて解説します。
独占禁止法が定められている目的は、事業者による公正かつ自由な競争を促し、最終的に消費者の利益確保や国民経済の健全な発達などを促進するためです(独占禁止法第1条)。
つまり、競争の妨げになる行為・不当な取引制限・不公正な取引方法などを禁止することで、経済全体がうまく回るようにするために定められています。
たとえば、自動車を製作するメーカーが集まって「自動車価格を100万円に固定する」という取り決めがなされた場合、本来おこなわれるべき価格競争は失われてしまいます。
独占禁止法では、上記のような価格協定などを禁止行為として定めており、違反事業者に対しては罰則や処分などが科されます。
独占禁止法の対象となるのは、原則として全ての事業者・事業者団体です。
大企業はもちろん、中小企業であろうと独占禁止法で定める禁止行為をおこなった場合は処分の対象となります。
第二条 この法律において「事業者」とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいう。事業者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者は、次項又は第三章の規定の適用については、これを事業者とみなす。
引用元:独占禁止法第2条1項
独占禁止法は、企業として事業活動をおこなう際の基本ルールを定めたものであり、全ての事業者は十分に内容を理解しておく必要があります。
独占禁止法の規制内容としては、以下の6つがあります。
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ここでは、具体的にどのような行為が禁止されているのかを解説します。
独占禁止法では、私的独占を禁止行為として定めています(独占禁止法第3条)。
私的独占とは、事業者が販売価格を不当に低く設定するなどして、ほかの事業者を排除したり、新規参入を妨害したりする行為を指します。
⑤ この法律において「私的独占」とは、事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもつてするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
引用元:独占禁止法第2条5項
具体的には、以下のような行為が私的独占に該当します。
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| 2002年6月〜2004年3月にかけ、大手通信会社A社が、競合他社を排除する不当な低価格でサービスを提供した事件です。 公正取引委員会が独占禁止法違反(私的独占)にあたるとして違法宣言審決を出したため、A社は不服として訴訟を起こしましたが、東京高等裁判所は公取委の判断を支持して請求を棄却する判決を下しました。 その後、A社は最高裁判所へ上告したものの、「A社の行為は『私的独占』に該当する」と判断され、最終的に上告は棄却されています。 |
【参考元】最高裁 2010年12月17日判決|裁判所
独占禁止法では、不当な取引制限を禁止行為として定めています(独占禁止法第3条)。
不当な取引制限とは、複数の事業者がほかの事業者との競争を回避するために、事業者同士で合意を結んだりして実質的に競争を制限する行為を指します。
⑥ この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
引用元:独占禁止法第2条6項
具体的には、以下のような行為が不当な取引制限に該当します。
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| 1987年、樹脂製品を製造販売する8社が、情報交換を行って合意のうえで価格引き上げ(カルテル)を行った事件です。 公正取引委員会がこの行為を独占禁止法違反と認め違法宣言審決を下したのに対し、不服とした企業側が東京高等裁判所へ審決取消訴訟(審決を取り消すよう求める裁判)を起こしました。 しかし、東京高等裁判所は「対象行為は『不当な取引制限』に該当する」として、企業側の請求を棄却する判決を下しました。 |
【参考元】東京高裁 1995年9月25日判決|公正取引委員会 審決等データベース
独占禁止法では、事業者団体による行為を規制対象として定めています(独占禁止法第8条)。
事業者団体とは、2つ以上の事業者の結合体または連合体のことを指します。
② この法律において「事業者団体」とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体をいい、次に掲げる形態のものを含む。ただし、二以上の事業者の結合体又はその連合体であつて、資本又は構成事業者の出資を有し、営利を目的として商業、工業、金融業その他の事業を営むことを主たる目的とし、かつ、現にその事業を営んでいるものを含まないものとする。
一 二以上の事業者が社員(社員に準ずるものを含む。)である社団法人その他の社団
二 二以上の事業者が理事又は管理人の任免、業務の執行又はその存立を支配している財団法人その他の財団
三 二以上の事業者を組合員とする組合又は契約による二以上の事業者の結合体
引用元:独占禁止法第2条2項
具体的には、以下のような事業者団体による行為が規制対象です。
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【参考元】独占禁止法第8条
独占禁止法では、特定の企業結合を規制対象として定めています(独占禁止法第10条、第13条~17条)。
企業結合とは、複数の企業が株式保有や合併をおこなうなどして結合することを指します。
企業結合がおこなわれると、市場が独占状態となってほかの事業者による競争がなくなってしまう可能性があります。
事業者による競争がなくなると、消費者は特定企業の商品しか購入できないようになったりして、これまでのメリットが失われるおそれがあります。
そのような事態を防ぐためにも、独占禁止法ではほかの事業者による競争を制限するような企業結合に関しては禁じています。
独占禁止法では、独占的状態を規制対象として定めています(独占禁止法第8条の4第1項)。
独占的状態とは、一定の市場で限られた企業だけが多くのシェアを持っており、実質的に競争が失われている状況のことを指します。
第八条の四 独占的状態があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、事業の一部の譲渡その他当該商品又は役務について競争を回復させるために必要な措置を命ずることができる。ただし、当該措置により、当該事業者につき、その供給する商品若しくは役務の供給に要する費用の著しい上昇をもたらす程度に事業の規模が縮小し、経理が不健全になり、又は国際競争力の維持が困難になると認められる場合及び当該商品又は役務について競争を回復するに足りると認められる他の措置が講ぜられる場合は、この限りでない。
引用元:独占禁止法第8条の4第1項
具体的には、以下の全要件に該当する場合は独占的状態と判断される可能性があります。
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【参考元】知ってなっとく独占禁止法|公正取引委員会
独占禁止法では、不公正な取引方法を禁止行為として定めています(独占禁止法第19条)。
不公正な取引方法とは、取引時に不当な対価を用いたり、ほかの事業者を差別して扱ったりするなどして市場競争を制限する行為のことを指します。
具体的には、以下のような行為が不公正な取引方法に該当します。
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【参考元】不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)|公正取引委員会
| コンビニ大手のA社が、販売期限の迫った商品を値引きする「見切り販売」を行おうとした加盟店(フランチャイズ店)に対し、見切り販売をやめるよう不当に圧力をかけて妨害していた事件です。 2009年に公正取引委員会が独占禁止法違反として排除措置命令を出したことを受け、加盟店主らが損害賠償を求めて提訴しました。 東京高等裁判所は、「契約上、価格決定権は加盟店にあるにもかかわらず、本部の立場を利用して見切り販売を事実上強制的に制限した行為は、『優越的地位の濫用』(不公正な取引方法)にあたる」と認め、被告(A社)に対し、原告らへ合計約1,100万円の損害賠償を支払うよう命じました。 |
【参考元】東京高裁 2013年8月30日判決|オレンジ法律事務所
独占禁止法を補完するものとして「取適法」という法律もあります。
取適法とは、中小受託事業者と委託事業者の取引適正化を目指して制定された法律です。
取適法は通称で、正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。
かつては下請代金支払遅延等防止法(通称:下請法)という法律がありましたが、2026年1月1日より改正法が施行されたことで取適法へと改正されました。
取適法は、独占禁止法ではカバーしきれない部分を補完しており、具体的には以下のような行為を禁止行為として定めています。
| 禁止行為 | 概要 |
|---|---|
| ①受領拒否 (中小受託取引適正化法第5条1項1号) |
中小受託事業者に一切責任がないのに、発注物の受領を拒否すること |
| ②製造委託等代金の支払遅延 (中小受託取引適正化法第5条1項2号) |
事前に決めておいた期日までに製造委託等代金を支払わないこと |
| ③製造委託等代金の減額 (中小受託取引適正化法第5条1項3号) |
中小受託事業者に一切責任がないのに、発注後に製造委託等代金を減額すること |
| ④返品 (中小受託取引適正化法第5条1項4号) |
中小受託事業者に一切責任がないのに、発注物の受領後に返品すること |
| ⑤買いたたき (中小受託取引適正化法第5条1項5号) |
市場価格と比較して極端に低い金額を不当に定めること |
| ⑥購入・利用強制 (中小受託取引適正化法第5条1項6号) |
中小受託事業者に、物品の購入やサービスの利用などを強制すること |
| ⑦報復措置 (中小受託取引適正化法第5条1項7号) |
中小受託事業者が委託事業者の違反行為を申告したことで、不利益な扱いをすること |
| ⑧有償支給原材料等の対価の早期決済 (中小受託取引適正化法第5条2項1号) |
中小受託事業者に有償支給した原材料代金を、製品代金の支払期日よりも早く支払わせたり相殺したりすること |
| ⑨不当な経済上の利益の提供要請 (中小受託取引適正化法第5条2項2号) |
中小受託事業者に金銭や労務の提供などを不当に要請すること |
| ⑩不当な給付内容の変更および不当なやり直し (中小受託取引適正化法第5条2項3号) |
中小受託事業者に一切責任がないのに、給付の内容変更ややり直しを強制すること |
| ⑪協議に応じない一方的な代金決定 (中小受託取引適正化法第5条2項4号) |
中小受託事業者が協議を求めているのに協議を無視したり、必要な説明もなく一方的に代金を決定したりすること |
取適法の適用対象や改正点など、取適法に関する詳細は以下の関連記事をご覧ください。
【関連記事】【2026年1月1日施行】下請法から取適法(中小受託取引適正化法)へ|改正の内容や実務上の重要ポイントを弁護士が解説
独占禁止法に違反した場合の罰則・処分としては、以下のようなものがあります。
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ここでは、独占禁止法違反で科される罰則や処分の内容について解説します。
独占禁止法に違反した場合、民事責任として差止請求や損害賠償請求などを受ける可能性があります(独占禁止法第24条、25条)。
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なお、以下のいずれかに該当する場合は無過失責任を負うことになり、たとえ故意・過失がなかったとしても損害賠償責任を免れることはできません。
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【参考元】独占禁止法第25条
独占禁止法に違反した場合、行政処分として排除措置命令や課徴金納付命令などを受ける可能性もあります。
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なお、課徴金に関しては以下のような計算式で算出され、課徴金算定率は行為内容などによって変動します。
引用元:課徴金制度|公正取引委員会
| 課徴金の対象行為 | 課徴金算定率 |
|---|---|
| 不当な取引制限 | 10%(独占禁止法第7条の2) (違反事業者およびグループ会社が全て中小企業の場合は4%) |
| 支配型私的独占 | 10%(独占禁止法第7条の9第1項) |
| 排除型私的独占 | 6%(独占禁止法第7条の9第2項) |
| ・共同の取引拒絶 ・差別対価 ・不当廉売 ・再販売価格の拘束 |
3%(独占禁止法第20条の2~20条の5) |
| 優越的地位の濫用 | 1%(独占禁止法第20条の6) |
独占禁止法に違反した場合、刑事罰として拘禁刑や罰金刑などが科される可能性もあります。
なかには犯罪行為として捜査機関が動き、刑事事件として扱われるケースもあります。
捜査機関が動いた場合、逮捕・取り調べ・勾留などの刑事手続きを経たのち、起訴された場合は刑事裁判が開かれて有罪無罪や量刑などが判断されます。
独占禁止法違反で科される刑事罰は、以下のように行為内容などによって異なります。
| 主な違反行為 | 罰則(個人) | 罰則(法人) |
|---|---|---|
| ・私的独占 ・不当な取引制限 ・一定の取引分野における競争の実質的な制限 ・上記行為が未遂だったもの |
5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金刑(独占禁止法第89条) | 5億円以下の罰金刑(独占禁止法第95条1項1号) |
| ・不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定または国際的契約の締結 ・一定の事業分野における現在または将来の事業者数の制限 ・構成事業者の機能または活動の不当な制限 |
2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金刑(独占禁止法第90条) | 300万円以下の罰金刑(独占禁止法第95条1項4号) |
| ・排除措置命令や競争回復措置命令の確定後に従わないもの | 2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金刑(独占禁止法第90条) | 3億円以下の罰金刑(独占禁止法第95条1項2号) |
独占禁止法をめぐるトラブルについては、ケースごとに適切な対応が異なります。
もし独占禁止法違反の疑いがかけられた場合は迅速な対応が必要ですが、初動対応を誤ると大きな経済的損失を被ったり、イメージの低下などにつながったりするおそれもあります。
「自社はどのように動くべきか判断が難しい」「今後トラブルが起こらないように適切な対策を取っておきたい」という場合は、弁護士の力を借りるのが効果的です。
弁護士なら、状況に応じたトラブルの対処法をアドバイスしてくれるだけでなく、コンプライアンスプログラムの策定などのトラブルの未然防止に向けたサポートも望めます。
法律相談だけの利用も可能ですので、まずは一度相談してみることをおすすめします。
以下の記事では、独占禁止法に関する弁護士の役割や弁護士の選び方などを解説しているので、弁護士への相談を検討している場合はご覧ください。
【関連記事】独占禁止法について弁護士に相談するメリットとは?選び方や費用を解説
ここでは、独占禁止法に関するよくある質問について解説します。
独占禁止法とは、市場競争を促進させるために1947年に制定された法律です。
正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」で、略して独禁法などと呼ばれることもあります。
企業として事業活動をおこなう際の基本ルールを定めたものであり、たとえば市場における私的独占・不当な取引制限・不公正な取引方法などが禁止されています。
全ての事業者・事業者団体が独占禁止法の対象となるため、ビジネスをおこなううえで十分に内容を理解しておくことが大切です。
独占禁止法では、以下の6つが禁止行為として定められています。
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なお、独占禁止法の補完法という位置付けである取適法では、以下のような委託事業者による行為を禁止行為として定められています。
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独占禁止法違反が疑われる場合、公正取引委員会による立ち入り検査・関係者への聞き取り・資料の提出命令などがおこなわれる可能性があります。
独占禁止法が定める違法行為をおこなった企業に対しては、以下のような罰則・処分が科されるおそれがあります。
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独占禁止法では、私的独占や不当な取引制限などの市場競争の促進を妨げるような行為を禁止しています。
独占禁止法に違反した場合は、差止請求や損害賠償請求といった民事上の責任追及だけでなく、罰金刑や拘禁刑などの刑事上の責任追及を受ける可能性もあります。
独占禁止法をめぐるトラブルについては、企業法務・独占禁止法に注力する弁護士のアドバイスやサポートを受けることで、迅速かつ穏便な形での解決が望めます。
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