登記申請は会社を設立する際の最後の手続きです。法務局に登記書類を提出し、登記簿への登録が完了したら会社設立が公的に認められます。
<会社設立の手続きの流れ>
登記申請の必要書類は、取締役会の有無や現物出資を受けているかどうか、など、会社設立の状況によって変わります。不足や不備があると申請が却下されるケースもあるので、書類の準備は慎重に行いましょう。
この記事では、会社設立の登記に必要になる書類をご紹介します。書類の作成方法や申請後の流れなども解説していますので、会社設立の準備をする際にぜひご活用ください。
会社設立の登記に必要な書類
会社設立の登記に必要になる書類は以下のとおりです。
設立登記の必要書類 |
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必須 |
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必須 |
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③定款 |
必須 |
定款の内容次第では必要 |
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定款の内容次第では必要 |
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取締役会を設置する場合に必要 |
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現物出資がある場合に必要 |
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現物出資がある場合に必要 |
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資本金の払込みがある場合に必要 |
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現物出資または資本準備金がる場合に必要 |
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発起人以外の人が役員になった場合に必要 |
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必須 |
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印鑑証明証に記載しない役員がいる場合に必要 |
①設立登記申請書
設立登記申請書とは、会社設立をする旨を法務局に伝えるための書類です。法務局のHPで記載例やテンプレートのダウンロードができるので、それを参考に書類を作成していきましょう。
<設立登記申請書の記載例>
書類の用紙に指定はありませんが、A4用紙で作成するケースが一般的です。ただ、ギリギリ1枚では収まらないという状態なら、A3用紙で作成したほうが契印の手間が省けてよいでしょう。
②登録免許税貼付台紙
登録免許税貼付台紙とは、会社設立に必要な登録免許税分の収入印紙を貼り付けた書類です。作成方法に指定はありませんが、A4用紙の真ん中に収入印紙を貼り付けて提出するケースが一般的です。
<登録免許税貼付台紙の作成例>
なお、登録免許税貼付台紙の印紙代は、15万円と資本金額の0.7%を比較して大きいほうの金額になります。2,200万円を超えない限り0.7%のほうは適用されないので、中小企業の申請のほとんどは15万円になるでしょう。
③定款
会社の登記手続きに進んでいる場合には、すでに定款を作成した後だと思われます。作成した定款(謄本)を用意しておきましょう。
もし、これから定款の作成に取り掛かる段階であれば、以下の記事をご参照ください。
【詳細記事】定款の作成方法|3種類の記載項目と作成時の注意点
④発起人の同意書
発起人の同意書とは、定款に定められていない会社設立に関する重要事項を記載する書類です。例えば、以下のような事項が定款で定められていない場合には、その詳細を書類に記載して提出する必要があります。
- 発起人が割当てを受けるべき株式数、払い込むべき金額
- 株式発行事項
- 発行可能株式総数
- 資本金の額、資本準備金の額
なお、すでに定款で定めている場合には、発起人の同意書の作成は不要です。
⑤発起人決定書
発起人決定書とは、定款に定められていない会社の基本事項を記載する書類です。例えば、以下のような事項が定款で定められていない場合には、その詳細を書類に記載して提出する必要があります。
- 取締役
- 代表取締役(取締役が複数人いる場合)
- 本店所在地の番地(例:東京都新宿区の以降が記載なし)
- 公告方法が電子定款なのにURLの記載がない場合
なお、すでに定款で定めている場合には、発起人決定書の作成は不要です。
⑥代表取締役選定決議書
代表取締役選定決議書とは、取締役の誰を代表取締役に決定したかを報告する書類です。会社に取締役会を設置する場合には、この書類の提出が必要になります(取締役会があると定款に代表取締役を記載できないため)。
<代表取締役選定決議書の作成例>
設立時代表取締役選定書
平成○年○月○日株式会社〇〇創立事務所(本店所在地の住所)において設立時取締役全員が出席し、その全員一致の決議により次のように設立時代表取締役を選定した。なお、被選定者は、即時その就任を承諾した。 設立時代表取締役 ○県○市○町○丁目○番○号 アシロ太郎 上記設立時代表取締役の選定を証するため、設立時取締役の全員は、次の通り記名押印する。 平成○○年○○月○○日 株式会社○○○○ 出席設立時取締役 アシロ太郎 ㊞ 同 ○○○○ ㊞ 同 ○○○○ ㊞ |
⑦調査報告書
調査報告書とは、現物出資の内容を報告するための書類です。自動車やPC、不動産など、会社に現金以外の出資があった場合には、この書類の提出が必要になります。
なお、現物出資した財産の総額が500万円を超える場合には、裁判所への申請か弁護士などの証明書が必要です。お近くの裁判所や法律事務所にご相談ください。
⑧財産引継書
財産引継書とは、現物出資をした発起人が何を出資したかを記載する書類です。会社に現物出資がある場合には、調査報告書と合わせて提出が必要になります。
なお、財産引継書の記載は、定款に記載した内容と同じ表記でなければいけません。定款の内容を確認しつつ作成しましょう。
⑨払込みを証する書面
払込みを証する書面とは、資本金を発起人の口座に振り込んだ事実を証明する書類です。会社口座は会社が設立するまで作れないので、一時的に発起人の口座に振り込むことになります。
現金の出資がある場合には、この書類の提出は必須となります。
<払込みを証する書面の記入例>
㊞ 払込証明書 当会社の設立につき、発行する株式に次のとおり発行価額全額の払込みが あったことを証明する。 払込みがあった金額の総額 金○○万円 設立時発行株式数 ○○株 平成○年○月○日 (本店) 本店所在地の住所 (商号) 株式会社○○ 代表取締役 アシロ 太郎 ㊞ |
入金が終わったら、『通帳の表紙』『表紙の次のページ』『入金が確認できるページ』これら3枚のコピーをとり、払込みを証する書面を作成した後にホチキスでまとめて契印を行ってください。
⑩資本金の額の計上に関する証明書
資本金の額の計上に関する証明書とは、資本金の詳細を報告するための書類です。出資に現物出資または資本準備金がある場合は、この書類を提出する必要があります。
<資本金の額の計上に関する証明書の記入例>
資本金の額の計上に関する証明書 ① 払込みを受けた金銭の額(会社計算規則第43条第1項第1号) ② 給付を受けた金銭以外の財産の給付があった日における当該財産の価額(会社計算規則第43条第1項第2号) ③ ①+② 資本金の額○○円は,会社法第445条及び会社計算規則第43条の規定に従って計上されたことに相違ないことを証明する。 平成○年○月○日 本店所在地の住所 設立時代表取締役 アシロ 太郎 ㊞ |
なお、資本金が現金だけの場合には、資本金の額の計上に関する証明書の提出は不要です。
⑪就任承諾書
就任承諾書とは、発起人以外の人が役員になったことを報告する書類です。発起人以外の役員1人に対して1枚の提出が必要になります。
もし発起人以外の役員が代表取締役に就任する場合には、代表取締役と役員の就任承諾書2枚の提出が必要です(取締役が1人または取締役会が設置されている会社は代表取締役の分は不要)。
<就任承諾書>
就任承諾書
私は、平成○○年○○月○○日、貴社の設立時取締役に選任されたので、その就任を承諾します。 平成○年○月○日
役員の住所(番地まで記載) アシロ 太郎 ㊞ 株式会社○○御中 |
⑫印鑑証明書
印鑑証明証とは、その印鑑が本人のものであることを証明するための資料です。会社設立には発起人と取締役になる人の実印と印鑑証明証が必ず必要になります。
印鑑証明書の発行は、住民票のある市町村役場で印鑑を登録して『印鑑登録証』と『印鑑カード』が発行されたら、市役所ですぐ交付してもらえます。
なお、発行から3ヶ月が過ぎた印鑑証明書は、登記申請に使えないので注意してください、
⑬本人確認証明書
本人確認証明書とは、監査役や執行役など印鑑証明証の提出をしなかった役員が提出をする書類です。以下のいずれかのコピーをA4用紙に貼り付け、名前と印鑑に会社名を記載して提出をしてください。
本人証明に使えるもの |
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なお、本人確認証明書ではなく印鑑証明書を代わりに提出することも可能です。
提出書類のまとめ方
上記の書類の準備が整ったら、①から⑬の順番でホチキスを使って書類をまとめてください。各ページのつなぎ目に会社の実印で契印を行なったら提出準備の完了です。
- 設立登記申請書
- 登録免許税貼付台紙
- 定款
- 発起人の同意書
- 発起人決定書
- 代表取締役選定決議書
- 調査報告書
- 財産引継書
- 払込みを証する書面
- 資本金の額の計上に関する証明書
- 就任承諾書
- 印鑑証明書
- 本人確認証明書
登記書類のまとめ方は、『設立登記書類の綴じ方ガイド』が図解つきでわかりやすく説明しています。書類提出の準備の際に参考にしてみてください。
会社設立までの流れ
登記から会社が設立されるまでの流れは、以下のとおりです。
会社設立までの流れ |
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必要書類を提出したら、法務局から内容に問題がないかチェックを受けることになります。不備が見つかった場合は、窓口や郵送で内容の補正を行い、すべて修正が完了したら登記完了です。
登記が完了する期間の目安
法務局に申請を出してから会社の登記が完了するまでの期間は、おおよそ1週間が目安だといわれています。
ただし、提出の時期によっては法務局の繁忙期の影響を受けることがありますし、不備が多いと修正にも多くの時間がかかるので、念のため2〜3週間は想定しておいたほうがよいでしょう。
登記が却下になるケース
書類に不備がある場合は、法務局から補正の指示があります。考えにくい事態ではありますが、仮に補正しきれないような瑕疵がある場合は、登記申請が却下される可能性もあります。その場合は、提出書類の内容を修正して再申請をする必要があります。
なお、却下となった場合は登録免許税の還付はありますが、提出書類の返却はありません。
まとめ|登記書類の作成は専門家に依頼できる
登記書類の作成を含めた会社設立の手続きは、専門家に代行を依頼することが可能です。書類の準備や申請をすべて任せられるので、会社設立にかかる時間を大幅に節約することができるでしょう。
登記申請は会社設立だけでなく、設立後の運営にも影響する非常に重要な手続きです。少しでも不安な要素がある場合は、専門家への相談を検討されてみてはいかがでしょうか。