著作権侵害(ちょさくけんしんがい)とは、著作権者の著作物を許可なく複製したり、翻訳したりすることを指します。
著作権を侵害した場合、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金が課せられ、民事上も損害賠償請求等をされる可能性があります。
今回は、著作権侵害に対する罰則と著作権侵害かどうかの判断基準、著作権侵害をされた際の対処法などをお伝えします。
著作権侵害の罰則
著作権を侵害した場合、民事上は、著作権者から差止請求、損害賠償請求、不当利得の返還請求、名誉回復などの措置請求をされる可能性があります。
それに加え、刑事上でも、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金に処せられることもあります。
さらに、法人が著作権侵害をした場合は3億円以下の罰金が定められています。
著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項の規定により著作権若しくは著作隣接権(同条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第三号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第五項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第四号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
引用元:著作権法119条1項
法人の代表者(法人格を有しない社団又は財団の管理人を含む。)又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第百十九条第一項若しくは第二項第三号若しくは第四号又は第百二十二条の二第一項 三億円以下の罰金刑
引用元:著作権法124条
著作権侵害かどうかの判断基準
著作権法10条では、著作物となるものを次のように定義しています。
この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物
引用元:著作権法10条
著作物の定義を確認したところで、著作権侵害の判断基準を3つお伝えしていきます。
著作権者の許可を得ないまま無断で著作物を利用した
著作権者には複製権という権利があり、自分の作ったものを自由に複製できますが、これは著作権者の権利です。
著作権者に許可なく複製をした映画やDVDなどの俗に言う海賊版をなどは、著作権者の権利を侵害する違法なものになります。
著作権者の許可を得ないまま著作物を複製し配布した
また、他人の著作物を複製して配布する行為も著作権侵害です。
この行為によって著作権者が本来得られるはずだった利益を損なってしまった場合は、損害賠償請求、不当利得の返還請求などをされる可能性があります。
著作物を改変した
著作権の中には、同一性保持権という権利があります。
同一性保持権は、著作物の内容や名前を他人に勝手に変更されない権利です。
他人の著作物に一部手を加え、別物にしてしまう行為も著作権侵害になります。
著作権侵害に当たる3つの行為
ここでは、著作権侵害に当たる行為を3つご紹介します。
映画やマンガ、ア二メなどを無断で複製し公開する
複製権を侵害し、なおかつ公開もしている点でも著作権侵害です。
違法アップロードされた音楽や動画をダウンロードする
違法ダウンロードが罰則化され、違法に複製されたコンテンツと知りながら録画、録音をした場合は2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金が課されるようになりました。
第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
引用元:著作権法第119条3項
同人誌を書いた
同人誌を書く行為は、著作物の改変に当たる可能性があり著作権侵害と考えられます。
著作権者に訴えられることはあまりありませんが、仮に訴えられたとしたら、同人誌の作家はかなり不利でしょう。
著作権侵害の逮捕事例
著作権侵害で逮捕に至った事例をご紹介します。
事例1|販売前のマンガを海賊版サイトで公開し逮捕された例
ONE PIECEなどのマンガを販売前に海賊版サイトで公開した罪で、埼玉県に住む男性(70)が逮捕され、懲役10月、執行猶予3年を言い渡されました。
配送業に携わっていた被告は、発売前のマンガを入手しネットで公開できる立場にあったのだそうです。
事例2|youtubeに漫画を無断でアップロードして逮捕された例
少年ジャンプの漫画数作品を動画としてYouTubeに無断アップロードした愛知県在住の男子中学生(14)が著作権法違反で逮捕されました。
少年宅でパソコンが押収されたほか、関係先の佐賀県や沖縄県でも家宅捜索が行われたようです。
著作権侵害をされたときにとれる4つの行動
著作権を侵害された場合は、次の4種類の請求ができます。
差止請求
著作権を侵害された場合、著作権者は差止請求をして、侵害を停止させたり、予防のために必要な措置を取らせたりできます。
著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
引用元:著作権法112条
損害賠償請求
著作権侵害を辞めさせるだけでなく、損害賠償を請求することもできます。
著作権侵害の場合、具体的な損害額がわからなくても、複製物の数や利益額から被害額を推定できる決まりになっています。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用元:民法709条
不当利得の返還請求
著作権を侵害したことで侵害者が得た利益を請求できます。
侵害者が著作権侵害だと知らなかった場合は、利益のうち残っている分を請求できて、著作権侵害だと知っていた場合は利益額と同額の金額を請求できます。
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
引用元:民法703条
悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
引用元:民法704条
名誉回復などの措置請求
著作権侵害によって著作権者の名誉が損なわれた場合、著作権者の名誉が回復するために必要な措置を請求することができます。
著作者又は実演家は、故意又は過失によりその著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者に対し、損害の賠償に代えて、又は損害の賠償とともに、著作者又は実演家であることを確保し、又は訂正その他著作者若しくは実演家の名誉若しくは声望を回復するために適当な措置を請求することができる。
引用元:著作権法115条
著作権侵害に関して相談できる専門家
最後に、著作権侵害に関して相談できる専門家をご紹介します。
法律相談センター
弁護士会が運営する法律相談所です。相談先がわからない場合は、無料の電話相談をすることもできます。
相談したい内容を時系列ごとに整理したり、結論から話すようにしたりしておくとスムーズに相談を進められます。
弁護士
著作権侵害が甚だしく、被害の規模が大きいときは自力で何とかするよりも、著作権の問題を解決した実績がある弁護士に相談した方が早期解決を望めるでしょう。
当サイトから、著作権侵害に積極的に取り組んでいる弁護士を探していただくこともできます。
まとめ
著作権者の許可なく著作物を複製・公開・改変する行為は著作権侵害です。
ネット上に無断でアップロードする行為にも、ダウンロードする行為にも罰則が課せられますし、損害賠償請求などをすることもできます。