
会社設立の手続きは登記で終了ではありません。会社の設立が認められたら、次は会社を運営するための準備に取り掛かる必要があります。
必ず済ませなければいけない手続きもあれば、状況に応じて対応するべき手続きもあるので、会社設立者は手続きの全体像を把握しておいたほうがよいでしょう。
この記事では、会社設立後にやることをリスト化してご紹介します。登記が済んだら何をすればよいのか確認したい場合に、参考にしてみてください。
設立後に行うべきことのひとつに就業規則を作成するということがあります。10人以上の従業員と雇用契約を結ぶ場合、作成と届出は会社の義務です。
就業規則は従業員とのトラブルが発生した場合や、社内で問題が起きた場合の判断材料となります。会社を守るためにも、作成前に一度弁護士に相談することをおすすめします。
会社設立後のやることリスト
会社設立後にやるべき手続きは以下の通りです。
会社設立後のやることリスト |
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労働基準監督署への届出に関しては従業員を雇っている場合にのみ必要ですが、それ以外の手続きにはすべて対応することが基本になるでしょう。ここから先は、項目ごとに手続きの詳細を解説していきます。
会社口座の開設
会社名義の口座は、取引先との金銭のやり取りや会社の帳簿をつける際に必要になります。法人の口座開設審査にかかる期間は1〜2週間が目安なので、登記が済んだら可能な限り早めに手続きに着手しましょう。
会社名義の口座開設に必要なものは、以下の通りです。
- 登記事項証明書
- 定款
- 会社印
- 代表者の印鑑証明証
- 代表者の身分証明証
- 会社の運営実態がわかる資料(ある場合)
なお、法人の口座開設審査は、会社の事業内容が不明瞭だと通らない可能性が高まってしまいます。銀行員に会社の実態を説明できる準備をしてから、口座開設を申し込むようにしてください。
税務署への届出
会社を設立したら、法人として税金を納めていくための手続きが必要です。以下4点の書類を会社の本店所在地がある地域を管轄する税務署へ提出しましょう。
税務署への届出 |
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法人設立届出書 |
会社設立日から2ヶ月以内に提出 |
青色申告承認申請書 |
会社の設立日から3ヶ月以内か、最初の事業年度終了日で早いほうの前日までの提出 |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 |
提出した翌月から適用される(期限なし) |
給与支払事務所等の開設届出書 |
事務所開設後1ヶ月以内に提出 |
※税務署の管轄は『国税庁のHP』をご参照ください
法人設立届出書
法人設立届出書とは、会社を設立したことを税務署に把握してもらうための書類です。この書類を提出することで、税務署から税理関連の資料を送付してもらえます。
法人設立届出書は、国税庁HPの『[手続名]内国普通法人等の設立の届出』からダウンロードし、記載方法を参照の上、書類を作成してください。
青色申告承認申請書
青色申告承認申請書とは、確定申告を青色申告で行うために提出する書類です。この書類を提出することで、税務署から青色申告を認めてもらえるようになります。
青色申告のメリットは、最大65万円の控除を受けつつ、赤字が出ても3年間繰り越して黒字と相殺できることです。青色申告か否かで税金の負担が大きく変わるので、節税対策において非常に重要な手続きといえるでしょう。
青色申告承認申請書は、国税庁HPの『[手続名]所得税の青色申告承認申請手続』からダウンロードし、記載方法を参照の上、書類を作成してください。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書とは、源泉所得税を納付する手続きにかかる手間を省くための書類です。給与などの支払いを受ける者が常時十人未満の場合に限り、この申請ができます。
通常だと源泉所得税は毎月収める必要がありますが、この書類を提出すれば、年に2回の納付だけで済ませることができます。毎月の納付手続きが半年に1回になるので、納付手続きにかかる手間を大幅に省けるでしょう。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書は、国税庁HPの『[手続名]源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請』からダウンロードし、記載方法を参照の上、書類を作成してください。
給与支払事務所等の開設届出書
給与支払事務所等の開設届出書とは、従業員に支払う給料から源泉徴収した所得税を納付するために必要になる書類です。従業員を雇って給与を支払う予定があれば、この書類を提出する必要があります。
ただ、従業員の給料が源泉徴収の必要がないほど少額、もしくは従業員が家族(青色事業専従者)である場合に限っては、給与支払事務所等の開設届出書の提出は不要です。
給与支払事務所等の開設届出書は、国税庁HPの『[手続名]給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出』からダウンロードし、記載方法を参照の上、書類を作成してください。

市町村役場への届出
会社設立をしたら、国税以外にも地方税を納めなければいけません。そのため、市町村の役場にも会社を設立して事業を開始する届出が必要になります。
法人設立届の書類形式やテンプレートは、各地域によって異なります。会社の本店所在地に該当する市区町村のHPを確認して、そこで紹介されている記載方法に従って書類を作成してください。
年金事務所への届出
厚生年金保険や健康保険など、社会保険の加入手続きは年金事務所で行う必要があります。必要に応じて、以下3点の書類を会社の本店所在地がある地域を管轄する年金事務所へ提出しましょう。
年金事務所への届出 |
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健康保険・厚生年金保険新規適用届 |
会社設立から5日以内に提出 |
健康保険・厚生年金保険の被保険者取得届 |
被保険者資格を取得した日から5日以内に提出 |
健康保険被扶養者届 |
被保険者に扶養者がいる場合、被保険者を取得した日から5日以内に提出 |
※年金事務所の管轄は『年金事務所のHP』をご参照ください
健康保険・厚生年金保険新規適用届
健康保険・厚生年金保険新規適用届とは、健康保険と厚生年金保険に加入するために必要な書類です。社会保険への加入は国民の義務なので、会社設立後は必ず手続きに臨まなければいけません。
健康保険・厚生年金保険新規適用届は、日本年金機構HPの『健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき』からダウンロードし、記載方法を参照の上、書類を作成してください。
健康保険・厚生年金保険の被保険者取得届
健康保険・厚生年金保険の被保険者取得届とは、従業員を社会保険に加入させる際に必要になる書類です。従業員を新しく採用した場合は、この書類の提出が必要になります。
健康保険・厚生年金保険新規適用届は、日本年金機構HPの『健康保険・厚生年金保険適用関係届書・申請書一覧』からダウンロードし、記載方法を参照の上、書類を作成してください。
健康保険被扶養者(異動)届
健康保険被扶養者(異動)届とは、扶養している家族がいる人を従業員として雇った際に提出が必要な書類です。この書類を提出することで、従業員に支払う給与が控除対象として扱われるようになります。
ただし、健康保険被扶養者(移動)届の提出には3つの条件があります。以下の1つでも該当しない項目がある場合には、健康保険・厚生年金保険の被保険者取得届での提出になるので注意しましょう。
- 青色申告者と生計を共にする親族である
- 当該年度の12月31日に15歳を超えている
- 青色申告者の事業に6ヶ月以上従事している
健康保険・厚生年金保険新規適用届は、日本年金機構HPの『健康保険 被扶養者(異動)届』からダウンロードし、記載方法を参照の上、書類を作成してください
ハローワークへの届出
会社設立後すぐに従業員を雇った場合には、ハローワークへの届出が必要になります。必要に応じて、以下3点の書類を会社の本店所在地がある地域を管轄するハローワークへ提出しましょう。
ハローワークへの届出 |
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雇用保険適用事務所設置届 |
適用事務所になった場合、その翌日から10日以内に提出 |
雇用保険被保険者資格取得届 |
従業員を雇った日の翌日から10日以内に提出 |
保険関係成立届 |
労働保険(労災保険・雇用保険)の加入に必要な費用 |
※ハローワークの管轄は『厚生労働省のHP』をご参照ください
雇用保険適用事務所設置届
雇用保険適用事務所設置届とは、従業員が雇用保険の適用を受けるために提出する書類です。農林水産業の一部の事務所以外は適用事務所に該当するので、基本的には提出が必要になるケースがほとんどでしょう。
雇用保険適用事務所設置届は、ハローワークHPの『雇用保険適用事業所設置届』のテンプレートを利用して、もしくはハローワークに出向いて職員の説明を参考にして、書類を作成してください。
雇用保険被保険者資格取得届
雇用保険被保険者資格届とは、従業員を雇用保険に加入させる際に提出する書類です。31日以上の雇用契約で週に20時間以上の労働をする従業員がいる場合には、この書類を提出する必要があります。
雇用保険被保険者資格届は、ハローワークHPの『雇用保険被保険者資格届』のテンプレートを利用して、もしくはハローワークに出向いて職員の説明を参考にして、書類を作成してください。
保険関係成立届
保険関係成立届とは、従業員を労働保険(労災保険・雇用保険)に加入させる際に提出する書類です。アルバイトやパートなど、業務形態は関係なく従業員を雇った場合は、この書類を提出する必要があります。
保険関係成立届については、労働基準監督署へ届け出る「労働保険の保険関係成立届」(次の章で解説)の事業主控えを提出します。記入方法は『厚生労働省の記入例』をご参照ください。
労働基準監督署への届出
会社設立後すぐに従業員を雇った場合には、労働基準監督署にも届出が必要になります。必要に応じて、以下3点の書類を会社の本店所在地がある地域を管轄する労働基準監督署へ提出しましょう。
労働基準監督署への届出 |
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労働保険の保険関係成立届 |
従業員を雇った日の翌日から10日以内に提出 |
労働保険概算保険料申告書 |
労働員を雇った日の翌日から50日以内に提出 |
適用事業報告書 |
従業員を雇った際に遅滞なく提出 |
※労働基準監督署の管轄は『厚生労働省のHP』をご参照ください
労働保険の保険関係成立届
労働保険の保険関係成立届とは、初めて従業員を採用して労働保険に加入する際に提出する書類です。正社員だけでなく、アルバイトやパートなどすべての従業員が対象になります(代表取締役、業務執行権を有する役員は対象外)。
労働保険の保険関係成立届は、管轄の労働基準監督署に出向く、またはハローワークに出向くか、郵送で請求することで書類を入手できます。記入方法は『厚生労働省HPの記入見本』をご参照ください。
労働保険概算保険料申告書
労働保険概算保険料申告書とは、労働保険の保険料を納付する際に提出する書類です。保険関係成立日から年度末までに労働者に支払う賃金総額の目安から保険料を計算し、それを書類に記載して提出をします。
労働保険概算保険料申告書の書類は、労働保険の保険関係成立届を提出した後に労働基準監督署から渡されます。記入方法は『厚生労働省HPの記入見本』をご参照ください。提出先はハロワークのほか、都道府県労働局や金融機関でも可能です。
適用事業報告書
適用事業報告書とは、従業員を雇った事実を報告するために提出する書類です。雇用形態に関係なく、すべての従業員が報告の対象になります(同居している親族を雇ったケースは例外)。
つまり、従業員を雇うたびに書類を提出しなければいけません。
適用事業報告書は、厚生労働省HPの『主要様式ダウンロードコーナー』から入手し、テンプレートに従って記入をして提出してください。

会社設立後の手続きは専門家への依頼が可能
ここまでご紹介した会社設立後の手続きは、弁護士や税理士、司法書士などの専門家へ依頼が可能です。ご自身での手続きが難しい、または時間を割く余裕がないという場合には、専門家への依頼を検討してみてください。
会社設立後の手続きは、期限に間に合わないとペナルティ(罰金)が科される場合もあります。ご自身だけでは対処が難しい手続きがある場合は、専門家の意見を参考にしてみましょう。
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