
会社を設立するためには、定款を作成して公証役場で認証してもらう必要があります。公証人により定款の認証がされて初めて、会社設立の登記を申請することができるようになります。
定款は一度認証されてしまえば、会社設立の登記手続きが完了するまで内容を変更する必要はありません。しかし、定款内容に不備や記載漏れがあると、法務局から補正を命じられるなどして設立処理がスムーズに進まないことも考えられます。
もし、会社設立の段階でつまずいてしまうと、その後の経営に大きな支障をきたす可能性もゼロではありません。そのため、定款作成にはそれなりに注意が必要です。
この記事では、定款の記載例や記載事項、作成時の注意点などをご紹介します。これから会社設立の手続きに着手される場合は、参考にしてみてください。
定款の記載例
まず、定款の記載例をご紹介します。以下は株式非公開会社(取締役会の設置なし)を設立する際の例文です。
定款の記載内容は、会社の規模や取締役会の有無で変わってきます。上記はあくまで一例として参考にしてください。
なお、日本公証人連合会のHPでも、申請状況に応じた定款の記載例がそれぞれ紹介されています。審査をする機関が公表している記載例ですので、こちらにも一度目を通しておくことをおすすめします。
定款の記載事項は3種類ある
定款の記載事項は、以下の3種類に分類されます。
定款の記載事項 |
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絶対的記載事項 |
法律上必ず記載しなくてはいけない事項 |
相対的記載事項 |
記載をしないと効力を発揮しない事項 |
任意的記載事項 |
記載は会社設立者の判断に任せられている事項 |
絶対的記載事項
絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項です。以下のいずれかの記載が1つでも漏れている場合、定款を提出しても公証役場から承認されなくなるので注意してください。
絶対的記載事項 |
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相対的記載事項
相対的記載事項とは、定款に記載をしていないとその効力が認められない事項です。代表例としては、以下のような事項が挙げられます。
相対的記載事項の例 |
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ここで紹介した相対的記載事項は一例で、ほかにも多数の事項が存在します。会社の事情に合わせて記載することになるので、ご自身での判断が難しい場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談しておいたほうがよいでしょう。
任意的記載事項
任意的記載事項とは、上記の2つ以外の事項で会社法や公序良俗に反しない限り、自由に定めることができる事項です。この事項に関しては定款に記載がなくても、効力に影響はありません。
そのため、定款に記載するかどうかは任意になりますが、記載をすることで会社の起源やルールを明確にできるというメリットがあります。
任意的記載事項の例 |
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定款作成時の注意点
定款を作成する際の注意点を4つご紹介します。
定款作成の注意点 |
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事業目的に書いてない事業はできない
会社は定款の事業目的に記載されていない事業を営むことはできません。ですから、すぐに取り組む事業だけでなく、将来的に着手する可能性がある事業も記載しておくようにしましょう。
ただし、あまり多く記載し過ぎてしまうと、何の会社なのか判断がつかず、承認されにくくなる恐れがあります。行う予定がない業務まで無理やり記載するのは避けるようにしてください。
資本金の額で納める税金が変わる
資本金の額が1,000万円を超える場合、初年度から消費税課税の対象となります。資本金が1,000万円以上か否かで、税金の負担が大きく変わるので注意してください。
特に資本金が重要でないならば、資本金はまずは1,000万円未満に設定されたほうがよいかと思われます。
本店所在地は番地まで記載する必要はない
本店所在地は『最小行政区』までの記載で大丈夫です。最小行政区とは、東京都新宿区や埼玉県川崎市など、市や区までの住所のことです。
定款で番地まで記載をしてしまうと、少しでも住所が変わると定款の修正手続きをしなくてはいけません。しかし、最小行政区の記載にしておけば、その範囲内での住所変更の手続きを省くことができます。
事業年度は決算時期を考える必要がある
会社の決算時期は、どこからどこまでを事業年度とするかによって決まります。例えば、4月1日を事業年度初日にした場合は、3月31日が決算日です。
ですから、事業年度は、会社の繁忙期や利益が大きくなる時期(節税対策が間に合わないため)に決算時期が重ならないように設定したほうがよいでしょう。
定款作成にかかる費用
定款作成にかかる費用は、以下の通りです。
定款作成にかかる費用 |
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収入印紙代 |
4万円 |
認定手数料 |
5万円 |
謄本手数料 |
約2,000円 |
合計 |
9万2,000円 |
なお、電子版の定款であれば、収入印紙代を支払う必要はありません。ただし、電子版の定款の作成には国が指定する専用のソフトが必要なので、そのコストと手間を考えたら大差はないのではないかと思われます。
定款の作成は専門家への依頼がおすすめ
定款の作成は、司法書士や弁護士などの専門家に代行を依頼することができます。事業が忙しくご自身の時間を割くのが難しい場合には、専門家への依頼を検討したほうがよいでしょう。
ここでは、定款の作成を専門家に依頼するメリットと依頼費用の相場をご紹介します。
専門家に定款作成を依頼するメリット
専門家に定款作成を依頼するメリットとしては、会社設立までの期間を大幅に短縮できることが挙げられます。定款の作成には企業法務と法律の知識が必要なので、知識がゼロで手続きに取り掛かる場合、かなりの時間を要することになるでしょう。
また、もし作成した定款に不備があった場合には、定款の内容を修正して再提出することになります。公証役場の承認がなかなか得られず、悩まれる起業家も少なくありません。
しかし、専門家であれば定款作成のポイントを熟知しているので、内容に不備が生じるリスクを回避できます。すでに事業内容が明確になっている状態であれば、最短で1日で定款が完成する場合もあるでしょう。
定款作成の依頼費用相場
定款の作成(会社設立の代行)を専門家に依頼する費用の相場は、以下の通りです。
専門家への依頼費用の相場 |
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行政書士 |
10万円 |
司法書士 |
10〜20万円 |
弁護士 |
10万円 |
なお、専門家に依頼をした場合、電子版の定款を作成してもらえば、収入印紙代の費用4万円が浮きます。つまり、上記の金額から4万円を引いた金額が依頼費用の相場だと考えてよいでしょう。
まとめ
会社の規模や業務内容によって、定款に記載すべき内容は変わります。定款を作成する際は、同じ業界の会社の記載例が最も参考になるでしょう。
また、会社設立までの時間を短縮し、不備から問題が生じるリスクを避けたいのであれば、専門家への依頼がおすすめです。わからない記載事項がある場合には、一度専門家への相談を検討してみてはいかがでしょうか。
株式会社と合同会社で会社設立にかかる費用も変わってきます。具体的にいくらになるのか、予め確認しましょう。
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