IT法務とは?業務内容やIT企業における法務のポイント・実務の特徴

専門家執筆記事
IT法務とはなにか。基礎知識や実務におけるポイントを弁護士が解説。契約書作成からトラブル対応まで、IT業界で必須の法務情報を網羅。
旭合同法律事務所
川村将輝
執筆記事
IT・ネット法務

近年、IT業界は急速な技術革新とグローバル化の進展により、ビジネスの現場で重要な位置を占めています。

こうした背景から、IT企業やシステム開発に携わる事業者は、技術面だけでなく法務面でのリスク管理も求められるようになりました。IT法務は、単に契約書や規約の作成に留まらず、データ保護、知的財産、セキュリティ対策、さらには新技術に対応した法改正など、多岐にわたる分野に関与します。

この記事では、「IT×法務」をキーワードに、IT法務の基本概念から実務上の重要ポイント、各業界における法務ニーズ、さらには弁護士や専門家を活用するメリットまで、体系的に解説します。

IT業界で活動する事業者や関係者が、リスクを最小限に抑え、信頼性の高い事業運営を実現するための一助となれば幸いです。

本記事のポイント

  • 本記事では、IT法務に関する基礎知識と実務上の留意点
  • IT法務が必要とされる背景や、各業界における法務ニーズ
  • 弁護士や法務専門家の活用メリット
  • 弁護士選定時のポイント
  • 実務で直面する課題に対する解決策
この記事に記載の情報は2025年04月07日時点のものです
【アンケートに答えて無料モニター応募!】2022年4月施行のパワハラ防止法についてのアンケートにご回答いただいた企業様へ、抽選で「パワハラ防止法対策ツール(当社新サービス)」の無料モニターへご案内させていただきます。アンケートはこちら

IT企業における法務イシューの種類

実際にIT企業においてはどのような法務イシューがあるでしょうか。具体的にみていきましょう。

ライセンス侵害

ソフトウェア企業が自社のプラットフォームに関して出願している特許や利用規約の内容が、業界内での標準となる場合、第三者がその技術やデザインを模倣し、無断で自社製品に取り入れる可能性が高まります。

こうした事例では、ライセンス条件の曖昧さや契約上の不備が原因となり、権利の行使や損害賠償交渉が困難となるケースも見られます。また、ライセンス侵害が発覚した際に、被侵害側はその証拠収集や市場全体での侵害の広がりの把握、さらには訴訟手続きにおける費用負担など、非常に大きなリスクとコストを負うこととなります。

これにより、企業は自社の知的財産権が十分に保護されない状況に陥り、長期的には事業価値やブランドイメージの低下を招く恐れがあります。

個人情報や機密情報の漏えい

企業にとって、顧客情報や取引先情報、さらには自社の技術情報や営業秘密は最も重要な資産です。しかし、情報漏えいのリスクは内部統制の不備やセキュリティ対策の甘さに起因し、意図せず情報が外部に流出する可能性があります。

金融系のITサービス企業では、顧客の口座情報や取引履歴が漏れると、企業の信用失墜に直結し、法的制裁や巨額の損害賠償リスクが生じるため、企業全体で情報管理体制を厳しく監視する必要があります。

さらに、内部からの情報漏えい—例えば、従業員による不正持ち出しや不注意なメール送信—も問題視され、情報漏えいが発生すると迅速な対応が求められるとともに、再発防止のための内部統制や教育体制の整備が急務となります。

システム開発における契約不適合や開発遅延などの紛争

大規模なシステム開発プロジェクトにおいては、仕様変更、納期遅延、品質不良など、契約で定められた内容が守られないケースが多発します。

SIer(システムインテグレーター)やSES企業では、多数の下請け業者やパートナー企業と連携するため、契約内容が非常に複雑化し、一部の契約条項が曖昧な場合、後にトラブルが発生するリスクが高まります

こうした紛争が起こると、どの業者がどの部分に責任を負うのかが明確でなく、訴訟や仲裁による解決を余儀なくされるケースがあり、これが企業間の信頼関係を大きく損ねる要因となります。

さらに、プロジェクト全体の遅延やコスト超過が発生すると、企業の事業戦略全体に悪影響を及ぼす可能性もあるため、契約不適合が解消されないままの状態が長期的なリスクとして残ることが懸念されます。

デジタルプラットフォーマー規制

オンラインプラットフォームを運営する企業は、利用者保護、独占禁止法、消費者保護など、多岐にわたる規制の対象となります。

ECサイトやマッチングサイトでは、ユーザーの個人情報、決済情報、配送情報などが取り扱われ、これらに関する規制が厳格に定められています。さらに、競争上の優位性を巡って、独占的な地位を乱用しないか、あるいは不公正な取引慣行がないかといった点についても、監督当局からの注視を受けることになります。

こうした規制が十分に遵守されない場合、企業は法的措置や行政指導の対象となり、業務停止命令や多額の罰金が科せられる可能性があるため、規制環境が変化する中でその対応が常に求められる状況となっています。

プログラムやデザインの知財保護

ソフトウェアやデザインは、企業の競争力の源泉となる重要な知的資産ですが、その保護が十分でない場合、模倣品の流通や著作権侵害が深刻な問題となります。

ゲーム会社が自社開発のキャラクターやユーザーインターフェースのデザインを十分に保護していなければ、競合他社がそれを模倣して類似製品を市場に投入するリスクが高まります

また、ソフトウェアのソースコードやアルゴリズムに関しても、特許出願や著作権登録が遅れると、模倣や無断使用が容易になり、結果として市場シェアの低下やブランドイメージの損失を招く恐れがあります。

さらに、権利保護の範囲が曖昧な場合、訴訟リスクが増大し、侵害事例のモニタリングや迅速な法的措置が取れない状態が続くと、企業全体の知財戦略に深刻な影響を及ぼすことになります。

ITに関する法務の主な業務内容

IT関連の企業において、法務が担当する業務としては主に次のようなものが挙げられます。

契約法務

契約書のドラフトやレビュー、契約交渉が基本です。

その上で、同じ種類の契約書でも、カテゴリーの区分があることもあります。例えば、システム開発においては、どのようなタイプの開発プロセス(いわゆるウォーターフォール型、アジャイル型といった分類など)であるかにより、契約条項における構成の違いがあります。

ライセンス契約でも、ライセンス料の設計が月額/年額で固定のまとまった金額設定なのか、いわゆるレベニューシェア型なのか、それぞれによって契約書で盛り込むべき条項が異なります。

また、開発契約では、契約締結における一般的な法務のほか、プロジェクトの管理、検収段階におけるチェックの確認、成果物の運用保守に至るまでの監督も行う必要があります。日常的に、反復継続的な内容であることがわかります。

したがって、IT関連の契約業務では、プロダクトの開発過程における適正な業務の成果を確保することのほか、開発したプロダクトの利用に関する法律関係を整えること、プロダクトを利用する第三者との間での紛争予防といった観点が重要です。

IT法務に関連する主な契約は、基本的なものとして業務委託契約があるほか、システム開発契約、ソフトウェアライセンス契約、システムの運用における保守契約、秘密保持(NDA)といったものが挙げられます。

最近では、ソフトウェアなどの開発で他社との共同開発がある場合もあるので、共同開発契約に関する法務も重要です。

個人情報保護や情報セキュリティ

IT企業では、ペーパーレスに、多種多様な情報をサーバーやクラウド上で大量に扱い、管理しつつ利用して事業を行います。その際には、当然顧客の個人情報を扱う場合もあり、あるいは企業の機密情報を扱う場合もあります。

情報システムに関する専門部署が置かれる場合もありますが、法務が所管する業務になることも少なくありません。

個人情報は、個人情報保護法に従い、取得から保管、不要な情報の破棄を含めて情報のライフサイクルマネジメントを適正に実施し、業種・業態や規模、扱うデータの内容や性質に応じ、適切な安全管理措置を実施する必要があります。

機密情報についても、不正競争防止法などの法令が関連します。

具体的な業務内容としては、次のような例が挙げられます。

データの取扱いに関する基本ルール

・プライバシーポリシーなどの策定と運用
・データ分類とデータマッピング
・データの取扱いに関する内部規程の作成
・定期的なリスクアセスメントと改善
情報セキュリティ体制の整備 ・技術的対策など:ファイアウォールやIDS・IPSの設置、ログ管理や監視システムなど
・組織的対策:インシデントレポートやIRPのs策定、情報サプライチェーンのセキュリティ確保の措置
コンプライアンス体制の整備と研修実施 ・社内教育:個人情報保護研修
・内部監査:IT監査、定期的なリスクアセスメント

利用規約の策定と運用

多くのITサービスにおいては、多くのネットユーザーによる利用や取引の実施が想定されることから、定型約款での取引管理が合理的です。

そこで、利用規約の策定、管理・運用が、法務業務として考えられます

利用規約で定めるべき項目は、サービス内における用語の定義から、利用登録時のルール、アイパスの管理、サービス利用料やその支払・決済に関する仕組み、利用者の管理(サービスの利用停止とその根拠の明示)、サイトやプロダクトに関わる著作権等の知財保護、メンテンナンス等の場合におけるサービス停止、個人情報の取扱い、免責事項など多岐に渡ります。

また、法令改正などのアップデートもキャッチしながら、必要に応じて適時に改定をしていく必要があります。そして、規約の適用についても、サービスの利用状況やサービスを取り巻く環境、ステークホルダーの意識やサービス内の慣習も含めた柔軟で適正な運用が求められます。

知財戦略

ITにおいて、サービスやプロダクトの競争優位性を確保すること等の観点から、知財としての保護を確立していく戦略策定や実施が重要です。

例えば、WebサービスのUIデザインや独自のプログラムコードについては、著作権登録を行い、模倣リスクに備えるとともに、ライセンス交渉の際の交渉材料とする戦略が考えられます。

また、AIアルゴリズムを開発するスタートアップの場合、外部の弁理士が先行技術調査を実施し、出願書類の作成と提出を迅速に行い、特許権を取得することで、競合他社との差別化と市場参入障壁の形成を図ります。

また、ライセンス管理としては、SaaS企業が自社のクラウド技術を複数のパートナーと共有する場合、ライセンス契約により利用条件や料金体系、期間を明確に設定します。これにより、双方が安心して技術を共有でき、将来的な訴訟リスクの低減や収益の安定化が図られます。

あるいは、権利侵害の事象が生じた場合の対応フローや権利保護・回復の方策を整備しておくことも重要です。

【関連記事】生成AIによる著作権の侵害事例と最新の判例|生成AI事業者のリスクなどを徹底解説

新技術を取り巻く規制対応

AI、IoT、ロボティクスなどの分野を中心に、ITの中でも現状の法規制が追い付いていない領域であったり、極めて新規性が高い法分野があります。こうした領域の規制対応も、法務における業務内容として想定されます。

医療分野でAIを用いた診断支援システムサービスを想定する場合、従来の医療機器規制ではカバーされにくいアルゴリズムの透明性や安全性が問題となります。

例えば、システムが患者データを解析し、診断結果を提示する際、医療機器としての認証(FDA認証やEUのCEマーキング)が必要になるケースがあります。

このため、企業は定期的に最新の医療機器関連の法改正やガイドライン(例:「AI医療機器ガイドライン」など)をキャッチアップし、製品設計や試験プロセスをアップデートします。また、製品マニュアルやリスク評価書を更新し、審査対応を迅速に行うための内部体制を構築することも必要です。

IT分野で法務が必要とされる背景3つ

IT分野で法務が必要とされるのは、どのような背景からでしょうか。3点から解説していきます。

データガバナンスへの関心の高まり

現代のITビジネスでは、企業が日々膨大なデータを生成・活用しており、これを正確に管理することは単なる業務効率向上だけでなく、法令遵守や企業戦略の根幹をなす重要な要素です。

たとえば、大手ECサイトでは、ユーザーの購買履歴やアクセスログなど膨大なデータを扱いますが、これらのデータの正確な管理や安全な外部提供のバランスを取るために、専任のデータ管理チームや委員会を設置し、定期的な内部監査やリスク評価を実施しています。

また、個人情報保護法やGDPRなどの厳格な規制を遵守するため、企業はプライバシーポリシーの整備やデータ暗号化技術、アクセス権限の厳格な管理を行い、ユーザーのプライバシー保護とデータ活用の両立を図っています。これにより、法令違反による罰則や社会的信用の低下を防ぎ、データを戦略的な資産として活用する体制が整えられています。

デジタルアセットが重要な経営資源に

IT企業にとって、ソフトウェア、データベース、知的財産などのデジタルアセットは、従来の有形資産以上の価値を持つケースが増えています。

たとえば、クラウドサービスを提供する企業では、自社開発のソフトウェアやプラットフォームが企業価値の大部分を占め、これらの資産が適切に評価・保護されるかどうかが競争力に直結します。しかし、デジタルアセットは評価基準が必ずしも明確でなく、資産としての整理が難しいため、専門家の協力を得ながら権利管理やライセンス契約を進めることが求められます。

さらに、M&Aや投資の際には、投資家や買収先が自社のデジタルアセットの実態を正確に把握できるよう、透明性の高い情報開示と内部管理体制の整備が必要です。たとえば、スタートアップが事業売却を検討する場合、これまでの知的財産権の出願状況や、運用実績を明示することで、企業価値の向上に寄与する事例が多く報告されています。

DXとAIの急速な進展と普及

デジタルトランスフォーメーション(DX)と人工知能(AI)の普及は、企業の業務効率化や新たなビジネスモデル創出に大きな影響を及ぼす一方、法務面では新たなリスクや倫理的課題が浮上しています。

たとえば、AIを用いた自動運転システムでは、アルゴリズムの透明性や安全性、さらに事故発生時の責任所在が法制度と完全に合致していない場合があり、各国の最新ガイドラインに基づいた開発プロセスが求められます。

また、DXによる業務効率化は多くの企業にとって収益向上の鍵となる一方、システムの障害やデータ漏えいなどの法務リスクも内包しているため、企業はリスク管理体制を強化し、万一の事故に備えた迅速な対応マニュアルを整備する必要があります。

さらに、グローバルに展開する企業の場合、各国の規制や法制度の違いに対応するため、現地の法改正動向を定期的にチェックし、柔軟な運用体制を整えることが求められています。

こうした背景から、IT業界において、法務がより重要視され必要性が高まっているのです。

ITに関する法務が求められる企業の種類

IT業界で法務が必要とされる企業の種類を、具体的に5つ程度種類を上げながら解説していきます。

システム開発ベンダー(SIerやSES)

システム開発を手掛ける企業では、複数の下請けや外部パートナーと連携するため、契約内容が非常に複雑になります。

たとえば、大規模なシステム統合プロジェクトでは、開発、保守、運用、さらにはサブコントラクターとの間で、それぞれの責任やリスク分担を明確にする契約書の作成が不可欠です。

また、プロジェクト管理の面では、仕様変更や納期遅延などのトラブルが発生しやすいため、定期的な進捗報告やコミュニケーション体制の整備、さらには仲裁や調停の利用といった対策が講じられています。

さらに、技術部門と法務部門が密接に連携することで、現場で発生するリスクを早期に把握し、問題発生時には迅速に法的対応できる体制が構築されるケースも多く見られます。

SaaS企業

クラウドサービスを提供するSaaS企業は、サービスの安定運用やデータ保護、利用規約の管理が特に重要です。たとえば、サービス停止やデータ漏えいが発生した場合のリスクを最小限に抑えるため、厳格な内部監査体制やセキュリティ対策を講じることが考えられます。

また、利用者との契約に関しては、定期的に利用規約を見直し、最新の法令や市場動向に合わせた内容にアップデートすることで、ユーザーとの信頼関係を維持しています。

さらに、海外展開を進める場合、GDPRなど国際的なデータ保護規制に対応するため、国ごとに異なる法制度に合わせた運用ポリシーを策定し、現地法人の設立やデータセンターの配置なども行っています。

デジタルプラットフォーマー(ECサイトやマッチングサイトなど)

オンラインプラットフォームを運営する企業は、利用者の個人情報保護や取引の安全性確保が重要です。

例えば、ECサイトでは、ユーザーの決済情報や配送情報などの重要な個人情報を取り扱うため、利用規約の整備に加え、外部の決済システムや物流パートナーとの契約条件を厳格に定める必要があります。

さらに、万一トラブルが発生した際の迅速な対応や、利用者からのクレーム処理を円滑にするため、専任のサポートチームを設置し、内部コンプライアンス体制を整備することで、サービス全体の信頼性を高めています。

特に2024年は、大手ECプラットフォームやスキルシェアサービスにおいて、サービスが犯罪の手段に悪用されるようなケースがありました。こうした事例を受けて、未然の防止体制の整備やユーザーへの周知、またトラブルの解決に向けた介入やサポートの連携の重要性が社会全体の認識として高まっていると考えられます。

通信技術・ビッグデータ利活用

通信事業者やビッグデータを扱う企業は、情報漏えいや不正利用のリスクが大きく、これに対するセキュリティ対策が不可欠です。

たとえば、数百万件規模の顧客データを扱うため、最新のファイアウォールや侵入検知システム、さらには多要素認証を導入して情報漏えいリスクを低減することが考えられます。

また、企業内での情報管理ルールを厳格に定め、従業員への定期的な教育を行うとともに、最新の個人情報保護法や関連法規に基づいた運用を徹底することで、法令遵守を実現しています。

AI開発企業

AI技術を開発する企業では、アルゴリズムの透明性や倫理的な問題への対応が求められます。

たとえば、AIを活用したチャットボットや画像認識システムでは、システムの判断根拠やデータ利用方法を明確にする必要があり、これにより利用者の信頼を獲得するとともに、法的なリスクを低減する対策が進められています。

さらに、企業内でAI倫理ガイドラインを策定し、研究開発の段階から倫理的な側面を考慮した設計や運用を行うとともに、国際的な規制動向を踏まえて、グローバル基準に即した対策を講じる事例も見受けられます。

こうした取り組みにより、急速な技術進化と法制度とのギャップを埋め、持続可能なイノベーションを推進しています。

【関連記事】AIによる契約書チェックは違法か?最新の議論の動向やプロダクトの進化と弁護士による対応が必要なポイント

IT業界の法務で弁護士を活用するメリット

IT業界の法務が必要とされる背景や具体的なイシューなども深堀りしてきました。その上で、ここでは法務人材として弁護士をどのような場面で活用すべきか、弁護士を活用するメリットについて解説していきます。

システム開発訴訟の専門性の高さ

IT関連のシステム開発においては、契約書の内容や技術仕様が複雑であるため、トラブル発生時には専門的な知見を持つ弁護士の介入が不可欠です。

たとえば、SIerが開発したシステムで仕様不適合が発生し、訴訟に発展したケースでは、システム開発における専門性の高い訴訟を多く経験した弁護士が、技術的な背景と契約内容を詳細に分析し、適切な解決策や和解条件を提示することで、企業の損害を最小限に抑えることに成功しています。

規制法令の難解さ

IT分野は法改正のスピードが速く、最新の法令や国際規制を把握するためには専門知識が必要です。

たとえば、GDPRなどの国際的なデータ保護規制に対応するため、定期的に弁護士やコンプライアンス専門家から最新情報を提供してもらい、内部研修を実施することで、法令遵守体制を強化していくことが考えられます。

これにより、規制違反による罰則リスクや企業イメージの低下を防ぎ、安心してグローバル展開を進めることが可能となっています。

分野横断的な知識を要すること

IT法務は、技術的な専門知識と法律知識の双方が求められるため、分野横断的なスキルを持つ弁護士の存在が重要です。

たとえば、エンジニア出身の弁護士は、最新技術の動向や業界特有の用語を深く理解しており、企業の具体的なリスクや対策について、的確なアドバイスを行うことができます。

また、継続的な教育や情報共有を通じて、企業内部の法務チームと連携し、技術と法務の融合を図ることで、より強固な法務体制を実現しています。

IT業界の法務に強い弁護士の特徴

最後に、IT業界の法務に強い弁護士の特徴について解説していきます。

エンジニア経歴のある弁護士

エンジニアとしての経験を持つ弁護士は、IT企業の実情や技術的な背景を深く理解しているため、現場に即した法務アドバイスを提供することができます。

たとえば、クライアントが抱える技術的な課題やリスクを具体的に把握し、「この部分がユニークで、どのように特許出願すべきか」という実践的な提案を行うことができます。

また、システム開発関連の紛争では、エンジニアがどのような業務プロセスで開発を行うのか、開発するシステムの種類や内容、難易度や工数の複雑さに応じた設計の中身、業界慣行を知っていなければ、不利になる場合もあります。

こうした専門性は、企業との円滑なコミュニケーションや、信頼関係の構築にも大きく寄与します。

IT企業の社内弁護士や法務経験がある

社内弁護士は、企業の日常業務や文化に精通しているため、より実践的で迅速な意思決定を支援できます。

例えば、開発現場で発生するトラブルに対し、即時に内部で対応策を策定し、外部との連携が必要な場合は専門家と協力して解決する体制を整えています。これにより、企業全体のリスク管理が強化され、業務効率が向上するというメリットがあります。

実際にエンジニアとしてのスキルや実力がない場合でも、IT企業のビジネスサイドでの法務経験のある弁護士は、IT企業の法務において戦力になることが十分期待できます。

ITツールを日頃から使いこなしている

現代の法務は、ITツールやクラウドサービスの活用が進んでおり、弁護士もこれらを駆使して業務効率を高めています。

たとえば、最新のデジタル文書管理システムを利用することで、契約書や特許出願資料などの重要文書を効率的に管理し、更新や共有が迅速に行えます。

また、オンライン会議やウェブセミナーを活用して、遠隔地のクライアントともリアルタイムでコミュニケーションを取ることができ、最新の法令情報や技術動向の情報共有がスムーズに実現されます。

これにより、企業にとって必要な法務サポートが迅速かつ確実に提供される環境が整備されます。

まとめ

IT法務は、IT企業が抱える様々なリスクを包括的に管理するための重要な要素です。

契約書作成や個人情報保護、知的財産戦略、そして新技術に対応するための規制対策など、多岐にわたる業務が連携して進められます。今回の記事では、IT法務の基本から実務上の課題、各業界における法務ニーズ、そして専門家である弁護士の活用メリットについて、具体例や最新動向を交えて解説しました。

企業が抱える法的リスクを最小限に抑えるためには、内部体制の強化と、エンジニア経歴を持つ弁護士など、専門知識を有するパートナーとの連携が不可欠です。「IT法務の重要性は、企業の信頼性や競争力に直結する」との認識のもと、今後も継続的な情報収集と対策の強化が求められます。

本記事を通じて、IT業界で事業を展開する皆様が、法務面でのリスク管理の重要性を再認識し、具体的な対策を講じる一助となれば幸いです。

IT・ネット法務の解決実績が豊富な
無料相談できる弁護士一覧
弁護士佐々木公明(桜田通り総合法律事務所)
東京都港区虎ノ門2-10-1虎ノ門ツインビルディング 東棟17階
上場企業の社外役員経験20年以上】【弁護士経験29年以上】【顧問契約可能豊富な経験に基づいて幅広い分野を取り扱っています契約書の作成・チェック企業側に立った労働法務の対応に注力しています。示談交渉や訴訟など紛争処理案件にも対応します。
船井法律事務所
東京都渋谷区渋谷2丁目24番12号渋谷スクランブルスクエア39階
渋谷駅直結◆アクセス至良◆】契約書作成、取引先や従業員とのトラブル対応、知的財産権の保護など◎経営者のブレインとして、法的側面から事業をサポートします。【初回相談無料【顧問先は24時間365日対応】
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
東京都港区虎ノ門2-10-1虎ノ門ツインビルディング東棟16階
著書・論文|多数出版】契約書チェックや利用規約の確認~企業間の紛争まで幅広く対応◎知的財産関連法務、IT関連法務のことは弁護士高瀬にお任せください!状況に応じた的確なサポートに自信があります
貴社の課題解決に最適な
弁護士とマッチングできます
契約書の作成・レビュー、機密性の高いコンフィデンシャル案件、M&A/事業承継など、経営者同士でも話せない案件も、
企業法務弁護士ナビでは完全非公開で相談可能です。貴社の課題に最適解を持つ弁護士、最大5名とマッチングできます。
弁護士の方はこちら