株式譲渡を行なって利益が発生した場合、譲渡所得が発生し課税の対象になるケースがあります。
この時、もし株式譲渡で発生したのが損失だった場合、他の株式との損益を合算して計算することで、翌年以後3年間に渡って確定申告をすれば譲渡所得等の金額及び配当所得等の金額から繰越控除課税価格を抑えることができます。(上場株式の場合)
これを損益通算と呼んでいますが、株式譲渡では譲渡所得と他の所得(給与所得・雑所得・事業所得など)との損益通算はできないとされています。
そこで今回は、株式譲渡で損益通算ができる場合と出来ない場合、できない場合に繰越控除を利用するための方法について解説していきます。
株式譲渡で損益通算を行えるのは上場株式のみ
まず、国税庁の定めによると、下記の4つの場合では損益通算ができないとされていますので、ご紹介していきます。
- 株式等の譲渡損失の金額と他の所得の黒字の金額との通算不可
- 他の各種所得の損失の金額と株式等の譲渡所得等の黒字の金額との通算不可
- 上場株式等に係る譲渡所得等と一般株式等に係る譲渡所得等との通算不可
- 上場株式等に係る譲渡損失の金額と上場株式等に係る配当所得等の金額との損益通算
また、株式には一般株式と上場株式の2種類があり、この2つを損益通算にかけることもできないとされ、個別に税金を計算する、申告分離課税という制度があります。
上場株式なら譲渡損失の損益通算及び繰越控除ができる
もし株式の譲渡を行なった結果、損失が発生した場合は、上場株式に限り、一定の要件を満たせば、その譲渡損失が生じた年の翌年以後3年間に渡って上場株式等の譲渡所得金額及び、上場株式の配当所得等の金額から繰越控除が行えます。
ただ、あくまでも上場株式に係る損益のみを対象としており、先ほどご紹介したように「一般株式」と「上場株式」をまとめる事はできませんので、ご注意ください。
配当とは |
企業が物の売り買いで出た利益の一部を、株主へ支払うもの。 |
上場株式の譲渡損失を損益通算・繰越控除する要件
「上場株式で一定の要件を満たす」ことができれば繰越控除の対象になりますが、一体どのような要件なのかまとめました。
1:上場株式等に係る譲渡損失と上場株式等に係る配当所得等との損益通算
損益通算を受けたい年の確定申告書に、この規定の適用を受けようとする旨を記載することと、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」及び「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の添付がある確定申告書を提出すること。
2:上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
- 所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(連続したもの)
- 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書の添付がある確定申告書
また、この繰越控除を受けようとする年分の所得税につき、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」と一般株式等に係る譲渡所得等の金額、あるいは上場株式等に係る譲渡所得等の金額がある場合には「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の添付のある確定申告書を提出すること。
ようは、「毎年確定申告をしています」という事が証明できる書類を用意できる事と、覚えておくと良いでしょう。
流れとしては、
- まず上場株式等に係る譲渡所得等の金額から控除
- 控除しきれない損失金額がある場合は、上場株式等に係る配当所得等の金額から控除
これを繰り返していくというイメージですね。
損益通算の計算例
株式譲渡の損益通算では、配当の受取り時に源泉徴収されていた税金の一部または全部の還付を受ける事が可能です。
それを踏まえた計算をしてみましょう。
配当金が40万円の場合・・・
40万円(配当金)×20.315%(源泉徴収)= 81,260円
区 分 |
税 率 |
上場株式等に係る譲渡所得等(譲渡益) |
20%(所得税15%、住民税5%) ※平成49年まで20.315% |
一般株式等に係る譲渡所得等(譲渡益) |
もしこれ他株式で売却損を40万円出した場合、配当金と相殺することで徴収された81,260円の還付を受けることが可能です。
還付として損益通算できるものとしては、投資信託なども含めることができます。
株式譲渡における損益通算の注意点
損益通算できるのは区分が同じ損益のみ
例えば株式以外で損益通算に含めることができるものとして、日経先物取引やオプション取引も可能ですが、共通して言えるのは「所得区分」と「課税方式」が同じ商品であるということです。
商品 |
区分 |
課税方法 |
確定申告 |
日本株式 |
譲渡所得 |
申告分離課税 |
必要 |
投資信託 |
|||
株価指数先物 |
雑所得 |
申告分離課税 |
必要 |
オプション取引 |
|||
FX取引 |
|||
債券 |
利子所得 |
申告分離課税 |
必要 |
譲渡所得 |
総合課税 |
表の通り、FX取引や株価指数先物などは「雑所得」にあたるため、ここで損益が出た場合でも、損益通算に含めることはできないことに注意しましょう。
配当控除を受ける場合は総合課税を選択する必要がある
株式の配当を受けた場合、株式の売却損と損益通算ができるのはすでにお伝えした通りですが、申告をする際、上場株式等の配当は、総合課税と申告分離課税のいずれかを選択することになります。
この時、配当控除を受けるには必ず総合課税を選択し、確定申告をする必要があります。確定申告をしたという証拠がないと損益通算ができませんので、注意が必要です。
確定申告をする |
確定申告をしない (確定申告不要制度適用) |
||
総合課税を選択 | 申告分離課税を選択 | ||
借入金利子の控除 | あり | あり | なし |
税率 | 累進税率 | 平成49年1月1日まで所得税:15.315%、地方税:5% | |
配当控除 | あり | なし | なし |
上場株式等の譲渡損失との損益通算 | なし | あり | なし |
扶養控除等の判定 | 合計所得金額に含まれる | 合計所得金額に含まれる | 合計所得金額に含まれない |
まとめ
株式譲渡で得た売却損は損益通算で、場合によってはかなりの節税に繋がる可能性がありますので、受け取った金額をそのままにするのではなく、細かく計算していくことをおすすめします。
計算式自体は簡単ですが、考え方を理解するまでは難しいかと思いますので、税理士などの専門家と相談しながら進めていただくのが良いでしょう。