M&Aにかかる期間はどれくらい?プロセスごとに解説

専門家監修記事
M&Aの規模にもよりますが、M&Aの実施を決定してから一連の処理を終えるまでに1ヶ月以上はかかるのが通常です。ある程度M&Aにかかる期間を見積もってから、実際の手続きに入るのがよいでしょう。この記事では、M&Aにかかる期間について具体的にご紹介していきます。
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
M&A・事業承継

M&Aは、事業の拡大や事業承継において非常に有効な手段の一つです。メリットも大きく、近年その注目度はますます高まりつつあります。一方でネックになる部分として、完了までに時間を要する場合が多いことが挙げられます。

 

M&Aは法務、財務、労務など、さまざまな点を考慮して行っていく必要がある、非常に複雑なものです。そのため、M&Aの規模にもよりますが、M&Aの実施を決定してから一連の処理を終えるまでに1ヶ月以上はかかるのが通常です。

 

M&Aによって企業の売却を行う際は、そのときの企業の業績が売却価格などに影響してくることになります。したがって、ある程度M&Aにかかる期間を見積もってから、実際の手続きに入るのがよいでしょう。

 

この記事では、M&Aにかかる期間について具体的にご紹介していきます。

 

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①秘密保持契約〜基本合意締結まで

M&Aにおいてやりとりされる会社内部の情報を、第三者に漏洩させないために締結する秘密保持契約から、基幹部分についての合意の際に結ばれる基本合意締結までは通常は1~2週間程度かかります

秘密保持契約

秘密保持契約は、M&Aを検討している会社同士が、そこで知った情報を外に漏らさないことを約束するための契約です。M&Aでは、初めはどの会社が売却を検討しているのかわからない範囲で情報を開示しています。

 

しかし、買収を検討する企業が出てきた場合、買収のためにはより多くの情報を集める必要があります。その情報を第三者が第三者に渡ることのないよう、この秘密保持契約を結んだ上で、情報を開示します。

基礎情報開示・事前交渉

秘密保持契約を締結したのちに、買い手企業が買収に向け、基礎的な情報を知るために行うのが基礎情報開示です。この基礎情報の開示により、大まかな買収計画の策定や、今後のスキームなどの決定がなされていくことになります。

 

また、この段階では事前交渉も行われます。従業員の労働環境の変化に伴う労働条件や、買収価格の交渉などが行われます。トップ同士の面談により、互いの信頼を醸成するのもこの時期です。

基本合意締結

基礎情報の開示によって、基本的な部分の情報共有がなされ、それに基づいた事前交渉が合意に達したら、基本合意締結を行います。基本合意締結では、買収価格や、今後行われるデューデリジェンスの円滑化への協力などの項目が盛り込まれることになります。

 

ただ、この基本合意締結には法的拘束力を持たせない場合もあります。なぜなら、この後に控えているデューデリジェンスで詳細が明るみになることにより、契約内容に変更が生じる可能性があるからです。

②デューデリジェンス(DD)

基本合意が締結された後に行われるのがデューデリジェンスです。これは買い手企業が行う売り手企業側に対する詳細調査であり、法務、財務、ビジネスといった点を中心にITなども含め、詳細な分析が行われます。このデューデリジェンスによって、買収価格が変動する可能性も大いにあります。

 

買い手企業側が主体となって調査を行いますが、売り手側も基本的には円滑に調査が進むよう協力する必要があります。社内のさまざまな状況を把握し、書類などを作成する場面が出てくるでしょう。かなり詳細な調査を行うのが普通なので、弁護士や税理士を伴うことも珍しくありません。

 

なお、以下で述べる法務デューデリジェンスと財務デューデリジェンスは通常、同時並行で、おおむね1〜2週間をかけて行われます

法務デューデリジェンス

デューデリジェンスのなかでも主要な項目の一つが、法務デューデリジェンスです。

 

ここでは会社の持つ許認可や知的財産権、労務、契約など、さまざまな法律関係を調査することになります。法的なミスはのちの大きなトラブルの火種となりかねないため、極めて入念な調査が行われることになります。

財務デューデリジェンス

財務デューデリジェンスでは、損益計算書や賃借対照表などを精査し、財務の観点からチェックを行います。

 

ここで将来的に期待できる収益などを割り出し、それと同時にこれまでの財務体制において不正などがなかったかをチェックすることになります。

ビジネスデューデリジェンス

ビジネスデューデリジェンスでは、市場全体の評価を行うことによって、その事業が業界内でどのような立ち位置にあるのか、M&Aの目的と果たしてマッチしているのか、などを確認します。

 

このビジネスデューデリジェンスでは、実際に施設・設備などを訪れて調査するなど、基本合意までのデータに間違いがないかを確認することになります。

③条件交渉〜クロージングまで

デューデリジェンスによりM&Aに必要なすべてのチェックが終われば、その後は条件交渉からクロージングへと向かっていくことになります。

 

条件交渉から最終契約締結までの期間は、1〜2週間程度が通常です。その後のクロージング時期は契約内容次第ですので、一概には言えません。

条件交渉

条件交渉の段階では、デューデリジェンスに基づいた買収価格の最終決定や、従業員の契約関連、事業に必要な知的財産権の譲り渡しについてなど、重要な交渉が行われます。

 

またM&A完了後、企業の統合が行われる場合、それらが円滑に進むように交渉を進める場合もあります。

最終契約締結

条件交渉も合意に至った場合、最終合意契約が締結されます。中小企業では株式譲渡契約書がこの役割を代替する場合もあります。

 

最終契約書内には重要な前提条件や、補償に関する条項、解除条項などが盛り込まれます。

 

M&Aの完了後は最終契約書の内容をもとに、トラブルなどへの対応が行われます。したがって、単なる終了のための契約締結ではなく、今後も見据えた内容になるため、詳細な確認を行う必要があります。

クロージング

クロージングとは、経営権が売り手企業から買い手企業側に完全に移行することを言います。

 

クロージングは最終契約書内に記載された前提条件を満たしていることが不可欠です。逆に言えば、クロージング前の前提条件の交渉は厳しいものとなることが少なくありません。

まとめ

M&Aは、実施を決定してからは短くて1ヶ月程度、長くて3ヶ月程度の時間を要します。ただ、事前の調整や準備の期間が長くなるということはあり得ます。

 

こうした期間をあらかじめ見積もり、M&Aが成功するよう入念な調整・準備を行っていきましょう。

 

M&Aをする前に費用の確認!

M&Aでは、売り手側にも一定の費用が発生します。自社価格がどのように決定するのか、その他の費用としていくら必要なのかご紹介します。

 

Ⅿ&Aに関する費用はいくら?

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