商事債権の時効は何年?時効の中断方法や時効期間後の回収可否を解説

専門家監修記事
売掛金などの商事債権には時効制度が設けられており、債権種類ごとに時効期間が定められています。なお商事債権については時効を中断することもでき、たとえ時効期間を過ぎても回収できるケースもあります。この記事では、商事債権の時効期間や時効の中断方法などを解説します。
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
取引・契約

企業取引によって発生した売掛金などの商事債権については、民法とは異なる時効制度が設けられています。時効期間を過ぎて権利が消滅したものについては、原則回収することはできないため、未回収分の債権がある企業は時効成立前に回収対応を行う必要があります。

 

なおこのような債権については、所定の手続きを踏むことで時効を中断することもできます。また時効期間を過ぎた後であっても、場合によっては回収対応が行えることもあります。

 

この記事では、商事債権の時効期間や時効の中断方法、時効期間を過ぎた後の回収可否などについて解説します。

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商事債権の時効の期間

商事債権の時効期間は、商法第522条より5年と定められています。ただし一部の債権については、民法などにて短期の消滅時効が定められているため注意が必要です。

 

時効期間について債権種類ごとにまとめると、以下の通りです。

時効期間

債権種類

根拠条文

1年

宿泊料

運送費

飲食代金

民法第174条

2年

商品の売買代金

民法第173条

弁護士報酬

民法第172条

3年

設計費・工事代金

診療報酬

民法第170条

商事債権の時効の起算点

商事債権の時効期間は、民法第140条より支払期限の翌日から開始します。例として、3月31日に支払期限を設定している場合は、翌日の4月1日から時効期間が開始します。

 

時効開始から成立までの流れについて、債権種類ごとにまとめると以下の通りです。

債権種類

時効期間

時効開始

時効成立

運送費

1年

2019年4月1日

2020年3月31日

商品の売買

2年

2019年4月1日

2021年3月31日

診療報酬

3年

2019年4月1日

2022年3月31日

商事債権の時効を中断する方法

商事債権の時効については中断することもでき、時効を中断する方法としては以下の3つがあります(民法第147条)。ここでは、それぞれの中断方法について解説します。

 

  • 請求
  • 差押え(仮差押え・仮処分)
  • 債務承認

請求

請求は、さらに裁判上の請求裁判外の請求に細分化されます。

 

裁判上の請求

裁判上の請求には主に以下のものがあります。

 

  • 訴訟…債務者に対して裁判を起こす方法。債務名義として「確定判決」や「仮執行宣言付判決」などがある。
  • 支払督促…簡易裁判所を介して、金銭などを支払うよう債務者に対して督促を行う方法。債務名義として「仮執行宣言付支払督促」がある。
  • 民事調停…調停委員による仲介のもとで、債権者と債務者が話し合いを行う方法。債務名義として「調停調書」がある。

 

上記対応を行った結果、請求が認められて債務名義を取得できた場合、時効期間を10年延長することができます。なお、請求が認められず債務名義を取得できなかった場合、そもそも権利が存在しないということなので請求できません。

 

なお、債務名義を取得することで、債務者に対して債権回収の強制執行を申立てることも可能になります。

 

裁判外の請求

裁判外の請求としては、債権額や取引日などを記載した催告書という書類を作成して、内容証明郵便にて送付して行うのが一般的です。これによって、時効完成を6ヶ月延長することができます。

 

催告書自体に支払いを強制する法的効力はありませんが、特に「時効期限が迫っており猶予がない」という場合などは有効でしょう。催告書は、以下のような形式で作成します。

 

 

差押え(仮差押え・仮処分)

差押えや仮差押え・仮処分などの申立てを行うことでも、時効期間を延長することができます。

 

差押えとは財産などを強制的に回収する手続きを指し、実施にあたっては事前に債務名義を取得している必要があります。また仮差押え・仮処分とは財産などを仮に押さえておく手続きを指し、差押えの前段階にあたります。なお仮差押え・仮処分の実施にあたっては、債務名義を取得している必要はありません。

 

上記手続きについて、裁判所にて申立てを行って許可された場合、裁判所が定める一定期間だけ時効期間を延長することができます。ただし、なかには債務者によって異議申立てが行われることもあり、これが認められた場合は延長できません。

債務承認

債務承認とは「債務者が債務の存在を認めること」を指します。

債務承認が行われた場合、時効期間は振り出しに戻ります。これは時効期間の経過状態を問わず適用されるため、すでに時効期間を過ぎている場合でも、債務承認が行われると一から時効をやり直すことが可能です。

 

債務承認に該当するものとしては、主に以下の3つがあります。

 

  • 債務者による同意…債務承認書や支払約束書など、債務の支払いについて取り決めた書類作成に債務者が応じること。
  • 債務者による一部弁済…債務者が債務の一部返済を行うこと。
  • 債務者による支払猶予願…返済延長や減額など、支払猶予の申入れを債務者が行うこと。

商事債権の時効を過ぎても回収できるケース

商事債権の時効は「時効期間が過ぎれば自動的に成立する」というものではありません。

時効期間を過ぎたのち、時効期間が過ぎたことを主張する時効の援用が債務者によって行われることで、はじめて成立します。

 

したがって、たとえ商事債権の時効期間を過ぎていたとしても、債務者による時効の援用が行われるまでに債務承認があれば時効は成立しません。

 

なお時効の援用の方法はどのような形でも問題ありません。書面だけでなくEmailで援用意思を明確にすれば時効援用は認められます。また、援用前に訴訟を提起された場合でも、訴訟手続で援用する旨主張すれば、時効は完成します。

商事債権の時効の対応は弁護士に相談

時効の中断を行う際は、書類作成や裁判手続きなどの対応を不備なく済ませる必要があります。

特に裁判手続きについては、証拠収集や出廷などの対応も必要となるため、場合によっては思わぬ手間・労力がかかることもあります。

 

対応にかかる時間的・精神的負担を減らすためにも、弁護士にサポートを依頼することをおすすめします。弁護士であれば、中断手続きにかかる書類作成だけでなく訴訟時の出廷代理など、債権回収に関する幅広いサポートを依頼することができます。

 

特に「これまで対応したことがない」という場合などは、債権回収に注力している弁護士に依頼することで、自力で行うよりもスムーズな問題解決が期待できます。

まとめ

商事債権については時効期間が原則5年と定められており、なかには例外的に1年2年に定められているものもあります。

 

時効期間が迫っている場合は、請求・差押え(仮差押え・仮処分)・債務承認などの対応を行うことで、時効を中断することができます。また時効期間を過ぎていても、債務者による援用前に承認を得られれば、回収可能です。

 

しかし対応にあたっては、書類作成や裁判手続きなどを不備なく済ませる必要があり、場合によっては思わぬ手間・労力がかかることもあります。弁護士であれば、書類作成や出廷代理など債権回収に関する幅広いサポートが望めるため、特に初めて対応を行う場合などは依頼することをおすすめします。

 

債権回収は弁護士を通し催促してもらうことで、今まで応じる気がなかった相手も、すぐに対応してくれることがあります。弁護士が行ってくれる具体的なことや解決事例を紹介します。

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