レピュテーションリスク(reputation risk)とは、企業に対するマイナスの評価・評判が広まることによる経営リスクです。
レピュテーションという言葉が「評価」や「評判」を意味しているので、それによる危険がレピュテーションリスクとなります。
近年、企業のレピュテーションリスクへの注目度は増しており、その要因は、企業を評価する価値観が変化してきたことが挙げられます。
これまでは財務的な価値、つまりお金を持っている企業の価値が高いとされてきました。
ですが、SNSの普及などにより『社会認知度』が売上や資金調達に影響を与えるようになってきたのです。
この記事ではレピュテーションリスクの事例と、企業がそれを回避する方法をご紹介します。
レピュテーションリスクの事例
現代においては、社員やスタッフの不用意な行動1つで企業の評価が暴落し、破産に追い込まれる事例も存在します。
事例1:アルバイト店員の不衛生な行動でフランチャイズ店が破産した事例
2013(平成25)年8月、宅配ピザ『ピザーラ』の東大和店のアルバイト店員が、厨房のシンクに座り込む、冷蔵庫に身体を入れる、床に寝そべるなどの不適切かつ不衛生な写真をネットにアップした。これがきっかけとなり、同年8月25日には謝罪文を発表する事態となった事例。騒動後も信用回復が追いつかず、2015(平成27)年10月頃には事業停止に追い込まれた。
参考:バイトの不適切写真で謝罪したピザーラのフランチャイズが破産
また、内部告発もレピュテーションリスクです。
事例2:オリンパス社不当会計処理事件
2011年、社員の内部告発と月刊誌のスクープによって、1千億円を超える損失隠しが発覚した事例。また当時の社長はこの問題を調査した結果、取締役会で社長職を解任された。これが大きな注目を浴びる事態となり、オリンパスは第三者委員会を設置し、最終的に損失隠しを認めた上で、取締役が辞任することとなった。
参考:オリンパス不正会計事件の事例研究|千葉商科大学学術リポジトリ
レピュテーションリスクを回避するために知っておくべき事
基本的には、企業の評判はできる高く保つ事が有効だといわれています。当然、悪評は企業にとって問題でしょう。ですが、実は『評価が高すぎる』のも問題なのです。
身の丈に合った評判を得る
例えば、ジャンクフードの栄養バランスが悪かったところで、そのジャンクフードを販売する会社の評価が下がるとは考えにくいです。しかし、健康志向のレストランが提供するコースメニューではそうはいきません。
添加物を主としたメニューであることをそのレストランが隠しており、それが発覚してしまったとしましょう。多くの顧客は「裏切られた」と感じ、2度とそのレストランには訪れないことは必至です。
添加物を多く含んだレストランは、健康志向であるという身の丈に合わない評判によって、レピュテーションリスクを増大させてしまったのです。
つまり、企業の実情と期待値・評価のギャップが、レピュテーションリスクにつながります。先ほどの内部告発の事例も、企業の評価と実態が伴っていなかったことが原因といえます。
企業の評判を調整する
レピュテーションリスクを調整するためには、企業が現在どのような評価を受けているかを正しく認識する必要があります。そしてその評判に応えるか、身の丈にあった評判に下げなければいけません。
ただし誤解しないでいただきたいのは、評判を下げるというのは、悪評を流すということではありません。多すぎる公約や過大広告など、身の丈に合わない評判を得た原因があるはずです。その原因を取り除くことで、身の丈にあった評価を得ることにつながります。
広報活動を強化する
企業が最も簡単に自社の評価を調整できる方法としては、広報活動を強化することが考えられます。通常、露出が増えれば評価も比例して上がりますし、露出が減れば低下していきます。
もちろん単純な露出量の問題だけではありませんが、現在の企業の評価を知った上で適切な広報活動を行うことは、レピュテーションリスクのコントールに大きな効果があります。
レピュテーションリスクの測定方法
では、企業はどのように自社の評判を知ればよいのでしょうか。
報道調査|大手企業の場合
毎年のように実施されている「働きたい会社ランキング」「ブラック企業ランキング」などの調査結果も、自社の世間的評価を知る大きな指標です。
大手企業であれば必ず名前を連ねることになりますので、比較的簡単に自社評価を知ることができます。
アンケート調査|中小・ベンチャー企業の場合
顧客・株主・取引先などへのアンケートなども、企業の評価を知る手段の1つです。世間が自社をどう思っているのか、赤裸々な意見を知ることができるでしょう。
顧客や株主は出資先企業の評価が上がることは株価向上に一役買いますので、これから上場を目指す企業は特に、やっておいて損はないでしょう。
まとめ
レピュテーションリスクをコントロールするためには、適切な情報開示をし、組織内外に対して「正直」であることが、何よりも大切であるといえるでしょう。また、社員に対する教育面も徹底する必要があります。
顧客に対し、社員一人ひとりが正しい行いをすることができれば、実情に即した、適正な評価を得ることができるはずです。