会社設立の全手順|必ず押さえる9の準備【弁護士監修】

専門家監修記事
会社設立は5つのステップで進みます。状況に応じて専門家に依頼することで最短1~2週間で設立することも可能です。この記事では、会社設立までの手続きを分かりやすく解説しました。また会社設立代行会社に依頼すべきか、3つのポイントから比較しました。
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
会社設立・新規事業

会社設立のメリットは、対外的な信頼を個人事業主以上に信頼を得やすくなることです。その結果、人材も集まりやすくなりますし、資金面でも調達しやすくなるでしょう。また、会社設立することで、利益が増えても一定の税金支払いで済むため、大きな節税につながります

ただ、会社の設立を決意しても、実際に何から行えばよいかわからないでしょう。会社は早くて1~2週間で設立でき、以下のようなスケジュールで進みます。

長く続く、良い会社をつくるには、初めが肝心です。この記事では、具体的な手続きや注意点などについてご紹介します。

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1:会社設立の事前準備を行う

会社を設立するにあたり、以下の9つの事前準備が必要です。

  1. 会社の名前(商号)を決める
  2. 事業目的を設定する
  3. 本店所在地を決める
  4. 法人用の印鑑を準備する
  5. 事業年度を定める
  6. 機関設計と役員を決める
  7. 資本金の額を決める
  8. 資金を集める
  9. 設立費用を確保する

準備の詳細についてご紹介します。

1:会社の名前(商号)を決める

会社名(商号)の決定は、法務省が定めたルールに従って行う必要があります。

会社の名前を決めるルール

  • 定められた文字・記号』だけを使う
  • 株式会社の文字を入れる(合同会社の場合は合同会社の文字を入れる)
  • 同一の所在場所に同一の商号(同じ名前の会社)がないこと
  • 会社の一部門を示す文字は使わないこと(銀行業でないのに銀行という文字を入れるなど)
  • 実績のある有名企業と誤認されるような名前を使わない(例:NTT〇〇など)

会社の名前は今後の事業展開に大きく影響する重要な要素です。後から変更するには費用と手間がかかるので、慎重に検討しましょう。

2:事業目的を設定する

事業目的とは、会社が何をやって利益を出すかを明らかにすることです。会社設立の必要書類に必ず記載しなければいけない項目になります。

なお、会社は定款(会社設立時に法務省に提出する書類)に記載されていない事業を行うことはできません。後から事業を追加する場合には、株主総会で決議をした後に法務省に届け出を出す必要があります。

現在の会社法では、事業目的はいくつでも設定することができるので、すぐ着手する事業だけでなく将来的にやりたい事業内容も考えておきましょう。

3:本店所在地を決める

本店所在地とは、会社の本店が存在する場所を意味します。これも会社設立をする際に欠かせない情報の1つです。

本店所在地に指定できる場所には特別な制限はありません。一般的には、店舗や事務所の住所を指定しますが、創業者の自宅や賃貸物件などを本店所在地にすることも可能です。

ただし、物件によっては事務所としての利用が認められないこともあるので、アパートやマンションの住所での登録を考えている場合には、事前に大家さんや管理会社に確認をとっておきましょう。

4:法人用の印鑑を準備する

会社設立の申請と設立後の会社運営をするためには、会社名義の印鑑が必要です。以下の4種類の印鑑を準備しておきましょう。

会社の設立と運営に必要な印鑑

会社実印

法務局に登記(会社設立)の申請をする際に必要

会社銀行印

銀行の法人口座や手形と小切手の振り出しに必要

角印

領収書や請求書など、代表品を押すほど重要じゃない書類の押印に必要

ゴム印

契約書や署名欄を自筆サインでなく押印で済ませる際に必要

会社設立の手続きに必要になる印鑑は会社実印だけですが、その他の印鑑も準備しておくことで、会社の運営開始までの期間を短縮できます。どの印鑑もいずれ必要になるものなので、早めに用意しましょう。

:事業年度を定める

事業年度とは、決算をするために設けられた一定の期間のことです。例えば、事業年度の始期を8月1日に設定した場合には、決算日は7月31日になります。

一般的には、4月1日が事業年度に設定されるケースが多いですが、事業年度の決定方法にルールはありません。好きな日に設定することが可能です。

会社の繁忙期を避けたり、資金繰りがよい時期にしたりなど、ご自身の事業の都合に合った決算日にすることをおすすめします。

:機関設計と役員の決定

機関設計とは、取締役や監査役などを誰に任せるかを決定して、会社の意思決定を誰がどのように行っていくかを定めておくことです。会社設立時の申請書類には、この機関設計を記載する必要があります。

なお、会社を1人で設立する場合には、起業家がすべての役職を担うことになるので、役職ごとの雇用は必要ありません。

:資本金の額を決める

2006年の会社法改正により、会社設立に必要な資本金の最低金額が撤廃されました。現代では資本金が1円でも会社設立をすることが可能ということです。

しかし、開業後の会社運営や取引時の信用のことを考えると、資本金1円での会社設立は現実的ではありません。また、業界によっては資本金が許認可の審査基準に設定されている場合もあります(例:建設業:500万円以上)。

そのため、会社設立時の資本金の額は100〜300万円に設定する会社が多くなっています。経営にはさまざまなコストが必要となるので、それらを事前に把握してご自身の事業に必要な資本金を判断しましょう。

:資金を集める

資本金が決まったら、資金を集めます。集め方には、以下のような方法があります。

  • 株主を募り、資本金を集める
  • 投資家を募り、資金を集める

持分会社の場合、合同・合名・合資によって誰がどのくらい出資するのかが決定します。ビジネスパートナーとよく話し合い決定しましょう。

株式で資金を集める方法

株式で資金を集める場合、基本的に以下のような流れで売買契約を行います。

  1. 発起人総会で株式の発見に関する決議を行う
  2. 株式を引き受けて(買って)くれる人と売買契約を結ぶ
  3. 買ってくれる人からお金が振り込まれるので株式を交付する(スケジュールだと「5の事業年度を定める」の部分に当たります)

一般的に株券は発行しないことがほとんどです。契約が成立した際は、契約者を名簿(株主名簿)にまとめ、記録しておきましょう。

【弁護士監修|株主名簿の作成例】

※実際に株券を発行した場合は、発行番号を記載しましょう。

投資家を募り資金を集める方法

投資家を募り資金を集める方法については、ネット上でのクラウドファンディング異業種交流などで直接投資家に会い、出資の契約をしてもらう方法などがあります。

契約の際は、業績が悪化した場合の対応などもしっかり取り決め、口頭ではなく書面に残しましょう。この契約では大きな金額が動くため、契約後のトラブル回避のためにも、相手がどのようなことを言っていても弁護士に仲介してもらうか、契約書のリーガルチェックを受けることをおすすめします。

9:設立費用を確保する

資金とは別に、会社を設立する際、法務省や公証役場などに支払わなければならない費用があります。自身ですべての手続きを行う場合でも、最低25万円以上はかかってしまうでしょう。あらかじめ確保しておくようにしましょう。

2:定款を作成する

事前準備が整ったら定款を作成します。

定款とは?

定款とは、会社を運営する上の土台となる規則を指し、これに沿って運営することになります。就業規則が会社の法律であれば、定款は憲法ともいえるでしょう。

そのため定款の認証後、内容を変換する際は株主総会を開き、議決権の3分の2以上の賛成を獲得しなければならないほど、重要な規則になります。

記載すべき内容

記載すべき内容には、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つに分類され、それぞれ以下のような内容を記載することになります。

絶対的記載事項

  • 商号(会社の名前)
  • 事業目的
  • 本店の所在地
  • 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
  • 発起人の氏名及び住所
  • 発行可能株式総数 など

相対的記載事項の例

  • 株式譲渡制限の設定
  • 取締役等の任期の延長
  • 株主名簿管理人の設定
  • 株式の発行数
  • 株主総会の通知と招集期間の短縮
  • 取締役会、会計参与、監査役などの設置 など

任意的記載事項の例

  • 株券再発行の手続き方法
  • 定時株主総会の招集時期
  • 取締役や監査役員の人数
  • 役員報酬の決定方法
  • 議決権の代理代行者
  • 取締役会の招集者 など

定款の作成は非常に重要で、記載方法を間違えると思わぬトラブルが発生し、会社に大きな損害を与える可能性があります。作成の際は、弁護士と相談しながら作成することをおすすめします。

定款の記載例

定款の記載例を紹介します【定款の記載例を見る】。

定款のテンプレートは、行政書士や司法書士からももらうことができますが、その内容が必ずしもあなたの会社にあっているとは限りません。そのため、会社に合うように内容を変更していく必要があります。具体的にどのように変更していくのかについては、弁護士に相談することがベストです。

3:公証役場で定款認証してもらう

定款を作成したら、定款で定めた会社の本拠地を管轄する公証役場で認証してもらいましょう。これにより、定款が正当な手続きにより作成されたことを証明することができます。費用や書類などは以下の通りです。

なお、合同会社などの持分会社の場合は定款の認証が必要ありません

必要書類

定款を認証してもらうためには、以下書類をご持参ください。

  • 定款の原本3通
  • 発行後3ヶ月以内の発起人の印鑑登録証明書

認証にかかる費用

定款の認証にかかる最低費用は合計で約12万円になります。くわしい内訳は以下の通りです。

  • 認証手数料:5万円
  • 謄本手数料:1枚250円(相場:2,000円)
  • 印紙代:4万円(電子定款の場合無料)
  • 払込保管証明書:約2万5000円
  • 代表者印の作成費用・印鑑登録証明書代がかかります。

4:法務局に登記申請をする

定款認証が終了したら、定款で定めた会社の本拠地を管轄する法務局に登記申請を行います。登記申請は、発起人が定めた日、または設立時に行われる取締役の調査完了日から2週間以内に行わなければなりません。

2週間を過ぎた後にも、登記申請を行えますが罰金対象になります。登記完了まで1週間~10日かかります

登記申請に必要な書類

登記申請には、以下の書類が必要になります。

  • 登記申請書:(記載例)またオンラインでも申請可能です。
  • 登記すべき事項をまとめた書類
  • 登録免許税納付用台紙
  • 定款
  • 資本金の払込証明書:支払い後に通帳を記帳し、表紙・1ページ目の見開き・払い込みが記帳されたページのコピーも添付します
  • 発起人の決定書
  • 就任承諾書
  • 取締役の印鑑証明書:3ヶ月以内に発行されたもの
  • 会社の印鑑証明書
  • その他の必要書類:その他、法務局に求められたもの

登記申請に必要な費用

陶器申請には、登録免許税がかかります。これは、会社の資本金の1,000分の7もしくは、15万円のうち高い方です。ほとんどの場合で、15万円になりますが、あらかじめ確認しておきましょう。

5:その他手続きを行う

法務局への申請以外にも、会社を設立する際は、以下のような手続きを行う必要があります。

都道府県・市区町村での手続き

都道府県・市区町村へは事業税務署や地方税に関する届出を行います。基本的には、税務署に提出するものと同じですが、地域によって異なります。

各役場によって提出期限や形式などが違いますので、窓口もしくはHPでご確認ください。

各種保険関係の手続き

会社設立後は、会社の業種や規模に関わらず、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入しなければなりません。また、以下のような保険に加入手続きが必要です。都道府県にある事務センターか本拠地を管轄する年金事務所に郵送もしくは電子申請でお申し込みください。

全国の相談・手続き窓口|日本年金機構

税務署に関する手続き

法人設立届出

・定款・寄付行為・規則又は規約等の写し

・株主など出資者の名簿の写し

・設立時の貸借対照

・源泉所得税に関する届出書

・消費税に関する届出書

青色申告の承認申請書

卸資産評価方法の届出

減価償却資産の償却方法の届出書

有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書

(参考:新設法人の届出書類|国税庁)

提出は、定款でさだめた本拠地を管轄する税務署になります。最寄りを調べたい方は以下の国税庁HPよりお探しください。

全国の税務署一覧

従業員を雇用する場合の手続き

従業員を雇用する際は、たとえ1人でも労災保険の加入が必須です。雇用契約成立後の翌日から10日以内に労働基準監督署に保険関係成立の届出を行いましょう。【全国の労働基準監査署

この他、事業所の規模や従業員の雇用条件によっては、雇用保険、社会保険の加入が必要となる場合もありますので、詳細は労働局や年金事務所に確認してください。

会社設立は代行を依頼すべき?個人と代理の比較まとめ

会社設立を代行してくれる会社や事務所もありますが、実際に個人で行うのと、任せてしまうのどちらがよいのか、費用・期間について比較しました。また、どのような人が代理をしてくれるのか、についてもご紹介します。

代行は自分で行うより安い?費用の比較

ご自身ですべて手続きする場合、最低でも30万円近く必要になります。しかし、代行会社や事務所に依頼することで、20万円もしくはそれ以下で行ってくれるようです。費用だけを考えるとかなの節約につながります。

代行会社がこのような安価で会社を設立できる理由は主に2点あり、電子定款により手数料を抑えられることと、対応範囲が決められているからです。

ただし、2点目には注意しなければなりません。「社設立代行」といっても全てを代行してくれる訳ではなく、例えば定款の認証手続き代行のみであったり、法人登録までであったり事務所によって異なります。

設立までどのくらいかかる?期間の比較

会社設立までは、早くて1週間~で終了します。ご自身で行った場合、初めてのことだらけなので、時間が掛かってしまうケースは多いでしょう。実績のある代行会社や事務所であれば、個人で行うよりスムーズな設立が望めます。

依頼できる専門家と業務内容

会社設立を依頼できるのは、以下のような人です。ただし、それぞれ、対応できることとできないことがあります。どのようなことを依頼できるか表にまとめましたので、参考にしてください。

このように対応できる業務範囲が異なります。ご自身でも会社を設立できますが、場面ごとに最適な専門家に依頼することで、スムーズかつクリーンな会社を設立することができます。

特に、定款作成は一度認証してもらうとその後の変更が大変になります。法的に不備のないものをあらかじめ作るためには、弁護士に相談して作成してもらったり、リーガルチェックを受けたりすることをおすすめします。

まとめ|会社設立チェックシート

会社設立は、

  1. 会社設立の事前準備を行う
  2. 定款を作成する
  3. 公証役場で定款認証してもらう
  4. 法務局に登記申請をする
  5. その他手続きを行う

の5つのステップで行われ、早くて1~2週間で設立可能です。また、代行業者はすべてを代行してもらえる訳ではありませんので、利用を検討している方は、本当に必要かどのような専門家に相談すべきか判断しなければなりません。

なお、設立の際は以下のようなチェックシートを利用し、不備がないようにしましょう。

(引用:会社設立準備チェックシート)

弁護士に相談するメリットとは

弁護士に相談する最大のメリットは、定款を会社の実情に合わた最適なものに作成してもらえる点です。また、設立後に向けて就業規則や契約書のテンプレ―トを作成してもらえばで、スムーズに経営をスタートさせることができます。

定款や株取引に関する契約書類、設立後の契約書・就業規則の作成でお悩みの方は、お気軽に弁護士事務所にご相談ください。

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