働き方改革の後押しもあり、最近職種を問わず、テレワーク(リモートワーク)勤務を導入する企業が増えてきています。
増えてきているとはいえ、まだまだ導入は一部の企業に留まっているのが現状ですが、今後は導入する企業がもっと増えていくだろうと個人的には予想しています(筆者自身も福岡で完全リモートワークをしながら、地域問わず全国の企業様をクライアントとしています)。
ただ、新しい働き方となるので、導入する場合にはメリットだけでなくデメリットも生じるのも事実でしょう。そこでこの記事では、テレワークを導入する上でのメリット・デメリットについて考えてみたいと思います。
テレワーク導入の9つのメリット
テレワークを導入することで得られるメリットは以下が考えられます。
コスト削減
テレワークを導入することで、企業は通勤費やオフィスの賃料、光熱費などの運営コストを削減できます。従業員が通勤しないため、交通費の支給が不要となり、オフィスの縮小やフリーアドレス制の導入により、固定費を削減することが可能です。これにより、企業はより効率的な資金運用ができ、財務的な負担を軽減できます。
業務効率の向上
テレワークは、従業員が自宅や好きな場所で働けるため、通勤時間を削減し、より集中して業務に取り組むことができます。自分のペースで作業ができるため、業務効率が向上し、生産性の向上につながります。また、オンラインツールの活用により、業務プロセスの効率化も促進されます。
ワークライフバランスの改善
テレワークは柔軟な働き方を可能にし、従業員のワークライフバランスを改善します。通勤時間がなくなることで、家庭や個人の時間をより多く確保でき、ストレスの軽減や生活の質の向上につながります。これにより、従業員の満足度が向上し、離職率の低下にも寄与します。
環境負荷の軽減
テレワークの普及は、通勤による交通量の減少をもたらし、結果として環境負荷の軽減につながります。特に都市部では、交通渋滞の緩和や大気汚染の改善が期待され、地球環境への配慮が促進されます。
人材の確保と維持
地理的な制約がなくなることで、企業は広範囲から優秀な人材を採用することができます。これにより、多様な人材の確保が容易になり、企業の競争力が向上します。また、柔軟な働き方により、従業員の定着率も向上します。
緊急時の事業継続
テレワークは、自然災害やパンデミックなどの緊急時にも事業を継続させるための有効な手段です。従業員が自宅から安全に業務を行えるため、企業のレジリエンスが向上し、リスク管理の強化につながります。
従業員の幸福度向上
テレワークは、従業員が自分に合った働き方を選択できるため、幸福度が向上します。これにより、モチベーションの維持やパフォーマンスの向上が期待されます。従業員の満足度が高まることで、企業文化の向上にも寄与します。
採用において地域を問わず優秀な人材を確保できる
これは既存社員に対するメリットではありませんが、新しい人材を採用する上で、完全にテレワークのみで完結する業務として募集するのであれば、自社から通える範囲の求職者以外も広く採用のターゲットとすることが可能です。
昨今は、慢性的な人手不足による採用難が多くの企業で問題になっていると思いますが、まだそう多くない完全在宅勤務の求人として募集をかければ、優秀な人材を競合することなく確保することができるでしょう。
育児・介護による人材の流出を避けることができる
既存社員については、自宅で仕事をすることが可能なテレワークを導入することで、育児・介護などを理由とした離職を未然に防ぐことが可能です。育児や介護は(家庭の状況にもよりますが)自宅にいる必要があるため、オフィスには出社できないものの、常に手一杯でほかに何もできない、というわけではないことが多いものです。
テレワークを導入することで、このような人材が出社できないという理由で、やむなく退社してしまうのを避けることができます。
テレワークのデメリット6つ
一方、テレワークを導入することで以下のようなデメリットも考えられます。
情報漏洩のリスク
テレワークでは、自宅やカフェなどの公共の場で業務を行うことが多く、情報漏洩のリスクが高まります。特に、外部でのパソコンの使用においては、盗難や不注意による情報流出の危険性が指摘されています。企業はセキュリティ対策を強化し、従業員に適切なリスク管理を促す必要があります。
セキュリティ管理が難しい
また、テレワークで働く社員は、会社でPCを貸与してない場合は自分のPCとネット環境を利用します。その場合、情報漏洩などセキュリティ面での懸念がどうしても残ってしまいます。
テレワークで働く社員には機密情報を扱わせない、情報セキュリテイ規程を作成し、PCにセキュリティソフトを入れることを義務付ける、公共Wi-Fiなどセキュリティの低いネットワークへの接続を禁じるなど、のルールを別途設ける必要が生じることになります。
コミュニケーション不足
まず、テレワークで働く社員とのコミュニケーションが難しいことが挙げられます。日常的にWeb会議やチャットなどのコミュニケーションツールが社内で活用されている企業なら問題ないと思いますが、そうでなければ、出社しない社員とどうコミュニケーションを取るのかは、難しい問題となります。
これにより、チームワークの低下や孤独感を感じる従業員が増える可能性があります。企業はオンラインツールを活用して、コミュニケーションを促進し、チームの一体感を維持する努力が求められます。
勤怠管理の難しさ
テレワークでは、従業員の勤怠管理が難しくなります。従来の方法では正確な勤怠記録が困難であり、新たな管理システムの導入が必要です。企業は、パソコンのログイン・ログアウト時刻の記録やオンラインでのタイムスタンプを活用するなど、客観的な勤怠管理を行う必要があります。
評価の難しさ
テレワークでは、従業員の働きぶりを直接確認することが難しく、公正な評価が困難になります。これにより、業務プロセスの評価がしにくく、人材育成にも影響を及ぼす可能性があります。企業は、成果主義に基づく評価制度の導入を検討する必要があります。
運動不足による健康リスク
テレワークでは通勤がなくなることで運動不足になりがちです。長時間の座り作業により、体重増加や筋肉量の低下、生活習慣病のリスクが高まる可能性があります。従業員は意識的に運動する取り組みを行い、健康維持に努める必要があります。
テレワーク導入のデメリットを解消するための対策とは
情報漏洩対策の強化
テレワークにおいて情報漏洩のリスクを軽減するためには、セキュリティ対策を強化することが不可欠です。具体的には、VPN(仮想プライベートネットワーク)の導入により、安全な通信環境を確保します。
また、データの暗号化や二要素認証の導入を行い、アクセス制御を強化します。さらに、従業員に対して定期的なセキュリティ教育を実施し、情報漏洩のリスクについての認識を高めることも重要です。
これにより、従業員が自宅や公共の場で作業を行う際にも、企業の機密情報が適切に保護されるようになります。
勤怠管理システムの導入
テレワークでは従業員の勤怠管理が難しいため、専用の勤怠管理システムを導入することが推奨されます。パソコンのログイン・ログアウト時間を自動で記録するシステムや、オンラインでのタイムスタンプ機能を活用することで、正確な勤怠管理が可能になります。
これにより、従業員の勤務状況をリアルタイムで把握できるため、管理者の負担が軽減されるとともに、従業員の自己管理能力の向上にもつながります。
コミュニケーションツールの活用
テレワーク中のコミュニケーション不足を解消するために、ビデオ会議やチャットツールを積極的に活用します。定期的なオンラインミーティングを設定し、チームメンバーとの情報共有を促進します。また、非公式なコミュニケーションの場を設けることで、従業員間の親睦を深め、孤独感を軽減することができます。これにより、チームの一体感が向上し、業務の効率化にも寄与します。
適切な作業環境の整備
テレワークの生産性を向上させるためには、従業員が快適に作業できる環境を整えることが重要です。企業は、従業員に対して必要な設備やツールを提供し、自宅でもオフィスと同様の作業環境を整える支援を行います。
例えば、デュアルモニターや快適な椅子、デスクなどの提供を検討します。これにより、従業員は集中して業務に取り組むことができ、生産性の向上が期待できます。
- テレワークで利用する機器については、タブレットのレンタルなどを活用するのもおすすめです。
モチベーション維持のための施策
テレワークでは、従業員のモチベーション維持が課題となることがあります。これを解消するために、目標管理制度を導入し、成果に基づく評価を行います。また、定期的なフィードバックを通じて、従業員の成長を支援し、モチベーションを高めます。さらに、オンラインでの社内イベントや研修を実施し、従業員のスキルアップを図ることも効果的です。
健康維持のためのプログラム
テレワーク中の運動不足を解消するために、企業は健康維持プログラムを提供します。例えば、オンラインでのフィットネスプログラムやヨガクラスを開催し、従業員が自宅でも気軽に参加できるようにします。また、健康診断やメンタルヘルスサポートを定期的に実施し、従業員の健康を総合的にサポートします。これにより、従業員の健康維持と生産性の向上が期待できます。
人事評価制度の見直し
テレワークでは、従業員の業務評価が難しくなるため、人事評価制度の見直しが必要です。成果主義に基づく評価制度を導入し、従業員の成果や貢献度を適切に評価します。
また、業務プロセスの透明性を高めるために、定期的な進捗報告を求めるとともに、目標設定を明確にします。これにより、従業員のモチベーションを維持し、企業全体の生産性向上につながります。
まとめ
働き方改革を実現し、多様な社員を活用するためには、テレワークの導入は待ったなしといえるでしょう。「デメリットが懸念されるから導入しない」ではなく、「デメリットをいかにして解消していくか」という姿勢が、これからの企業には求められるはずです。
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