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弁護士執筆記事
人事・労務

社員を懲戒処分にする行為はどこまで?(パワハラ、無断欠勤、社内不倫など)

2018.10.31
懲戒処分とは、会社が自社の社員に対して科す処分のことです。しかし、どこまでの範囲であれば社員を懲戒処分することができるのでしょうか。この記事では、懲戒処分について具体例を交えて解説します。
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弁護士 松永 大輝
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「○○の事件を起こした有名企業や行政機関の従業員が懲戒処分された」というようなニュースを、しばしば耳にする機会があると思います。

懲戒処分とは、会社が自社の社員に対して科す処分のことですが、どこまでの範囲であれば社員を懲戒処分することができるのでしょうか。

この記事では、懲戒処分について具体例を交えて解説します。

何をすると懲戒処分になるのか?

懲戒処分では、「けん責」など注意で終わるものから、「減給」「出勤停止」のようにペナルティを課すもの、「懲戒解雇」として社員としての身分を失わせるものまで、違反の内容により処分方法が異なります。

ただし大前提として、会社が社員を懲戒処分するためには、あらかじめ就業規則などに「何をするとどんな懲戒処分が下されるのか」の根拠が明記されている必要があります。逆に言えば、ルールが存在しない場合は処分の根拠が存在しないため、懲戒に処すことはできない、ということです。

懲戒処分となる行為の対象と処分の重さは、会社ごとに決定されるため、一概に何をするとどんな懲戒処分が課されるか、法律で共通のルールが定められているわけではありません。とはいえ、就業規則に定めさえあれば、どんな懲戒処分も許容される、というわけでもありません。

就業規則は「合理的な」内容として定めることが求められます。したがって、例えば1度遅刻しただけで懲戒解雇とすると就業規則に定められていたとしても、これは合理性を欠くといえるでしょう。

そこで、以下では具体的なケースを挙げ、一般的にはどのような懲戒処分が科され得るのかを解説します(いずれも前提として、それぞれの行為について懲戒処分が科される旨が就業規則に明記されているものとします)。

部下にパワハラを行った上司

まずは、部下にパワハラを行った上司のケースです。

この場合、どの程度のパワハラがあったかによって懲戒処分の重さが異なってくるでしょう。度を超える叱責が数回あった程度であれば、けん責など軽い処分に留めて、再発防止を徹底させるのが妥当な処分といえます。

ただし、何度指導や懲戒処分を行っても、パワハラが繰り返されるようであれば、懲戒解雇も見据えた対応が必要になるでしょう。

なお、傷害に至るような重大なパワハラ行為であれば、一発で懲戒解雇処分を科すことも可能です。

無断欠勤をした従業員

次は社員が無断欠勤をしたケースです。

経営者の立場からすれば、「連絡もせずに休むなんて当然クビだ」と思ってしまうかもしれませんが、1度無断欠勤した事実のみをもって懲戒解雇するのは、合理性を欠きます

まずは減給、もしくは出勤停止処分に留め、その上で指導したにもかかわらず無断欠勤が直らないようであれば、そこで懲戒解雇を検討することになります。

社内不倫の当事者同士

最後に社内不倫のケースですが、不倫をしているという事実だけで懲戒処分を行うのは困難です。なぜなら、会社の運営に支障が出ていない限り、個人の行為に会社が口出しする権利はないからです。

ただ、社内で就業時間中に不倫行為をしていたり、当事者の片方が無理矢理不倫を強制されていたりするような状況であれば、前者は職場秩序を乱す行為、後者はセクハラ行為として懲戒処分を科すことは可能です。

まとめ

懲戒処分を検討する上で最も重要なのは、処分を科す根拠が就業規則などに明記されていることです。そのため、就業規則にはあらゆるケースを想定し、「このような場合は懲戒に該当する」という旨を具体的に定めておく必要があります。

どのように定めるべきか迷ったり、定めはあるがどんな処分が適当であるか判断が難しかったりする場合には、弁護士や社労士などの専門家に相談するとよいでしょう。

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執筆者
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Ad Libitum(フリーランス人事)
松永 大輝
【社労士有資格者】ベンチャーから上場企業まで様々な業種・規模の顧問先を担当。フリーランスの人事として現在はスタートアップ企業の採用・寄稿など幅広い活動を行う。http://ad-libitum.jp/
編集部

本記事は企業法務弁護士ナビを運営する株式会社アシロ編集部が企画・執筆いたしました。

※企業法務弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。

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