飲食店破産の現状と破産手続きの流れについて解説!

専門家監修記事
毎年多くの飲食店が破産しています。ですが、個人経営の場合などは、破産に関する知識はないのが普通でしょう。この記事では、「法人・個人経営それぞれの事業破産の仕方」や「必要な書類」などをご紹介します。
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
事業再生・破産・清算

株式会社東京商工リサーチによる調査によると、飲食店の破産は、一時的には落ち着いたものの、2017年には前年を大きく上回る結果となりました。

これは、仕入価格の高騰や人手不足による人件費の増加など総合的なコストアップが要因として考えられます。

ここでは、飲食店において経営の悪化が招く会社破産の現状と、飲食店における破産手続きの流れについて詳しく解説します。

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2017年飲食店破産の現状について

冒頭でもお伝えしたように、株式会社東京商工リサーチによる調査によると、2017年の1月〜12月の「飲食業」倒産は、766件に達し、これは前年比19.8%の増加となりました。

なお、この場合の飲食業とは「レストラン」、「専門料理店」、「居酒屋」、「ビヤホール」、「喫茶店」、「宅配飲食サービス業」、「持ち帰りサービス業」になります。

また、飲食業倒産水準は、2014年(768件)以来、3年ぶりの750件超となったそうです。

【参考】:2017年「飲食業」の倒産状況|株式会社東京商工リサーチ

負債額1億円未満が9割という結果に

株式会社東京商工リサーチの調査を参考に、飲食店における破産現状をより詳しくみていきましょう。

同調査によると、2017年1月〜12月の飲食店破産における負債総額は、420億1,000万円(前年比24.7%増)となり、2年連続で前年を上回る結果となりました。

このうち、負債額が10億円以上の大型倒産は前年同数の4件のみで、負債総額1億円〜5億円未満が75件(前年比50.0%増、前年50件)と大幅に増加し、負債総額1億円未満が680件(構成比88.7%)と約9割を占める結果となりました。

負債総額から見ると小規模倒産がほとんどを占めるというわけです。

業種別の飲食店破産事情

続いて、2017年の業種別飲食店の破産事情をご紹介します。業種別では、「食堂やレストラン」が、203件、日本料理や中華料理、フランス料理店などの「専門料理店」が203件と最も多い結果に。

次に、居酒屋などを含む「酒場、ビヤホール」が116件、「喫茶店」が59件となっていっています。

さらに、「宅配飲食サービス業」が42件、「持ち帰り飲食サービス業」が23件です。

飲食店破産の原因

飲食店破産の原因は、株式会社東京商工リサーチの調査を引き続き参考にすると、最も多いのが「販売不振」。621件と全体の8割となったそうです。

ついで、「事業上の失敗」が42件、さらに「赤字累積」が34件です。

飲食店は、参入するのは容易ですが、顧客の争奪戦も激しく、安定した売り上げをあげること自体が非常に難しい業態です。

【参考】:2017年「飲食業」の倒産状況|株式会社東京商工リサーチ

飲食店破産手続きの流れについて

2017年の飲食店の破産事情を把握できたところで、ここでは飲食店破産手続きの流れについてご紹介します。

なお、ここで紹介する破産手続きは、個人店経営ではなく、法人の場合の手続きです。

①まずは弁護士に相談

正式な依頼をする前に法律事務所に相談をしましょう。

その際、企業事業破産の実績がある法律事務所を選ぶとよいでしょう。

法律相談では、破産の手続きはどのように進むのか、破産以外の事業再生方法はないのかなど、詳細に説明をしてくれます。

初回無料にて相談できる法律事務所も多く、有料の場合には30分5,000円程度で相談できます。

破産手続きの依頼

法律相談にて、飲食店破産にかかる費用や時間、具体的な流れについて納得ができたら、正式に依頼をしましょう。

まずは弁護士と委任内容を記した「委任契約書」を交わし、「委任状」を送付します。

委任状を受け取った弁護士は債権者に「受任通知」を発送します。

受任通知とは、債権者に対して破産の申し立てをする旨を連絡する通知のことです。

この受任通知が債権者に発送されると、今後債権者は債務者(依頼者)に対して取り立てができなくなり、債務者と直接やりとりできない状態となります。以降すべての窓口は代理人弁護士が担当してくれます。

受任通知を債権者に発送する段階で、金融機関からの取り立てなどから解放され、飲食店経営者の精神的な負担も軽くなることでしょう。

③書類作成・残務整理・従業員の解雇

破産申立てに必要な「申立書」や「添付書類」を準備します。

裁判所に提出する書類に関しては、すべて代理人弁護士が担当するので、心配はありません。

この段階で会社の残務整理や従業員の解雇を行ないます。

従業員の解雇は、経営者にとっても苦渋の決断です。この場合、代理人弁護士とも慎重に協議の上、従業員にどのように説明するかを考えましょう。

また、従業員への未払い賃金がある場合には、どのような対応が必要か代理人弁護士と相談しておきます。

裁判所へ破産申立

この段階に来て、裁判所へ「破産申立」を行い「予納金」という手続き費用を納めます。

なお、「破産申立」をする際は、依頼者が裁判所へ行く必要はありません。裁判所へは、代理人弁護士が行き手続きを行います。

破産手続き開始決定・破産管財人選任

裁判所より「破産手続きの開始決定」がなされ、破産管財人を選任します。破産管財人とは、会社と全く関係のない第三者の弁護士が任命されます。破産者と債権者の中立な立場にある人物で、破産者の財産の調査や管理、換価処分などを行い、債権者に弁済や配当を行うことが業務です。

この時点で、経営者は財産の処分や管理を行えなくなり、債権者も財産の差し押さえ、強制執行ができない状態になります。

債権者は「破産手続き開始通知」受けて、自らが持つ債権を債権届書に記載し、裁判所に提出します。

破産管財人と打ち合わせ

依頼者は代理人弁護士・破産管財人と三者で会社の資産や負債額の状況等を説明し、打ち合わせを行います。

破産管財人は会社の財産を処分、売却し現金化します。

債権者集会

通常、破産手続きの開始決定から約3ヶ月後に裁判所で債権者集会が行われます。

債権者集会は、裁判官や破産管財人、破産申立代理人弁護士、債務者、債権者などが出席し、債権者に破産管財人から会社の資産状況等を報告します。

債権者集会は、1回で終了するときもあれば、2回目が開催されることもあります。

⑧債権者への配当

破産管財人は、会社財産を売却、処分した資金で、税金や社会保険料などの未払い賃金を支払います。

それでも現金が余る場合には、一般の債権者に配当を行います。なお、現金が残らない場合は、配当は行われません。

終結

無事、配当手続きまで完了すると破産手続きは終結します。

個人経営の飲食店の破産手続きの流れ

飲食店は、法人ではなく個人事業主も多く、その場合の破産手続きは、法人とは異なり「個人の自己破産」となります。免責手続きも平行して行われます。

次に個人事業主・自営業者の飲食店破産手続きについて詳しくご紹介します。

必要書類・費用を用意する

個人経営飲食店の場合の破産手続きは、個人の破産と、事業主としての破産、両方の側面を持っています。

個人の自己破産とは異なり、法人のように厳格な基準に則って行われます。

具体的な必要書類や費用から見ていきましょう。

個人経営の飲食店破産に必要な書類

  • 破産手続き開始及び免責申立書
  • 陳述書
  • 債権者一覧表
  • 資産目録
  • 家計の状況
  • 住民票
  • 戸籍謄本
  • 給与明細書の写し
  • 源泉徴収票の写し
  • 市民税、県民税課税証明書
  • 預金通帳の写し
  • 賃貸契約書の写し
  • 不動産登記簿謄本
  • 退職金を証明する書面
  • 車検証の写し
  • 自動車の査定書
  • 保険証券の写し
  • 保険解約返戻金証明書
  • 年金等の受給証明書の写し

以上が、個人経営の飲食店破産にて必要となる破産手続きの関係書類の目安となります。ぜひ参考にしてください。

また、個人経営の飲食店破産の申立手数料は、1,500円分の収入印紙や裁判所により、郵便切手などの費用がかかります。

裁判官との面接

前述した必要書類を用意したら、裁判所に提出します。

必要書類は代理人弁護士の指示のもと一緒に準備を進めますので、心配はありません。

書類を裁判所に提出すると、その約1ヶ月後に裁判所にて「裁判官と面接」が行われます。

この面接では、どうして飲食店が自己破産に至ったかを質問されます。

裁判官との面接と聞くと不安に感じるかもしれませんが、あまり身構える必要はありません。

なお裁判官との面接は、債務者に代わり代理人弁護士が受けることも可能です。

この場合、債務者は裁判所へ行かなくてもよいので、ご安心ください。

裁判官との面接の際に、裁判所に当日持っていくものは次の通りです。

  • 申立書のコピー
  • 印鑑
  • 筆記用具
  • 身分証明書

裁判官に聞かれる内容としては、次の通りになります。

  • 債務超過による支払い不能に陥った理由
  • 債権者数や借金の総額
  • 債権者一覧以外からの借り入れの有無

詳しくは、事業再生や破産に詳しい弁護士事務所へ相談してみてください。

破産(管財)手続きの開始の決定

裁判官との面接がスムーズに進めば、約1週間以内に破産手続きの開始決定がなされます。

基本的に本件は個人による自己破産ではなく、あくまでも個人事業主による破産事案ですので、個人の自己破産のように「同時廃止手続き」の選択肢はなく、「管財事件」として扱われます。

この点が、個人の自己破産事案とは性質の異なるところでしょう。

管財事件とは、裁判所によって破産管財人が選任され、破産管財人が破産者の財産を調査・処分・売却し、債権者に分配する破産手続きのことです。

法人の飲食店破産手続きとは異なり、個人事業主や自営業者の破産手続きは、「事業を行っていた店舗」や「店内にある価値のあるもの」、「事業とは関係のない自宅や車」なども換価処分の対象となってしまう場合もあります。

管財事件での破産手続きの場合は、破産管財人の選任と共に、予納金を納める必要があります。

免責手続きの開始

破産開始決定から約2ヶ月後に、スムーズに進めば「免責手続きの開始」が行われます。

管財人との面接

免責審尋といって、免責の不許事由が見つかると管財人と面接を行います。

免責審尋には債務者も必ず出席し、なるべく1回の面接で終了するように手続きが進みます。

また、管財人との面接が終了した後6ヶ月以内に債権者集会が行われます。

債権者集会

債権者集会とは、債権者に対して、破産管財人による飲食店の財産状況の報告や破産に至った理由を開示し、債権者の意見交換などを行う場になります。

債権者集会は、1度で終了する場合もありますが、複数回行われることもあります。

免責の確定

免責審尋から、約1週間以内に裁判所から「免責許可決定」が出され、借金の返済から解放されることとなります。

また、このタイミングにて破産者の住所や氏名が官報に掲載されます。

さらに、免責許可決定から約1〜2ヶ月後に免責許可決定が確定し、正式に借金を返済する必要がなくなります。

破産の悩みは弁護士に相談するのがおすすめ

飲食店の破産手続きは、法人によるものなのか、個人事業主や自営業者によるものなのかによって異なります。

準備するものや流れなど、事業破産に詳しい弁護士に早期に相談しましょう。

事業破産を避けるためにも、できるだけ資金余力のあるうちに相談することをおすすめします。

まとめ

飲食店の事業破産については、法人による破産なのか、個人事業主による破産なのかによって多少手続きが異なります。

また飲食店破産にあたっては事業破産に詳しい弁護士の介入が必須です。ぜひ一度、債務状況等を事前相談してみましょう。

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