コンプライアンス違反は倒産のきっかけになる恐れも|企業が取るべき適切な対策とは

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コンプライアンス違反が発覚した場合、売上の減少や損害賠償などにより、企業が倒産に追い込まれてしまうこともあります。コンプライアンス違反が倒産に至る原因や予防策、さらにコンプライアンス違反により倒産しそうになった場合の対処法などを解説します。
ゆら総合法律事務所
阿部由羅
執筆記事
事業再生・破産・清算

コンプライアンス違反が発覚した場合、売上の減少や損害賠償などにより、企業が倒産に追い込まれてしまうこともあります。コンプライアンス違反による倒産の原因をよく理解したうえで、倒産リスクを回避するためにも、徹底したコンプライアンス強化に取り組みましょう。

万が一『コンプライアンス違反で倒産しそうになったら、早めに弁護士へ相談』することをお勧めいたします。この記事では、コンプライアンス違反が倒産に至る原因や予防策、さらにコンプライアンス違反により倒産しそうになった場合の対処法などを解説します。

この記事に記載の情報は2024年05月25日時点のものです
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2020年度のコンプライアンス違反による法的倒産は182件

企業のコンプライアンス違反は、ブランドイメージの毀損による売上低下や損害賠償などにより、倒産に繋がる危険性を秘めています。まずは、2020年の帝国データバンクによる調査データを用いて、コンプライアンス違反による企業倒産の状況を概観しましょう。

帝国データバンクの調査によると、2020年におけるコンプライアンス違反が判明した企業の法的倒産は、182件とのことです。

参考:コンプラ違反倒産、9年ぶり200件割れ~労基法違反など「雇用」の件数増加~|株式会社帝国データバンク

引用元:コンプラ違反倒産、9 年ぶり 200 件割れ 〜労基法違反など「雇用」の件数増加〜

コロナ対策融資や給付金などの効果により、前年比では43件の減少となっていますが、依然としてコンプライアンス違反に関連する倒産の件数はかなりの数に上っています。

倒産に繋がる主なコンプライアンス違反の内容

前掲の調査結果によれば、法的倒産をした企業におけるコンプライアンス違反の内容として、件数が多いものは以下のとおりです。

(以下、件数は前掲の調査結果に基づきます)

粉飾決算

2020年度の法的倒産企業のうち、粉飾決算が判明したのは57件でした。粉飾決算は経営陣の逮捕に直結するほか、株価の暴落等によって資金調達が難航し、倒産に繋がるケースが多いと考えられます。

資金使途不正

2020年度の法的倒産企業のうち、資金使途不正が判明したのは26件でした。会社の資金を不正に流出させたり、横領したりする行為が「資金使途不正」として分類されています。

粉飾決算と同様に、資金使途不正は会社の財務基盤に対する信頼を揺るがす行為です。経営陣の逮捕・資金調達の難航などにより、資金使途不正は、倒産に繋がるリスクが大きいコンプライアンス違反の類型といえるでしょう。

業法違反

2020年度の法的倒産企業のうち、業法違反が判明したのは23件でした。無許可営業や重大な行為規制違反が発生すると、監督官庁が行う行政処分等によって、即業務停止に追い込まれる可能性があります。

業務停止になってしまえば、キャッシュフローがストップするので、倒産の危険性はきわめて高いといえるでしょう。また、一度業務停止処分を受けた企業が、再び取引先などの信頼を回復することは容易ではありません。そのため業務停止期間中の倒産を回避できたとしても、その後業績が伸び悩み、結局倒産に追い込まれてしまう事例も多いと考えられます。

雇用関係

2020年度の法的倒産企業のうち、雇用関係のコンプライアンス違反が判明したのは20件でした。雇用関係のコンプライアンス違反は、2017年以降件数が増加しています。

その背景として、同年より厚生労働省が開始した、労働基準法等に違反した企業の公表との関係が指摘されています。特に従業員の数が多い場合、一部の従業員との間で生じたトラブルが、他の多数の従業員に波及するおそれがあります。

その結果、会社が多額の損害賠償義務を負担して、倒産に追い込まれるケースも見受けられます。

【関連記事】コンプライアンス事例集|発生原因や企業がすべき正しい対処法

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コンプライアンス違反が倒産に繋がる主な仕組み

コンプライアンス違反が企業の倒産に繋がる原因には、信頼の喪失・損害賠償・業務停止など、さまざまなパターンが考えられます。コンプライアンス関連倒産のメカニズムの中でも、特に多く見受けられるものは、以下のとおりです。

消費者イメージの低下→売上減少→倒産

SNSやメディアが発達した昨今では、コンプライアンス違反の事実は、SNSやメディアでセンセーショナルに取り上げられやすい傾向にあります。もしコンプライアンス違反が発生すると、その事実が拡散されて社会に大きな悪印象を与え、売上の減少に直結することが多いです。

その結果として、企業のキャッシュフローが悪化し、倒産に至るケースがあります。

金融機関からの信頼低下→資金調達が難航→倒産

会社を存続させるためには、運転資金の確保が最優先課題となります。しかし、コンプライアンス違反によって売上や株価が低迷している状況では、金融機関からの融資をこれまでどおり受けられないおそれがあります。

運転資金の融資が受けられなければ、会社の業務運営に必要なキャッシュを確保できず、早晩倒産に追い込まれてしまう可能性が高いでしょう。

多額の損害賠償義務を負担→倒産

コンプライアンス違反の内容によっては、一回の違反で、会社が多額の損害賠償義務を負担する可能性があります。たとえば、以下のコンプライアンス違反が発生した場合には、損害賠償の金額が高額になりやすい傾向にあります。

  1. 製品の不良や食品の衛生管理の不備などによって人身被害が生じた場合
  2. 他社の主力商品の特許権を侵害した場合
  3. 大規模な機密情報の流出が発生した場合

会社が抱えきれないほどの損害賠償義務を負担した場合、一挙に支払不能・債務超過となり、直ちに倒産に繋がることにもなりかねません。

許認可のはく奪または業務停止→キャッシュフローの停止→倒産

監督官庁から許認可を受けて業務を行っている企業の場合、悪質な業法違反を犯すと、許認可のはく奪や業務停止の処分を受ける可能性があります。許認可のはく奪や業務停止の処分を受けた場合、営業を続けることができなくなるため、キャッシュフローがストップしてしまいます。

その結果、借り入れの返済や各種の支払いに必要なキャッシュが底をつき、倒産に追い込まれるおそれがあります。

優秀な従業員の退職→生産性の低下・売上減少→倒産

コンプライアンス違反が発生した場合には、優秀な従業員が退職するリスクにも注意が必要です。コンプライアンス違反の程度が重大である場合には、会社の業績を悲観した従業員が退職してしまうおそれがあります。

また労務管理上のコンプライアンス違反が常態化している場合には、従業員が働くこと自体にストレスを感じ、早期に離職をすることに繋がりかねません。優秀な従業員が退職すると、会社全体の生産性が低下し、ひいては売上・利益の減少に繋がります。

その結果、会社の資金繰りが悪化し、倒産に追い込まれる可能性があるでしょう。

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コンプライアンス違反による倒産を防ぐための対策は?

コンプライアンス違反に起因する倒産を防ぐには、企業がコンプライアンスを強化し、違反の予防に努めておく必要があります。大まかに以下のポイントに留意して、コンプライアンス違反の対策を講じるとよいでしょう。

社内のコンプライアンスチェック体制を強化する

コンプライアンス違反のリスクを抑制するには、社内でコンプライアンス違反の芽を摘むチェック体制を構築することが第一の対策となります。現場とバックオフィスのダブルチェック体制、さらには監査部門を加えたトリプルチェック体制を構築すれば、コンプライアンス違反のリスクを極力抑えることができるでしょう。

また、経営者主導のコンプライアンス違反を予防するには、取締役相互の監視機能を強化することが大切です。相互監視機能を強化するには、社外取締役を招聘して、会社に対して独立した立場から監視の目を及ぼすことが有効になり得るでしょう。

コンプライアンス研修により全社的に遵法意識を浸透させる

現場レベルでコンプライアンス違反が発生することも多いので、従業員一人一人にコンプライアンス意識を浸透させることも大切です。そのためには、弁護士などによるコンプライアンス研修が有効となります。

コンプライアンスに関する知見を豊富に有する弁護士であれば、よくある違反事例やリスクなどをわかりやすく解説したうえで、従業員の注意を適切に喚起するような講義を行ってくれるでしょう。

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経営陣が積極的に現場の情報を仕入れる

企業の規模が大きくなればなるほど、経営陣は現場で起こっていることの情報に疎くなりがちです。そのため、経営陣の側から積極的に現場の情報を仕入れることにより、コンプライアンス違反の芽を未然に摘む必要があります。

たとえば、経営陣と現場責任者の間でホットラインを設置して、経営陣が現場と直接コミュニケーションをとれる体制を整えることが有効になり得るでしょう。また、公益通報者保護法に基づく内部通報制度を導入すれば、従業員に社内の違法行為に関する通報を促すことができます。

顧問弁護士によるリーガルチェックを受ける

コンプライアンス違反の原因は、日常の業務の中に潜んでいることも多いです。小さな違法が大きなコンプライアンス違反に繋がる可能性もあるので、日々のオペレーションに対して、常に監視の目を及ぼすことが大切になります。

そのためには、弁護士と顧問契約を締結することが有効です。顧問弁護士には、日常のオペレーションに関する法律・コンプライアンス上の問題について、随時相談できます。法的・コンプライアンス的にグレーな問題を放置せず、顧問弁護士とともにタイムリーに解決していくことで、コンプライアンス違反のリスクを抑えることができるでしょう。

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コンプライアンス違反により倒産しそうになった場合の対処法は?

実際に企業のコンプライアンス違反が判明した場合、売上の減少や損害賠償などによって業績が傾き、倒産の危機に瀕してしまう可能性があります。もしコンプライアンス違反によって債務を支払えなくなった場合には、債務整理によって状況の立て直しを図ることも検討しましょう。

債務整理の方法を検討する

債務整理の方法には、破産・民事再生・私的整理など、さまざまな種類が存在します。このうち「破産」をする場合には、会社の法人格を消滅させたうえで廃業を迫られます。

これに対して「民事再生」や「私的整理」の場合は、債務の圧縮などを行ったうえで、会社の事業を存続させることが可能です。債務整理の各方法には、それぞれメリット・デメリットが存在し、どの手続きを利用すべきかについては会社の状況によって異なります。

そのため、法律およびビジネスの観点からリスク分析を行い、どの方法をとるのがよいか慎重に検討すべきです。

弁護士に債務整理の相談をする

債務整理の各方法については、弁護士がその特性やメリット・デメリットを熟知しています。弁護士へ相談すれば、自社の状況に合わせて最適な債務整理の方法を提案してくれるでしょう。

そのため、もしコンプライアンス違反によって債務整理が必要な状況になった場合には、早い段階で弁護士への相談をお勧めいたします。また、コンプライアンス違反への事後対応が必要な場合には、その段階から弁護士に相談をすることで、あらゆる対応をワンストップで依頼することが可能です。

コンプライアンス違反による危機をしのぐため、さらには危機管理対応を経た後の事業再建を目指すためにも、お早めに弁護士へご相談ください。

まとめ

コンプライアンス違反は企業にとっての大ピンチであり、対応を誤れば倒産に繋がるケースもあります。コンプライアンス違反の危機に陥った企業は、損失を最小限に抑えて倒産を回避するために、迅速かつ適切な事故対応を行うことが大切です。

危機管理の実務に長けた弁護士に相談をすれば、企業が置かれた状況に合わせて、とるべき対応についてアドバイスを受けられるでしょう。また、コンプライアンス違反によって倒産の危機に陥ってしまった場合には、債務整理についてのアドバイスやサポートを求めることも可能です。

万が一自社でコンプライアンス違反が判明した場合には、お早めに弁護士までご相談ください。

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