破産で事業清算するメリット|清算か存続かの判断基準

専門家監修記事
破産して事業清算する最大のメリットは、資金繰りの苦労から解放され、再チャレンジできることです。一方、破産することで、今まで築き上げてきた技術やノウハウ、取引網等の経営資源が消滅してしまいます。破産して事業を清算すべきか、存続させるべきかについても解説します。
金子博人法律事務所
金子 博人
監修記事
事業再生・破産・清算

事業清算には、会社が解散決議をして、取締役が清算人となり清算を遂行し、残余財産を株主に分配する通常の清算手続きと、会社が支払い不能のときに、裁判所に選任された破産管財人が会社財産を現金化し、債権者へ配当し最終的に会社を消滅させる手続きの二種類があります。

 

前者は、会社の設立目的を達成したときなどに行われるもので、通常メリット・デメリットを考える必要がありません。この記事では、後者の破産を申立て事業清算するメリット・デメリットについてご紹介します。

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破産を申立て事業清算するメリット・デメリット

破産による清算は、まず、この方法がベストかどうかの検討が需要です。ここでは、メリット・デメリットについてご紹介します。

破産して事業清算するメリット

  1. 資金繰りの苦労から開放される
  2. 早く清算することで再チャレンジが可能になる

破産をする大きなメリットは、会社経営に関する苦労から解放されることでしょう。また、破産をしたことで、さまざまなことから解放され、人生や事業を再スタートできるというポジティブな面も存在します。

破産して事業清算するデメリット

  1. 破産という不名誉を負う
  2. 築きあげた技術やノウハウ、取引網等の経営資源が消滅する
  3. 従業員を解雇せざるを得なくなる
  4. 取引先に迷惑をかける(民事再生でも取引先を巻き込むが、特定調停が可能であれば取り先を巻く込むことはありません。スポンサーにより、銀行債権を買い取る場合も同様です)
  5. 親子会社の場合、子会社の繰越損失は、親会社に引き継がれる

もし、親子会社の場合、親会社の判断で子会社を破産・清算する場合、100%子会社だと、子会社の繰越損失は、親会社に引き継がれるという法人税税法上の原則に注意する必要があります。

清算・承継・M&Aの判断基準

会社・事業を破産して事業清算するべきか、M&Aなどの手法を用いて事業承継をするべきなのか。何をもってして判断すべきなのか分からないという経営者の方も多くいるのではないでしょうか。

 

どれが適切な方法なのかは、①人材(ヒト)、②物資(モノ)、③資金(カネ)の3点を判断基準として考えるとよいでしょう。

人材(ヒト)

人材(ヒト)が表すのは、雇用関係を結んでいる従業員だけではありません。事業を継続していく上で必要不可欠な取引先が、今後も取引を続けてくれるのか、債権者が民事再生などの所謂「再建型」の手続きに同意してくれるのかといったことも重要です。

 

事業・会社に関係する人々の意思を確認することで、清算を選択すべきか、事業承継を考えるべきか検討することができます。

物資(モノ)

物資(モノ)とは、工場や機械などの設備、オフィスといった目に見えるモノから、特許や技術力といった目に見えないモノのことを指します。

 

こうしたモノが、会社を清算することで失われてしまうのではないか、逆にM&Aを行うと流出してしまうリスクがあるのではないかといった視点からも、検討するとよいでしょう。

資金(カネ)

資金(カネ)は、現預金など手持ちの資金をはじめ、実際に投入できる借入金の金額などが検討の対象になります。

 

事実、会社を清算する場合においては従業員たちへの退職金や倒産処理手続きに必要な費用を賄うために資金が必要になりますし、M&Aなどで事業承継をする場合でも、会社の資産価値を図る際に資金力が1つの指標となります。 

まとめ

経営者が破産しかないと思いこんでいても、専門家がみればそれを回避する手段があることも少なくありません。さらに、スポンサーを確保できれば、特定調停や民事再生法の申請、スポンサーによる銀行債権の買い取りなどの方法のよる会社再建の道が開けます。

ただし、企業の再建はそれ自体大きな苦労を伴うもので、苦労した結果、結局破産ということも多くあります。会社再建は、その分野に精通した弁護士に巡り会うことが、最も重要なポイントです。

事業清算の具体的な流れを知っておくことで、清算完了までの道筋を明確にすることが可能です。

 

通常清算と特別清算の流れ

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