
税務調査の立ち入りがあると聞くと、「申告内容に不備があったのだろうか?」「追徴課税されるのでは?」と、不安になってしまうでしょう。
税務調査の対応を誤ると、大きな経済的損失や新たなトラブルを引き起こすおそれがあります。
そのため、少しでも不安がある場合は事前に専門家に相談し、対応についてアドバイスをもらうことが大切です。
しかし、税務調査の相談先といえば税理士が思い浮かぶ方も多く、弁護士へ相談すべきか迷っている方も多いでしょう。
そこで本記事では、税務調査を弁護士に相談する際のポイントと、そのメリットについて詳しく解説します。
どのような弁護士を選ぶべきか、受けることができるサポートの内容についても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
税務調査を弁護士に相談する必要はあるのか?
結論からお伝えすると、税務調査については積極的に弁護士に相談する必要はありません。
なぜなら、税務調査に関する専門家として最適なのは税理士だからです。
税理士は、税務の専門家として日常的に税務署と関わり、税務調査にも多くの経験を持っています。
そのため、通常の税務調査の場合は、税理士に依頼することで十分対応できるでしょう。
しかし、税務調査を弁護士に相談することで、税理士だけではカバーしきれない、独自のメリットを享受できる場合があります。
また、一部の弁護士は税理士業務をおこなっていますので、より手厚いサポートに期待できるでしょう。
そのため、税務訴訟に発展することが予想される場合や法律の解釈によって見解が分かれそうな場合は、事前に弁護士へ相談しておくと安心でしょう。
税務調査が得意な弁護士に相談・依頼する5つのメリット
税務調査が得意に弁護士に相談・依頼することで、多くのメリットを享受できます。
以下では、主な5つのメリットについて解説します。
1.税務調査に向けた適切な準備を進められる
税務調査への対処について弁護士に相談することで、事前準備をしっかり進めることができます。
初めて税務調査を受ける場合、必要な書類や調査で確認されるポイントがわからず、準備不足や不備が生じることも少なくありません。
弁護士に相談することで、準備すべき書類や調査官から指摘される可能性がある項目について具体的なアドバイスを受けられます。
また、必要に応じて質疑応答のシミュレーションをすることで、不安を減らして調査に臨めるでしょう。
2.税務調査に立ち会い調査官とやり取りしてくれる
税務調査で弁護士が立ち会うことで、調査官とのやり取りを一任することができます。
税務調査では、税務調査官の判断が誤っている場合もあり、一人だけで対応すると正しい反論ができずに指摘をそのまま受け入れてしまうリスクがあります。
また、税法は解釈の余地があり、税務署側と納税者側で見解が異なることも少なくありません。
弁護士に立ち会いを依頼することで、調査官の指摘に対して法的根拠を基に反論し、追徴課税を防いだり、減額できたりする可能性が高まります。
3.指摘を受けた際に根拠が正しいか判断してくれる
税務調査で調査官から指摘を受けた場合、それが本当に正しい指摘なのか判断するのは簡単ではありません。
税務調査が得意な弁護士は、法律や税法の知識を基に、調査官の指摘が法的に妥当であるかどうかを検討します。
不当な指摘があった場合には、その場で適切に反論してくれるので、心強いといえるでしょう。
4.違法な税務調査を防止するための対策をしてくれる
税務調査は国税通則法に基づいておこなわれていますが、調査対象ではない期間の帳簿類を調査する、虚偽の調査記録書を作成しようとするケースも見られます。
税務調査に弁護士が同席することで、調査が適法に進められているかを監視し、違法行為が発生した場合には速やかに対応してもらえます。
5.処分に不服がある場合には適切に対応してもらえる
税務調査で納得できない場合、行政上の不服申立て制度を利用することができます。
不服申し立て制度としては、主に以下の2つの手続きが可能です。
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これらの不服申立て制度を利用しても納得できない場合、最終的には裁判所に訴訟を提起することになります。
ただし、訴訟は手続きが複雑なので、個人が訴訟を提起するのは簡単ではありません。
税務調査の段階から弁護士に相談しておくことで、万が一税務訴訟に発展した場合でも訴訟手続きを一任することができます。
一つの事件に対しても、税理士と弁護士で見方や切り口が異なる場合があります。
たとえば、弁護士が税務訴訟から関与した事案において、税理士のみで対応していた事前の再調査請求や審査請求において、本来争点とすべき事項について十分に調査や検討が行われていないケースがあります。
このような事態に陥ることを避けるためにも、複雑な事案では税務調査や審査請求の段階から弁護士と税理士が協働して対応に当たることが望ましいといえます。
税務調査を弁護士に相談する際の3つの注意点
税務調査を弁護士に相談する際は、いくつかの重要なポイントをおさえておく必要があります。
以下では、弁護士に相談する際の主な3つの注意点について詳しく解説します。
1.そもそも税理士登録をしている弁護士は少ない
弁護士法第3条第2項には「弁護士は、弁理士や税理士の業務も行うことができる」と定められています。
また、税理士法第3条第3号には「弁護士(弁護士資格を有する者を含む)」は「税理士としての資格を有する」と規定されています。
そのため、弁護士は税理士試験を受けなくても、税理士登録をおこない、税理士としての業務をおこなうことができます。
しかし、税理士登録をしている弁護士は少ないのが実情です。
日弁連が公表している資料によると、2023年3月31日時点で税理士登録をしている弁護士は718人です。
弁護士の人数は44,916人なので、全体の1.6%程度しかいない計算になります。
税務調査について弁護士に相談する際は「弁護士であればだれでもOK」というわけではないので注意が必要です
2.税理士登録をしていても税法に詳しいとは限らない
弁護士は、税理士会に入会することで、正式に税理士として登録できます。
税理士登録をすることで、税理士業務を広範囲でおこなうことができるほか、税理士の肩書きを得ることができます。
ただし、弁護士は税理士会に入会するために税理士試験を受ける必要がありません。
そのため、税理士登録をしている弁護士でも、税法に関する知識が不足している場合があります。
税務調査に立ち会ってもらっても、必ずしも適切な対応ができるとは限らない点に注意が必要です。
3.税理士登録をしていても実務経験がない場合もある
税理士登録している弁護士であっても、税務に関する実務経験がない場合もあります。
税務調査を弁護士に相談する際には、税法に関する知識や実務経験を有しているかどうかを重視するようにしましょう。
税務調査を相談・依頼する際の弁護士選びの3つのポイント
税務調査を弁護士に相談・依頼する場合、適切な弁護士を選ぶことが重要です。
とくに、以下の3つのポイントをおさえて、自分にあった弁護士を選ぶようにしましょう。
1.税理士として登録しているか
税理士としても登録している弁護士は、法務の知識に加えて税務の知識も兼ね備えている可能性があります。
このような弁護士は、税務調査において、法律的な観点だけでなく税理士としての知識を活かして対応することが可能です。
2.税法や税務調査などに精通しているか
弁護士といっても、専門分野は多岐にわたります。
税務調査に対応する弁護士を選ぶ際は、税法や税務調査に関する実績や知識が豊富かどうかを確認しましょう。
税務調査は法律だけでなく、会計や税務に関する深い知識も必要です。
過去に税務調査の案件を多く扱ってきた弁護士や、税務訴訟の経験がある弁護士を選ぶことで、より適切な対応が期待できます。
税法に関する専門書を執筆したり、税法の研修やセミナーに参加したりしている実績があるかどうかも判断要素になるでしょう。
3.弁護士費用を明確に提示してくれるか
税務調査の相談や依頼をする際には、事前に費用をしっかりと確認することも重要です。
弁護士費用は、相談案件や事務所の費用体系によって大きく異なります。
ただ、信頼できる弁護士は、初回相談時に費用の概算や支払い方法について丁寧に説明してくれるはずです。
費用の内訳が明確に示されていない場合、あとから予期せぬ費用が発生する可能性もあるので、事前に見積もりを提示してもらい、納得したうえで正式に依頼しましょう。
さいごに|弁護士に相談する場合は税務調査が得意かどうか確認を!
税務調査について弁護士に依頼する場合は、税務調査の対応実績が豊富で、かつ税法の知識が深い弁護士を選ぶのがおすすめです。
全ての弁護士が税務調査に適切に対応できるわけではなく、税理士登録をしている弁護士であっても、必ずしも税務調査に強いわけではないことも理解しておきましょう。
税務調査は、早い段階からの準備が必要になります。
税務調査に適切かつスピーディーに対応するためにも、慎重に弁護士を選んでください。
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