厳しい経営状況に陥ると、経営者なら「支払不能や債務超過で破産となる前に事業を辞めたい」と、苦慮することが考えられます。また、後継者が望めない現実も深刻で、中小企業で1年間に廃業した約29万社の中、約7万社が後継者不足を最大の理由に挙げています。
経営者の高齢化や後継者不足にともなう廃業による、雇用喪失、産業の脆弱化への懸念が叫ばれている。中小企業の廃業が年間約29万社ある中で、後継者不足を第一の理由としてあげているケースは、約7万社に上る。
引用元:中小企業の事業承継問題
中小企業庁の調査では、事業承継を行わずに「廃業もやむを得ない」と答えた中小企業は約7割に上るというデータもあります。経営者が自主的に廃業するには事業を清算させることが不可欠です。
事業清算には、さまざまな手続きや取引先への挨拶、従業員への対応などが必要になります。ご自身で行うとなると、一々調べながら行わなければならず、一般的なものより長い期間が必要になってしまうでしょう。
この記事では、弁護士に相談するメリットや弁護士の探し方など、事業清算についてご紹介します。
事業清算を弁護士に相談する4つのメリット
事業清算で弁護士に依頼できる内容は多岐にわたります。弁護士に相談するメリットとして、大きく分けて以下の4つがあります。
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1:事業清算完了までの道筋が明確になる
事業清算は、申し立てたら翌日完了するような手続きではありません。一定期間かかる上に、取引先や顧客、決算などにあわせてタイミングを見る必要もあります。弁護士に相談することで、事業清算完了までの道筋を明確にすることが可能です。
各種手続きを依頼できる
事業清算するにあたり債務整理することになります。各種金融機関や税務署、役場、裁判所などさまざまな機関で手続きを行わないとなりません。弁護士に依頼することで、これらを一任することが可能です。
また、弁護士に書類作成や手続きを一任できるため、この他の実務に専念することができます。
取引先・従業員への説明や対応などを相談できる
事業清算する場合、取引先や従業員へ適切な説明や対応が重要です。従業員や取引先が多い会社ほど、この際にトラブルが発生しやすくなります。穏便に解決するには、弁護士に相談し、慎重に進めなければなりません。
事業承継(M&A)の相談ができる
事業を清算するしかないと思っていても、経験豊富な弁護士から見たら、まだ承継(M&A)や再生できるケースもあります。できるだけ早い段階で相談すれば選択肢が広がり、会社を潰さずに解決できる可能性があります。
事業清算を相談すべき弁護士の探し方
事業清算を依頼する弁護士はどのように探せばよいのでしょうか。
弁護士を探す際の2つのポイント
後悔しない弁護士を探すには、以下の2つのポイントを踏まえ探す必要があります。
- 企業法務でも「事業清算」「事業承継(M&A)」の実績がある弁護士
- 自社の業界での法務実務に実績がある弁護士
企業法務の実務は多岐に渡り、企業法務に注力している弁護士でも、事業清算に携わったことがないこともあり得ます。また、業界に関しても同様で、あなたの会社の業界で実績・経験のある弁護士を探すことが必要です。
弁護士の探し方|相談窓口
弁護士に相談できる窓口はさまざまですが、長期かつ親身に対応してほしいことを考えると、法テラスや法律相談センター、市区町村役場の相談窓口は避けることが無難です。また、事務所ごとに特色や経営方針が異なりますので、多くの弁護士事務所を比較することをおすすめします。
実績のある弁護士を探すなら【企業法務弁護士ナビ】がおすすめ
企業法務弁護士ナビは、実績のある弁護士を簡単に検索できるように、掲載に一定の基準を設けております。また、地域・相談内容・業種の掛け合わせで検索できるため、あなたにピッタリの弁護士を比較・検討することが可能です。
弁護士が見つかたら、資料を用意!
弁護士に相談する際、資産となる不動産や預貯金の通帳などのほか、負債に関する一覧表、事業にともなう損益計算書や貸借対照表、決算書など、会社の財産状況を記載した資料の準備が重要です。
これらの会社の資産や負債の状況を把握できる資料を用意して相談すれば、より具体的で詳細な回答が期待できます。
事業清算が完了するまでの流れ
会社の経営状況が悪いからといって、休眠状態にしていれば法人としての存在自体は存続したままです。
今後、事業の継続を望まないのであれば、法的な手続きを経て、自主的に会社の解散や清算手続きを行うことを検討すべきでしょう。
一般的な通常清算の流れは、次の通り。
①解散決議 株主総会の特別決議で会社を解散
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②債務の弁済 資産を売却、売掛金などを回収して債務の支払い
↓
③残資産の分配 債務の弁済後に残る資産を株主に分配
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④清算結了 株主総会で決算報告書を承認、清算の結了で会社は消滅
この複雑な手続きを間違いなく確実に進めるには、弁護士に相談して的確なサポートを受けることが最適でしょう。
株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない。
一 解散した場合(第471条第4号に掲げる事由によって解散した場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く)
引用元:会社法475条1項
事業清算を弁護士に依頼する場合にかかる費用は?
弁護士に事業の清算を依頼すると、弁護士費用がかかります。弁護士費用は事務所毎に異なりますが、以下、一例として参考にしてください。
①相談料
法律相談だけであれば、弁護士事務所によって異なりますが、通常の相場は30分5,000円から1万円程度。中には、初回相談は無料というところもあります。
②着手金
債務超過で特別清算や破産には至らず、通常の清算手続きなら、着手金50万円くらいで依頼できるケースが一般的です。
③成功報酬
報酬は成功の度合いで異なり、一般的に難しい案件は着手金が高く、報酬も高額になります。多くの弁護士事務所では一定の基準を決めているので、事前に問い合わせるのがベターでしょう。
適切な事業の清算手続きは弁護士に相談
特別清算や破産に比べると、会社の解散や清算を行うのは実際にはそれほど難しいものではありません。
通常清算の手続きは裁判所の管理下には入らないので、特別清算や破産手続きより、精神的にも容易に進めることが可能でしょう。
とはいっても、事業の解散や清算手続きに関連する法律は多岐にわたり、素人がすぐに理解するのは難しいでしょう。適切に行うには、専門的な知識がないとかなりの労力をともないます。
法律のプロである弁護士に相談することでこのようなリスクから解放され、経営者が望む事業の清算をスムーズに実現できるでしょう。
事業清算で過去の実績やノウハウが豊富な弁護士なら、会社消滅後のアドバイスも受けられます。
清算手続きの過程では、経営者が金融機関などの債権者や利害関係人などと交渉することが難しいケースも多々あります。そういう場合には、弁護士に相談や交渉を依頼することで話を前に進めやすくなります。
万が一、清算手続きの途中で特別清算や破産などの問題が生じても、事業清算に精通した弁護士であれば、それぞれの会社の状況にふさわしいサポートを得ることも可能です。
事業の清算を行うなら、トラブルを避けるためにも、まずは早めに専門家である弁護士に相談しましょう。
適切なアドバイスを受けられる安心感という最大のメリットに、勝るものはないでしょう。