株式譲渡承認請求書(かぶしきじょうとしょうにんせいきゅうしょ)とは、株式会社Aの株を持っている方が別の会社に対して株式を売りたい場合に、事前に株式会社Aに対して許可を得るために必要となる書類のことです。
非上場の企業は、通常、株式を第3者に譲渡・売買をする場合に、株主が勝手に株式を譲渡することができないように「譲渡制限」を設けており、この場合、会社の承認(「取締役会(株主総会)」の承認)がないと、株式譲渡の効力を会社に対抗できません。
手順 | 取締役会設置会社 | 取締役会非設置会社 |
1 | 株式譲渡承認請求を行う | 株式譲渡承認請求を行う |
2 | 取締役会を開く | 臨時株主総会の開催 |
3 | 監査役に臨時役会の招集通知 | 臨時取締役会で株式譲渡の承認 |
4 | 臨時取締役会で株式譲渡の承認 | 株式譲渡承認の通知 |
5 | 株式譲渡承認の通知 | 株式譲渡契約の締結 |
6 | 株式譲渡契約の締結 | 株主名義書換請求 |
7 | 株主名義書換請求 | 株主名義の書き換え作業 |
8 | 株主名義の書き換え作業 | 株主名簿記載事項証明書の請求 |
9 | 株主名簿記載事項証明書の請求 | 株主名簿記載事項証明書の交付 |
10 | 株主名簿記載事項証明書の交付 |
つまり、株式譲渡承認請求書は、「株式の譲渡をしたいので許可をください」という要求に使うものだとお考えください。
今回は、株式譲渡承認請求書の書き方と「株式譲渡承認請求」の基本的な流れについてご紹介していきますので、参考にしていただければと思います。
株式譲渡承認請求書の書き方とサンプル
株式譲渡承認請求には決まったフォーマットがありませんので、自由に買いていただいて構わないのですが、書くべき要点をまとめてあることが大前提にはなります。
表:株式譲渡承認請求書(サンプル)
株式譲渡承認請求書(サンプル)
株式会社アシロ 記 1 譲渡する株式の種類及び数 普通株式 100株 2 譲渡相手方 (住所)東京都新宿区●●●● (氏名)匿名太郎 平成●年●月●日 譲渡人(株主) (住所) 東京都新宿区●●●● (氏名) 匿名アシロ 印 |
必ず記載すべき項目としては、
- なんの株式を譲渡するのか(種類)
- 何株譲渡するのか?(数量)
- 譲渡相手は誰なのか?
このような項目を記載しておくと良いかと思います。
普通株 | 通常の株式 |
優先株 | 普通株より優先的に分配を受ける株式 |
後配株 | 普通株より遅れて分配を受ける株式 |
(株主からの承認の請求)
第百三十六条 譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く。)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。
引用元:会社法第136条
株式譲渡承認請求の流れ
次に、株式譲渡承認請求の流れについて説明していこうと思います。
そもそも株式譲渡承認請求がなぜ必要なのかについてですが、先ほどちょっとだけ触れた「譲渡制限」がある為です。
「譲渡制限」は、株主が勝手に株式を誰かにあげたりすることを禁止するためのもので、会社の定款(内部規約みたいなもの)で会社の承認を得ないと譲渡できないようにしているものです。
これは会社法第136条以下で定められているということも、知っておくのが良いでしょう。
1:株式譲渡の承認または非承認の決定
まずは会社の約款に基づき、第3者へ株式の譲渡をするかしないかの承認決議を取る必要があります。
取締役会の設置がある会社であれば取締役会で話し合いますし、取締役会がない会社であれば株主総会で決議をとるという流れになります。
2:株式譲渡の通知
取締役会や株節総会で承認が下りれば、請求のあった日から2週間以内に株主に通知し、株式譲渡契約を結ぶことになります。
(株式会社が承認をしたとみなされる場合)
第百四十五条 次に掲げる場合には、株式会社は、第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をする旨の決定をしたものとみなす。ただし、株式会社と譲渡等承認請求者との合意により別段の定めをしたときは、この限りでない。
一 株式会社が第百三十六条又は第百三十七条第一項の規定による請求の日から二週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内に第百三十九条第二項の規定による通知をしなかった場合
引用元:会社法第145条
もし非承認となった場合|株式の買取手続きに移行する
仮に、会社が株式譲渡を非承認にした場合、会社が株式を買い取ること、あるいは指定買取人という存在を指定する必要があります。
ここでもまた取締役会(株主総会)を開いて、会社として株式を買い取るのか、買い取るなら株式をいくつ買いとるのかの決議を取ります。(会社法309条・会社法140条)
決議が取れたなら、会社が株式を買い取りますよという通知をし(会社法141条)、指定買取人をおくのであれば、指定買取人と契約を交わしたうえで、書面を交付するといった手順になります。
3:株式譲渡契約の締結
株式譲渡承認の通知を終えたら株式譲渡契約書を作成し、譲渡等承認請求者と会社間で契約を結ぶことになります。
株式譲渡契約書(サンプル) 株式譲渡人である匿名太郎(以下「甲」)と、株式譲受人である匿名アシロ(以下「乙」)は、平成○年○月○日の臨時株主総会における株式譲渡承認決議に則り、甲が保有する普通株式○○株を乙に譲渡し、以下の通り契約する。 第1条 甲は、甲が有する普通株式の全部(○○株)を乙に譲渡し、乙はこれを譲受する。 第2条 甲及び乙は、本契約締結後遅滞なく、前条の株式が甲から乙に譲渡されたことを通知する。 第3条 甲は、本契約日までに、株式を乙以外の第三者へ譲渡しないことを誓約する。当該株式の二重譲渡が発覚した場合、乙が被った損害の全額を賠償するものとする。 以上本契約成立の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印し各1通を保有する。 平成○年○月○日 甲 (住所)東京都新宿区○○ (氏名)匿名太郎 乙 (住所)東京都新宿区○○ (氏名)匿名アシロ |
4:株主名義書換請求の交付と株主名簿記載事項証明書の請求
株式譲渡による名義人の変更を会社に求める手続きを「株主名簿書換請求」といい、会社の株式を保有していることの証明を行います。
株主名簿に記載がない場合、会社に対して株主であることを対抗できませんので、必ずやっておきましょう。
株式名義書換請求(サンプル) ●●●株式会社 御中
平成●●年●●月●●日 名義書換請求株式数●●株上記の株式について、共同して名義書き換えを請求いたします。株主(譲渡人)
〒●●●-●●●●
東京都新宿区●●●●
匿名太郎
印取得者(譲受人)
〒●●●-●●●●
東京都新宿区●●●●
匿名太郎 印
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株主名簿記載事項証明書は確かに株式を譲渡したことを証明する紙面になります。
株式譲渡承認請求書について専門家に相談する場合の相談先の例
株式譲渡承認請求書自体は特に決まった書き方がないので、必要項目さえ記載があれば自由に作成していただいて構いませんが、法務局などの監査の目が入らないのでできれば専門家の目通していただくのが良いかと思います。
会社設立ドットコム
法人登記手続きやそれに付随する手続きなどのサポートしている、行政書士事務所が共同運営する団体です。
会社設立後の各種変更手続きや、税理士の紹介などもしているため、総合的な相談を受け付けいると思われます。
企業法務に詳しい弁護士
企業法務や株式譲渡、M&Aなどを専門的に扱っている弁護士事務所に相談するのも有効です。
ではどう判断するのかですが、「企業法務 弁護士」や「株式譲渡 弁護士」などのワードで検索するといくつかの弁護士事務所がヒットするでしょう。
企業法務専門の弁護士事務所は数が少ないので、気になった弁護士事務所の無料相談をしてみるのが良いでしょう。
ポータルサイトから弁護士を探すという手段もある
個別の弁護士事務所に問い合わせること以外に、ポータルサイトなどから「企業法務が得意な弁護士」を探すという方法もあります。
例えばあなたの弁護士では、企業法務を専門的に扱う弁護士を探して相談することができます。
地域なども絞って探すことができますので、お近くの弁護士を探してみるのが良いでしょう。
まとめ
株式譲渡承認請求書について簡単にまとめてみましたが、フォーマットを見たいだけでしたら、「株式譲渡承認請求書の書き方とサンプル」でご紹介した様な内容で事足りると思われます。
もし承認請求書のもっと細かく内容を記載したいという場合は、弁護士に相談されるのが確実なので、検討していただくのが良いでしょう。