M&Aの流れを解説|フローチャートで確認!

専門家監修記事
急速な事業拡大の手段として近年ますます注目されているM&A。さまざまなメリットがある一方、企業を買収するというその性質上、さまざまな条件や法が絡み、手続きは複雑でわかりづらいものになっています。ここでは、M&Aの流れをフローチャートとともに解説します。
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
M&A・事業承継

M&Aは、事業拡大の手段として近年ますます注目されています。M&Aはそのメリットとして、自社の持っていない技術を取り入れることができる、弱みとしていた部門を切り離せるといったことがあります。

規模や取引先の拡大によって、これまでの事業との相乗効果で売り上げを伸ばせる場合もあります。短期間で大幅に事業を拡大していく手段としては、うってつけなのです。

しかし、M&Aは企業を買収するというその性質上、さまざまな条件や法が絡み、手続きも複雑でわかりづらいものになっています。

専門家に相談するにしても、大まかな流れを把握しておくことは期間の短縮化や仕事の円滑化へとつながります。ここでは、M&Aの流れについて解説していきます。

 

 

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M&Aの流れ|フローチャートで確認

M&Aの流れをフローチャートに示します。
 

以下、詳しく解説していきます。

売手企業のM&A準備

M&Aを行っていく上で、売手企業は次の3つの準備をしておく必要があります。

①M&Aアドバイザーとの契約

有効なM&Aを行うためには、有効な買手企業を見つける必要があります。しかし、独力でこのような買収先を探している企業を探し当てるのは困難です。

また、M&Aを行う段階になってからも、条件の交渉や法的な問題、従業員の移動に伴う労務の問題など、専門的な知識や手続きが必要となります。

したがって、M&Aを行う上では、M&Aアドバイザーとの契約は欠かせないと言えます。

②資料作成

買手企業は、決算書の様な資料やM&Aアドバイザーの作成した資料を基に、買収するかどうかの基本的な決定を行っていきます。

③ネームクリアの確認

M&Aでは、企業を売り出すことをなるべくばれないようにするために、情報の公開を限定的にする場合があります。

しかし、買収の意思がある企業に対しては、これらの情報も開示していく必要があります。こうした重要情報の開示、公開が『ネームクリア』と呼ばれる手順になります。

買手企業のM&A準備

買手企業も、M&Aに向けて大きく3つの準備を行う必要があります。

①M&Aアドバイザーとの契約

売手企業と同様に、買手企業側でもM&Aアドバイザーの存在は重要です。契約締結にあたってはアドバイザーの実績や報酬水準を慎重に検討しましょう。

②ノンネームシートの受領

ノンネームシートとは、売手企業がネームクリアの前に行う、社名が特定されない程度の限定的な情報公開のことを指します。

基本的には業界、従業員数、営業利益、譲渡理由などが記載されており、買手企業はノンネームシートを受領して、どの程度買収する価値があるかを検討します。

機密保持契約を締結した後はネームクリアを行うことで、さらに詳細な情報が公開されることになります。

③検討

売手企業からのネームクリアが行われた場合、それらの中の重要情報を検討していくことになります。

売手と買手によるM&Aの交渉

売手企業と買手企業の準備が終わると、次は双方でのすり合わせ作業がメインになっていきます。一般的には以下のようなステップを踏むことが多いようです。

①トップ面談・条件交渉

双方がある程度の合意を行い、先に進めるとなった場合、トップ同士での面談が行われます。ここでは双方が質問を行うことによってさまざまな疑問を解消していくことになります。

また、この場においては追加質問なども行われ、双方の疑問の解消を通して相互信頼関係を築いていくことになります。

トップ面談では、買収価格や従業員はどうするのかといった基本的な方向性が協議されることになります。

後述するデューデリジェンスにおいて変化する可能性もあるので大まかな決定にはなりますが、ここでの交渉が非常に重要であることは間違いありません。

②基本合意契約の締結

売手企業と買手企業が譲渡価格や取引の形態、それ以外の合意事項といったある程度の基本事項の合意に至ると、その確認のために基本合意契約を締結します。

この際、後に控えているデューデリジェンスへの協力も取り付けます。これまでの合意事項を整理し、今後の作業を円滑化することで、スムーズなM&Aを導くのです。

ただし、基本合意契約ではあくまで基本事項についての合意であり、デューデリジェンスによって条件が変化することが考えられます。

③デューデリジェンス(DD)

デューデリジェンスとは、簡単に言ってしまえば、売手企業に対する詳細な調査のことを指します。デューデリジェンスは法務、財務、ビジネスを中心に、さまざまな面から調査が行われます。専門的な調査を行う性質上、弁護士や税理士といったさまざまな専門家の協力が必要になります。

専門家によって、株式関係や人事労務関係、取引先との契約などにおける法務関係の諸問題や、設備投資や事業収益といった財務上の問題点の洗い出しを行っていきます。

このほか、ITなどのデューデリジェンスも存在しますが、費用を判断材料としての情報価値などと比較しながら、どの内容に対して行う必要があるのかを検討します。

④最終譲渡契約の締結

デューデリジェンスが終了し、詳細まで確定した上で合意に至った場合には、最終譲渡契約を締結することになります。最終譲渡契約書には、売買条件や、遵守事項、保証事項、解除条項などが盛り込まれます。

最終譲渡契約書は、単に取引が行われたことを示すだけのものではありません。買収後もさまざまな問題が浮上してくる可能性がありますが、そうした場合の解決方法などを明記しておくのも、この最終譲渡契約の重要な役割です。

内容に関しては、今後のことまでを見据えつつ、詳細に検討していく必要があります。

まとめ

M&Aは、売手企業と買手企業双方の今後を大きく左右する決断です。そのため、進めていく手順の中にも、調査や検討の段階が多く盛り込まれています。とはいえ、独力で相手企業を選択し、交渉を行っていくのは大変な困難が伴います。

M&Aを成功させるためにはまず、信頼のできるアドバイザーを見つけることが不可欠です。同時に、アドバイザーに任せきるのではなく、ともに進めていくという関係性も重要です。特にトップ面談の段階においては、双方の企業のトップによる信頼関係の醸成が、M&Aを進める鍵となります。

事業拡大を行いたい企業にとって、有力な選択肢の一つであるM&A。事前にその手順や経営者の役割を把握し、いざ実行に踏み切った際に円滑に進めていくことができるようにしておきましょう。

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