事業清算・解散とは何か|清算の条件と手続きの流れを解説

専門家監修記事
M&Aや事業承継、破産など会社のたたみ方にも色々な方法がある中で、特に『清算』は多くの方が選択される方法の1つです。この記事では、清算について詳しく知った上で最適な選択ができるよう、事業清算の概要から手続きの流れまで、分かりやすくご紹介します。
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
事業再生・破産・清算

経営者の高齢化や財務状況の悪化など、さまざまな原因により会社をたたむケースが年々増加しています。

そうした際、会社をたたむ方法としては基本的に2種類あります。1つは前向き・発展的に会社をたたむ方法で、一般的にはM&Aや事業承継と称される方法です。反対にもう1つの方法というのは、後ろ向き・衰退的な会社のたたみ方となり、破産や清算といった方法になります。

会社のたたみ方にも色々な方法がある中で、特に清算は多くの方が選択される方法の1つです。 多くの方が選択する方法ということで安易にこの手段を選択しがちですが、前述の通り、会社のたたみ方にも種類があります。

そこで、清算について詳しく知った上で最適な選択ができるよう、事業清算の概要から手続きの流れまで、わかりやすくご紹介します。  

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事業の清算・解散とは

事業清算は、会社をたたむ際にとる方法の一種です。事業の継続を取りやめる場合や、法人から個人事業へと移行する場合などに、この方法が選択されます。

会社をたたんでしまう手続き

そもそも事業清算を行う前の段階に、会社の「解散」というものが存在します。解散とは、簡単に言えば会社が事業活動を終了するということです。

しかし、会社は解散を宣言して解散登記をすればよいというものではありません。法律によって人格を与えられた「法人」であり、残務処理や財産処理といった責任を果たす必要があるのです。

そして、解散した会社について、債権債務の後始末をし、残った財産を株主などの債権者に分配する手続きのことを「清算」といいます。この清算という手続きを踏むことにより、会社をたたむことができるのです。

事業を継続できない状況

事業清算をするということは、事業の採算がとれなかったり、財務状況が悪化している場合が大半だと思われます。

利益を見込むことができない事業は、M&Aで売却先を探そうにも、なかなか見つからないというのが現実です。

また、事業承継で子や優秀な従業員に継がせようにも、彼らの将来を考えると事業承継が果てして最善の方法になるかは不明です。そうした状況では、事業清算を行い、事業をやめてしまうのもひとつの手です。

法人である必要性がなくなった

株式会社や合同会社など、法人の形態で事業を行う上では、税金の面や融資の受けやすさ、社会的信用といったさまざまな面でメリットがあります。

しかし、市場規模があまり大きくない場合や、安定した収入が見込める取引先が確保できた場合、従業員など人手をあまり必要としない場合には法人である必要はなく、個人事業という形態をとるべきかもしれません。

個人事業で活動していくためには一度、いまの会社(法人)をたたむ必要があります。M&Aといった方法をとってしまうと、自分が築き上げたノウハウや取引先をすべて他社に譲渡・売却することになりますから、事業清算という方法をとることになります。  

事業清算以外の手段とは

会社をたたむ方法としては事業清算の他にも事業承継やM&A、法人の休眠化といった方法があります。そうした事業清算以外の方法についても、ここで簡単にご説明します。

事業承継

会社の経営を後継者に委ねることを「事業承継」と言います。

中小企業が多い日本では、事業承継の多くを親から子へのバトンタッチという方法で執り行ってきました。しかし、昨今の少子高齢化や景気の先行き不透明化の流れを受け、親から子への事業承継は難しくなってきています。 その結果、廃業という選択しかないという企業も多くあると言われています。

そこで注目されているのが、M&Aという方法です。

M&A

M&Aとは複数の企業による事業再編を指す言葉です。具体的には業務提携や資本提携、会社分割、企業(事業)買収などがM&Aにあたります。

現代の日本においてM&Aが注目される背景には、後継者に悩む中小企業の多さが関係しています。日本の技術力は世界の中でもトップクラスにあり、その技術力を欲する企業は世界に多く存在します。

また、技術力がなくとも、競合他社にとっては事業を買収することでより大きな競争力を得ることができます。

M&Aは買い手だけが得する方法ではありません。売り手にとっても売却益を得ることができたり、交渉によっては従業員たちの雇用も確保することができます。つまり、両者にとって得のある取引が可能になるのです。

休眠状態にしておく

株式会社などの法人は、市区町村と税務署に休業する旨を記載した異動届出書を提出することで休眠状態にすることができます。会社の休眠化は、清算などの方法に比べて手間や費用がかかりません。

休眠状態にすることで法人の事業活動を停止することができますが、法人自体は消滅せずに存続しています。そのため、売上がなかったとしても毎年の税務申告が必要になります。事業活動をしなくても維持費用がかかってしまうのが、休眠化のデメリットです。  

事業の清算を行うための条件

事業清算は会社の解散にともなって発生する手続きとなります。会社が解散するにあたっては財務状況の悪化など、さまざまな条件が考えられます。ここでは、会社法で定められた会社の解散事由を7つご紹介します。

定款で定めた存続期間の満了

定款では会社の存続期間を規定することができます。すなわち、その定められた存続期間が満了された場合には、会社は解散となります。それにともなって、清算の手続きを踏んでいくことになります。

定款で定めた解散事由の発生

事業目的が永続性を有しない場合、定款において解散事由を定めることができます。

例えば、『○○建物の建設工事ならびに諸手続きが完了した場合には当社は解散する』と記載がされていれば、定款の定める解散事由となります。

これは会社法第471条(解散の事由)において認められています。

株主総会の決議

株主総会において、議決権を行使することができる株主の過半数が出席し、かつ出席した株主の3分の2以上の賛成をもって会社解散の特別決議がなされた場合、会社は解散となります。

解散となった会社はそのまま清算手続きに入ることになりますが、清算人の選任などに関しては特別決議する必要はありません。出席した議員の過半数の賛成をもって成立する普通決議で大丈夫です。

合併により会社が消滅する場合

複数の会社がひとつの会社になることを合併といいます。

会社法によると合併は、合併する複数の会社のうちの1社が存続する「吸収合併」と、新しい会社をつくって複数の会社を吸収させる「新設合併」の2つの形式があります。

いずれの形式であっても、吸収される会社は消滅することになります(解散手続や精算手続に依らず当然に消滅します)。

破産手続開始の決定

裁判所により破産手続開始決定が下されると、会社は解散となります。この場合も清算手続はありません。

その代わりに、裁判所によって破産管財人が選任され、財産の管理と処分を行うことになります。清算の場合だと、自分たちで清算人を選任しましたが、破産手続の場合だと、裁判所が選任する管財人の下で行うことになります。

裁判所による解散命令

会社の設立目的自体が法に反していたり、違法行為をくり返し行っている企業について適格な申立人は、裁判所に解散命令の申立てを行うことができます。申立てに理由があると認める場合、裁判所は解散を命じ、会社は解散・精算となります。

休眠会社のみなし解散の制度

会社を休眠状態にし続け、最後の登記から12年以上経過した会社を休眠会社といいます。

株式会社の場合、10年に一度は役員変更の登記をすることが会社法によって定められています。つまり、12年もの間なにも登記されていないというのは、実態のない会社だという判断を下されてしまうのです。

こうした休眠会社に対しては、法務大臣が官報公告を行います。この官報公告から2ヶ月以内に登記申請しないと解散したとみなされ、登記官によって解散登記がなされます。

ただし、あくまでも解散となるだけであって、清算は終わっていません。 会社を消滅させるためには、登記官による解散登記の後でも清算人を選任し、清算手続を踏まなければならないのです。  

事業清算の流れ

実際に事業清算を行う際は、複雑で専門的な知識が要求されます。一般的には、弁護士などの専門家に依頼することで、円滑に手続きが進行します。ここでは、事業清算の流れをわかりやすくご紹介します。

解散・清算人登記

破産などの例外を除き、株主総会決議などの会社の解散事由が発生した場合には解散・清算の手続に入ることになります。

清算手続の第一歩は、解散した会社の財産を管理・処分する清算人の選任からはじまります。 株主総会の特別決議によって会社の解散が決まった場合では、同じタイミングで清算人の選任まで決議されることがほとんどです。清算人が決まればすぐに、解散および清算人の登記申請を行い、手続きを進めていくことになります。

なお、登記をする際には、株主総会議事録や株主リスト、清算人の就任承諾書が必要になります。

解散公示(債務申出の公示)

会社の解散と清算人の選任が完了すれば、登記手続きと並行して解散公示を行います。具合的には官報を利用して解散公示は行われます。

解散公示は、債権者へ「債権の申し出をしてください」という通知を行っていることを意味します。 よって、公示から2ヶ月以内に債権の申し出をしなかった債権者は、すべての清算手続が完了し、未分配となった残余財産にしか弁済を請求することができません。

解散確定申告

会社を解散した翌日から2ヶ月以内に解散確定申告をしなければなりません。

解散確定申告は、通常の確定申告と同様に所得金額に基づいて課税されます。なお、基本的には通常の確定申告と変わりはなく、税額控除を受けることができます。ただし特別控除については適用されませんのでご注意ください。

清算結了の登記

会社をたたむためには清算手続きを踏み、最終的には清算結了登記をすることで会社が消滅することになります。

登記にあたっては、清算結了登記申請書や株主総会議事録、清算事務報告書などが必要となります。なお、決算結了登記は決算報告の承認日から2週間以内に申請する必要がありますので、期限を認識した上で手続きを進めていく必要があります。

清算確定申告

清算期間において、会社は財産の処分や換金、債権者への債務の弁済や清算にあたって発生する専門家への報酬金や従業員への退職金を支払ったりします。

そうした支出の結果、残余財産が確定したら決算書と残余財産の分配に関して株主総会での承認を得ます。承認が確定すれば、上記の通り、清算結了登記を行います。

また、残余財産の確定から1ヶ月以内に清算確定申告を行い、所得があれば納税をし、法人としての責務を果たします。  

まとめ|事業清算でお悩みの際は弁護士に

通常の清算手続は、裁判所が介在することもないため、破産手続などの方法に比べると手間がかかりません。もし、債務超過の状態で清算手続に入ろうとすると、特別清算という方法になり、破産手続に似た会社のたたみ方となります。

事業清算は破産手続と比べて手間がかからず、また破産という精神的な負担もありません。しかし手続自体は会社法に則って行われますから、法律知識が要求されるのはもちろんのこと、登記申請や税務処理といった手続きもきちんと踏む必要があります。

これを一人で成し遂げようとするのには無理があります。そこで効果的なのが弁護士に手続きをサポートしてもらうという方法です。法律のプロフェッショナルである弁護士に依頼すれば、円滑に清算手続を済ませることが可能です。

専門家の力を活用することで清算手続に限らず、債権者への対応や財産の処分といったさまざまな場面でも、適切なサポートを受けることができます。事業清算でお悩みの際は、ぜひ弁護士への相談をご検討ください。

事業清算にはどのようなメリットがあるのでしょうか。詳しくご紹介します。

事業清算のメリット

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