著作権に関するトラブルは、企業にとって大きな痛手となる恐れがあります。
例として「海賊版サイトで、A社の漫画雑誌約350冊が無断公開された」という事例では、1億6,000万円もの損害賠償請求が行われるなど、甚大な被害が発生する事態となりました (参考:講談社、海賊版被害で提訴 1億6000万円請求|産経新聞)。
著作権トラブルによる被害を小さく抑えるためにも、まずは弁護士に相談しましょう。
弁護士であれば、依頼内容に応じて早期解決に向けたアドバイスが見込めるだけでなく、自社が著作権トラブルを起こさないよう、未然防止のための対応なども望めます。
この記事では、著作権について弁護士に相談すべきケースや依頼できること、依頼時の費用や弁護士の選び方などをご紹介します。
著作権について弁護士に相談すべきケース
著作権に関する弁護士への相談例としては、主に以下があります。
ここでは、著作権について相談すべきケースや相談時の弁護士対応、相談しない場合のリスクなどについて解説します。
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自社の著作権を侵害されたケース
「自社の著作権を侵害された」というケースとしては、以下があります。
自社の著作権が侵害された
例として、「自社のインターネットコンテンツがそのまま転用されている」というようなケースが該当します。
このようなケースを放置してしまうと、ブランド価値の低下や集客力の低下などにつながる恐れがあります。
まずは証拠を用意したのち、速やかに対処する必要があるでしょう。
ただし対処にあたっては、相手への通知・交渉・訴訟などさまざまな手段があり、相手方の対応姿勢によって取るべき対応は異なります。
やみくもに自力で対応してしまうと、かえって問題が深刻化してしまうことも考えられます。
このような場合は、弁護士に相談することで、相手方への警告・差止請求・損害賠償請求など、ケースごとに合った対応を依頼できるため、問題の早期解決が見込めます。
自社のWebサイトが真似された
上記の例えは机上のものではなく、実際、最近ではWebサイトに関する著作権トラブルも増えているようです。
A新聞社が運営するWebサイトのニュース記事について、デジタルコンテンツを取扱うB社が許可なく同一の見出しを使用したという事例です。 この事例では、「記事見出しの無断使用は著作権侵害である」として、A新聞社がB社に対して、約7,000万円の損害賠償を請求しました。 裁判は第三審までもつれこんだのち、裁判所は、記事の見出しについて「著作物としての独自性は薄い」との考えを示しながらも、「著作権における保護対象にあたる」として、B社に対して約24万円の支払いを命じました。 参考文献:2005WLJPCA10069001 |
特に、Webサイトに関する著作権トラブルでは「このコンテンツは著作物といえるのか否か」などが争点となる場合もあり、上記のように裁判にて解決を図るケースもあります。
そのような場合、出廷や書類作成などの裁判対応が必要となりますが、対応に慣れていないと時間もかかる上、思うような結果とならない可能性もあります。
このような場合も、弁護士であれば相手方との交渉だけでなく、裁判対応などの法的手続きも一任することができるため、トラブル発生から解決まで幅広いサポートが望めます。
著作権を侵害されたと訴えられたケース
他社から「著作権を侵害している」と訴えられたケースとしては、以下があります。
他社から「著作権を侵害している」と損害賠償請求された
場合によっては、以下のように他社から損害賠償を請求されることもあります。
時計修理業者であるA社が、自社サイトに掲載している文言・バナー画像・修理規約などについて、同業界のB社から「内容が酷似しており、著作権が侵害された」と訴えられたという事例です。 この事例では、損害賠償として約1,000万円が請求されました。 裁判所は、サイト文言・バナー画像などについては「ありふれた表現に過ぎず、著作権の侵害は認められない」との考えを示したものの、修理規約については「記載順序・見出し項目・各項目の記載表現などの点で同一であると認められる」として著作権侵害を認め、A社に対して5万円の支払いを命じました。 参考文献:2014WLJPCA07309004 |
他社から著作権侵害を追及された場合は、事実確認や交渉などの対応を速やかに進めなければなりません。
その際は、著作権に関する一定の法律知識や交渉スキルなどが必要になるでしょう。
ただし場合によっては、感情的なやり取りになってしまいトラブルが複雑化してしまったり、訴訟へ発展して高額な賠償額が請求されたりしてしまう恐れもあります。
このような場合は、弁護士に相談することで、「そもそも著作権の侵害にあたるのか」などの調査や、法的視点からの判断を依頼することができます。
また、冷静かつ穏便に話し合いを進めてもらうことができるため、余計なトラブルを起こすことなく解決が見込めます。
著作権等が絡む契約を結ぶケース
以下のような著作権が絡む契約を交わす場合は、「ライセンスの及ぶ範囲はどこまでか」「どのような事項を禁止するか」など、お互いの取り決め内容を記載した契約書を作成するのが通常です。
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ただし「契約書に何を記載するのか」は、契約内容によってそれぞれ異なります。
自力で作成することも可能ですが、対応に慣れていないと「記載条項に漏れがあり機密情報が流出した」などのトラブルとなる可能性もあります。
このような場合は、弁護士に相談することで、契約書の作成・リーガルチェックなどの対応が依頼できるため、安心して契約を交わすことができます。
著作権について弁護士に依頼できる3つのこと
著作権について弁護士に相談した場合、主に以下の対応を依頼できます。
ここでは、弁護士に依頼できることについて解説します。
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「著作権を侵害していないか」という事前チェック
なかには、自社オリジナルだと思っていた製作物が著作権を侵害してしまっていたり、できる限り注意したつもりでも、確認漏れがありクレームが入ったりするケースもあります。
「著作権を侵害しているか否か」については、十分な知識を携えた上で、客観的な視点からの判断が必要となります。
弁護士であれば、「○○という内容の商品を制作・販売する予定だが、他社の著作権を侵害する危険性はあるか」などを相談でき、法的視点からのアドバイスが望めます。
著作権を侵害していないか不安な場合は、弁護士に相談しましょう。
著作権を侵害された場合・訴えられた場合の交渉・訴訟対応
著作権に関するトラブルが発生した場合、まずは相手方との交渉によって解決を図ったのち、解決が難しければ訴訟などの裁判手続きへ移行することになりますが、弁護士には交渉・訴訟ともに一任することができます。
知識・ノウハウのある弁護士であれば、相手方の主張への反論など、自社にとって不利にならないよう対応してもらうことができます。
また、妥協点を探ってもらうなどの対応も依頼でき、場合によっては裁判前の解決も見込めます。
また訴訟にて解決を図る際は、出廷や裁判書類の作成などの裁判対応を行わなければなりません。
特に「訴訟したことがない」という方などは、時間・労力がかかる上、望むような結果とならないこともあります。
その際も、法律知識・経験に長けた弁護士に依頼することで、スピーディかつ適切な対応が望めます。
著作権に関する契約書の作成・リーガルチェック
ソフトウェアなどの著作物について、一定の範囲内で他社への利用を認める場合は著作物利用許諾契約書、他社に権利そのものを譲渡する場合は著作権譲渡契約書などの契約書が交わされます。
ただし契約書作成にあたっては、権利維持・報告義務・表示義務・契約期間・解除条件など、さまざまな条項を漏れなく適切に記載しなければなりません。
十分な知識もないまま契約書を交わしてしまうと、いざという時に期待通りの効力を発生しない可能性もあります。
弁護士であれば、依頼内容ごとの要点を抑えた契約書の作成を依頼でき、また「法的に問題性はないか」というリーガルチェックなども任せられるため安心です。
著作権について弁護士に依頼する際の費用
著作権に関する対応を弁護士に依頼する際は、相談料・着手金・報酬金といった費用が発生し、これらをまとめて「弁護士費用」と呼びます。
ここでは、依頼内容ごとの弁護士費用の相場について解説します。
なお、弁護士費用については「どの事務所に依頼するのか」によっても異なります。
ここで紹介する費用は一つの目安として、具体的な金額については事務所へ直接確認しましょう。
「著作権を侵害していないか」という事前チェック
「自社が著作権を侵害していないか」について弁護士の事前チェックを望む場合は、法律相談を利用することでアドバイスが見込めるでしょう。
相談料の相場としては以下の通りですが、なかには初回のみ無料相談を行っている事務所などもあります。
相談料相場(1時間) |
5,000円~1万円程度 |
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また弁護士への依頼にあたっては、「顧問契約を結ぶ」という選択肢もあります。
顧問契約を結ぶことで、契約料の範囲内で何度でも相談することができます。
ただし契約にあたっては、月々3万~5万円程度の顧問料を支払わなければならないため、サービス内容と比較して判断する必要があるでしょう。
著作権を侵害された場合・訴えられた場合の交渉・訴訟対応
著作権に関する交渉・訴訟などの対応を依頼する場合、「相手へいくら請求するのか」「相手からいくら回収できたのか」などによって費用相場は異なります。
着手金
着手金の費用相場としては以下の通りです。
経済的利益(相手への請求額) |
着手金相場 |
---|---|
300万円未満 |
8% |
300~3,000万円 |
5%+9万円 |
3,000~3億円 |
3%+70万円 |
3億円以上 |
2%+350万円 |
報酬金
報酬金の費用相場としては以下の通りです。
経済的利益(相手からの回収額) |
報酬金相場 |
---|---|
300万円未満 |
16% |
300~3,000万円 |
10%+18万円 |
3,000~3億円 |
6%+140万円 |
3億円以上 |
4%+700万円 |
著作権に関する契約書の作成・リーガルチェック
著作権に関する契約書対応を依頼する場合、「契約書の内容が複雑かどうか」によって費用相場は異なります。
契約書作成
契約書作成を依頼する場合、費用相場としては以下の通りです。
契約書種類 |
費用相場 |
---|---|
定型的な内容の場合 |
10万円~ |
非定型的な内容の場合 |
20万円~ |
リーガルチェック
リーガルチェックを依頼する場合、費用相場としては以下の通りです。
契約書種類 |
費用相場 |
---|---|
定型的な内容の場合 |
3万円~ |
非定型な内容の場合 |
5万円~ |
著作権について弁護士に相談する際の選び方
弁護士を選ぶ際は、依頼内容に合った弁護士を選ぶことが重要です。
一口に弁護士といってもさまざまなタイプがおり、弁護士によって「これまでのトラブル解決実績」や「身に付けている知識・ノウハウ」など、対応内容が大きく異なります。
例として「離婚トラブルの解決には注力しているが、著作権トラブルは初めて対応する」というような弁護士に依頼してしまうと、思っていたように話が進まない可能性もあります。
相談時は、著作権トラブルの解決に注力している事務所や著作権法に詳しい弁護士を選びましょう。
また、早期解決のためには「弁護士としっかりコミュニケーションを取る」という点もポイントとなります。
依頼にあたっては、弁護士の受け答えや雰囲気などもチェックして、「自分と相性の合う弁護士」を選ぶようにしましょう。
相談料が気になるという方は、無料相談を行っている事務所に絞って選ぶのも効果的です。
まとめ
「著作権が侵害された」「著作権を侵害していると訴えられた」など、著作権に関するトラブルについては弁護士の手を借りるのが効果的です。
法律知識に長けた弁護士であれば、相手との交渉や訴訟対応などを依頼でき、不備なく速やかな問題対応が期待できます。
またトラブル発生前であっても、「著作権を侵害していないか」という事前チェックや、契約書作成・リーガルチェックなども依頼できるなど、未然防止のための対応も望めます。
「トラブルを解決してほしい」「のちのち問題にならないか不安…」などの場合は、まずは弁護士に相談しましょう。
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