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会社が合法的かつ安定的な事業活動を展開するには、日ごろからリーガルチェックが欠かせません。
社内の法務部門や外部の弁護士による充実したリーガルチェックの仕組みがあれば、事業活動の法的リスクを大幅に削減できるでしょう。
ただし、リーガルチェックは適切な方法でおこなわなければ意味がありません。
そのため、リーガルチェックをおこなう際は、その目的や方法などを正しく理解しておくことが大切です。
本記事では、リーガルチェックの内容、リーガルチェックが必要とされる理由、リーガルチェック実施時の注意事項などについてわかりやすく解説します。
正しいリーガルチェックで事業運営における法的リスクを軽減するために、ぜひ最後まで参考にしてください。
会社でおこなわれているリーガルチェックとは何のこと?
リーガルチェックとは、企業の事業活動に対して法的観点から調査・分析することです。
企業によっては、法務チェックなどと呼ばれることもあります。
企業は、自社の利益を最大化する目的で事業活動を展開しますが、利益を増やすためなら何をしていいというわけではありません。
取引相手や消費者、一般社会との関係で事業活動を営む以上、適用される法律や法令などは遵守する必要があります。
そこで、法的リスクを回避・軽減し、円滑な事業活動を実現するために、リーガルチェックでは以下のようにさまざまな業務がおこなわれます。
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リーガルチェックとして実施される内容は、企業が所属する業界・事業活動の内容によって異なります。
リーガルチェックの基礎知識については以下の関連記事でも詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
【関連記事】契約書の作成・リーガル(法務)チェックガイド|トラブルを防ぐための基礎知識
会社のリーガルチェックは自分でできる?弁護士に依頼すべき?
リーガルチェックは事業活動を法的観点から評価・分析するものであり、定義上は「誰がリーガルチェックをすべきか」は決められていません。
では、リーガルチェックをより効果的におこなうには、誰がリーガルチェックを担当するといいのでしょうか。
ここでは、企業のリーガルチェックを誰が実施するべきかについて解説します。
1.経営者自身|簡単なチェックだけなら可能
リーガルチェックにかかるコストを抑えたいのなら、経営者自身が経営判断をするときに、リーガルチェックも同時におこなう方法が考えられます。
経営者本人がリーガルチェックをおこなうメリットは、以下のとおりです。
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ただし、経営者は事業活動を展開・運営するうえで多くの業務を担当しなければいけないので、必ずしもリーガルチェックに十分な労力を割けるわけではありません。
実際のところ、細かい業務のリーガルチェックまで経営者本人が対応するのは難しいでしょう。
また、経営者本人に法的素養があるとは限らず、リーガルチェックに漏れが生じる可能性もあります。
つまり、標準的な経営者の場合、簡単なリーガルチェックは可能なものの、複雑な法律問題や取引相手などとの厳しい法的交渉が必要な場面に対応するのは難しいということです。
経営者本人でも簡単なリーガルチェックは可能ですが、完璧なリーガルチェックを実施し続けるのは現実的ではないでしょう。
2.法務担当者|法律知識を基にチェックが可能
リーガルチェックの担い手としては、社内の法務担当者も挙げられます。
法務担当者とは、企業に雇用される従業員として法律関係の業務を扱う部署・担当者のことです。
組織内に強力な法務部署を構えることで、日常的かつ機動的なリーガルチェックが可能になります。
また、法務部局は企業の事業活動の状況にも精通しているので、法的観点だけではなく、経営的な側面も考慮しながら、リーガルチェックを実施してくれるでしょう。
なお、法務部門がおこなう業務には、具体的に以下のようなものがあります。
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たとえば、企業内弁護士(組織内弁護士)を社内に招聘している場合、法務担当者によるリーガルチェックでも十分な成果を発揮できるでしょう。
一方で、法務部門が一定数の人材を抱えているものの、「ほかの部門に比べると法律知識が詳しい」という程度に過ぎず、弁護士資格や司法書士資格を有する人材がいない場合には、訴訟や複雑な法律問題には対応しきれない危険性があります。
社内の法務部門体制を構築してリーガルチェックの外注コストを削減したいなら、弁護士資格保有者や企業内弁護士の採用を検討するべきでしょう。
3.弁護士|専門的な項目についてもチェックが可能
徹底的なリーガルチェックを希望するなら、リーガルチェックそのものを外部の弁護士に依頼するのがおすすめです。
トラブル発生時にスポットで外注するのもよいですし、顧問契約を締結して日常的に弁護士によるリーガルサービスを受けるのもよいでしょう。
法務担当者ではなく、外部の弁護士にリーガルチェックを依頼するメリットとして、以下のものが挙げられます。
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ただし、外部の弁護士のリーガルチェックは、社内の法務担当者がおこなうほど機動的ではありません。
また、法務担当者ほど社内状況に詳しくないので、リーガルチェックを実施してもらった結果、場合によっては会社にとって不利な結果・判断が下される可能性もあります。
さらに、外部の弁護士を頼るには一定の費用が発生する点にも注意が必要です。
以上を踏まえると、事業活動の円滑さと法的安全性のバランスを意識したリーガルチェックを達成したいなら、法務部門の人員を充実させて日常的なリーガルチェックは社内で対応できる環境を整備し、複雑または難易度が高い争訟に直面したときには外部弁護士に依頼するという対応が合理的でしょう。
なお、企業法務弁護士ナビでは、リーガルチェックなどの企業法務を得意とする弁護士を多数紹介中です。
法的リスクのマネジメント方法などに興味がある経営者の方は、この機会にぜひ信頼できる法律事務所までお問い合わせください。
会社はどのタイミングでリーガルチェックをする必要があるの?
リーガルチェックを実施するべき代表的なタイミングについて解説します。
1.契約書を作成するとき
契約書を作成するときには、可能な限りリーガルチェックを実施してください。
なぜなら、契約書作成についてリーガルチェックをすることで、以下のメリットを得られるからです。
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契約書を作成してから実際に締結するに至るまでには、何度も取引当事者間で交渉がおこなわれるのが一般的です。
契約手続きの初期段階から弁護士のリーガルチェックを受けておけば、交渉が円滑に進みやすくなったり、相手方から有利な取引条件を引き出しやすくなったりするでしょう。
2.取引先から契約書を受け取ったとき
取引相手から契約書が送られてきたタイミングでも、リーガルチェックは実施するべきでしょう。
前提として、取引先の担当者との間で何度も口頭でやり取りを重ねていたなどの事情があったとしても、実際に書面で契約書を締結するときには、必ず契約書の細かい条項まで目をとおす必要があります。
口頭でやり取りしていた内容とは異なる条項が契約書に盛り込まれている可能性がありますし、将来的に取引相手との間でトラブルが生じたときに、契約書の記載内容が証拠になって相手方に有利な結果を押し付けられないからです。
契約書には、現場の営業担当者や経営者本人だけでは気付かない法的リスクが存在する場合があるので、どのような取引レベルの契約書であったとしても、取引相手から契約書を受け取ったときには、社内の法務部門や外部弁護士によるチェックを受けることをおすすめします。
会社はどのような手順でリーガルチェックをおこなえばよいか?
社内の法務部門を活用して契約書のリーガルチェックを実施するときの流れは、以下のとおりです。
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それぞれのステップごとに、詳しく解説します。
1.契約の内容や趣旨を把握して契約書の叩き台を作成する
まずは、契約書を作成する取引の内容・趣旨について、以下のポイントに沿って確認しましょう。
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これらの基本事項を把握できたら、契約書の叩き台を作成します。
2.契約書上の問題点の洗い出しをする
叩き台になる契約書を作成し終えたら、契約書に潜む問題点やリーガルリスクを洗い出す段階です。
以下のポイントに沿って、契約書内に問題点がないか確認しましょう。
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3.問題点別に加筆・修正・削除などの提案をする
契約書内に問題点が見つかった場合には、ブラッシュアップするための代替策を提案します。
たとえば、自社にとって不公平な条項が見つかった場合や、過去の取引内容との相違点が見つかった場合には、適宜取引相手と再交渉をして契約内容を見直したり修正したりする必要があるでしょう。
また、形式的なミスが発覚したなら、速やかに加筆・削除・修正などの方法で適切な内容に変更してください。
4.必要に応じて弁護士にダブルチェックを依頼する
契約書内の問題点が法令や業法、ガイドライン違反などの深刻な内容の場合には、外部弁護士によるリーガルチェックが不可欠です。
なぜなら、社内の法務担当者だけでは各種法令や判例・裁判例などとの整合性を図るのが難しいからです。
また、叩き台の契約書内に見つかったミスや問題点が軽微な場合、目立った内容上の問題点が見当たらない場合でも、念のために弁護士のダブルチェックを受けておくことをおすすめします。
弁護士のリーガルチェックをダブルチェックとして活用することで、取引上の安全性を高められるしょう。
5.担当部署に報告したり、取引先と協議したりする
契約書の最終チェックが終了したら、担当部署にその内容を共有・報告してください。
担当部署が取引相手と交渉をして、内容面について問題がなければ、取引相手との契約締結手続きに移行します。
一方、自社側で用意した契約書について相手方から反論などがあった場合には、相手方とさらに交渉を重ねて契約内容について協議を進める必要があります。
再交渉の末、どのような契約条件で合意形成に至るかは、経営戦略的・営業的な判断次第です。
法務部門としては、担当部局からのフィードバックを受けながら、契約締結手続き・契約交渉手続きのサポートに徹するべきでしょう。
会社のリーガルチェックが甘かった場合はどのようなリスクがある?
ここでは、リーガルチェックを実施しなかったり、リーガルチェックのクオリティが低かったりしたときに生じる可能性があるリスクについて解説します。
1.自社にとって不利な契約になる
適切にリーガルチェックを実施しなければ、自社にとって不利な契約条項を見落としてしまうおそれがあります。
たとえば、商品の代金や支払い時期、契約不適合責任に関する特約など、取引条件にはさまざまな注意点が存在します。
民法や商法に規定されている契約不適合責任のルールよりも不利な特約が記載されているにもかかわらず、それに気付かずに契約を締結してしまうと、万が一のときに履行請求や損害賠償請求ができなくなりかねません。
また、事業活動はいくつもの取引が同時並行で進んでいます。
ひとつの取引が円滑に進まなくなっただけで、ほかの取引、ひいては事業活動全体に悪影響が生じるリスクがあるでしょう。
2.契約違反になる可能性が高まる
契約書のリーガルチェックを疎かにすると、契約違反を理由に損害賠償を請求されるリスクが高まります。
契約書には、業務内容・業務範囲・賠償責任が生じる範囲などが明示されなければいけません。
これらを明示することによって、取引関係にある両当事者が負担する債務の内容が明確になります。
しかい、債権債務の内容や賠償範囲を特定できない契約書にサインをしてしまうと、不足の事態が生じたときに自社の賠償範囲を制限できず、高額の賠償責任を追求されかねないでしょう。
3.トラブル時の対処が困難になる
リーガルチェックは、将来的なトラブルを予防する目的で実施されます。
つまり、リーガルチェックが適切に実施されていないと、トラブルが発生する可能性が高まるうえ、トラブル発生時の対処法も不明確な状態になるということです。
たとえば、取引相手の過失が原因で納期までに商品が引き渡されなかったため、契約の解除及び損害賠償請求を検討していたところ、「いかなる事情であったとしても契約解除をしたときには違約金が発生する」という理不尽な条項が定められていたとします。
この場合、商品が納品されない事態に対応することができず、本来取引相手が負担するべき民事上の責任を自社で負担せざるを得なくなるでしょう。
4.トラブルの内容次第では刑事事件などにも発展しかねない
事業活動における取引上のトラブルは、場合によっては当事者間以外の第三者にも波及するリスクがあります。
取引上のトラブルが波及した結果生じるデメリットとして、以下のものが挙げられます。
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このようなリスクを回避するためにも、やはりリーガルチェックは厳密におこなう必要があるでしょう。
さいごに|会社のリーガルチェックに不安があるなら弁護士に相談しよう!
本記事では、リーガルチェックの必要性や注意点、リーガルチェックをおこなわないリスクなどを紹介しました。
リーガルチェックは、事業活動の法的リスクを予防して、安全かつ継続的な会社成長に資するものです。
そして、日常的に生じる契約書のチェックから、民事訴訟のような緊急時の対応に至るまで、多様な場面でリーガルチェックは必要になります。
適切なリーガルチェックを実施するには、社内での体制を整えることはもちろん、外部の弁護士へ依頼することも検討すべきでしょう。
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