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弁護士監修記事
取引・契約

準委任契約とは?請負との違い・指揮命令の範囲・契約書作成のポイントを解説

2018.10.31
社内では業務が賄いきれない場合の手段に、業務委託契約があります。業務委託契約は、請負契約と準委任契約に分類されますが、それぞれ契約内容が異なるため、違いについて知っておくとよいでしょう。この記事では、請負契約と準委任契約の違いや、契約時のポイントを解説します。
監修弁護士
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インテンス法律事務所
弁護士 原内 直哉
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準委任契約とは、法律行為以外の事務の処理を外部の専門家へ委託する契約です。成果物の完成ではなく業務を遂行すること自体を目的とするため、請負契約や労働者派遣契約とは責任の範囲も報酬の発生条件も変わります。

とはいえ、それぞれの違いはわかりにくく、判断に迷う方も多いのではないでしょうか。契約形態の選択を誤ると、意図しない法的責任を負ったり、偽装請負として行政指導や罰則の対象になったりするおそれもあります。

この記事では、準委任契約の定義と2つの種類、委任・請負・派遣・業務委託との違いを解説します。あわせて、偽装請負を防ぐための指揮命令の線引き、契約書に盛り込むべき6つのポイント、収入印紙の要否といった実務上の注意点も、弁護士の視点から網羅しました。

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目次

準委任契約とは|法律行為以外の事務を委託する契約

準委任契約とは、法律行為以外の事務の処理を委託する契約です(民法656条)。専門的な業務を外部の専門家に任せたいときに用いられ、具体的には次のような業務が挙げられます。

  • コンサルタントによる経営改善やマーケティング戦略への助言
  • 公認会計士による会計監査
  • システムエンジニアによるシステムの設計・運用
  • 広告代理店によるキャンペーンの企画・実行

業務を依頼する側を「委任者」、業務を受ける側を「受任者」と呼びます。準委任契約では、成果物を完成させることではなく、業務を遂行すること自体が目的とされます。依頼した作業を誠実に進めてもらうことに対して報酬を支払う、というイメージです。

たとえばコンサルタントに経営改善の助言を依頼した場合、適切なアドバイスがなされていれば、理想どおりの成果が出なくても受任者に責任は発生しません。

また委任者と受任者は対等な関係にあり、雇用契約のような指揮命令関係は生じません。受任者は独立した立場で、自らの裁量によって業務を進めます。

受任者は業務遂行に善管注意義務を負う

準委任契約の受任者は、業務を遂行するにあたって善管注意義務(善良な管理者の注意義務)を負います(民法644条・656条)。業務を担う専門家として通常期待される水準の注意を払う義務のことです。

準委任契約に成果物の完成義務はありませんが、だからといって業務を無責任に進めてよいわけではありません。たとえばシステムの保守を依頼された受任者は、持てる技術や知識を活用し、システムの安全性を確保するよう注意を払う必要があります。

善管注意義務のポイントは次の3点です。

  • 求められるのは、専門家として通常期待される水準の注意
  • 注意を怠って委任者に損害を与えた場合、損害賠償や契約解除の対象になることがある
  • 義務の程度は受任者の職業や社会的地位に応じて判断され、高度な専門性を持つ人材ほど水準は高くなる

受任者は委託者に対して報告義務を負う

準委任契約の受任者は、委任者から求められたときに業務の状況を報告する義務を負います(民法645条)。

前述のとおり、受任者は指揮命令を受けない独立した立場にあります。ただし、指揮命令を受けないことと、業務の状況をいっさい共有しないことは別の話です。委任者が業務の進み具合を把握するための正当な手段として、報告を求めることは認められています。

報告義務は、実務では作業報告書という形で運用されるのが一般的です。委任者にとっては直接の指示を出さずに進捗を確認できる手段として、受任者にとっては業務を遂行した証拠として、双方に意味を持つ仕組みです。

特に、後述する履行割合型の準委任契約では、報告の記録が報酬を請求する際の根拠にもなります。

準委任契約の種類|履行割合型と成果完成型の2種類

準委任契約は、報酬が発生するタイミングによって履行割合型と成果完成型の2種類にわかれます。2020年4月1日施行の改正民法によって、この2つの類型、特に成果完成型の考え方が明確に整理されました。

種類 報酬発生の条件 適した業務 リスクの所在
履行割合型 業務の遂行・工数に応じて発生 コンサルティング・運用保守など 委任者(成果が未達でも支払いが発生)
成果完成型 成果物の引渡しに対して発生 デザイン制作・レポート作成など 受任者(完成しないと報酬が発生しない)

どちらの型を選ぶかによって、報酬をいつ支払うのか、成果物の扱いをどうするのかが変わります。型の選択を誤ると、報酬の支払いや運用面でトラブルに発展しかねないため、委託したい業務の性質に合わせて適切な型を選ぶ必要があります。

それぞれの違いを次で詳しく見ていきましょう。

履行割合型|業務の遂行に応じて報酬が発生する

履行割合型は、業務をおこなった時間や工数に応じて報酬が発生する形態です。特定の成果物が完成しなくても、あらかじめ定めた業務を遂行していれば、その遂行割合に応じて報酬を請求できます。

たとえばシステム開発を依頼する場合に、設計・実装・テストといった工程ごとに報酬を支払う契約が代表例です。期限を迎えた時点で業務の進捗が50%であれば、50%に相当する報酬が支払われる、というイメージです。

作業として何かを納品することよりも、専門的な業務を継続的に提供することに主眼が置かれます。そのため、進捗の管理や報告が報酬の裏付けとして意味を持ちます。

  • 委任者:必ずしも成果が保証されるわけではない点に留意が必要
  • 受任者:成果の確約に縛られず柔軟に対応でき、長期案件でも報酬を定期的に受け取れる

成果完成型|成果物の引渡しに対して報酬が発生する

成果完成型は、委託された業務の結果として得られる成果物を引き渡すことで報酬が発生する形態です。たとえばマーケティングコンサルタントに販売促進施策の立案を依頼し、成果物が納品されたときに報酬を支払う契約が挙げられます。

成果物を引き渡すことが報酬発生の条件ですが、請負契約のように仕事の完成を保証する契約ではありません。あくまで善管注意義務を前提とした準委任契約です。

この型を用いるときは、何をもって成果物とするのか、その基準を契約前に双方で明確に合意しておく必要があります。基準が曖昧なままだと、成果物に対する認識のずれからトラブルに発展しかねません。

  • 委任者:成果物の納品に応じて支払うため、金銭的なリスクを抑えられる
  • 受任者:引き渡さなければ報酬が発生しないため、進捗の管理が特に重要になる

準委任契約が適している業務の具体例

準委任契約を活用するときは、依頼したい業務の性質に合わせて履行割合型と成果完成型を使い分けます。2つの型が、実際にどのような業務に向いているのかを具体的に見ていきましょう。自社が任せたい業務がどちらに当てはまるか、判断する際の目安にしてみてください。

履行割合型が適している業務

履行割合型が向いているのは、成果物の完成ではなく、専門的な業務を一定期間にわたって遂行すること自体が目的の業務です。

代表例が、IT業界のSES契約(システムエンジニアリングサービス)です。エンジニアが客先に常駐、またはリモートで開発や運用保守にあたり、その技術力と工数を提供する形態で、準委任契約の典型的な活用例といえます。

このほかに履行割合型が当てはまるのは、次のような業務です。

  • Webサイトの運用・保守
  • 経営やITのコンサルティング
  • 経理・人事・受付などの事務代行

いずれも、業務を遂行するプロセスそのものに価値の中心がある点が共通点です。

成果完成型が適している業務

成果完成型が向いているのは、専門的な業務を通じて特定の成果物を納品することが目的の業務です。具体的には、次のような業務が挙げられます。

  • 月ごとに区切ったシステム開発における特定機能の実装
  • ロゴやバナーなどのデザイン制作
  • 市場調査や分析レポートの作成

いずれも引き渡す成果物の内容や品質が問われるため、契約前に「何を納品すれば完了とするのか」という基準を明確に定めておく必要があります。

なお、成果物を伴う点で請負契約と混同されやすいものの、成果完成型はあくまで準委任契約であり、仕事の完成を絶対の義務として負うわけではありません。この線引きについては、「請負契約との違い|成果物の完成義務があるかどうか」で詳しく触れます。

準委任契約とほかの契約形態との違い

準委任契約は、委任契約・請負契約・労働者派遣契約・業務委託契約と、それぞれ法的な性質が異なります。

契約形態の選択を誤ると、意図しない法的責任を負ったり、偽装請負のような違法状態に陥ったりするおそれがあります。報酬の発生要件や責任の所在も契約ごとに変わるため、違いを正しく理解し、自社の目的に合った契約を選ぶ必要があります。

まずは全体像を表で整理し、続いて4つの違いを個別に見ていきましょう。

契約形態 目的 完成義務 指揮命令権 報酬発生のタイミング
準委任契約 業務の遂行 なし なし 遂行割合または成果物の引渡し
委任契約 法律行為の遂行 なし なし 遂行割合または成果物の引渡し
請負契約 仕事の完成 あり なし 成果物の引渡し
労働者派遣契約 労働力の提供 なし あり 労働時間

※業務委託契約は法律上の類型ではなく総称のため、この表には含めていません

委任契約との違い|対象が法律行為かどうか

契約と準委任契約の違いは、委託する業務が「法律行為」か「法律行為以外の事実行為」かにあります。

委任契約 法律上の効果を生じさせる法律行為が対象。弁護士への訴訟の委任・司法書士への会社設立の代行など
準委任契約 法律行為以外の事実行為が対象。システム開発の支援・デザイン制作・事務代行など

たとえば弁護士に契約書のチェックを依頼する場合は委任契約、事業戦略のコンサルティングを依頼する場合は準委任契約になります。

もっとも、対象となる業務が違うだけで、契約に適用される基本的なルールは共通しています。善管注意義務や契約解除の規定などは、委任契約の条文が準委任契約にも準用されます(民法656条)。

請負契約との違い|成果物の完成義務があるかどうか

請負契約と準委任契約の違いは、仕事を完成させる義務があるかどうかです。

請負契約 仕事の完成が目的。成果物を完成させる義務を負い、引き渡した成果物に問題があれば契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)も負う
準委任契約 業務の遂行自体が目的。受任者が善管注意義務を果たしていれば、期待した成果が出なくても債務不履行にはならない

請負契約が用いられるのは、建築・工事や運送などです。たとえば建築工事では、依頼された建物を完成させることが契約の目的であり、完成に至らなければ債務不履行として損害賠償を請求されることもあります。

実務では2つを組み合わせる場面も多く、システム開発では要件定義の工程は準委任、開発する工程は請負と、フェーズごとに使い分けるのが一般的です。

なお、再委託の扱いも異なります。請負契約では原則自由ですが、準委任契約は受任者個人への信頼に基づくため、原則として委任者の許諾が必要です。契約書での定め方は「③再委託(二次下請け)の可否を規定する」で解説します。

労働者派遣契約との違い|指揮命令権があるかどうか

労働者派遣契約と準委任契約の違いは、発注者が働き手に直接指揮命令できるかどうかにあります。

労働者派遣契約 派遣先の企業に指揮命令権がある。派遣労働者に対して業務の指示や労働時間の管理を直接おこなえる
準委任契約 委任者に指揮命令権はない。受任者が独立した立場で業務を遂行するため、具体的な作業手順や勤務時間を指示することは認められない

責任の所在も異なります。準委任契約では業務の遂行結果について受任者が責任を負いますが、派遣契約で派遣先に対して責任を負うのは、労働者本人ではなく派遣元の会社です。

また、労働者派遣をおこなうには労働者派遣法に基づく許可が必要で、法的な枠組みそのものが準委任契約とは異なります。

準委任契約であるにもかかわらず、発注者が働き手に指揮命令をおこなうと偽装請負にあたるおそれがあります。「準委任契約が偽装請負になるケースと回避策」で詳しく解説します。

業務委託契約との違い|契約類型か総称か

業務委託契約と準委任契約の違いは、法律上の契約類型かどうかにあります。準委任契約は民法に定められた契約類型ですが、業務委託契約は請負・委任・準委任をまとめて呼ぶ実務上の総称です。

業務委託契約に含まれるのは、次の3つです。

  • 請負契約:成果物の完成を約束する
  • 委任契約:法律行為を委託する
  • 準委任契約:法律行為以外の業務遂行を委託する

「業務委託契約」という名称は、民法には存在しません。契約書のタイトルが「業務委託契約書」となっていても、その中身の実態によって、請負契約か準委任契約のいずれかに分類されます。

どちらに該当するかで適用されるルールが変わるため、契約書の名称ではなく、報酬の支払条件や成果物の完成義務の有無といった実態を確認する必要があります。

後々のトラブルを避けるには、自社の契約がどちらの性質を持つのかを契約書のなかで明確にしておくとよいでしょう。

準委任契約を活用する3つのメリット

準委任契約を活用する3つのメリット

準委任契約は、発注する企業にとって、柔軟で効率のよいリソース確保の手段になります。正社員の雇用や請負契約にはない利点があり、状況が変わりやすいプロジェクトや専門性の求められる業務でとくに力を発揮します。

ここでは、発注者から見た代表的なメリットを3つ紹介します。

①専門スキルを持つプロ人材を柔軟に確保できる

準委任契約を使えば、自社にない専門知識を持つ人材を、必要な期間だけ確保できます。

正社員として採用する場合、採用や教育にかかるコストが継続的に発生します。たとえば経営コンサルティングに長けた人材を社内で抱えるにも、一から育成するにも、相当な負担がかかります。

準委任契約であれば外部の専門家に直接依頼できるため、こうした負担を抑えながら、ITエンジニアや法律顧問、コンサルタントなど、その時々のプロジェクトに必要な専門家を迎え入れられます。

複数の候補を比較したうえで、より専門性が高いところや自社のニーズに合うところを選べる点もメリットです。

②契約期間の制限がなくプロジェクトに合わせやすい

準委任契約には、労働者派遣契約のような期間の制限がありません。そのため、業務の実態に合わせて期間を設定できます。

労働者派遣では、同一の派遣労働者を同じ組織で受け入れられる期間に3年の上限が設けられています。また、日雇派遣は原則として禁止されているため、ごく短期間だけ人手を借りることも簡単ではありません。

準委任契約にはこうした制約がなく、「繁忙期の数週間だけ業務を委託する」といった短期の対応も、システムの保守運用のように腰を据えて長く関わってもらう長期の依頼も可能です。双方の合意があれば、契約期間の延長や短縮、業務内容の見直しも柔軟に調整できます。

③社会保険料などの負担がなくコストを抑えられる

準委任契約は雇用契約ではないため、企業側に社会保険料や労働保険料の負担が発生しません。法定福利費を抑えられる点は、財務面で見逃せないメリットです。

項目 雇用契約(正社員など) 準委任契約
社会保険料の負担 企業と労働者で折半 なし(受任者の自己負担)
労務管理(勤怠・有給など) 必要 不要
残業代の支払い 必要 不要

残業代の計算や有給休暇の管理といった労務管理も不要で、純粋に業務の対価だけを支払うシンプルな構造になります。

ただし、コストを抑えられるからといって、どんな条件でも自由にできるわけではありません。取引の内容によっては取適法(旧・下請法)やフリーランス新法の適用対象となり、報酬の支払いなどに一定のルールが課されます。

準委任契約を活用する3つのデメリット

準委任契約を活用する3つのデメリット

一方で、準委任契約には注意しておきたいデメリットもあります。指揮命令の制限・成果の不確実性・ノウハウが蓄積しにくいという3点です。いずれもメリットの裏返しにあたるもので、事前に把握しておくと契約後のトラブルを避けやすくなります。

①発注者に業務の指揮命令権がない

準委任契約では、委任者は受任者に対して作業手順や作業時間を細かく指示できません。業務の進め方は受任者の裁量に委ねられるため、工程を細かくコントロールしたい業務には向いていません。

派遣労働者であれば指揮命令権にもとづいて進め方まで指示できますが、準委任契約で同じことをすると偽装請負とみなされるおそれがあります。信頼関係のある取引先ならともかく、初めて契約する相手に細かく指示を出せない点は、不安に感じられるかもしれません。

対策として有効なのは次の2点です。

  • 契約書のなかで業務の範囲と報告のルールを明確に定めておく
  • 指示ではなく報告を通じて進捗を把握する

なお、具体的な指揮命令が欠かせない業務であれば、準委任契約ではなく別の契約形態を検討しましょう。

②期待した成果が得られなくても報酬が発生する

準委任契約、とくに履行割合型では、最終的な成果やビジネス上の成功までは保証されません。受任者が善管注意義務を果たして業務を進めていれば、期待した結果に至らなくても、委任者には報酬を支払う義務が生じます。

これは次の2つの場面で問題になります。

  • 成果物の品質が期待に届かない場合:
    修正を依頼することはできるが、そのぶん契約期間が延び、スケジュールの遅延や追加コストにつながる
  • 契約期間内に業務が終わらない場合:
    ​​​​​​​遂行した割合に応じた報酬は発生するため、成果が中途半端なまま費用だけかかることがある

費用に見合う成果を得られない事態を避けるには、発注前に受任者のスキルや実績をよく見極めることが大切です。

あわせて、業務の範囲やどこまで対応してもらうかの基準を契約書で具体的に合意し、着手後も進捗の確認や認識のすり合わせを定期的におこなっておくと安心です。

③社内にノウハウが蓄積されにくい

外部の人材に業務を任せる以上、その業務で得られた知見やスキルが自社の従業員に残りにくいという側面があります。

受任者が業務を終えて契約が終了すると、その業務の進め方が社内で見えなくなり、いわゆるブラックボックス化を招くおそれがあります。似たような案件が発生するたびに、また外注に頼らざるを得ない状況にもなりかねません。

とくに事業の中核を担う業務やシステムの運用で外部への依存が高まりすぎると、いざというときに自社で対応できなくなります。

対策として、次のような工夫を契約に盛り込んでおくとよいでしょう。

  • 業務の手順をマニュアルとして残してもらう
  • 自社の社員が受任者と一緒に作業する体制を組む
  • 進捗を共有する定期的なミーティングを設定する

準委任契約が偽装請負になるケースと回避策

準委任契約でとくに注意したいのが、偽装請負のリスクです。契約書の形式は準委任でも、実態が違法な労働者派遣とみなされてしまうケースを指します。

準委任契約に指揮命令権はありません。この前提を踏まえずに指示を出してしまうと、偽装請負として重いペナルティを受けるおそれがあります。実務でも起こりやすいトラブルのため、委任者と受任者の双方が、どこからが違法になるのかを理解しておく必要があります。

ここでは、違法と判断される基準と、安全に取引するための回避策を解説します。

なぜ偽装請負は違法なのか

偽装請負とは、本来は労働者派遣契約を結ぶべき実態であるにもかかわらず、準委任契約や請負契約を装って労働者を働かせることをいいます。

契約上の建前 実際の実態(偽装請負)
委任者と受任者は対等な準委任契約 委任者が受任者のスタッフに直接指示・命令を出している
受任者が業務を自己完結する 委任者が勤務時間や評価まで管理している

偽装請負が違法とされるのは、労働者を保護する仕組みを回避してしまうためです。労働者派遣であれば派遣元が労災保険や社会保険への加入、労働時間の管理といった責任を負いますが、偽装請負ではこうした保護が働き手に及びません。

偽装請負と判断されると、行政指導や是正勧告がおこなわれ、悪質なケースでは企業名が公表されます。無許可で労働者派遣をおこなったとみなされれば、労働者派遣法59条2号にもとづき1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されるおそれもあります。取引先や社会からの信用を失うことにもつながります。

偽装請負とみなされる指揮命令の具体例

偽装請負に当たるかどうかは、委任者が受任者に対して指揮命令をおこなっているかどうかで判断されます。

基準となるのは、業務の進め方、労働時間、人事への介入の3つです。作業手順を細かく指示する、始業・終業時刻を指定する、受任者の従業員を直接評価するといった行為が問題になります。

具体的なOK例とNG例は以下のとおりです。

場面 適法な対応(OK) 違法となりうる対応(NG)
業務の依頼 成果物の仕様・品質・納期を伝える 作業手順を一つひとつ指示する
連絡方法 受任者の責任者を通じて依頼する 現場の担当者へ直接指示を出す
勤務時間 納期の範囲で受任者に委ねる 始業・終業時刻や残業を指定する
人員 必要な業務内容だけを伝える メンバーを指名し交代を命じる
評価 成果物の内容を確認する 担当者個人を直接人事評価する

現場の担当者が悪気なくNGの対応をとってしまうケースも多いため、社内で基準を共有しておくことが大切です。

偽装請負を防ぐための2つの対策

偽装請負を防ぐには、次の2つの対策が有効です。

①受任者の業務責任者を通じて依頼する

委任者から受任者の担当者へ直接指示を出すのをやめ、依頼や連絡は必ず受任者側の業務責任者を通す体制を整えます。窓口を一本化すれば、現場での直接指示を防ぎやすくなります。受任者が一人で常駐する場合はとくに指示関係が生じやすいため、依頼の経路をあらかじめ決めておきましょう。

②作業の管理ではなく結果の報告で把握する

作業のプロセスを管理するのではなく、定期的な進捗ミーティングや作業報告書の提出によって成果を確認する方法に切り替えます。契約書に委任者は指揮命令をおこなわない旨を明記し、現場の担当者にも周知しておくと認識のずれを防げます。

なお、自社の取引が準委任として適切かどうかの判断は難しい部分もあります。迷う場合は弁護士に診断してもらうと確実です。

準委任契約書を作成する際の重要ポイント6つ

準委任契約をめぐるトラブルの多くは、契約書の記載が曖昧なことから生じます。口約束だけで業務を委託すると、後になって言った・言わないの争いになりかねません。とくに報酬の条件、権利の帰属、責任の範囲は、明確にしておかないと自社の不利益に直結します。

ここでは契約書で確認すべき6つのポイントを、記載例とあわせて解説します。なお、記載例はいずれも基本形です。そのまま流用せず、自社の実態に合わせて弁護士のリーガルチェックを受けることをおすすめします。

①業務内容と報酬発生条件を明確にする

契約書には、どこまでの業務をおこなうのかという業務範囲と、報酬がどう発生するのかという条件を具体的に定めます。

業務範囲が曖昧なままだと、契約に含まれない追加作業を無償で求められるといったトラブルが起こりがちです。報酬については、履行割合型なら「月額◯◯円・基準稼働時間◯◯時間」のように計算の根拠を示し、成果完成型なら何をもって完了とするかの検収基準を明記します。

あわせて、業務にかかる交通費や材料費などの経費を、どちらがどこまで負担するのかも定めておくと、費用をめぐる行き違いを防げます。

記載例
乙は、本契約に定める○○業務を遂行し、甲は乙に対し月額金○○円(税別)を支払う。なお、基準稼働時間(○○時間)を超過した場合は1時間あたり○○円を加算し、下回った場合は1時間あたり○○円を控除して精算する。

②成果物の知的財産権の帰属を定める

業務の過程で成果物が生じる場合は、その著作権や特許権などの知的財産権が誰に帰属するのかを明記します。

著作権は原則として、実際に創作した受任者に帰属します。ただし実務では、委任者が納品物を自由に利用したい、権利ごと譲り受けたいと考えるケースが多くあります。その場合は、成果物の引渡しまたは報酬の支払いと同時に、著作権を委任者へ移転する条項を設けるのが一般的です。

このとき、著作権法27条・28条の権利(翻案権や二次的著作物に関する権利)も譲渡の対象に含めておく点がポイントです。これらは「譲渡する」と書くだけでは移転せず、契約書で個別に明示する必要があります。あわせて、受任者が著作者人格権を行使しない旨も定めておくと、後の利用がスムーズです。

記載例
本成果物に関する著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)は、成果物の引渡し[又は:報酬の支払い]をもって甲に移転する。乙は、自ら並びにその役員、従業員及び再委託先等の実際の制作者をして、甲及び甲が指定する者に対し、著作者人格権を行使させないものとする。

③再委託(二次下請け)の可否を規定する

受任者が業務の一部または全部を第三者に再委託してよいかどうかを、契約書で明確にします。

準委任契約では原則として、委任者の許諾なく再委託はできません。情報漏えいや品質低下を防ぐ観点からも、「事前の書面による承諾を要する」と定めておくと安全です。

反対に、受任者がチームで案件に対応する前提であれば、再委託を認める旨を書いておかないと契約違反になりかねません。再委託を認める場合は、再委託先の行為について元の受任者が責任を負うことも定め、責任の所在を明確にしておきましょう。

記載例
乙は、甲の事前の書面による承諾を得た場合を除き、本業務の全部又は一部を第三者に再委託してはならない。乙は、再委託先の行為について、自らの行為と同等の責任を負う。

④秘密保持(NDA)に関する条項を設ける

業務のなかで知り得た機密情報や個人情報の漏えいを防ぐため、秘密保持の条項を設けるか、別途で秘密保持契約(NDA)を結びます。

準委任契約では、受任者が委任者の社内システムや顧客データなど、重要な情報に触れる機会が多くあります。秘密情報の範囲、目的以外での使用の禁止、契約終了後の情報の破棄や返還について、あらかじめ定めておく必要があります。

万一の漏洩に備えて損害賠償の義務も規定しておくと、情報管理の抑止力が高まります。

記載例
甲及び乙は、本契約に関連して相手方から開示された秘密情報(秘密である旨が明示された情報及びこれに基づき知り得た営業上・技術上の情報をいう)を、本契約の目的以外に使用せず、第三者に開示又は漏えいしてはならない。本条の義務は、本契約終了後も○年間存続する。

【関連記事】秘密保持契約(NDA)とは?契約書の書き方、ひな形、締結の流れまで徹底解説

⑤契約解除・損害賠償のルールを定める

どのような場合に契約を解除できるのか、また損害が生じたときの賠償の範囲について、明確なルールを定めます。

民法上、準委任契約は当事者双方がいつでも解除できるのが原則です(民法651条)。ただし、相手方に不利な時期に解除した場合には、損害を賠償する責任を負うことがあります。

実務ではこの原則をそのままにせず、「解除する場合は◯ヵ月前までに書面で通知する」といった特約を設けるのが一般的です。履行割合型では、解除の日までに遂行した割合に応じて報酬を支払う旨も定めておくと、精算をめぐる争いを避けられます。

あわせて重要なのが、損害賠償の範囲を定める責任制限の条項です。準委任契約は成果物の完成義務がないぶん、どこまでの損害を賠償するのかが争点になりやすいという特徴があります。賠償額の上限を委託料の範囲内とするなど、責任の範囲をあらかじめ限定しておくと、想定外の負担を防げます。

記載例
第○条(中途解約) 甲又は乙は、○ヵ月前までに相手方に書面で通知することにより、本契約を将来に向かって解約することができる。
第○条(契約解除) 甲又は乙は、相手方に本契約の条項に違反する事由が生じた場合、相当期間を定めて書面により催告し、なお是正されないときは、直ちに本契約の全部又は一部を解除することができる。
第○条(損害賠償) 甲又は乙は、本契約の履行に関し、相手方の責めに帰すべき事由により損害を被った場合、相手方に対し、その損害の賠償を請求することができる。ただし、乙が負う賠償責任の額は、本契約に基づき甲が乙に支払った委託料の総額を上限とする。

⑥収入印紙が必要なケースを確認する

準委任契約書は、原則として収入印紙が不要です。ただし、契約の内容によっては印紙の貼付が必要になるケースがあります。

印紙が必要になるケース 該当する文書
無体財産権の譲渡を含む場合 第1号文書(権利譲渡の記載があるシステム開発など)
契約の実態が請負に該当する場合 第2号文書
3ヵ月を超える継続的取引の場合 第7号文書(基本契約書、印紙税額は4,000円)※

※営業者間の契約で、契約期間が3ヵ月を超え、かつ更新の定めがあるものに限られます。

印紙の貼り忘れには、本来の印紙税額の最大3倍にあたる過怠税が課されるおそれがあります。なお、電子契約で締結すれば印紙税はかからないため、コストの削減や手続きの簡略化の面でも有効な選択肢です。

【関連記事】準委任契約で印紙が必要なケースや印紙税額・貼り忘れた際の罰則を解説

準委任契約のトラブルを防ぐなら弁護士に相談すべき

準委任契約に関する法的なリスクをできるだけ抑え、安全に取引を進めたいなら、企業法務に強い弁護士へ相談するのが確実です。

前章で触れたように、インターネット上のひな形をそのまま使うと、自社のビジネスの実態に合わず、思わぬ不利益を招くことがあります。さらに、準委任契約には取適法(旧・下請法)やフリーランス新法など関連する法令が絡みます。

とくに取適法は2026年1月に施行されたばかりで、従来の資本金基準に加えて従業員基準が追加されるなど、規制の対象が広がっています。専門家の力を借りれば、こうした変化に対応しながら自社に合った契約を整えられます。

自社に有利な契約書の作成・リーガルチェックを依頼できる

弁護士に依頼すれば、自社の立場に沿った、法的に有効な契約書を作成・修正してもらえます。

  • 発注する側:業務範囲の限定や秘密保持、知的財産権の確保を徹底し、期待した成果が得られないリスクに備える条項を盛り込める
  • 受注する側:過度な責任や無報酬での追加作業を強いられないよう、免責の範囲や報酬の基準を明確にできる

ゼロから作成する場合はもちろん、相手方から提示された契約書のリーガルチェックだけでも依頼できます。契約を結ぶ前に一度専門家の目を通しておくと安心です。

偽装請負など違法な取引を事前に防げる

弁護士に相談すれば、知らないうちに違法な取引に踏み込んでしまう事態を防ぎ、企業のコンプライアンスと信用を守れます。

準委任契約の運用には、偽装請負(労働者派遣法違反)のリスクがつきまといます。さらに、2024年11月1日に施行されたフリーランス新法にも注意が必要です。

フリーランスへ業務を委託する企業には、取引条件を書面などで明示すること、報酬を給付の受領日から60日以内に支払うこと、不当な報酬の減額をしないことなどが義務づけられました。準委任契約でフリーランスに発注する企業は、これらへの対応も求められます。

弁護士であれば、業務の実態をヒアリングしたうえで、「この取引は準委任ではなく請負にすべき」「ここは派遣の許可が必要」といった取引そのものの適法性を診断できます。

すでにトラブルが起きている場合でも、早期の解決に向けて代理人として交渉を進められます。準委任契約に不安があるなら、まずは相談してみることをおすすめします。

準委任契約書の作成・リーガルチェックなら「企業法務弁護士ナビ」

「この契約書のままで自社に不利益はないか」「うちの取引は偽装請負にあたらないか」。準委任契約をめぐる判断は、調べるほど複雑で迷いがちです。とはいえ、どの弁護士に相談すればいいかわからない方も多いはずです。

そこで役立つのが、企業法務に注力する弁護士を探せるポータルサイト「企業法務弁護士ナビ」です。地域と相談内容を選ぶだけで、契約書の作成やリーガルチェックを取り扱う弁護士を簡単に探せます。さらに、次のような条件で絞り込めます。

  • 初回の面談相談無料
  • 電話相談に対応
  • 休日の相談が可能

自社に有利な契約書の作成、相手方から提示された契約書のチェック、取引スキームが適法かどうかの診断、トラブルが起きたときの代理交渉まで、幅広く相談できます。契約を結ぶ前の段階から、気軽に相談してみましょう。

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準委任契約に関するよくある質問

準委任契約は、名称ではなく実態によって法的な性質が判断されます。判断に迷いやすい実務上のケースについて、よくある質問に答えます。

Q. SES契約は準委任契約に該当する?

IT業界のSES契約(システムエンジニアリングサービス)は、原則として履行割合型の準委任契約に該当します。エンジニアの技術力や工数を提供するもので、成果物の完成を目的としないためです。

ただし、客先に常駐して働く形態が多いため、委任者が現場のエンジニアへ直接指示を出してしまい、偽装請負とみなされるリスクが高い契約でもあります。適法に運用するには、受任者側の責任者を配置し、指揮命令の独立を保つことが欠かせません。

Q. 準委任契約に契約不適合責任はある?

準委任契約では、原則として契約不適合責任は生じません。業務の遂行そのものが目的であり、善管注意義務を果たしていれば、期待した成果に至らなくても責任を問われないためです。

ただし、成果完成型で納品した成果物に不備があった場合には、債務不履行として責任を問われることがあります。準委任だからといって、一切の責任を負わないわけではない点には注意しておきましょう。

Q. 準委任契約を中途解約したら報酬はどうなる?

準委任契約は、当事者双方がいつでも解約できるのが原則です(民法651条)。そのうえで、報酬の扱いは契約の型によって変わります。

履行割合型であれば、解約の日までに遂行した割合に応じて報酬が発生します。ただし、相手方にとって不利な時期に一方的に解約した場合は、その損害を賠償する責任を負うことがあります。解約の手続きや報酬の精算方法を契約書に定めておくと安心です。

Q. 不動産の仲介業務は準委任契約?

不動産の媒介契約は、宅地建物取引業法に基づく契約ですが、民法上は準委任契約に近い性質を持つと考えられています。売買契約や賃貸借契約そのものを代理して結ぶのではなく、契約の成立に向けたあっせんや条件交渉といった事実行為をおこなうためです。

ただし、宅地建物取引業法によって媒介契約書の交付や報酬額の上限といったルールが定められており、報酬は取引の成立を条件とする成功報酬型が一般的です。このように、業界ごとの特別法が民法に優先して適用される場面もあります。

Q. 準委任契約で作業報告書は必須?

作業報告書の作成は、法律上の義務ではありません。ただし実務では、善管注意義務を果たしたことの証拠として、また報酬を請求する根拠として重要な役割を果たします。

とくに履行割合型では、どれだけの時間をかけて何をおこなったのかを示せないと、報酬の支払いをめぐるトラブルに発展しかねません。委任者にとっても、指揮命令をせずに進捗を把握する手段になります。

契約書に「毎月末までに作業報告書を提出し、委任者の確認をもって業務完了とする」といった条項を設けておくとよいでしょう。

まとめ

準委任契約は、法律行為以外の事務を委託する契約で、成果物の完成ではなく業務を遂行すること自体を目的とします。報酬の発生の仕方によって履行割合型と成果完成型の2種類にわかれ、委任・請負・労働者派遣・業務委託とはそれぞれ法的な性質が異なります。

実務でとくに気をつけたいのが、偽装請負のリスクです。委任者が受任者に直接指揮命令をおこなうと、違法とみなされるおそれがあります。トラブルを避けるには、報酬条件・権利の帰属・再委託の可否などの項目を契約書で明確に定め、実態に即した運用を心がける必要があります。

契約形態の選び方や契約書の作成・チェックに少しでも不安があれば、企業法務に強い弁護士に相談してみてください。

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弁護士・司法書士の資格を有している他、建設・不動産会社の経営経験もあり◎休日の面談や電話・オンラインでの面談も受け付けている。
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本記事は企業法務弁護士ナビを運営する株式会社アシロ編集部が企画・執筆いたしました。

※企業法務弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。

本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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