
企業が人材を雇用しようとするとき、正社員、契約社員、アルバイトやパートタイマーと様々な雇用形態があります。
どのような雇用形態であれ、必ずしも雇用契約書を交わす義務はありません。
しかし、労働基準法第15条(労働条件の明示)では、書面で労働条件を通知する義務が定められているものの、パートとして雇用された人の中には雇用契約書がない、その他労働条件を記載している書面をもらっていない、という人がいるのを耳にします。
パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善に関する法律)では、「パートとして雇用しようとするとき、雇用契約書等の書面で必ず明示しないといけない」という事項が定められています。
それはどのような事項なのか、パートタイマーでも雇用契約書の必要性や交わすことでのメリットなどを説明します。
無料相談できる弁護士一覧
雇用契約におけるパートと正社員の違い
よく従業員の雇用形態を正社員やパート等と言い分けていますが、実は法律では明確にそのような定義分けはしていません。
一般的に正社員とパートとでは以下の二点の違いで認識されています。
期間の定めがあるか
パートタイム労働法第2条(定義)では「短時間労働者とは、所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう」と明記されています。
通常の労働者とは一般的に正社員を指していて、労働時間が正社員より少ない人のことをパートタイマーとしています。
雇用期間についても正社員は定めがありませんが(無期雇用契約)、パートは期間に定め(有期雇用契約)がある場合が多いです。
月給か時給か
給与についても違いがあります。
パートは正社員より労働時間が少ないので時給である場合がほとんどです。
働いた時間分が給与となるのに対し、正社員は予め月給として定められている場合がほとんどです。
正社員とパートの雇用契約書の違い
人を雇用しようとするときに書面で労働条件を明示する義務が企業側に課せられています(労基法15条「労働条件の明示」)。
多くの場合、雇用契約書という形で労働条件を記載します。
基本的には一緒
正社員とパートで雇用する際の雇用契約書に記載する事項は基本的には同一です。
しかし、パートタイム労働法では、必ず以下の4つの事項について明示しないといけないと定められています。
昇給の有無
給与に関して、能力等に応じて昇給はあるのかについてです。
退職手当の有無
退職時に手当が支給されるのかについてです。
賞与の有無
賞与の支給があるのかについてです。
相談窓口の有無
就業する上で相談したい事ができた時に、相談窓口はどこにあって誰に相談すれば良いのかについてです。
以上、4つの事項について必ず書面にて明示しないといけません。
雇用契約書の作成は義務ではない
前述の通り雇用契約書の作成は義務ではありません。
したがって、必ずしも雇用契約書に上記の労働条件について記載することは義務ではありませんが、何かしらの書面で明示する義務はあります。
ですから雇用契約書に明記したほうが効率的であり、企業と労働者側の認識の違いが発生することがありません。
パートタイマーにも雇用契約書は必要
労働条件について企業と労働者が納得の上で雇用契約を締結するにあたって、雇用契約書の必要性は非常に高いものです。
労働条件の提示は義務
どのような形であれ書面にて労働条件を提示するのは企業側の義務です。
その手段として雇用契約書や労働条件通知書といったものがあります。
必ず書面でないといけないので、口頭で伝えるだけでは違法になります。
もし書面での提示がなければ労働者は雇用契約を即時に解除することができますし、企業には30万円以下の罰金が課される場合があります。
雇用契約書を交わさない企業はブラック?
必ずしも雇用契約書を交わさないからといってその企業がブラックとは言い切れませんが、口頭でしか言わなかったり書面での提示がなければブラック企業の可能性は高いです。
そのような企業で働いていると、後々賃金や労働時間のことなどでトラブルになる可能性は非常に高いと思われます。
パートでも雇用契約書を結ぶほうが企業のリスクを回避できる
ここまで説明してきたように、正社員であろうがパートであろうが雇用契約書を交わすことで企業にとってリスクを回避できます。
双方納得の上での雇用契約であれば、後に給与、休日、労働時間の条件が違うといったトラブルも回避することができます。
まとめ
パートタイマーでの雇用契約であっても雇用契約書を交わす必要性をお分かりいただけたかと思います。
これは企業にとっても労働者にとってもとても意味のあることで、お互いに気持ちよく仕事をしていく上で大事なことです。
無料相談できる弁護士一覧