経営悪化に悩む企業の再建手段として、企業再生というものがあります。
しかし、中には法的知識が必要になるケースもあるため、「トラブルなく手続きできるか不安」という場合は、弁護士への相談をおすすめします。
企業再生の例としては、投資家の資金を活用して企業買収を行うなどして、グループの再構築を図る、といったことや、不採算部門を切り離して採算部門に注力するなどして、資金繰りの好転を図る、といったものがあげられます。
この記事では、このような企業再生にスポットを当て、企業再生を弁護士に相談するメリット・費用・事務所の選び方などを解説します。
企業再生を弁護士に相談する前の基本概要
まずは、企業再生とは何かについて解説します。
企業再生の種類・方法
企業再生は、裁判所を介して行う法的再生と、裁判所を介さずに行う私的再生に分類されます。
法的再生では、法的スケジュールに沿って手続きが進められますが、私的再生では、法的スケジュールによらず、債権者と債務者とで直接交渉するなどして、手続きが進められます。
法的再生については、さらに『再生計画の実行などによって、企業の存続を図る』再建型手続きと、『企業の解散・消滅などによって、債務の返済を図る』清算型手続きに細分化されます。
企業再生には『合併』『会社分割』『事業譲渡』などの組織再編を伴うこともあります。
ただし、どの方法によって大きな効果が望めるかについては、現在企業が置かれている状況によって異なります。
企業ごとに、冷静かつ客観的な視点から分析・判断する必要があるでしょう。
法的再生と私的再生どちらを選ぶべき?
法的再生と私的再生とでは、それぞれ手続きの進め方が異なります。
企業再生を検討する場合は、「法的再生と私的再生どちらを選択するべきか」について、十分考える必要があるでしょう。
法的再生では、法的スケジュールに沿って手続きが進められます。
したがって、債権者それぞれに対して公平かつ透明性をもった手続きの進行が望めますが、そのぶん柔軟な対応が難しいケースもあります。
一方、私的再生では、法的スケジュールによらずに手続きが進められます。
したがって、柔軟かつスピーディーな手続きの進行が望めますが、特に債権者が多い場合には、それぞれに対して公平に対応することが難しいケースもあります。
法的再生と私的再生のどちらを選択するべきか検討する際は、『債権者の数』や『債権者との関係性』などが、ポイントとして考えられるでしょう。
企業再生の流れ
企業再生については、主に以下の流れで進められます。
- 事業状況・財務状況などの現状把握
- 事業再生方針の策定
- 再生後の事業計画の作成
- 必要資金の確保・スポンサー企業の獲得
- 再生手続きの準備
- 再生手続きの実行~終了
また、企業再生については、弁護士のサポートを得た上で進めるケースも多いようです。
事務所によって異なる部分もあるかもしれませんが、弁護士に依頼した場合は、主に以下の流れで進められます。
- 弁護士への連絡~面会の予約
- 企業構成・資金繰り状況などの報告
- 報酬契約の協議~締結
- 弁護士による企業訪問
- 公認会計士・税理士などによる経営分析
- 再生手続きに関する打ち合わせ
- 再生手続きの実行~終了
企業再生を弁護士に相談するメリット
企業再生については、自力で手続きを進めることが困難な場合も考えられます。
そのような場合、弁護士に相談することで、事態が好転する可能性があります。
この項目では、企業再生を弁護士に相談するメリットについて、解説します。
手続きをスムーズに進めることができる
企業再生を行うためには、事業・財務状況などに関する正確な現状分析や、契約書の作成など、さまざまな手続きをこなす必要があります。
特に、契約書の作成については、法律が絡むものもあるため、不備があってはいけません。
初めて企業再生を行う場合などは、こうした手続きに思わぬ時間・手間がかかることも考えられます。
そこで、知識・経験のある弁護士に相談することで、「分析内容は正確か」「再生計画は現実的か」「資金繰りに問題はないか」など、各手続きについてチェック・サポートが受けられるため、スムーズな手続きの進行が望めます。
法的トラブルを回避できる
手続きを進める上では、法的トラブルが発生する可能性もゼロではありません。
弁護士に相談することで、法的トラブルが発生しないよう、サポートを受けることができるでしょう。
企業再生については、弁護士のほかにも手続きサポートを行っているところはあります。
しかし、法的視点からのサポートが期待できるという点は、弁護士ならではのメリットです。
今後の経営戦略について見直しが図れる
不備なく手続きを完了させることができたとしても、再生内容の中身が一時的なものであっては、再び同じような事態に陥ってしまう可能性があります。
弁護士に相談することで、企業再生に至るまでの原因追及や、再び同じことが起こらないよう、防止策の策定などについて助言が望める、という点はメリットといえます。
また、中には、『企業再生ではない手段を選択した方が適切』と考えられるケースもあるかもしれません。
『そもそも自社は、企業再生を行うべきなのか』について、判断に悩んでいる場合なども、まずは弁護士に相談することで、よりよい方向に進むことができるでしょう。
企業再生を相談する際の事務所の選び方
弁護士に相談する際は、「どの事務所を選ぶか」も大切です。
この項目では、企業再生を相談する際の事務所の選び方について、解説します。
企業法務に注力している
一口に弁護士といっても、業務分野・法律分野は非常に幅広いため、事務所によって注力している分野は異なります。
実際に事務所を選ぶ際は、企業再生に注力しているところや、企業法務全般を取り扱っているところなどを選ぶことをおすすめします。
相談解決実績が豊富
弁護士に相談する際は、知識だけでなく「どれだけの経験があるか」という点も、判断材料に入れて考える必要があります。
事務所によっては、HPに解決実績を載せているところなどもあるため、相談前に一度確認することをおすすめします。
幅広い人的ネットワークがある
企業再生については、税理士や会計士などの視点からのサポートが必要になるケースもあります。
その際、幅広い人的ネットワークを持つ事務所であれば、これらのサポートの依頼もスムーズに行うことができるでしょう。
企業再生を弁護士に相談する際の費用
弁護士に相談する場合は、『相談料』『着手金』『報酬金』『実費(交通費・通信費など)』などを支払う必要があります。
費用については、相談料3万円/1時間、着手金100万円(私的再生)、150万円(法的再生)という設定のところもあるようですが、これはあくまで一例です。
企業再生に関する相談は、負債規模・再生手段・経営状況などによって費用幅が大きく異なるため、具体的な費用相場を提示することは困難です。
中には、「初回相談であれば無料」という事務所や、「報酬金は手続きがすべて終了してから決定」という事務所などもあるため、まずは相談先に直接確認を取った方がよいでしょう。
まとめ
経営悪化に悩んでいる企業は、企業再生を行うことで事態が好転する可能性があります。
しかし、事業・財務状況などの正確な現状分析や、契約書の作成などを不備なく行う必要があるため、思わぬ時間・手間がかかることも考えられます。
手続きに少しでも不安のある方は、弁護士に相談することで、手続きの円滑化や、法的トラブルからの回避などが望めます。
また、弁護士に相談する際は、「どの事務所に相談するか」という点が大きなポイントです。
各事務所の注力分野や解決実績などについて比較検討し、費用が気になる方は直接確認を取るなどして選定するとよいでしょう。
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