事業再生手続きの期間について|法的再生・私的再生それぞれ解説!

専門家監修記事
事業再生にかかる期間についてご紹介します。事業再生には「法的再生」と「私的再生」があり、裁判外で債務者と債権者が交渉する私的再生のほうが、短期間で事業再生を行うことが可能です。法的再生や私的再生を選ぶと、どのくらいの期間がかかるのか、目安としてご覧ください。
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
事業再生・破産・清算

「事業再生を検討しているが、どのくらいの期間がかかるのか知りたい」。そうお考えではないでしょうか?

事業再生には「法的再生」と「私的再生」があり、裁判外で債務者と債権者がやりとりをする私的再生のほうが、ブランドイメージを崩すことなく、短期間で事業再生を行うことが可能です。

しかし、裁判外でのやりとりは手続きが不透明になりがちで、思うように進まない、というデメリットも存在します。 私的再生は、債権者すべての合意を前提としています。

そのため、債権者が多く協力を得にくい場合には、向かないかもしれません。

ここでは、法的再生手続きと私的再生手続きの期間について、ご紹介します。法的再生や私的再生を選ぶと、どのくらいの期間がかかるのか、目安としてご覧ください。

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法的再生手続きの期間について


冒頭でもお伝えした通り、法的再生とは、裁判所の関与の下で行う倒産処理のうち、再建型の処理のことです。

倒産手続きには、大きく分けて以下の2種類があります。

  • 「民事再生手続き」と「会社更生手続き」を用いて再生する【再建型】
  • 「破産手続き」や「特別清算手続き」を用いて清算する【清算型】

事業継続の目処がある場合は【再建型】を選択するのが通常です。一方、事業継続の目処が立たない場合は清算型を選択することになります。

また、民事再生の申し立てから再生計画の実行までは、約6ヶ月の期間が目安になります。

民事再生手続きの流れ

まずは民事再生手続の流れをしっかり把握して、期間についても詳細を見ていきましょう。

①法律相談から

まずは事情再生に詳しい弁護士に相談します。会社の現在の経営状態を客観的に判断するために、財務書類や経営状況、借入状況を弁護士が分析し、民事再生手続きが可能かどうかを見極めます。

再生計画が提出されても、借入先の銀行や取引先企業、債権者に認可されない場合や、裁判所から民事再生が不可能と判断されてしまった場合は、破産手続きに移行するしかありません。

法律相談を申し込む際は、会社に資金的な余力があるうちに、事業再生の専門家に相談することが重要です。

②民事再生開始の申し立て

民事再生手続きをする場合は、まず弁護士と委任契約書を交わします。これにより、委任状を受け取った弁護士が代理人として手続きを進めることになります。以降、債権者との交渉や、裁判所への民事再生手続きの申し立ては弁護士が行います。

  • 民事再生の申立書
  • 保全処分の申立書
  • 添付書類

など

民事再生開始の際には、上記のような書類を準備して裁判所に申し立てを行い、予納金を納めます。

民事再生開始の申し立てについては、民事再生法21条に定められています。

<民事再生法21条>

債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるときは、債務者は、裁判所に対し、再生手続開始の申立てをすることができる。債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないときも、同様とする。

③保全処分・監督委員選任

弁護士による民事再生手続きの申し立てと同時に、「保全処分の申し立て」も行います。裁判所から保全処分の決定がなされると、債権者への借入金の返済を一旦止めることができます。

そのほかに、裁判所から監督委員選任が行われます。監督委員とは、債務者の行動を監督することを職務とする者のことです。通常、弁護士が選任されます。

④債権者説明会

このタイミングで会社主催の債権者説明会を開く場合もあります。債権者説明会とは、債権者に集まってもらい、自社が民事再生に至った経緯や、経営状況、負債額について説明する場のことです。

この説明会の場で債権者に対して今後の取引継続や、事業再生に向けての協力を要請することもあります。また委任された弁護士も同席するのが通常でしょう。

⑤民事再生手続き開始決定

民事再生手続きの申し立てから1〜2週間で、裁判所より民事再生手続き開始の可否について判断が出されます。この後、債権者に対して、

  1. 再生手続き開始通知書
  2. 債権届出の用紙等

が郵送されます。

その後、債権者は裁判所に対して債権の届け出を行います。

⑥財産評定・財産や業務状況の報告

自社が持っている財産価格を評価し、財産目録や賃借対照表の作成をします。それに伴い、民事再生に至った経緯や、業務状況、財産状況についての報告書も作成します。これらが用意できたら、裁判所へ提出します。

なお、賃借対照表などの作成にあたっては、会計士の協力が必要な場合もあります。

⑦債権認否書の提出

債権者から届出のあった債権について、債権の存否と金額を調査します。そして、その結果を記した「認否書」を裁判所へ提出します。

⑧再生計画案を作成する

会社財産と負債状況の整理が終わった段階で、再生計画案を作成することとなります。再生計画案とは、債権者に対して債務をどのくらい免除してもらい、債務の返済期間はどのくらいになるのかの計画です。この書類を裁判所へ提出します。

再生計画案を作成する際も、具体的な借金の返済方法、返済年数、返済カットの理由、人員削減、資産の売却などの会社のリストラ計画なども盛り込む必要があります。

裁判所や債権者が納得する計画を立てなければなりません。事業再生問題の経験が豊かな弁護士指導の下、しっかり作成することが重要です。

⑨再生計画案の決議・認可・実行

前章で作成した再生計画については、債権者集会で多数決を行い、決議に至ります。なお、再生計画案の可決条件は、以下の通りです。

出席した債権者の過半数が賛成、かつ賛成者の債権が全体の債権額の半分以上

再生計画案が可決されると、裁判所がそれを認可します。この再生計画の通りに債務の返済を行っていきます。

すでに述べましたが、民事再生の申し立てから再生計画の実行までは約6ヶ月かかります。

民事再生には非常に多くの手続きがあり、期間も要します。民事再生手続きにかかる期間の目安は以下の通りです。

民事再生申し立てから再生計画案提出までの期間

約3ヶ月

民事再生申し立てから再生計画案の決議までの期間

約5ヶ月

再生計画案認可決定から弁済完了までの期間

最長約10年

会社更生手続きの期間は?


会社更生法を適用する場合、手続きが複雑で多くの利害関係が生じることから、許可が下りるまでの期間は1年〜3年が目安です。

会社更生手続きは、現経営者を退陣させた上で、裁判所に選任された管財人を中心として、更生計画を遂行しますので、期間や費用を要する手続きだと認識してください。

会社更生手続と民事再生手続の違いからみていきましょう。

会社更生手続きと民事再生手続きの違い

 

会社更生法

民事再生法

対象

株式会社のみ

法人や個人

経営陣

全員退任

現状のまま

管財人

あり

原則なし

担保権

実行不可

実行可能

株主

権利喪失

現状のまま

可決要件

債権者、担保権者、株主の同意

債権者の同意

租税

返済してはならない

返済しなければならない

期間

認可まで約1年〜3年

認可まで約5ヶ月

 

会社更生法は、日本航空(JAL)が経営危機に陥ったときに、適用されたことで有名です。

 

会社更生法は、基本的には民事再生法と比較をしても、非常に多くの期間がかかり、費用も増大すること、さらには体制を一新する必要があることから、大企業に適用される場合が多いです。

会社更生手続きの流れ

それでは会社更生手続きの流れについてご紹介します。

①専門の弁護士に相談

会社更生法の手続きの流れについてご紹介します。

まずは、事業再生に詳しい弁護士に相談します。会社更生手続きの申し立てができるのは、会社、資本の10分の1以上の債権者または総議決権の10分の1以上の株主となっています。

会社更生手続きは、債権者をはじめとして利害関係者が非常に多いので、専門の弁護士に会社更生の必要性を判断してもらいましょう。

②会社更生手続きの委任をする

会社更生の必要性について、弁護士から判断を受けた場合、会社更生手続き申し立てについての委任をします。これにより、会社更生申し立てや、債権者などの利害関係者への説明などは、代理人である弁護士が担当します。

③関係書類の準備

会社更生手続きを行うにあたり、「会社更生申立書」や「保全処分申立書」などの関係書類を準備しなければなりません。

なお、これら関係書類の準備にあたっては、事業再生に詳しい弁護士に協力してもらう必要があります。

④会社申し立て・保全処分申し立て

弁護士に手続きを委任したら、次に行うべきことは裁判所への「会社更生申立書」と「保全処分申立書」の提出です。また、同時に裁判所に予納金を納める必要もあります。

保全処分とは、債権者への借入金の返済を一旦止めることができる処置です。これにより、会社の資金を守ることができ、事業再生への負担を軽くすることができます。

ただし、労働債権は保全処分の対象外ですので、賃金や退職金の支払いを請求することは可能です。

⑤保全管理人の選任

保全処分申し立てが裁判所に受理されると、裁判所より保全管理人が選任されます。保全管理人は、経営者に代わって経営と財産管理を行う、会社更生に関する報告書を提出する、などの役割があります。

保全管理人には、事業再生に詳しい弁護士が選任されることが多いです。

⑥会社更生手続き開始

保全管理人の報告を受けて、裁判所が会社更生の可能性について審議します。その結果、会社更生手続き開始が妥当かどうかが決定されます。会社更生の可能性がないと判断されると、破産手続きへの移行か、和議申し立ての認可をします。

通常、会社更生手続き開始決定までには、1ヶ月程度かかることが多いです。

⑦更生管財人の選任

裁判所により、会社更生の中心となる更生管財人が選任されます。これは、民事再生法にはない手続きです。更生管財人が経営者に代わり、更生計画を実行していきます。

基本的には、更生管財人は、経営能力があり、会社を立て直す能力に優れた人物であることが多いです。スポンサー企業の役員などが選ばれます。

⑧債権届出

債権者は、自身の債権の届出を行う必要があります。担保権や会社更生手続き前にあった債権は、それぞれ「更生担保権」「更生債権」と呼ばれており、届出が必要となります。

⑨更生管財人による経過報告と意見陳述

本件に関するすべての利害関係者が出席して行われる関係人集会により、更生管財人による現状報告や利害関係者による意見陳述が行われます。

この関係人集会で陳述された意見が、管財人による更生計画に反映されていきます。

⑩更生計画案の決議と認可

再度、関係人集会が開かれて、管財人が作成した更生計画案についての審議と決議をします。

更生計画案が可決となる条件として、株主の過半数、更生担保権者の全員、更生債権額の3分の2の同意が必要です。

更生計画案が可決になった場合には、裁判所より正式認可となります。

⑪更生手続き終結

会社更生の手続きや弁済が順調に進み、更生計画が順調に遂行され確実となると、終結に至ります。

繰り返しになりますが、会社更生法を適用する場合、手続きが複雑で多くの利害関係が関わることから、認可が下りるまでの期間は1~3年が目安です。

私的再生手続きの期間について

続いて、事業再生における私的再生手続きについてご紹介します。私的再生手続きは、法的再生手続きのように裁判所の関与を必要としない事業再生方法です。

つまり私的再生は、裁判所の関与なしに自助努力で会社を再建するということです。債権者と交渉して個別に合意することで、権利を変更してもらいながら再建を目指します。

また、私的再生手続きは、法的再生と比べると、「倒産」という社会的認知を受けにくいという点が挙げられます。また、費用についても、裁判所へ予納金を納める必要がなく、再建に必要なコストを削減できます。

なお、私的再生に関わる期間ですが、明確なスケジュールについての決まりがなく、負債額もそれぞれのケースで異なるため、その期間について明言することはできません。

負債状況によっては法的手続きより短期で済む場合もあるでしょう。しかし、負債が多額であったり、債権者が多数であったり、採算部門と不採算部門の切り離しやリストラなどを段階的に行う必要があったりという場合であれば、1~2年の期間がかかることも想定されます。

まとめ

事業再生における期間は、法的再生を実施するのか、私的再生を実施するのかで大きく変わってきます。また、法的再生の場合でも「民事再生手続き」なのか「会社更生手続き」なのかで異なります。

いずれにしても、事業再生をする場合は、早い段階で弁護士に入ってもらうことが重要です。事業継続に不安をお持ちの方は、早めに相談してみましょう。

事業再生を検討した場合、費用がいくらかかるか、まず確認しましょう。この記事では、法的再生・私的再生・弁護士費用についてご紹介します。

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