雇用契約書は、使用者と労働者との間で交わされる雇用に関する契約書です。
労働条件通知書は作成・交付の義務がありますが、雇用契約書を作成する義務までは定められていません。しかし一般的には、労働条件通知書と同時に雇用契約書を作成し、一つの書面で兼用処理していることが多いです。
この記事では、使用者と労働者との間で雇用契約を結ぶ際に必要な雇用契約書について、その作成の仕方を企業法務に詳しい弁護士目線からご紹介します。
なお、雇用契約書の作成義務がないことは上記のとおりですが、労働契約法では労働条件等について「できる限り書面により確認すべきである」と規定されていますので、会社側もできる限り労働契約書の作成に努める必要がある点は、ご留意ください。
雇用契約する際に弁護士に相談するメリット
ここでは、雇用契約をする際に企業法務に詳しい弁護士に相談やチェックをしてもらうメリットをご紹介します。
雇用契約の内容をチェックしてもらえる
雇用契約書は、使用者と労働者との間で労働における取り決めをまとめた契約書のことです。記載事項について特に法律上の決まりはありませんが、雇用条件通知書に記載すべき事項を網羅するのが一般的です。具体的には以下のような10項目の記載をすることが多いでしょう。
|
なお、上記はあくまで一般的事項であり、特別な権利・義務について合意したい場合は、その点について明記する必要があります。そのため、このような場合は、労働問題に詳しい弁護士に内容を確認してもらう方が良いでしょう。
雇用契約を弁護士にチェックしてもらうということが、トラブル発生の際に会社を守ることにつながります。
自社に最適な雇用契約書を作成してもらえる
雇用契約書に記載する内容は、その業種や事業内容によってやや異なります。ネットで公開されているのは、あなたの会社に最適とはいいがたく、そのまま利用することで実態と齟齬が生じてしまったり、不十分な内容となってしまう可能性があります。
弁護士に作成ごと依頼することも可能なので、無理にご自身で作成するより自社に最適な雇用契約書を作成してもらいましょう。1組作成してもらえば体制変更するまで利用可能なので、今後のことを考えても、手間と費用をかなり省くことができるかと思います。
雇用形態に合わせた雇用契約書を作成してもらえる
雇用契約書に明記される基本的な項目は決まっていても、例えば、正社員・契約社員・パート・アルバイトなど雇用形態によって記載内容が異なることもあります。
例えば、パートタイマーの場合には、「労働基準法第15条1項」による労働条件の明示に加えて、「パートタイム労働法第6条」によって、以下の9項目が追加されています。労働条件通知書と労働契約書を兼用するのであれば、この部分の手当は必要です。
<パートタイマーの場合の明示事項>
|
また、契約社員・パートタイマーなどの有期雇用契約については、契約通算期間が5年を超える場合に無期雇用に転換するよう求めることができる制度があります。
この制度についても、労働条件通知書などで周知することが望ましいとされていますので、労働条件通知書と雇用契約書を兼用する場合には、この点の記載も含めた方が良いかもしれません。
適正な契約形態を判断してもらえる
企業法務に詳しい弁護士に契約処理についてチェックを依頼するメリットはほかにもあります。
例えば、契約処理を行う上で「雇用契約」と整理するのがよいのか、「業務委託契約」と整理するのが良いのかを判断してもらえる、などが考えられます。
雇用も業務委託も「人を使用する」という点では同じですが、契約の内容や性質は全く異なりますし、契約に対する規律も、契約に係るコストも全く異なります。
両者は似て非なるものであり、稼働の実態に応じて使い分けるのが正しい処理と言えます。弁護士に相談すれば、稼働実態から雇用で処理すべきなのか適格なアドバイスをもらえるでしょう。
雇用契約と業務委託契約の大きな3つの違いとは?
ここでは、雇用契約と業務委託契約の大きな違いについて3つほどご紹介します。
基づく法律が異なる
雇用契約とは労働者と使用者の間で締結する契約で、労働基準法や労働契約法上の保護・適用を受けることになります。
しかし業務委託契約の場合は、民法の請負契約(民法第632条)や委任契約(民法第643条)による規律以外は特に法規制がありません。
このように、雇用契約と業務委託契約とでは規律される法律が異なります。
実態が異なる
雇用契約は、「使用者と労働者が主従関係にあることを前提とする契約」です。
他方、業務委託契約にはこのような主従関係がなく、「独立当事者同士の対等な契約」という建付けとなります。
規律すべき事項が異なる
雇用契約と業務委託契約は規律する法令が異なる関係上、「契約書に有効に定められるもの」と「定められないもの」の範囲が異なります。雇用契約では労働基準法や労働契約法の関係で定められない事項も、業務委託契約では定められます。
雇用契約書・業務委託契約書の作成・チェックにかかる弁護士費用
雇用契約書や業務委託契約書の作成・チェックにかかる弁護士費用についてご紹介します。
相談料
相談料については、雇用契約書および業務委託契約書においてそれぞれ初回無料の弁護士事務所が多いです。その弁護士事務所によっても、価格設定が異なるため、あくまで参考程度にしてください。
初回相談は無料であっても、2回目以降は30分あたり10,000円など有料になる場合がありますので、詳細は各弁護士事務所へご確認ください。
実費
契約書の作成費用に関しては、各弁護士事務所によっても異なりますので一概には言えません。
あくまでも参考のケースですが、雇用契約書・業務委託契約書の作成にあたり取引内容が標準的なものについては10万円〜、取引内容が複雑で分量が多くなるものについては20万円〜が目安となります。
また、作成した各契約書のリーガルチェックですが、同じく定型的なものについては5万円〜、非定型的なものについては10万円〜となります。
雇用契約が得意な弁護士の選び方のポイント
ここでは、雇用契約が得意な弁護士選びのポイントをご紹介します。
契約書類作成・人事・労務に実績があるか
雇用契約が得意な弁護士を探す上で、重要なことは当然のことですが企業法務問題に詳しい弁護士、および人事・労務の実績があるかどうかで決めると良いでしょう。
では、どのように企業法務に詳しい弁護士を把握するかですが、基本的には各弁護士事務所のホームページや、初回相談の際にこれまでの実績についてお伺いすることがおすすめです。
自社の業界での経験があるか
雇用契約書の作成にあたっては、自社業界における経験値が豊富な弁護士に依頼すると良いでしょう。と言いますのも、雇用契約書に記載する契約内容には、その業界ごとの勤務時間や、業界の特性を踏まえて記述が必要な場合があるためです。
自分や自社の性格に合うか
自分や自社の性格に合うかどうかも、企業法務に詳しい弁護士に相談する上では重要です。
これは雇用契約書の作成のみならず、他の事案でも言えることですが、長くつき合うことになるかもしれない弁護士には、丁寧な対応をしてもらえるかどうか、専門的な法律の知識を噛み砕いて説明してもらえるかも重要な項目です。
迅速で丁寧に対応してくれるか
迅速さや丁寧さがあるかは、良い弁護士を選ぶ上での重要な判断事項です。
たとえば、雇用契約書に不備が見つかって、労働者からクレームや問題を指摘された場合、迅速な訂正や修正が必要ですよね。このような時に、メールや電話で迅速に連絡が取れる状態でないと、急な問題に対応できません。
まとめ|雇用契約書の作成を企業法務に強い弁護士に相談しよう!
雇用契約書の作成にあっては、関連法律も関係しますし、いくら雛形はあっても自社の業界にあったものに書き換える必要があります。
そのようなことを踏まえると、企業法務に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。従業員とのトラブルを避けるためにも、法律の専門家の介入が必要なのです。