会社経営を行う上で、今や必須ともいえる「反社チェック」。契約時は、「取引先が怪しくないかどうか」慎重にチェックする必要があります。反社チェックを正しく行えず間違って反社会勢力や詐欺グループと取引をしてしまった場合「知りませんでした」では済ませれません。
地方銀行や芸能界の闇営業などのニュースを観ていただければわかると思われますが、営業停止処分を受けるだけでなく、銀行から融資されなくなったり、今後の「暴力団と関係があった人」として社会的信用を一生損なったりするリスクが発生します。
このようなことを回避するには、慎重な反社チェックに加えて、契約書に「取引先が反社会的勢力であった場合」に備えた条項を記載しておくことも重要です。
取引開始前にすべき反社チェック6つの方法
相手先と取引を始める前には、以下の方法にて「取引先が反社会的勢力であるかどうか」チェックを行います。
会社情報の確認
商業登記情報をチェックして、会社名・役員・住所が頻繁に変更されていないか、業績や取扱商品に不審な点はないかなどを確認する方法です。頻繁に変更しているような会社は、過去に何かあり変える必要性があったと思われるため、契約を控えたほうが無難です。商業登記情報と、HPの記載が異なる場合も注意が必要です。
また、HP上の記載内容に矛盾がないか、デザイン等がしっかりとしているか、社長の顔写真があり一定の経歴が記載されているかも確認しましょう。グレーゾーンな運営をしている会社では、情報に矛盾がある、信用性を求められる仕事にも関わらず社長名が出ていないなど不審点が必ず見受けられます。
提示された会社の住所もグーグルマップで一度検索しておきましょう。場合によっては、そこで業務できると思えないような、古いアパートが表示されることもあります。
インターネットによる検索
インターネット上で「株式会社アシロ 反社」「アシロ太郎 ヤクザ」など会社名や取締役名を、以下キーワードでand検索しても反社会的勢力に関する情報が出てこないか確認しましょう。
反社・ヤクザ・暴力団・違法・違反・不正・グレー・逮捕・訴訟・不正・虚偽など |
新聞記事・Webニュース記事の検索
帝国データバンクや日経テレコンなどにて会社名や取締役名を検索し、反社会的勢力に関する過去記事が出てこないか確認する方法です。
風評の調査
業界団体や同業他社に対して、悪い評判はないか確認する方法です。○○協会などのその業種専門の協会などがある場合は、直接相談してみるのもひとつの方法です。
もし、このような調査で不信感を抱く場合は、契約をしてはいけません。もし、契約してしまった場合は、すぐに取引を辞めましょう。
外部機関への相談
どうしても怪しい場合は、警察や暴力団追放運動推進センターなどへ相談して、取引先に関する情報照会をしてもらいましょう。
個人事業主(外注)に対する反社チェック
クラウドソーシングなどで個人事業主に依頼する場合でも、必ず反社チェックを行いましょう。免許証・保険証・パスポート・マイナンバーカードなどで、本人情報を取得の上、上項で紹介したような方法で確認します。たとえ依頼先が知人であっても、会社のためにも必ず反社チェックしましょう。
契約後に取引先を「怪しい」と思ったら?
反社会的勢力と関係を持ってしまうと、会社としては、不当要求・条例違反・行政処分・イメージダウンなどの不利益を被ってしまう恐れがあります。したがって、契約後に取引先を「怪しい」と思った場合は、入念に調査して事実確認を行い、もし反社会的勢力であった場合は関係を断ちましょう。
ただし、契約後に契約を解消するには、正当な理由がなければなりません。そのためにも、契約書を作成する際は必ず「反社会的勢力排除条項」を盛り込みましょう。
その上で、「取引先が反社会的勢力である事実」を立証し契約を解消する必要があります。
立証や解消に関して会社や担当者個人で行うのは危険です。弁護士・暴力団追放運動推進センターに相談し協力を得た上で対応してもらいましょう。
反社会的勢力排除条項とは|実際に使用されている記載例
反社会的勢力排除条項とは、要するに「反社会的勢力とのつながりがなく、将来にわたって該当しない」ことを証明・確約し、もし違反した場合、契約を解消できることをまとめた条項になります。実際には、以下のように記載されます。
【反社会的勢力排除条項】
第 条(反社会勢力の排除) 1.甲及び乙は次の各号のいずれかに該当する反社会的勢力との関係を遮断することを合意する (1) 「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」第2条第2号に定義される暴力団及びその関係団体 (2) 前項の暴力団及びその関係団体の構成員 (3) 総会屋、社会運動標榜ゴロ、特殊知能暴力集団などの団体又は個人 (4) 前各号の一つの他、暴力、威力、脅迫的言動及び詐欺的手法を用いて不等な要求を行い、経済的利益を追求する団体又は個人 (5) 前各号の一つの団体、構成員又は個人と関係を有することを示唆して不等な要求を行い、経済的利益を追求する団体又は個人 2.甲及び乙は相手方に対し、次の各号について表明し保証する。 (1) 役員、使用人又は主要な株主が暴力団、暴力団員、暴力関係企業又はその関係者、その他反社会的勢力ではないこと (2) 反社会的勢力の維持又は運営に協力若しくは関与していないこと (3) 経営に反社会的勢力が関与していないこと (4) 反社会的勢力を利用しないこと 3.甲及び乙は前項に対する自己の違反を発見した場合、直ちに相手方にその事実を報告する 4.甲及び乙は相手方が前3項の規定に違反した場合、催告その他何らの手続きを経ることなく直ちに本契約の全部又は一部を相手方の責に帰すべき理由によるものとして解除することができる 5.前項により契約が解除された場合、解除された者は、解除により生じる損害について、相手方に対し一切の請求を行わない。 6.第4項の規定により契約が解除された場合、解除された者は、相手方に対し違約金として金●●円を支払う。 |
弁護士に聞く「怪しい会社」の特徴
実際に企業法務を担当する弁護士に、「怪しい」と思う会社の特徴について聞いていてみました。
編集部
一見して怪しいと思う会社に特徴などはありますか? |
曾波弁護士
一見して怪しくないHPを作ることは容易なので、怪しい会社を事前に見抜くことは困難な場合が多いです。 比較的、事前に察知しやすいのは、後記するネット上のネガティブ情報の検索です。それに加えて、他の方法で違和感がある場合に、より慎重に検討するといった対応になります。また、違和感を察知するためには、取引先の会社を訪問するといった方法も効果的です。訪問されることを異様に避ける態様なので察知することもできますし、訪問すればその会社の雰囲気を直に感じることができるからです。 |
反社チェックに該当する会社を一見して判断するのは非常に難しいため、安全と思われるような会社であっても慎重な反社チェックが重要です。
まとめ|反社会勢力から会社と社員を守る!
反社会勢力と関りを持たないためにも、今まで行ってこなかった企業含め再度反社チェックを行う必要性があるのではないでしょうか。反社会勢力と関わりを持ってしまった企業・人の中には「まさか」「大手なのに」と思われるような企業もあります。
反社チェックや反社会的勢力排除条項を記載する他に、以下のような取り組みもおすすめします。
- 反社データの集積・データベースの構築
- 専門機関との連携(公益財団法⼈暴⼒団追放運動推進都⺠センター等の会員への加入)
- すぐに相談できるよう顧問弁護士の設置
- 不当要求防止責任者講習の受講
- 対応担当責任者の設置・対応体制の明確化・周知
なお、反社会勢力の関係者と内部からつながらないためにも、就業規則においてつながりを持たないことの遵守や解雇処分の対象にする旨の記載などについても規定しましょう。
また、定期的な社員研修の実施や対策マニュアルの配布、「自分は反社会的勢力と関係がない」という旨を記載した『確約書』の署名・提出などの取り組みを行うことで、会社だけでなく社員の安全も守ることができるでしょう。
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