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未払賃金立替払制度(みばらいちんぎんたてかえばらいせいど)とは、事業主の倒産に伴い、賃金が支払われないまま退職した労働者のために、未払賃金の一部を国が事業主に代わって立替払いする制度です。
独立行政法人労働者健康安全機構が実施している制度で、適用要件を満たしたうえで申請が認められれば、未払い賃金の一部が立て替え払いされます。
賃金未払いは労働基準法違反にあたる行為であるうえ、従業員の生活にも多大な影響を与えます。
本記事では、未払賃金立替払制度の利用要件や補償内容、申請手続きの流れや利用時の注意点などを解説します。
事業主の倒産で賃金が支払われずに悩んでいる場合は、参考にしてみてください。
未払賃金立替払制度とは、従業員に対して賃金を支払えないまま倒産した事業主の代わりに、国が未払い賃金を一部立て替えて支払ってくれるという制度です。
厚生労働省の公表資料によると、2024年度は2,623社で実施されており、立替払額の総額は110億円以上にも上ります。
| 項目 | 社数・人数・金額 |
|---|---|
| 実施された企業数 | 2,623社 |
| 立替金の支給者数 | 3万591人 |
| 立替払額の総額 | 110億4,600万円 |
【参考元】未払賃金立替払事業(令和6年度)の実施状況について|厚生労働省
会社規模別の立替払状況は以下のとおりで、特に従業員数が30人未満の比較的小規模な企業が2,397社と最も多く、全体の約91%を占めています。
| 企業規模 | 社数 |
|---|---|
| 従業員が30人未満の企業 | 2,397社 |
| 従業員が30人~299人の企業 | 216社 |
| 従業員が300人以上の企業 | 10社 |
【参考元】未払賃金立替払事業(令和6年度)の実施状況について|厚生労働省
なお、従業員への賃金の支払いが困難な状況だからといって、必ずしも未払賃金立替払制度の適用対象となるわけではありません。
未払賃金立替払制度を利用するためには、事業主と従業員がそれぞれ利用要件を満たしている必要があります。
ここでは、未払賃金立替払制度の利用要件について解説します。
未払賃金立替払制度を利用するためには、事業主側が以下の要件を満たしている必要があります。
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【参考元】未払賃金の立替払制度の概要|厚生労働省
以下では、各要件について解説します。
一つ目の要件は「労災保険の適用事業の事業主であり、事業活動を1年以上継続していること」です。
労災保険の適用事業には、原則として正社員・アルバイト・パートなどの労働者を1人以上雇用していれば該当します。
なお「農林水産業のうち常時労働者が5人未満の個人経営の事業」に関しては、例外として暫定任意適用事業という扱いとなっています。
二つ目の要件は「事業主が倒産したこと」です。
ここでいう「倒産」とは以下の2種類あり、どちらかに該当している必要があります。
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以下では、法律上の倒産と事実上の倒産の定義を解説します。
法律上の倒産とは、以下のような手続きをおこなった状態のことを指します。
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上記のいずれかを受けている場合は、法律上の倒産に該当します。
各用語の定義や手続きの流れなど、詳しく知りたい場合は以下の関連記事をご覧ください。
【関連記事】
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事実上の倒産とは、以下のような状態のことを指します。
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中小企業事業主の場合、法的手続きを実施していなくても、労働基準監督署に申請して労働基準監督署長から上記の認定を受ければ、未払賃金立替払制度の適用対象となります。
なお、中小企業事業主とは、以下の資本金・出資総額または従業員数の基準を満たしている事業主のことを指します。
| 業種 | 資本金または出資の総額 | 常時使用する従業員数 |
|---|---|---|
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
未払賃金立替払制度を利用するためには、従業員側が以下の要件を満たしている必要があります。
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【参考元】未払賃金の立替払制度の概要|厚生労働省
以下では、各要件について解説します。
一つ目の要件は「会社に労働者として雇用されていたこと」です。
労働者とは、会社と雇用関係を結んで賃金を受け取っている人のことです。
正社員だけでなくアルバイトやパートなども含まれますが、原則として事業主の同居親族や役員報酬の受給者などに関しては対象外となります。
二つ目の要件は「倒産の日の6ヵ月前の日から2年以内に退職していること」です。
ここでいう「倒産の日」とは、以下の日のことを指します。
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未払賃金立替払制度の対象となる賃金や、対象外となる賃金は以下のとおりです。
| 未払賃金立替払制度の対象となる賃金 | 未払賃金立替払制度の対象とならない賃金 |
|---|---|
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【参考元】未払賃金の立替払制度の概要|厚生労働省
定期賃金とは、会社が従業員に対して毎月1回以上定期的に支払う賃金のことです(労働基準法第24条2項)。
基本給だけでなく、要件を満たす家族手当、通勤手当、時間外手当なども対象となり、税金や社会保険料などの控除前の金額となります。
なお、賞与や臨時的な賃金などは対象外となるほか、定期賃金や退職金の未払金総額が2万円に満たない場合も対象外となります。
独立行政法人労働者健康安全機構ホームページの回答によると、立替金が支払われるのは「申請手続きを済ませてから30日以内」がおおよその目安となっています。
Q5-2
立替払請求書を機構に送りましたが、支払われるまでの期間としてどのぐらいを見込んだらいいのでしょうか。
A立替払金の支払については、請求書に記入漏れや記入誤りなどがなければ、 請求書を受け付けてから30日以内にお支払いするように努めています。
しかしながら、記載内容の補正や提出書類の追加などが必要な場合は、それ以上の時間がかかることもあります。
立替払請求書を送付してから1か月半以上経過しても支払通知書が届かない場合には、お問い合わせください。
ただし、たとえば以下のようなケースでは手続きが長引き、支払いまでに1ヵ月以上かかったりすることもあります。
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なるべく未払賃金立替払制度での支払い時期を早めるためには、会社側でも従業員の申請手続きをサポートしたり、弁護士などに協力を依頼したりするのが有効です。
未払賃金立替払制度の申請手続きは、「法律上の倒産の場合」と「事実上の倒産の場合」で異なります。
基本的には従業員側が申請手続きをおこなうことになりますが、いざという場面で的確に動けるように会社側としてもサポート体制を整えておきましょう。
ここでは、ケースごとの申請手続きの流れを解説します。
法律上の倒産の場合、基本的な手続きの流れは以下のとおりです。
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法律上の倒産の場合、裁判所または破産管財人などの証明者とやり取りをおこなって、倒産の事実や未払額などを証明するために必要な証明書の交付を受ける必要があります。
交付を受けたあとは、請求書に必要事項を記載して労働者健康安全機構に提出すると審査に移り、あとは立替金が支払われるのを待つだけとなります。
事実上の倒産の場合、基本的な手続きの流れは以下のとおりです。
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事実上の倒産の場合、まずは労働基準監督署に申請をして「事実上の倒産状態にあること」を認めてもらう必要があります。
労働基準監督署長から認定を受けたら、さらに未払賃金総額などの確認申請をおこない、確認通知書の交付を受ける必要があります。
交付を受けたあとは、請求書に必要事項を記載して労働者健康安全機構に提出すると審査に移り、あとは立替金が支払われるのを待つだけとなります。
未払賃金立替払制度の利用に関しては、以下のような注意点があります。
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ここでは、未払賃金立替払制度の利用にあたって知っておくべきポイントを解説します。
未払賃金立替払制度では、以下のような請求期限が定められています。
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上記の期限を過ぎると一切支払いが受けられなくなるため、なるべく速やかに手続きを進めることが大切です。
未払賃金立替払制度では、未払い賃金の全額ではなく80%までしか支払われません。
さらに、以下のとおり従業員の年齢ごとに上限額も定められています。
| 退職日時点の年齢 | 未払賃金総額の限度額 | 立替払いの上限額 |
|---|---|---|
| 30歳未満の場合 | 110万円 | 88万円 |
| 30歳以上45歳未満の場合 | 220万円 | 176万円 |
| 45歳以上の場合 | 370万円 | 296万円 |
【参考元】未払賃金の立替払制度の概要|厚生労働省
たとえば「退職日時点の年齢:25歳、未払賃金総額:100万円」というようなケースでは、未払賃金総額の80%にあたる80万円が支払われます。
一方で「退職日時点の年齢:25歳、未払賃金総額:120万円」というようなケースでは、未払賃金総額の80%は96万円になりますが、立替払いの上限額を超えることはできないため88万円までしか支払われません。
未払賃金立替払制度では、未払い賃金が存在することを証明しなければいけません。
具体的には、以下のような証拠となるものを準備する必要があります。
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証拠不足と判断された場合は支払額が減るおそれもあります。
なるべく漏れなくスムーズに有効な証拠を揃えるためには、弁護士のアドバイスやサポートを受けるのが有効です。
従業員への賃金未払いを放置した場合、会社側の主なリスクとしては以下のようなものがあります。
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ここでは、会社が賃金未払いを放置した場合のリスクについて解説します。
従業員に対して賃金を支払わないままでいると、支払いを求めて民事訴訟を提起されるおそれがあります。
民事裁判で敗訴すると、強制的に財産を差し押さえる「強制執行」へと移行する場合もあります。
強制執行によって預金などの財産が強制的に差し押さえられた場合、さらに資金繰りに困って経営難に陥る可能性があります。
会社は従業員に対して賃金を支払う義務があります(労働基準法第24条)。
賃金の未払いは労働基準法違反となり、以下のような刑事罰が科されるおそれがあります。
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| 通常の賃金未払い | 30万円以下の罰金刑(労働基準法第120条1号) |
| 割増賃金の未払い(残業代・深夜手当・休日出勤手当など) | 6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金刑(労働基準法第119条1号) |
場合によってはマスコミなどで大々的に報道されることもあり、いわゆる炎上やブランドイメージの低下などにつながる可能性もあります。
ここでは、未払賃金立替払制度に関するよくある質問について解説します。
未払賃金立替払制度の適用対象となるのは、以下のような要件を満たしている会社です。
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なお、「法律上の倒産」「事実上の倒産」とは、それぞれ以下のような状態を指します。
| 法律上の倒産 | 事実上の倒産(中小企業事業主のみ) |
|---|---|
以下のいずれかを受けている状態のこと
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労働基準監督署長から以下の認定を受けている状態のこと
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未払賃金立替払制度では、基本的に以下のような書類が必要となります。
| 法律上の倒産の場合 | 事実上の倒産の場合 |
|---|---|
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なお、弁護士なら申請手続きに関するアドバイスやサポートが可能です。
弁護士の力を借りることで、ミスなくスムーズな手続きの進行が望めます。
未払賃金立替払制度を利用した場合、立替金は「申請手続きを済ませてから30日以内」に支払われるのが一般的です(未払賃金の立替払事業|独立行政法人労働者健康安全機構)。
ただし、たとえば以下のようなケースでは手続きが長引き、支払いまでに1ヵ月以上かかったりすることもあります。
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なるべく未払賃金立替払制度での支払い時期を早めるためには、会社側でも従業員の申請手続きをサポートしたり、弁護士などに協力を依頼したりするのが有効です。
未払賃金立替払制度を利用するためには、規定の利用要件を満たしたうえで、必要書類を準備して適切に手続きを進めなければいけません。
従業員が申請手続きで迷った際に的確に動けるよう、会社側としても十分な知識を身に付けておくことが大切です。
未払賃金立替払制度に関する悩みや不安があるなら、弁護士に一度ご相談ください。
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