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弁護士監修記事
人事・労務

未払賃金立替払制度とは?要件・申請手続きの流れ・必要書類を解説

2019.3.8
2026.9.15
未払賃金立替払制度とは、会社が倒産して従業員に賃金を支払えない場合に適用される制度です。独立行政法人労働者健康安全機構への申請が認められれば、未払い賃金を立て替えてもらえます。本記事では、未払賃金立替払制度の利用要件や申請方法などを解説します。
監修弁護士
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未払賃金立替払制度(みばらいちんぎんたてかえばらいせいど)とは、事業主の倒産に伴い、賃金が支払われないまま退職した労働者のために、未払賃金の一部を国が事業主に代わって立替払いする制度です。

独立行政法人労働者健康安全機構が実施している制度で、適用要件を満たしたうえで申請が認められれば、未払い賃金の一部が立て替え払いされます。

賃金未払いは労働基準法違反にあたる行為であるうえ、従業員の生活にも多大な影響を与えます。

本記事では、未払賃金立替払制度の利用要件や補償内容、申請手続きの流れや利用時の注意点などを解説します。

事業主の倒産で賃金が支払われずに悩んでいる場合は、参考にしてみてください。

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この記事に記載の情報は2026年09月15日時点のものです

未払賃金立替払制度とは

未払賃金立替払制度とは、従業員に対して賃金を支払えないまま倒産した事業主の代わりに、国が未払い賃金を一部立て替えて支払ってくれるという制度です。

厚生労働省の公表資料によると、2024年度は2,623社で実施されており、立替払額の総額は110億円以上にも上ります。

項目 社数・人数・金額
実施された企業数 2,623社
立替金の支給者数 3万591人
立替払額の総額 110億4,600万円

【参考元】未払賃金立替払事業(令和6年度)の実施状況について|厚生労働省

会社規模別の立替払状況は以下のとおりで、特に従業員数が30人未満の比較的小規模な企業が2,397社と最も多く、全体の約91%を占めています。

企業規模 社数
従業員が30人未満の企業 2,397社
従業員が30人~299人の企業 216社
従業員が300人以上の企業 10社

【参考元】未払賃金立替払事業(令和6年度)の実施状況について|厚生労働省

なお、従業員への賃金の支払いが困難な状況だからといって、必ずしも未払賃金立替払制度の適用対象となるわけではありません。

未払賃金立替払制度を利用するためには、事業主と従業員がそれぞれ利用要件を満たしている必要があります。

未払賃金立替払制度の利用要件

ここでは、未払賃金立替払制度の利用要件について解説します。

1.事業主側の要件

未払賃金立替払制度を利用するためには、事業主側が以下の要件を満たしている必要があります。

  1. 労災保険の適用事業の事業主であり、事業活動を1年以上継続していること
  2. 法律上または事実上の倒産にあたること

【参考元】未払賃金の立替払制度の概要|厚生労働省

以下では、各要件について解説します。

1-1.労災保険の適用事業の事業主であり、事業活動を1年以上継続していること

一つ目の要件は「労災保険の適用事業の事業主であり、事業活動を1年以上継続していること」です。

労災保険の適用事業には、原則として正社員・アルバイト・パートなどの労働者を1人以上雇用していれば該当します。

なお「農林水産業のうち常時労働者が5人未満の個人経営の事業」に関しては、例外として暫定任意適用事業という扱いとなっています。

1-2.事業主が倒産したこと

二つ目の要件は「事業主が倒産したこと」です。

ここでいう「倒産」とは以下の2種類あり、どちらかに該当している必要があります。

  • 法律上の倒産
  • 事実上の倒産(中小企業事業主のみ)

以下では、法律上の倒産と事実上の倒産の定義を解説します。

1-2-1.法律上の倒産とは

法律上の倒産とは、以下のような手続きをおこなった状態のことを指します。

  1. 破産手続開始の決定(破産法)
  2. 特別清算手続開始の命令(会社法)
  3. 再生手続開始の決定(民事再生法)
  4. 更生手続開始の決定(会社更生法)

上記のいずれかを受けている場合は、法律上の倒産に該当します。

各用語の定義や手続きの流れなど、詳しく知りたい場合は以下の関連記事をご覧ください。

【関連記事】
会社破産の手続きを現役弁護士が完全解説|流れ・費用・期間から経営者が知るべきポイントまで
清算とは?精算や会社解散との違い、清算手続きの流れや条件を解説

1-2-2.事実上の倒産とは

事実上の倒産とは、以下のような状態のことを指します。

  1. 事業活動が停止していること
  2. 今後も再開の見込みが立っていないこと
  3. 賃金支払能力がないこと

中小企業事業主の場合、法的手続きを実施していなくても、労働基準監督署に申請して労働基準監督署長から上記の認定を受ければ、未払賃金立替払制度の適用対象となります。

なお、中小企業事業主とは、以下の資本金・出資総額または従業員数の基準を満たしている事業主のことを指します。

業種 資本金または出資の総額 常時使用する従業員数
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他 3億円以下 300人以下

2.従業員側の要件

未払賃金立替払制度を利用するためには、従業員側が以下の要件を満たしている必要があります。

  1. 会社に労働者として雇用されていたこと
  2. 倒産の日の6ヵ月前の日から2年以内に退職していること

【参考元】未払賃金の立替払制度の概要|厚生労働省

以下では、各要件について解説します。

2-1.会社に労働者として雇用されていたこと

一つ目の要件は「会社に労働者として雇用されていたこと」です。

労働者とは、会社と雇用関係を結んで賃金を受け取っている人のことです。

正社員だけでなくアルバイトやパートなども含まれますが、原則として事業主の同居親族や役員報酬の受給者などに関しては対象外となります。

2-2.倒産の日の6ヵ月前の日から2年以内に退職していること

二つ目の要件は「倒産の日の6ヵ月前の日から2年以内に退職していること」です。

ここでいう「倒産の日」とは、以下の日のことを指します。

  • 法律上の倒産の場合:会社が裁判所に破産手続きなどの申し立てをおこなった日
  • 事実上の倒産の場合:労働者が労働基準監督署に認定申請をおこなった日

未払賃金立替払制度の対象となる賃金

未払賃金立替払制度の対象となる賃金や、対象外となる賃金は以下のとおりです。

未払賃金立替払制度の対象となる賃金 未払賃金立替払制度の対象とならない賃金
  • 定期賃金
  • 退職金・退職手当
  • 総額2万円未満の定期賃金・退職金
  • 賞与・ボーナス
  • その他(年末調整の還付金・解雇予告手当・解雇一時金など)

【参考元】未払賃金の立替払制度の概要|厚生労働省

定期賃金とは、会社が従業員に対して毎月1回以上定期的に支払う賃金のことです(労働基準法第24条2項)。

基本給だけでなく、要件を満たす家族手当、通勤手当、時間外手当なども対象となり、税金や社会保険料などの控除前の金額となります。

なお、賞与や臨時的な賃金などは対象外となるほか、定期賃金や退職金の未払金総額が2万円に満たない場合も対象外となります。

未払賃金立替払制度で立替金が支払われるタイミング

独立行政法人労働者健康安全機構ホームページの回答によると、立替金が支払われるのは「申請手続きを済ませてから30日以内」がおおよその目安となっています。

Q5-2

立替払請求書を機構に送りましたが、支払われるまでの期間としてどのぐらいを見込んだらいいのでしょうか。

A立替払金の支払については、請求書に記入漏れや記入誤りなどがなければ、 請求書を受け付けてから30日以内にお支払いするように努めています。

しかしながら、記載内容の補正や提出書類の追加などが必要な場合は、それ以上の時間がかかることもあります。

立替払請求書を送付してから1か月半以上経過しても支払通知書が届かない場合には、お問い合わせください。

引用元:未払賃金の立替払事業|独立行政法人労働者健康安全機構

ただし、たとえば以下のようなケースでは手続きが長引き、支払いまでに1ヵ月以上かかったりすることもあります。

  • 事実上の倒産に該当するかどうか審査を受ける場合
  • 申請書類に記入漏れや誤りがある場合
  • 書類の追加提出が必要な場合 など

なるべく未払賃金立替払制度での支払い時期を早めるためには、会社側でも従業員の申請手続きをサポートしたり、弁護士などに協力を依頼したりするのが有効です。

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【ケース別】未払賃金立替払制度の申請手続きの流れ

未払賃金立替払制度の申請手続きは、「法律上の倒産の場合」と「事実上の倒産の場合」で異なります。

基本的には従業員側が申請手続きをおこなうことになりますが、いざという場面で的確に動けるように会社側としてもサポート体制を整えておきましょう。

ここでは、ケースごとの申請手続きの流れを解説します。

1.法律上の倒産の場合

法律上の倒産の場合、基本的な手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 未払賃金額の確認をおこなう
  2. 裁判所または破産管財人などの証明者から証明書の交付を受ける
  3. 請求書に必要事項を記入し、労働者健康安全機構に提出する
  4. 審査がおこなわれたのち、立替金が支払われる

法律上の倒産の場合、裁判所または破産管財人などの証明者とやり取りをおこなって、倒産の事実や未払額などを証明するために必要な証明書の交付を受ける必要があります。

交付を受けたあとは、請求書に必要事項を記載して労働者健康安全機構に提出すると審査に移り、あとは立替金が支払われるのを待つだけとなります。

2.事実上の倒産の場合

事実上の倒産の場合、基本的な手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 未払賃金額の確認をおこなう
  2. 労働基準監督署へ認定申請書を提出し、認定通知書の交付を受ける
  3. 労働基準監督署へ確認申請書を提出し、確認通知書の交付を受ける
  4. 請求書に必要事項を記入し、労働者健康安全機構に提出する
  5. 審査がおこなわれたのち、立替金が支払われる

事実上の倒産の場合、まずは労働基準監督署に申請をして「事実上の倒産状態にあること」を認めてもらう必要があります。

労働基準監督署長から認定を受けたら、さらに未払賃金総額などの確認申請をおこない、確認通知書の交付を受ける必要があります。

交付を受けたあとは、請求書に必要事項を記載して労働者健康安全機構に提出すると審査に移り、あとは立替金が支払われるのを待つだけとなります。

未払賃金立替払制度を利用する場合の3つの注意点

未払賃金立替払制度の利用に関しては、以下のような注意点があります。

  1. 未払賃金立替払制度の請求には期限がある
  2. 未払賃金立替払制度の立替額には上限がある
  3. 未払賃金立替払制度では未払い賃金の証明が必要

ここでは、未払賃金立替払制度の利用にあたって知っておくべきポイントを解説します。

1.未払賃金立替払制度の請求には期限がある

未払賃金立替払制度では、以下のような請求期限が定められています。

  • 法律上の倒産の場合:裁判所が破産手続開始などの決定・命令をした日の翌日から2年以内
  • 事実上の倒産の場合:労働基準監督署長が倒産の認定をした日の翌日から2年以内

上記の期限を過ぎると一切支払いが受けられなくなるため、なるべく速やかに手続きを進めることが大切です。

2.未払賃金立替払制度の立替額には上限がある

未払賃金立替払制度では、未払い賃金の全額ではなく80%までしか支払われません

さらに、以下のとおり従業員の年齢ごとに上限額も定められています

退職日時点の年齢 未払賃金総額の限度額 立替払いの上限額
30歳未満の場合 110万円 88万円
30歳以上45歳未満の場合 220万円 176万円
45歳以上の場合 370万円 296万円

【参考元】未払賃金の立替払制度の概要|厚生労働省

たとえば「退職日時点の年齢:25歳、未払賃金総額:100万円」というようなケースでは、未払賃金総額の80%にあたる80万円が支払われます。

一方で「退職日時点の年齢:25歳、未払賃金総額:120万円」というようなケースでは、未払賃金総額の80%は96万円になりますが、立替払いの上限額を超えることはできないため88万円までしか支払われません。

3.未払賃金立替払制度では未払い賃金の証明が必要

未払賃金立替払制度では、未払い賃金が存在することを証明しなければいけません

具体的には、以下のような証拠となるものを準備する必要があります。

  • 賃金の支払い状況がわかる資料(給与明細書など)
  • 労働時間を確認できる資料(タイムカードや出退勤記録など)
  • 会社との契約内容がわかるもの(雇用契約書や就業規則など) など

証拠不足と判断された場合は支払額が減るおそれもあります。

なるべく漏れなくスムーズに有効な証拠を揃えるためには、弁護士のアドバイスやサポートを受けるのが有効です。

会社が賃金未払いを放置した場合の2つのリスク

従業員への賃金未払いを放置した場合、会社側の主なリスクとしては以下のようなものがあります。

  • 訴訟提起されて財産を差し押さえられる可能性がある
  • 労働基準法違反で刑事罰が科される可能性がある

ここでは、会社が賃金未払いを放置した場合のリスクについて解説します。

1.訴訟提起されて財産を差し押さえられる可能性がある

従業員に対して賃金を支払わないままでいると、支払いを求めて民事訴訟を提起されるおそれがあります。

民事裁判で敗訴すると、強制的に財産を差し押さえる「強制執行」へと移行する場合もあります。

強制執行によって預金などの財産が強制的に差し押さえられた場合、さらに資金繰りに困って経営難に陥る可能性があります。

2.労働基準法違反で刑事罰が科される可能性がある

会社は従業員に対して賃金を支払う義務があります(労働基準法第24条)。

賃金の未払いは労働基準法違反となり、以下のような刑事罰が科されるおそれがあります。

違反内容 罰則
通常の賃金未払い 30万円以下の罰金刑(労働基準法第120条1号
割増賃金の未払い(残業代・深夜手当・休日出勤手当など) 6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金刑(労働基準法第119条1号

場合によってはマスコミなどで大々的に報道されることもあり、いわゆる炎上やブランドイメージの低下などにつながる可能性もあります。

未払賃金立替払制度に関するよくある質問3選

ここでは、未払賃金立替払制度に関するよくある質問について解説します。

1.未払賃金立替払制度の適用対象になる企業は?

未払賃金立替払制度の適用対象となるのは、以下のような要件を満たしている会社です。

  1. 労災保険の適用事業の事業主であり、事業活動を1年以上継続していること
  2. 法律上の倒産または事実上の倒産に該当していること

なお、「法律上の倒産」「事実上の倒産」とは、それぞれ以下のような状態を指します。

法律上の倒産 事実上の倒産(中小企業事業主のみ)
以下のいずれかを受けている状態のこと
  1. 破産手続開始の決定(破産法)
  2. 特別清算手続開始の命令(会社法)
  3. 再生手続開始の決定(民事再生法)
  4. 更生手続開始の決定(会社更生法)
労働基準監督署長から以下の認定を受けている状態のこと
  1. 事業活動が停止していること
  2. 今後も再開の見込みが立っていないこと
  3. 賃金支払能力がないこと

2.未払賃金立替払制度の必要書類は?

未払賃金立替払制度では、基本的に以下のような書類が必要となります。

法律上の倒産の場合 事実上の倒産の場合
  • 証明書(裁判所または破産管財人などの証明者が発行)
  • 請求書・退職所得申告書 など
  • 認定通知書(労働基準監督署が発行)
  • 確認通知書(労働基準監督署が発行)
  • 請求書・退職所得申告書 など

なお、弁護士なら申請手続きに関するアドバイスやサポートが可能です。

弁護士の力を借りることで、ミスなくスムーズな手続きの進行が望めます。

3.未払賃金立替払制度の支払日は?いつもらえる?

未払賃金立替払制度を利用した場合、立替金は「申請手続きを済ませてから30日以内」に支払われるのが一般的です(未払賃金の立替払事業|独立行政法人労働者健康安全機構)。

ただし、たとえば以下のようなケースでは手続きが長引き、支払いまでに1ヵ月以上かかったりすることもあります。

  • 事実上の倒産に該当するかどうか審査を受ける場合
  • 申請書類に記入漏れや誤りがある場合
  • 書類の追加提出が必要な場合 など

なるべく未払賃金立替払制度での支払い時期を早めるためには、会社側でも従業員の申請手続きをサポートしたり、弁護士などに協力を依頼したりするのが有効です。

さいごに|未払賃金立替払制度に関する悩みや不安があるなら、弁護士に相談を

未払賃金立替払制度を利用するためには、規定の利用要件を満たしたうえで、必要書類を準備して適切に手続きを進めなければいけません。

従業員が申請手続きで迷った際に的確に動けるよう、会社側としても十分な知識を身に付けておくことが大切です。

未払賃金立替払制度に関する悩みや不安があるなら、弁護士に一度ご相談ください。

当サイト「企業法務弁護士ナビ」では、企業法務が得意な全国の弁護士を掲載しています。

初回相談無料や電話相談可能な法律事務所も多くあり、誰でも気軽に相談可能です。

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本記事は企業法務弁護士ナビを運営する株式会社アシロ編集部が企画・執筆いたしました。

※企業法務弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。

本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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