経営難に苦しむ会社の選択肢の1つとして、事業再生が挙げられます。
事業再生とは、過剰債務などの理由から経営難に苦しんでいる会社について、不採算部門の切り離しや採算部門への注力などによって再建を図ることを指します。
ただし、再生可能な事業がない場合や、資金繰りが好転する見込みが薄い場合などには、事業再生ではなく破産手続きを取ることも選択肢として考えられます。
破産手続きとは、過剰債務などの理由から経営難に苦しんでいる会社について、保有財産の処分などによって、債権者に対して清算手続きを行うことを指します。
この記事では、事業再生のメリット・デメリットについて、破産手続きとの比較を交えて解説します。
事業再生のメリット
この項目では、破産手続きと比較した場合の、事業再生のメリットについて解説します。
事業を存続させることができる
破産手続きを行うと会社は消滅し、法人としての形は失われます。
一方、事業再生を行って成功した場合は、会社を消滅させることなく事業を存続させることができるため、「なんとしても会社を残したい」と考える経営者にとっては、大きなメリットであるといえるでしょう。
事業の社会的価値を維持できる
破産手続きを行う場合は、保有する設備や在庫品などの資産について、売却・破棄する必要があるため、社会的価値は大きく下がります。
一方、事業再生を行って成功した場合は、事業の存続が可能になるため、破産手続きのように資産を手放す必要はありません。さらに、従業員(従業員の家族も含む)の生活維持や、取引先との関係継続、商品開発・サービス提供の継続なども望めます。
従業員の雇用がある程度維持できる
破産手続きを行う場合は、従業員はすべて解雇されることになります。
一方、事業再生を行って成功した場合は、ある程度の雇用を維持することが期待できます。
どのような雇用状況になるかについては、リストラが行われたり異動が行われたりと、ケースによってさまざまです。
企業・経営者への信用毀損が小さく済む
破産手続きを行う場合は、これまで積み上げてきた実績や地位などは失われます。
特に経営者については、自己名義で事業再建を実施することが一時制限されたり、自宅所有権が失われたりする場合もあるようです。
一方、事業再生を行って成功した場合は、これまで積み上げてきた実績や地位などについて、破産手続きほどの大きな信用毀損は回避することが望めます。
債権者への多くの債務返済が期待できる
事業再生が成功して事業継続による利益が発生した場合は、その利益を債権者への債務返済に充てることができるため、破産手続きを行った場合よりも、多くの債務返済を望むことができます。
事業再生のデメリット
この項目では、破産手続きと比較した場合の、事業再生のデメリットについて解説します。
資金繰りが好転しない可能性がある
事業再生を行っても、必ずしも資金繰りが好転するとは限りません。
不採算部門を切り離して採算部門に注力したにもかかわらず、期待しただけの利益が発生しない、というケースも考えられます。
事業再生が成功せず、赤字事業の延命のみで終了してしまった場合などは、「事業再生ではなく、破産手続きを行っていた方が被害は小さく抑えられた」といえるかもしれません。
経営が改善するまで労務的・精神的負担が継続する
事業再生を行う際は、財務状態の把握や再生方針の策定、資金確保やスポンサー企業の獲得など、さまざまな手続きが必要です。
また、手続きによっては裁判所への予納金の支払いが必要となることもあるため、大きな労務的・精神的負担がかかることも予想されます。
破産手続きを行う場合も、書類作成・提出や破産費用の支払いなどが必要です。しかし事業再生については、債権者への債務返済の完了をもって手続き終了となるため、破産手続きよりも長期間になることがあります。
破産手続きについては、手続き開始から終了まで6~9ヶ月かかるケースが多いようですが、事業再生については、手続き開始から終了まで早ければ6ヶ月程度、長ければ3年程度と非常にバラつきがあるようです。
債権者との交渉に時間がかかる可能性がある
破産手続きを行う際は、債権者から理解を得ないまま進めることも可能ですが、事業再生を行う場合は、債権者からの理解と協力が必要です。
中には、厳しい叱咤を受けるなどして話し合いが難航し、すぐには理解が得られず、思わぬ時間が取られてしまう、ということもあるかもしれません。
事業再生を考えているなら弁護士への相談がオススメ
事業再生を行う際は、現在の財務や資金などの状況について、正確に把握する必要があります。
その上で、『事業再生は可能か』『再生計画に無理はないか』『今後の経営推移はどれほどか』などについて、冷静かつ客観的に分析・判断する必要があります。
もし、手続きに関して少しでも不安がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談することで、各手続きに関するサポートが得られるだけでなく、たとえ法的トラブルが起こったとしても迅速な対応が期待できます。
また、事業再生を行う際は、税理士や会計士などの力が必要になることも考えられます。
弁護士に相談する際は、幅広い人的ネットワークを持つ事務所や、事業再生の相談について解決実績のある事務所などを選ぶとよいでしょう。
費用については、企業規模や債権者数などによって状況は大きく異なるため、相場となる金額を示すことは困難です。
相談料5400円/30分というところもあれば、初回相談無料というところもあるため、直接連絡を入れるなどして確認することをおすすめします。
まとめ
経営者として会社の今後を決定する上では、データに基づいた冷静な分析・判断と、それを実行に移す勇気が不可欠です。
また会社の存続は、経営者だけでなく、従業員や従業員家族の暮らしにも大きな影響を与えます。
しかし、会社が危機的状況にあるような場合は、冷静さを欠いてしまったり、判断に自信が持てなかったりするなど、十分な判断が下せないこともあるかもしれません。
そのような場合には、一度、知識・経験のある弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談することで、実務サポートやトラブル対応を任せられるだけでなく、心理的サポートを得ることも望めるでしょう。
事業再生を検討した場合、費用がいくらかかるか、まず確認しましょう。この記事では、法的再生・私的再生・弁護士費用についてご紹介します。 |
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