法人破産を弁護士に依頼するメリットや費用を徹底解説|失敗しない弁護士の選び方も

専門家監修記事
法人破産(会社破産)は弁護士に依頼をすることが不可欠です。しかし、どの弁護士に頼んだら良いのか、どの程度の費用がかかるかなど、知らないことも多くあるはず。そこで、法人破産を弁護士に依頼する際の注意点について解説します。
富士パートナーズ法律事務所
德安 勇佑
監修記事
事業再生・破産・清算

新型コロナウイルスの影響などにより、法人破産の件数が増加しています。

 

東京商工リサーチの調べによれば、『2018年の全国企業倒産(負債総額1,000万円以上)は8,235件、負債総額が1兆4,854億6,900万円』で、倒産件数は、前年比2.0%減(170件減)。

 

2009年から10年連続で前年を下回り、3番目に少ない水準だったと報じられていましたが、令和2年7月には『形態別件数:破産が716件。法的倒産の構成比97.4%で、過去最高を更新』とのこと。

 

表:2020年5月から7月までの破産状況

年次 概要
2020年4月
  • 全国企業倒産743件
  • 負債別件数:負債1億円未満の構成比が72.9%。100億円以上の倒産は3カ月ぶりに発生
  • 業種別件数:宿泊業、飲食業、アパレル関連の業種で倒産が目立つ
  • 従業員数別件数:10人未満の構成比85.3%。300人以上は2カ月連続で発生
2020年5月
  • 全国企業倒産314件
  • 上場企業の倒産が16カ月ぶりに発生
  • 負債別件数:負債1億円未満の構成比が64.9%。100億円以上の倒産は2カ月連続で発生
  • 業種別件数:宿泊業、アパレル関連の業種で倒産が目立つ
  • 従業員数別件数:10人未満の構成比82.4%。300人以上は3カ月連続で発生
2020年6月
  • 全国企業倒産780件
  • 形態別件数:破産が708件。法的倒産の構成比97.1%で、過去最高を更新
  • 負債別件数:負債1億円未満の構成比が77.1%。100億円以上の倒産は3カ月連続で発生
  • 業種別件数:宿泊業、飲食業で倒産が目立つ
  • 従業員数別件数:10人未満の構成比88.4%。300人以上は4カ月ぶりに発生なし
2020年7月
  • 全国企業倒産789件
  • 破産が716件。法的倒産の構成比97.4%で、過去最高を更新
  • 負債別件数:負債1億円未満の構成比が78.4%で、過去最高を記録
  • 業種別件数:金属製品製造業、機械器具卸・小売業、飲食業で倒産が増加
  • 従業員数別件数:10人未満の構成比は今年最高の88.9%

破産件数

参考:全国企業倒産状況 : 東京商工リサーチ

 

法人破産はきわめて専門的な手続なので、実際に法人破産の申立てを行う際は弁護士に依頼をしましょう。しかし、日常的に弁護士と付き合いがない経営者の方にとっては、誰に頼んだら良いのか、費用はどのくらいかかるかなどわからないことが多いかもしれません。

 

ひと口に弁護士と言っても、能力や得意分野、人柄などにはかなりの個人差があります。できることならば、信頼できる弁護士に法人破産の処理を依頼したいところでしょう。

 

そこでこの記事では、法人破産を弁護士に依頼する際の注意点として、

 

  1. どのように弁護士を選べば良いか
  2. 弁護士に依頼する際に準備しておくべきこと
  3. 弁護士費用の相場

 

などについて解説します。

 

 

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法人破産は弁護士に依頼することが不可欠である理由|依頼するメリットとは

法人破産という手続の性質上、会社が自力で法人破産を行うことは事実上困難です。また、法人破産を弁護士に依頼することには、数多くのメリットが存在します。

 

そのため、会社が法人破産の手続を行う場合、ほとんどのケースで弁護士への依頼が行われています。以下では、法人破産を弁護士に依頼することが不可欠となっている理由について解説します。

手続が複雑・専門的

法人破産の手続は破産法において詳細に規定されており、その内容は非常に複雑かつ専門的です。特に債権者が多い場合などには、債権者対応で紛糾することは必至であり、弁護士による専門的な対応が必要となります。

 

また、破産管財人や裁判所との調整についても、弁護士が行うことでよりスムーズに手続をすすめることができます。

少額管財を利用できる

法人破産には、多くの裁判所において「少額管財」という運用が行われています。

 

少額管財とは

少額管財は、比較的シンプルで定型的な処理が可能な破産事件に限って適用されます。特に、少額管財の運用が適用されるのは、弁護士(代理人)による申立ての場合に限るものとされています。

 

少額管財を利用すれば、破産管財人の業務を簡略化することにより、予納金(破産管財人報酬)を大幅に抑えることができます。

 

弁護士への依頼がない本人申立ての事件の場合、破産管財人がある程度後見的な観点から破産者をサポートする必要が生じるため、破産管財人の業務負担は大きくなります。そのため、本人申立ての破産事件については少額管財を利用することができず、特定管財(通常管財)の取り扱いとされます。

 

特定管財(通常管財)のケースでは、予納金(破産管財人報酬)の金額が大幅に上がってしまいます。そのため、弁護士費用がかからないということを考慮しても、トータルで見ると得にならないケースが多いところです。

他の方法による債務整理の可能性についてアドバイスをもらえる

法人破産をすると、会社の事業をいったんすべて清算して、ゼロからの再スタートを切ることになってしまいます。経営が苦しくなった会社であっても、可能であれば会社を存続させながら再起を図りたいという経営者の方も多いでしょう。

 

そのため、法人破産は、あくまでも会社にとっての最終手段として位置づけられます。法人破産だけに手段を限定せず、任意整理や民事再生の手続を利用すれば、会社を存続させながら事業の再生を図ることも可能です。

 

弁護士に依頼をすれば、それぞれの手続のメリット・デメリットを比較して、何が最適な債務整理の方法であるかについてのアドバイスをもらうことができます。

受任通知により債務の取立てが止まる

会社の借金が膨らんでしまい、債権者の数が多数となってしまった状況では、日常的に取立てのストレスに悩まされている経営者の方も少なくないでしょう。

 

弁護士に法人破産を含む債務整理を依頼した場合、弁護士から債権者に対して受任通知を発送されます。受任通知の中では、弁護士が債務整理を受任したこと、および、今後の借金に関する連絡はすべて弁護士を通じて行うべきことが記載されます。

 

債権者である金融機関は、受任通知の内容に従い、それ以降は弁護士を通じて借金の返済などに関するやり取りを行うことになります。

 

そのため、受任通知が発送されると、債権者から会社や経営者に対する直接の取立ては基本的にはストップします。過酷な取立てが止めば、経営者の方としてもストレスが大きく軽減されるでしょう。

 

 

法人破産を依頼する弁護士を選ぶ際のポイント

法人破産を弁護士に依頼する場合、できる限り事前に情報を仕入れて、信頼できる弁護士を選んで依頼をしたいところです。以下では、法人破産を依頼する弁護士を選ぶ際のポイントを解説します。

法人破産を取り扱った経験の豊富さ

法人破産の経験が豊富な弁護士の方が、手続を確実かつスムーズに進められることは間違いありません。法人破産の取り扱い経験が豊富かどうかについては、公式ホームページの記載が参考になります。

 

特に法人の債務整理に力を入れているという記載があれば、法人破産の取扱件数が多い弁護士事務所である可能性が高いでしょう。また、弁護士としての経験年数や、独立(事務所開業)してからの年数もポイントになります。

 

おおむね弁護士としての経験年数10年以上、かつ独立してから5年以上が経過していれば、一定以上の経験を積んだ弁護士であると評価できるでしょう。

弁護士費用

会社や経営者個人の経済状況が思わしくない状況では、弁護士費用の金額も重要なポイントになります。現在では日弁連の報酬規程が撤廃されている関係で、各弁護士が自由に弁護士費用の金額を決定しています。

 

そのため、複数の弁護士事務所から見積りを取得し、相互比較の上でリーズナブルな弁護士事務所を選ぶと良いでしょう。ただし、弁護士費用はあくまでもひとつの考慮要素に過ぎないので、弁護士費用が安ければ良いというものでもありません。

 

他の要素も総合的に考慮したうえで、もっとも信頼できる弁護士に法人破産の手続を依頼すべきでしょう。

【関連記事】法人破産にかかる弁護士費用の相場は?その他の費用と併せて解説

クライアント目線で親身に相談に乗ってくれる弁護士

法人破産を行う際、経営者は将来を悲観してネガティブな気持ちになりがちです。そのため、弁護士が親身になって相談に乗り、経営者の精神的な負担を和らげてくれるかどうかも重要なポイントといえます。

 

多くの弁護士事務所では初回無料法律相談実施しているため、その際に直接対話し、弁護士との相性が合うかどうかをチェックすることをおすすめします。

 

なお、初回無料相談には、30分や60分などの時間制限が設定されている場合もあります。法人破産を相談・依頼する際には込み入った話になることも多いので、相談時間が60分以上に及ぶことを前提にして事務所を選ぶのが良いと思われます。

大手の法律事務所(ただし費用は高額になりがち)

大手の法律事務所であれば、法人破産などの債務整理専門の部署が設けられているケースも多く、またマンパワーも豊富に備えています。そのため、法人破産についての専門性・経験・ダブルチェック体制などがしっかりしていて、高品質のサービスを受けられる可能性が高いといえます。

 

ただし、大手の法律事務所では分業制が敷かれている場合があること、および弁護士費用が高額になりがちなことに注意が必要です。

 

 

弁護士のツテがない場合、どのように弁護士を探せばよい?

普段から弁護士との付き合いがあまりない会社・経営者の場合、法人破産の局面になって初めて本格的に弁護士を探すというケースもあるでしょう。法人破産を依頼できる弁護士に心当たりがない場合、どのように弁護士を探せば良いかについて解説します。

知人の紹介

知人に対して弁護士の紹介をお願いすれば、知人としても信頼できる弁護士を紹介しようという気持ちが働くでしょうから、良い弁護士に巡り会える可能性が高いといえます

 

その際は、弁護士との繋がりを豊富に持っていそうな知人に連絡をとってみるのが良いでしょう。たとえば法学部や法科大学院などを卒業した友人、名門大学を卒業した友人などであれば、弁護士の知り合いがいる可能性が高いでしょう。

 

また、会社経営者の中には、ビジネス上日常的に弁護士との付き合いがある人も多いです。そのため、知り合いの他の経営者のツテをたどってみるのも有効でしょう。

 

その他にも、税理士や社会保険労務士、公認会計士など他の士業の方からも紹介してもらえるでしょう。

破産手続きに実績のある弁護士ポータルサイトで検索

最近はポータルサイトなどが充実しているため、地域や得意分野などに応じて弁護士をインターネット上で検索することも有効です。法人破産を検討する場合には、本サイトの『企業法務弁護士ナビ』のように『事業再生・破産・清算に実績のある弁護士一覧』へアクセスし、希望条件に沿った弁護士を探すと良いでしょう。

 

なお、ポータルサイト上で依頼する弁護士に見当をつけた場合には、弁護士事務所の公式ホームページについても必ずチェックしておきましょう。

 

弁護士事務所の公式ホームページでは、弁護士が業務への取り組み方などに関して、依頼者へのメッセージを発信しています。その内容をチェックして、信頼に足る弁護士であるかを見極めるための判断材料にしましょう。

法テラスに相談

法テラスの無料法律相談を利用すれば、代表者個人の破産と同時に法人破産も扱ってくれる弁護士が対応してくれる場合があります。ただし、法人破産の弁護士報酬については、法テラスによる立替払い制度が使えないので注意してください。

 

また、法テラスによる紹介の場合、相談者が主体的に弁護士を選択することはできません。まずは自分で知人のツテやインターネット検索などを利用して弁護士を探してみて、それでもピンとくる弁護士がいなければ、法テラスの利用を検討するという流れを取ることをおすすめします。

【法テラス公式サイト】https://www.houterasu.or.jp/

 

法人破産を弁護士に相談する際に準備しておくべきこと

法人破産を弁護士に相談する場合、何も準備をしないで行くと、相談の場でのやり取りが空回りしてしまうことがあります。法人破産の場合、弁護士からどのような質問をされるかはある程度予測ができますので、事前に準備をしてから相談に臨むことをおすすめします。

 

以下では、法人破産を弁護士に相談する際、事前に準備をしておくべきことについて解説します。

会社の財産と債務に関する資料を集めておく

債務整理の方法選択や、手続きや費用の見通しを立てるという観点からは、弁護士に対して会社の財務状態に関する情報を正しく伝えることが重要になります。

 

たとえば、以下のような内容は正確に弁護士に伝える必要があります。

 

  • 会社がどのような財産を持っているか
  • 会社に対する債権者は何人で、それぞれに対してどのくらいの金額の債務を負っているか
  • 従業員は何人か
  • 売上や経費の推移 など

 

これらの情報を示す資料などがあれば、弁護士に相談する際に持参しましょう。分量が多い場合は、メールやWeb上にアップロードする方法で共有することをおすすめします。他にも会社に関する情報は、できるだけ詳細かつ具体的に弁護士へ伝えるようにしましょう。

どのような形で債務整理をしたいかの希望を明確にしておく

債務整理の方法選択を行うに当たっては、依頼者が会社をどうしたいかという希望も重要になります。会社を畳むことを決意しているのか、それとも可能であれば会社を残したまま事業を再建したいのかなど、債務整理の進め方についての希望を明確化しておきましょう。

 

もちろん、弁護士のアドバイスを聞いてから方針を変えることは問題ありません。ただ、自分自身の考えをある程度定めてから弁護士の話を聞くほうが、法律相談が実りの多いものになるでしょう。

 

 

弁護士費用はどのくらいかかる?

経営状態が思わしくない状況では、会社や経営者が弁護士費用を捻出するのは大変な場合も多いでしょう。その場合、弁護士費用が安い弁護士事務所に依頼をする、分割払いの相談をするなどの対応が必要になります。

 

弁護士費用の相場観を踏まえた上で、できる限り弁護士費用をリーズナブルに済ませられるように手を尽くしましょう。

弁護士費用は弁護士事務所によって異なる|相見積もりを取るのがおすすめ

弁護士費用は、以前は日本弁護士連合会(日弁連)が定めた報酬規程に則って定められていました。現在では日弁連の報酬規程は廃止されており、弁護士が自由に報酬額を設定しています。

 

したがって、法人破産の弁護士費用についても、弁護士によってバラバラになっています。そこで、複数の弁護士事務所から相見積もりを取り、条件の良いところを選ぶことをおすすめします。

相場は50万円~300万円|規模や難易度などにより上下

法人破産のケースでは、事件ごとに規模や難易度が大きく異なるため、弁護士費用の相場といってもかなり幅があることに注意が必要です。

たとえば、以下の要素などが弁護士費用の金額に影響します。

 

  • 会社財産の規模
  • 従業員の有無と人数(労務処理が必要かどうか)
  • 債権者の数
  • 営業所の数
  • 少額管財か特定管財か など

 

弁護士費用については、依頼時に弁護士と詳細に打ち合わせを行い、依頼者と弁護士の間で認識に齟齬が生じないようにしておくべきです。そのため、弁護士費用についての不明点がある場合には、逐一弁護士に説明を求めましょう。

分割払いの相談に応じてくれる弁護士事務所もある

弁護士費用を支払う余裕がない場合は、分割払いの交渉をしましょう。法人破産のケースでは、依頼者に弁護士費用を支払う余裕がないというケースは非常に多いです。

そのため、弁護士費用の分割払いに応じてくれる弁護士事務所も比較的多くなっています。

 

弁護士費用の分割払いの交渉をする際には、経済的に困難な状況にあること、および手続終了後に支払える見込みがあるということを丁寧に説明しましょう。

 

 

まとめ

法人破産は複雑かつ専門的な手続であるため、弁護士に依頼することが事実上必須となっています。

 

信頼できる弁護士に依頼することが何よりも大切ですので、知人の紹介・インターネット上のポータルサイトなどを利用して、法人破産を安心して任せられる弁護士を探しましょう。

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