会社設立の流れをわかりやすく解説|手順や費用について

専門家監修記事
会社を設立するなんていうのは一生に一度あるかないかの一大イベントですよね。だからこそ、会社設立の流れがわからない人がほとんどだと思います。そんな方のために、この記事では会社設立の流れを紹介します。
阪神総合法律事務所
曾波 重之
監修記事
会社設立・新規事業

かつての日本では、株式会社を設立するためには1,000万円以上、有限会社を設立する場合には300万円以上の資金が必要でした。株式会社のなかには特例で、資本金が1円の会社もありましたが、ごくごく一部の会社に過ぎませんでした。

 

しかし、現在の会社法では、この資本金について下限額が設定されていないため、どんな人でも例外なく、資本金1円で株式会社を設立できるのです。つまり、現代では資本金集めに奔走することなく、会社を作ることができるのです。

 

では、実際に会社を作る場合には、どういった手続きを踏めばよいのでしょうか。

 

この記事では、株式会社の会社設立にターゲットを絞り、設立までに必要な手続きの流れと、会社を設立した後に必要となる各種届出についてご紹介します。

 

 

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会社設立全体の流れ

まずは、会社設立の流れを順番に見ていきましょう。

設立費用の用意

会社を設立する場合、まず気になるのが、いくら費用がかかるのか、という部分だと思います。資本金については先述の通り、100万円や1,000万円といった資金を用意する必要はありません。1円の資本金でも会社設立は可能です。

 

もちろん、会社設立にあたっては、必要となる費用は資本金だけではありません。手続きを進めるにあたっては、

 

  1. 定款印紙(4万円)
  2. 公証人認証手数料(5万円)
  3. 謄本交付手数料(約2,000円)
  4. 登録免許税(15万円)

 

以上が主にかかる費用となります。これらのほか、法務局へ行くための交通費や振込手数料などの費用もかかりますので、概算すると25万円程度は設立費用として見積もっておいたほうがよいでしょう。

商号を決める

「商号」とは会社の名前のことです。換言すると社名です。社名は言わば「会社の顔」になる訳ですから、慎重に決めなければなりません。

 

商号を決める際のポイントとしては、長く使えることを意識するとよいでしょう。一時の流行に影響されて商号を選んでしまうと、その時点では満足するかもしれませんが、将来的に満足することはほぼ確実にありません。

 

もちろん、商号変更という手続きを踏めば、決めた商号を変更することができます。しかし、商号変更にはかなりのコストがかかりますし、取引先や顧客を混乱させかねませんので、一度の商号決定で長く使えるものを選択しましょう。

事業目的を決める

会社の法律である「定款」には、その会社の事業目的を記載します。この記載がなければ会社を設立することはできません。そして、定款に記載した目的以外の事業を会社は行うことができなくなります。

 

例えば、会社の事業目的は詳細に記載しなければならないため、「生鮮食品の卸売り」としたとします。その後、時代はITバブルに突入し、コンピューター部品の卸売りをしたほうが儲かりそうだと思っても、定款の定める事業目的とかけ離れてしまうため、手を出すことはできません。

 

そのため、設立時に開始しようと考えている事業だけでなく、今後展開が見込まれる事業があれば、それも定款に盛り込んでおきましょう。もし、資金などの問題から現時点では手を出せないとしても、定款に記載さえあれば将来的に事業を行うことができます。

 

ただし、目的を多く記入し過ぎてしまうと、公証人役場で認証を受ける際に不審に思われてしまい、認証を受けられない可能性があります。それを防ぐために、あくまでも自分が将来展開する見込みがある事業にきちんと数を絞ったうえで、記載するようにしましょう。

資本金額の決定

かつての日本では、株式会社を設立する際、資本金の下限額が設定されていました。しかし、現代の会社法では下限額が設定されていないため、資本金1円から会社を設立することができます。

 

ただ、それで経営を始められるかというと、現実的には困難です。会社を経営する上では、備品の購入や家賃の支払いなど、さまざまな初期費用がかかってきます。この費用の支払いは、売上が回収できればそちらで補填することができますが、事業が軌道に乗るまでは手元にある自己資金だけでやり繰りしなければなりません。

 

もし、自己資金が不足してしまったら、あとは借入金に頼るほか道がなくなってしまいます。こうした事態を未然に防ぐためにも、資本金額は開業資金だけでなく、向こう半年程度の運転資金を用意しておいたほうがよいでしょう。

定款の作成

「商号」や「事業目的」「資本金額」など、会社を設立する上で必要な事項を検討できたら、次は定款の作成に着手します。定款とは、会社の憲法、法律と称されるほど重要なものですから、間違いのないように気をつけて作成しましょう。

 

定款には、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」という3種類の記載項目があります。絶対的記載事項とは、定款の中なかで必ず記載しなければならない事項であり、相対的記載事項とは、定款内に記載しないと法的な効力を発揮しないという事項です。任意的記載事項は書いても書かなくてもよい、という事項になるため、あまり気にしなくても大丈夫です。

《絶対的記載事項》

  • 商号
  • 本店所在地
  • 事業目的
  • 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
  • 設立発起人の氏名または名称および住所
  • 発行可能株式総数

相対的記載事項(一部)

  • 株式の譲渡制限
  • 現物出資

 

もし定款の記載内容に不安がある場合は、弁護士などの専門家に見てもらうのも一つの方法です。

認証

定款の認証は、公証人役場へ直接出向く以外にも、電子認証という方法があります。定款の電子認証を行えば、印紙税(4万円)がかからず、1~2万円という金額で認証を受けることができます。しかし、電子認証にあたっては、通常のパソコンのほか、必要となる設備が諸々あるため、かえって費用が重なる恐れもあります。

 

実際に公証人役場で定款の認証を受ける場合は、「法務局申請用」「公証人用」「会社保管用」の3通の定款を用意しておきます。この3通のうち、収入印紙(4万円)を貼り付けるのは公証人用の1通のみです。認証手続きが終われば、公証人用の1通が公証人役場に保管され、ほかの2通が返却されます。

 

返却された2通のうち、1通には謄本という朱印が押され、それを法務局での申請の際に用います。残りの1通は社内で大切に保管しておきましょう。

実印の作成

会社設立の際には、代表者の実印を登録しなければなりません。そのため、会社設立の登記申請を行うまでに、実印を新たに作成しておきましょう。設立登記申請の際には、それを会社代表社印として、印鑑届を提出します。

 

しかし、なかには実印を作成する時間がない、という方もいらっしゃるかもしれません。その場合には、個人の実印をそのまま会社代表者印として用いることが可能です。そして、会社設立後の落ち着いた段階で新しい会社代表者印を作成し、印鑑の変更届を行います。こうすることで、設立を急ぐ場合でもスムーズに手続きを進めることが可能になります。

必要書類の提出

定款の認証を受けることができたら、次は法務局での登記申請となります。登記申請にあたっては、用意すべき書類が山のようにありますので、記入ミスや書類の紛失がないように注意を払いながら作成しましょう。

 

用意すべき書類は、資本金の払込証明書や株式会社設立登記申請書、印鑑届書などです。これらの書類を提出し、登記申請を行います。

資本金の払い込み

資本金の払い込みは、設立発起人の個人口座に行っても構いません。もし、別に口座を開設しているのであれば、そちらに資本金を払い込みます。この資本金の払い込みは振り込みでなく、預け入れでも問題ありません。

 

資本金の払い込みが済んだら、通帳の表紙、表紙の裏側(銀行名や支店名、預金番号の記載欄 )、資本金の払い込み明細が記載されたページ、の3カ所をコピーします。このコピーをもとに、登記申請の際に必要となる資本金の払込証明書を作成します。

登記申請

登記申請は、本店所在地を所轄する法務局で行います。申請は、これまでに作成した必要書類を印刷するか、電子メディアなどに保存し、持参して行います。

 

登記申請は、原則として設立時代表取締役が行うことになります。委任状があればほかの人が申請することも可能ですが、手続きが複雑になりますので、なるべく本人が行うようにしましょう。また、費用はかかりますが、司法書士などの専門家に代行してもらうことも可能です。

会社設立時に必要な書類の準備

会社を設立する際には、どのような書類が必要になるのでしょうか。以下で解説していきます。

登記申請書

会社の設立登記申請では、登記申請書の作成が必要となります。設立する会社の形態によって、使用する登記申請書の種類が異なります。

 

例えば、株式会社を設立する場合なら、「株式会社設立登記申請書」が必要になりますし、NPO法人や社団・財団法人、事業協同組合などを設立する場合には、それぞれ違った申請書を用います。

 

法務局のホームページ(法務局│商業・法人登記の申請書様式)に、各種申請書のテンプレートや記載例が掲示されていますので、そちらを参考にするとよいでしょう。

定款

登記申請の際に必要となるのは、認証を受けた際に「謄本」という朱印が押された定款です。それをほかの書類とセットにし、法務局に提出します。

発起人の決定書

「発起人」とは、定款に署名または記名押印をした者のことであり、通常は会社の設立を企画して設立までの手続きを行い、資本金を出資する人のことを指します。この発起人は1名以上必要となります。

 

もし、発起人がたくさん存在すると、会社の概要を決める際に意見が対立する可能性が高くなり、書類の作成が大幅に遅れる恐れがあります。加えて、発起人には1株以上の株式を引き受ける必要があるため、対立すれば会社設立後も禍根を残すことになります。そのため、発起人を決定する際は慎重に議論を行いましょう。

設立時役員の就任承諾書

会社設立申請にあたっては、設立する会社の役員を事前に決めておく必要があります。

 

取締役といった権限の強い役員の任期は2年と限定されていましたが、非公開の株式会社であれば、取締役の任期を定款で定めることができ、最長で10年まで、1任期で務めることができます。

 

役員は株主から経営についての委任を受ける非常に重要なポジションですので、この人選についても真剣に検討しましょう。

取締役全員の印鑑証明書

登記申請では、取締役全員の印鑑証明書が必要となります。印鑑証明書は、住所地の市区町村で発行してもらえます。もし、印鑑登録をしていなければ、印鑑登録から行わなければなりません。この印鑑登録には時間がかかってしまうので、登記申請までには必ず終えておくよう、余裕をもって準備しましょう。

株式会社設立登記申請書

株式会社設立登記申請書は、近くの法務局で手に入りますし、法務局のホームページで公開されているものをダウンロードすることも可能です。登記申請書には、商号や本店所在地、課税標準金額などを記載します。ただし、登記すべき事項が「別紙の通り」というような記載になるため、別紙を作成します。

印鑑届出書

登記申請の際に、会社の実印を登録します。ここでは、代表者印を会社の実印として登録することが可能です。登録にあたっては、印鑑届出書が必要となりますので、法務局で受け取ることができる用紙に記載事項を記入しましょう。

定款の作成でお悩みの方へ

定款は会社の憲法ともいわれる根本的な規則になります。何か問題が起きた場合、定款が参考になるケースもあるため法的な面から見ても問題がないものにしなければなりません。定款の作成に不安がある方は、弁護士に作成・チェックしてもらうことをおすすめします。無料相談できる事務所もありますので、お気軽に弁護士にご相談ください。

 

会社設立後にやること

無事に会社設立が認められても、手続きが終わるわけではありません。以下で設立後の流れを確認していきましょう。

登記事項証明書の取得

登記が完了すれば、まず各種届出のために必要となる書類を入手します。その一つが「登記事項証明書」です。この書類は税務署をはじめ、都道府県税事務所や市区町村役場、年金事務所でも利用することになるため、最低でも7通ほどは取得しておきましょう。

 

登記事項証明書の取得に際しては、書面請求の場合600円、オンライン請求・送付の場合500円、オンライン請求・窓口交付の場合400円が、1通あたりにかかります。

印鑑証明書の取得

登記事項証明書と同じく取得しておく必要があるのが「印鑑証明書」です。この書類も登記事項証明書と同じく、法務局で登記完了と同時に取得することができます。印鑑証明書は、銀行で会社口座を開設するときに用いる、非常に重要な書類です。

 

なお、印鑑証明書の取得にあたっては、印鑑証明書交付申請書を提出する前に「印鑑カード」を作成しておきましょう。印鑑カードを事前に発行してもらっておくことで、会社代表者本人でなくとも印鑑証明書の交付を受けることができるようになります。

 

印鑑証明書の取得には、書面請求で450円、オンライン請求・送付で410円、オンライン請求・窓口交付で390円が、1通あたりにかかります。

税務署への届け出

税務署へは、複数の書類を提出することになります。必要な書類は国税庁ホームページ(国税庁│No.5100 新設法人の届出書類)や所轄の税務書で入手することができます。

 

まず提出するのが「法人設立届出書」です。この届出は、税務署に会社の設立と基本的な業務内容を報告するもので、必ず提出しなければなりません。法人設立届出書に、定款のコピーや登記事項証明書、株主リストを添付した上で、設立から2カ月以内に税務署へ届け出てください。

 

次に必要なのが「給与支払事務所等の開設届出書」です。会社を設立すると、従業員などへの給与の支払いが発生します。その際、会社は給与から税金を源泉徴収し、税務署へ納めなければなりません。

 

場合によっては「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することも検討しましょう。この書類を提出すると、給与支給者の数が9人以下の場合に限り、源泉徴収した所得税を半年に一度、まとめて納付することが可能になります。

 

税務署へはほかにも、「青色申告の承認申請書」や「棚卸資産の評価方法の届出書」などを提出します。書類のなかには提出期限が定められているものもあり、守られない場合には罰金などのペナルティが発生することがありますので、十分に注意しましょう。

社会保険関係の手続き

社会保険には「健康保険」「介護保険」「厚生年金」が含まれます。これらの保険制度を利用するためには、会社を設立してから5日以内に管轄の年金事務所を訪れ、各種届出と添付書類の提出をしなければなりません。

 

届け出る書類と必要になる添付書類は下記の通りです。

《届出書類》

  • 健康保険 厚生年金保険新規適用届
  • 健康保険 厚生年金保険被保健者資格取得届
  • 保険料口座振替届出書

※以下は被扶養者がいる場合

  • 健康保険被扶養者異動届
  • 第3号被保険者にかかる届出

(いずれの場合も扶養認定可能な書類の提出が必要です)

《添付書類(一部)》

  • 登記事項証明書
  • 労働者名簿
  • 出勤簿もしくはタイムカード
  • 賃金台帳・源泉徴収簿
  • 年金手帳

 

届出に必要な書類は、すべて日本年金機構のホームページ(日本年金機構│新規適用の手続き)でダウンロード可能です。添付書類も含めると、かなりの量の書類を提出する必要がありますので、しっかり時間をかけて作成するか、専門家に依頼するとよいでしょう。

 

まとめ

会社設立は、やり方さえわかれば個人でも手続きすることが可能です。しかし、定款の作成や認証、登記申請などで時間と手間がかってしまいます。そうなると、事業開始のために割くことができる時間も減ってしまい、会社を設立したのに事業を行えない、という状態になってしまうことも十分に考えられます。

 

それを防ぐためにも、司法書士や税理士、弁護士といった専門家に相談してみるのがおすすめです。司法書士なら、法務局での登記申請などを代行することができますし、税理士なら会社設立後の税務署での複雑なやり取りをすべてスムーズに進めることができます。また、弁護士は司法書士と税理士、双方の業務を行えるので、トータルなサービスが期待できます。

 

専門家に依頼すると、報酬金などの費用がかかってしまいますが、その分、自身は事業経営のために時間を費やすことができます。もし、会社設立を検討されているなら、一度、専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

 

もっと具体的な費用を知りたい方へ

株式会社と合同会社で会社設立にかかる費用も変わってきます。具体的にいくらになるのか、予め確認しましょう。

 

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