就業規則の届出|届け出る前に確認しておきたい5つのポイント

専門家執筆記事
就業規則は、正しく周知が行われていれば効力を発揮しますが、届け出を怠った場合には罰則を命じられる可能性があります。届出の手順なども踏まえて、この記事で正しい知識を身に付けましょう。
Ad Libitum(フリーランス人事)
松永 大輝
執筆記事
人事・労務

「就業規則」の作成は事業主の義務とも言える大切なことです。労働基準法などの専門知識が必要であるため、自分で作成する方法を選んだ方は大変なご苦労があったのではないでしょうか。

 

さまざまな資料を調べたり、専門家の助言を受けながらカタチになったところでひと安心…というわけではありません。届け出を行うための準備を確認してみましょう。そこで一安心してはいけません。

 

事業所の従業員数が常時10人以上であれば、就業規則を作成する義務が生じるだけでなく、作成した就業規則を社内で周知し、労働基準監督署に届け出る必要があります。

 

では、労働基準監督署への届け出はどのような手順で行うのでしょうか。また、提出するものは作成した就業規則だけでよいのでしょうか。

 

本記事では、就業規則を届け出るにあたって事前に確認しておきたいポイントを5つご紹介したいと思います。このポイントさえ押さえておけば、就業規則の届け出を漏れなく実施することができるようになるはずです。

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就業規則届出の手順は4ステップ

実際に就業規則を届け出る手順について確認していきましょう。大まかな流れは以下の通りです。

 

①作成した就業規則を2部準備する

就業規則の届け出には同じ内容のものを「2部」持参する必要があることに注意しましょう。1部が労働基準監督署への届け出用、もう1部は自社で保管する原本となります。自社保管分は届け出時に受理印が押されて返却され、その就業規則が労働基準監督署へ届け出たものと同一であるという証明になります。

 

②意見書など添付書類も同様に2部準備する

就業規則と同様、届け出用と自社保管用の2部が必要となります。

 

③所轄労働基準監督署へ届出る

提出先は事業所のある場所ごとに定められた所轄労働基準監督署になります。管轄区域が分かりにくい場合は「所轄労働基準監督署 ○○(都道府県名)」と検索しましょう。

 

事業所のある場所はどの労働基準監督署が管轄しているのか、その労働基準監督署はどこにあるのかが記載された労働局のホームページが出てくるはずです。

 

※なお、就業規則は作成してから「遅滞なく」届け出なければならないとされています。何日以内と具体的には定められていませんが、後述するように届け出をしないと罰則があるため、作成したらなるべく早く届け出るようしましょう。

 

※また、労働基準監督署は添付書類など必要書類に不備がなければ就業規則を受理してくれますが、「労働基準監督署が受理した=適法な就業規則である」とはなりませんので注意が必要です。

 

あくまで労働基準監督署は就業規則を受理したに過ぎません。内容についてお墨付きを与えているわけでは一切ないということを押さえておきましょう。

 

④自社保管用の就業規則を社内周知する

就業規則は作成し、届け出て、社内で周知してはじめて効力が発生します。周知については本記事のテーマではないため詳細には触れませんが、社内の見やすい場所に掲示する、誰でもすぐに見ることができるような場所に保管しておく必要があります。

 

就業規則の届出義務があるのはどんな事業所?

就業規則の届け出義務があるのはどんな会社(事業所)なのでしょうか?

 

常時10名以上の職場

常時10名以上の従業員を雇用する事業所では、就業規則を作成する必要があると労働基準法で定められています。

 

常時雇用している従業員の数が10名以上になった場合には、

 

  1. 就業規則の作成
  2. 従業員への周知
  3. 労働基準監督署への届け出

 

上記の3点を行わなければならない義務が法律上自動的に生じるということになります。

届け出義務が生じるケースを詳しく確認しておきましょう。

 

アルバイト・パートも人数に入る

上述の通り、労働基準法では「常時10名以上の労働者を使用する」場合に就業規則の作成が義務付けられるとされています。

 

ここでいう「常時」とはフルタイムで働く「正社員」だけでなく、パートやアルバイト、契約社員なども含まれます。非正規社員であっても使用している(雇っている)のであれば、週1回の勤務であっても「常時使用している労働者」となります。

 

事務所(事業所)などが複数ある場合の注意点

 

また、事務所や店舗(事業所)が複数ある場合は注意が必要です。事業所ごとに常時使用している従業員数が10名以上になる場合には「事業所ごと」に就業規則を作成し、届け出なければなりません。

 

その場合、上記で解説した添付書類も事業所の数だけ必要になります。提出先もそれぞれの事業所を管轄する労働基準監督署となるので、確認しましょう。

 

ただ、全ての事業所の就業規則が同一である場合、事務の簡素化のために「本社一括届出」という制度があります。就業規則の内容が同じであれば、この制度を利用することで届け出は本社を管轄する労働基準監督署にまとめて行えばよいことになります。

 

ただし、本社一括届出の場合でも、提出書類は事業所ごとに漏れなく準備する必要があるという点に注意しましょう。

 

「本社一括届出」は、少しでも事業所ごとに内容の違いがある場合は利用することができません。全ての事業所にあてはまるものかどうか、一言一句を確認した上で行いましょう。

 

届けるのは就業規則だけ?就業規則に添付する書類

ここからは就業規則に添付しなければならない書類について確認していきましょう。就業規則とともに届出なければならないのは以下の3つの書類が挙げられます。

 

1.別規程

上記でも解説しましたが、就業規則で定めるべき内容を別規程で定めている場合、必ず合わせて届け出る必要があります。一般的には賃金規程や退職金規程、育児介護休業規定などが該当することになるでしょう。

 

2.就業規則(変更)届

「表紙」という位置付けになるのがこの就業規則(変更)届です。特に書式は決められていないため、以下の内容を記載すればフリーフォーマットで作成して差し支えありません。

 

  • 日付(届出日)
  • 提出先(○○労働基準監督署長殿、など)
  • 会社の名称
  • 所在地
  • 代表者の職名・氏名
  • 事業主印

 

3.意見書

就業規則の作成に当たっては、必ず労働者の意見を聴かなければならないとされています。(労働基準法第90条)具体的には、以下のどちらかから意見聴取をする必要があります。

 

  • 労働者の過半数で組織する労働組合
  • 労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)

 

昨今ではほとんどの会社が社内に労働組合をもたないと思いますので、「過半数を代表する者」から意見を聴くことになるでしょう。

 

意見を聴いたことを証明するために、意見書を添付書類として提出することになります。なお、意見を聴く必要はありますが、就業規則の作成にあたり、必ずしも「賛成」を得る必要はありません。

 

仮に意見書に「就業規則の内容全てに反対する」と記載されていたとしても、届け出に支障は一切ありません。意見書にも決まった書式はないため、フリーフォーマットで差し支えありません。代表者の署名捺印は忘れずにもらいましょう。

 

就業規則の届出を怠った場合のリスク

 

最後に就業規則の届け出を怠ったらどうなるのかを確認しておきましょう。

 

届出なかった場合の罰則

就業規則は作成してから「遅滞なく」届け出る必要があります。具体的な期限は定められていませんが、いつまでも届け出をしなかったり、意図的に届け出を怠ったような場合には「30万円以下の罰金」が課せられることになります。常識的な範囲内で届け出をしましょう。作成・周知後、すぐに行うのがよいと思います。

 

届出をしていない就業規則は無効?

→労働基準監督署に届け出をしていなくとも、作成された就業規則が社内で周知されていればその就業規則は「有効」となります。判例によれば就業規則の届け出は就業規則の効力発生の要件ではないとされています(コクヨ事件)。とはいえ、届け出を怠っていれば罰金の対象となるのは上述の通りです。

 

そもそも就業規則の届け出をしないことで会社が得られるメリットは何もありません。労働基準監督署は届け出られた就業規則の隅々に目を通す、ということまではしないことがほとんどなので、作成したらすぐ届け出るようにしましょう。(内容を変更する場合も同様です)

 

まとめ

以上、就業規則を届け出る前に確認しておきたいポイントについて5つの観点から解説してきました。届け出だけでもこれだけのポイントがあるため、就業規則は労務管理上、大変重要な事項です。

 

作成して届け出てしまえばよいということではなく、実情に応じて都度変更する必要も出てくるでしょう。

 就業規則のことで困ったことがあったら、労務管理に強い弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談してみるのもよいと思います。

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