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企業法務の用語集
公募割れとは、IPO(新規株式公開)で上場した株式の初値が、投資家への販売価格である公開価格を下回る状態です。たとえば公開価格が1,000円、初値が900円なら、初値は公開価格を10%下回っています。公募割れは法律上の用語ではなく、IPO後の株価を説明する際に使われる市場用語です。
公開価格は、上場前の公募または売出しで投資家が株式を取得する価格です。ブックビルディングを行う場合、申請会社と証券会社は、投資家の需要状況や上場日までの相場変動リスク、需要見通しなどを踏まえて公開価格を決めます。
一方、初値は新規上場後に市場で最初に成立した価格です。上場日の買い注文と売り注文によって決まるため、公開価格と一致するとは限りません。初値が公開価格より低ければ公募割れ、上回れば初値騰落率はプラスになります。
初値騰落率は、一般に「(初値-公開価格)÷公開価格×100」で計算します。ただし、上場後の株価が後日公開価格を下回った場合まで広く公募割れと呼ぶこともあるため、数値を示す際は「初値ベース」か「現在の株価ベース」かを明記すると誤解を防げます。
参考:日本取引所グループ|初値
公開価格の前提となった成長性や収益性を、上場時点の投資家が慎重に評価すると、買い需要が弱くなることがあります。仮条件や公開価格が市場の評価に比べて高いと受け止められた場合も、初値が公開価格を下回る一因になります。
公募株と売出株の合計が多い大型案件では、上場日に売り出される株式を買い需要が吸収できるかが焦点になります。既存株主の売出し比率、オーバーアロットメント、上場後に流通する株式数なども需給に関係します。
相場全体の急落、同業種への評価低下、金利や景気見通しの変化は、個別企業の業績とは別にIPO銘柄への需要を弱めることがあります。上場が同じ時期に集中し、投資資金が分散する場合もあります。
赤字が続いている、特定顧客への依存度が高い、業績予想の前提が読み取りにくいといった事情は、投資家の判断に影響します。上場承認後に業績や事業環境の変化が明らかになれば、公開価格決定時とは評価が変わることもあります。
参考:日本取引所グループ|新規上場ガイドブック グロース市場編
初値が公開価格を下回っても、公募で投資家から払い込まれた金額が後から減るわけではありません。会社の資金調達額は、原則として公募株数と発行条件に基づいて確定しています。
ただし、公募で株式を取得した投資家には、初値時点で評価損が生じます。既存株主にとっても、保有株式の市場評価や、今後の株式による資金調達条件に影響する可能性があります。経営陣は公募割れだけを上場の成否と決めつけず、事業計画の進捗や資金使途を継続的に説明する必要があります。
株式公開では資金調達手段が広がる一方、不特定多数の投資家に対する企業情報の開示が必要になります。上場後は短期的な株価だけでなく、中長期の企業価値につながる情報を正確に伝える姿勢が重要です。
公募割れを理由に、会社が株価を一定水準まで引き上げる義務を負うわけではありません。また、根拠の乏しい将来予測や未公表の重要情報を一部の投資家だけに伝える対応は避ける必要があります。法務、経理、IR、経営企画が情報を共有し、開示の要否と内容を確認できる体制を整えます。
参考:日本取引所グループ|新規上場ガイドブック グロース市場編
公募割れは上場時点の需給や市場評価を示す一つの結果ですが、それだけで上場の成否は判断できません。会社にとっては、調達資金を計画どおり活用し、上場後も事業を成長させられるかが重要です。
上場後の初値が公開価格を下回っても、すでに払い込まれた公募資金が連動して減るわけではありません。ただし、株価低迷が続けば、その後の増資や株式報酬の設計に影響する可能性があります。
市場の注文で初値が決まるため、会社が公募割れを確実に防ぐことはできません。主幹事証券会社と公開規模や価格を検討し、投資家が判断できる情報を適切に開示することが基本です。
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