育児介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)とは、労働者が育児や介護を理由に休業や柔軟な働き方を利用できるよう定めた法律です。仕事と育児・介護の両立支援を強化する目的で2024年5月に改正法が成立し、2025年4月1日と同年10月1日の2段階で施行されました。子の看護休暇の対象拡大や育児休業取得状況の公表義務の対象拡大に加え、10月施行分では「柔軟な働き方を実現するための措置」が新設され、3歳以降の子を養育する労働者への対応が企業に新たに義務づけられています。
育児介護休業法が定める主な制度
育児介護休業法は、育児・介護と仕事を両立するための複数の権利・制度を定めています。
- 育児休業:原則として子が1歳に達するまで取得できる休業制度です。保育所に入れない等の事情がある場合は、最長2歳まで延長できます。
- 産後パパ育休(出生時育児休業):子の出生後8週間以内に、4週間(28日)を上限として取得できる休業制度です。2回に分割して取得することもできます。
- 介護休業:対象家族1人につき、通算93日を上限として、3回まで分割して取得できる休業制度です。
- 子の看護休暇:小学校3年生修了までの子を養育する労働者が、年5日(対象の子が2人以上の場合は年10日)まで、1日または時間単位で取得できる休暇です。
- 介護休暇:対象家族1人につき年5日(2人以上の場合は年10日)まで、1日または時間単位で取得できる休暇です。
- 所定外労働・時間外労働・深夜業の制限:一定の年齢までの子を養育する労働者や要介護家族を介護する労働者が請求した場合、事業主は所定外労働をさせることができないほか、時間外労働は月24時間・年150時間、深夜業(午後10時から午前5時まで)をさせることができません。
- 短時間勤務制度:3歳未満の子を養育する労働者を対象に、事業主は短時間勤務制度を含む措置を講じる義務を負います。
参考:厚生労働省|育児・介護休業法について
2025年4月1日施行の主な改正内容
- 子の看護休暇の対象拡大:対象となる子の年齢を「小学校就学前」から「小学校3年生修了まで」に拡大し、取得事由に感染症による学級閉鎖等や入園式・卒園式への参加を追加しました。あわせて、継続雇用期間6か月未満の労働者を労使協定で除外できる規定を廃止しました。
- 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大:対象となる子の年齢を「3歳未満」から「小学校就学の始期に達するまで」に拡大しました。
- 育児のためのテレワーク導入の努力義務化:3歳未満の子を養育する労働者について、短時間勤務制度の代替措置にテレワークを追加するとともに、テレワーク導入自体を企業の努力義務としました。
- 育児休業取得状況の公表義務の対象拡大:公表義務の対象企業を、常時雇用する労働者数「1,000人超」から「300人超」に拡大しました。
- 介護休暇の取得要件緩和:継続雇用期間6か月未満の労働者を労使協定で除外できる規定を廃止しました。
- 介護離職防止のための雇用環境整備・個別周知等の義務化:研修の実施、相談窓口の設置、取得事例の収集・提供、制度利用促進方針の周知のいずれかの措置を講じることを企業に義務づけたほか、労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た際の個別周知・意向確認、40歳到達時等における早期の情報提供を義務化しました。
参考:厚生労働省|育児・介護休業法について
2025年10月1日施行の主な改正内容(柔軟な働き方を実現するための措置)
- 柔軟な働き方を実現するための措置の創設:3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者を対象に、企業は「始業時刻等の変更」「テレワーク等(月10日以上)」「保育施設の設置運営等」「養育両立支援休暇の付与(年10日以上)」「短時間勤務制度」の5つの選択肢のうち2つ以上を措置として講じる義務を負います。対象労働者は、企業が用意した措置の中から1つを選択して利用できます。
- 個別周知・意向確認の義務化:上記の措置について、対象労働者の子が3歳になるまでの間に、措置の内容や申出先等を個別に周知し、利用意向を確認することを義務化しました。
- 妊娠・出産等の申出時等における個別の意向聴取・配慮の義務化:労働者から妊娠・出産等の申出があった時、および子が3歳になる前の適切な時期に、就業時間帯・勤務地・両立支援制度の利用期間等について個別に意向を聴取し、聴取した内容に配慮することを企業に義務づけました。
参考:厚生労働省|育児・介護休業法について
法的判断との関係
今回の改正で新設・拡大された義務の多くは努力義務ではなく法的義務であり、履行しない企業は都道府県労働局による助言・指導・勧告の対象となります。勧告に従わない場合は企業名が公表される可能性があるほか、育児休業取得状況の公表義務や次世代育成支援対策推進法に基づく数値目標の設定・公表を怠った場合も、行政指導や社会的信用の低下につながりかねません。柔軟な働き方を実現するための措置のように「複数の選択肢から一定数以上を講じる」形式の義務は、就業規則や労使協定にどう落とし込むかによって履行の有無が判断されるため、規程整備の適否そのものが法的判断の対象になる点に留意が必要です。
企業に求められる実務対応
- 就業規則・育児介護休業規程を改正内容に沿って見直し、子の看護休暇の対象拡大や柔軟な働き方を実現するための措置の内容を明記するとともに、対象となる労使協定の見直しも合わせて行います。
- 柔軟な働き方を実現するための措置は、自社で現実的に運用できる2つ以上の選択肢を検討したうえで就業規則・労使協定に定め、対象労働者への周知フローを整備します。
- 介護に直面した労働者への個別周知・意向確認、40歳到達時の情報提供、妊娠・出産等の申出時や子が3歳になる前の意向聴取など、複数の「個別対応」の義務が新設されたため、対象者の把握方法と面談・書面等での実施記録の残し方を人事労務フローに組み込みます。
- 育児休業取得状況の公表義務が常時雇用労働者300人超の企業に拡大されたため、自社が対象となるかを労働者数ベースで確認し、公表様式・公表媒体をあらかじめ準備します。
- 2026年には労働基準法の大幅な改正も控えています。2026年労働基準法の大改正!?40年ぶりの大幅な改正について弁護士が先取り解説で取り上げられているような他の労働関連法改正の動向も見据え、人事労務体制の見直しを一体的に進めることが望ましいでしょう。
関連法令
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)、次世代育成支援対策推進法、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)
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