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企業法務の用語集
自己申告制度とは、従業員が希望する職種や異動先、保有するスキル、今後のキャリア、職場に関する意見などを、所定の書式で会社へ申告する制度です。申告内容を人員配置や能力開発、面談に生かし、従業員の意向と組織の人材ニーズをすり合わせるために用いられます。
自己申告制度には、従業員本人の希望を把握するだけでなく、組織内の人材情報を更新する役割があります。主な目的は次のとおりです。
ただし、申告した希望がそのまま異動や昇進を約束するわけではありません。制度の目的と人事判断との関係を、実施前に従業員へ説明しておく必要があります。
申告書には、現在の担当業務、実績、保有スキル・資格、得意分野、希望する職種・部署・勤務地、異動希望の時期、将来のキャリア像などを設けます。会社が知りたい情報を一方的に並べるのではなく、各項目の利用目的や閲覧者、回答が任意か必須かも示すと、従業員が回答しやすくなります。
健康状態や家族事情などを尋ねる場合は、配置上必要な範囲に絞ります。病歴などの要配慮個人情報を取得するときは、法令上の例外を除き、あらかじめ本人の同意が必要です。
参考:個人情報保護委員会|個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)
自己申告制度は、会社が定期的に従業員の意向や能力を広く把握する仕組みです。これに対し、社内公募制度では、募集部署が示したポストへ従業員が応募します。社内FA制度は、従業員が自分の経験や能力を希望部署へ売り込み、異動の機会を探る仕組みです。
いずれも社内の人材流動化に役立ちますが、応募先の有無や異動の選考方法が異なります。自己申告制度を社内公募やキャリア面談と組み合わせると、申告後の選択肢を示しやすくなります。
人事部門だけでは見えにくい経験や意欲を把握でき、後継者育成や社内配置の選択肢を増やせます。従業員にとっても、自分の希望や成長課題を言語化する機会になります。
提出後に何の連絡もなければ、従業員は「書いても意味がない」と感じます。すべての希望に応えることは難しくても、申告を確認したこと、希望実現に必要な条件、次回の見直し時期などを伝える運用が大切です。
配置転換の可否は、労働契約や就業規則の内容、業務上の必要性などを踏まえて判断します。異動命令権が認められる場合でも、業務上の必要性がない、不当な目的がある、従業員に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益が生じるといった事情があれば、権利濫用として無効になることがあります。
自己申告書に氏名とキャリア希望などが記載されていれば、通常は従業員の個人情報に当たります。会社は利用目的を特定し、申告内容を必要な範囲で扱うとともに、アクセス権限、保管方法、廃棄時期などの安全管理措置を整えます。外部システムを利用する場合は、委託先の監督も必要です。
直属上司に知られたくない事情を申告できるよう、人事部門だけが閲覧する項目を分ける方法もあります。ハラスメントなど緊急性のある申告には、通常の人事希望とは別の相談窓口と対応手順を用意しておくと、見落としを防げます。
参考:個人情報保護委員会|顧客情報のみでなく、従業員に関する情報も個人情報保護法の規律に従って取り扱う必要がありますか。
法律上、一律の実施頻度は定められていません。年1回の人事サイクルに合わせる方法のほか、組織変更やキャリア面談の時期に追加実施する方法があります。申告から対応までの負担を考慮し、継続できる頻度を決めましょう。
自己申告制度を設けたことだけで、会社に希望どおりの異動を実施する義務が当然に生じるわけではありません。ただし、希望を採用しない場合も、選考基準や今後必要となる経験を可能な範囲で伝えると、制度への納得感を保ちやすくなります。
利用目的として明示し、評価基準との関係を従業員に説明したうえで運用する必要があります。異動希望の有無だけを評価の有利・不利に直結させると率直な申告を妨げるため、キャリア意向と業績評価は区別して扱うのが適切です。
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