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企業法務の用語集
同一価値労働同一賃金とは、仕事内容が異なっていても、求められる技能、努力、責任、労働条件などから見た仕事の価値が同等なら、男女に同等の報酬を支払うべきだとする原則です。職種名や雇用形態の違いだけで賃金差を正当化せず、仕事そのものを評価します。
この原則は、ILOの「1951年の同一報酬条約(第100号)」に定められています。条約が求めるのは、単に同じ仕事をする男女へ同じ賃金を支払うことではありません。職務が違っていても、客観的に見た価値が同じなら、性別による報酬差を設けないという考え方です。
たとえば、男性が多い技術職と女性が多い事務職では、業務内容も職種名も異なります。それでも、仕事に必要な知識や技能、判断の重さ、身体的・精神的負担、労働環境などを評価した結果、価値が同等なら報酬も同等にすることが原則の要請です。個人の成果や勤続年数を無視して全員を同額にする制度ではありません。
日本はILO第100号条約を1967年8月24日に批准しています。労働基準法4条も、使用者が女性であることを理由として賃金について男性と差別的な取扱いをすることを禁じています。
同一価値労働同一賃金と、日本で進められている「同一労働同一賃金」は重なる部分がありますが、同じ概念ではありません。
日本の制度は基本給だけでなく、賞与、手当、福利厚生、教育訓練などの待遇を個別に比べます。パートタイム・有期雇用労働法8条は、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情を考慮して不合理な待遇差を設けることを禁止しています。同法9条は、職務内容とその変更範囲が通常の労働者と同じ短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いを禁止しています。
派遣労働者については、派遣先の通常の労働者との均等・均衡を図る「派遣先均等・均衡方式」と、一定の要件を満たす労使協定に基づく「労使協定方式」のいずれかで待遇を確保します。
職務の価値を比べるときは、担当者の印象や現在の賃金額から逆算せず、性別に中立な基準を使います。主な評価要素は次のとおりです。
まず職務ごとの業務内容と責任を整理し、共通の評価項目と配点を決めます。そのうえで職務を採点し、評価結果と賃金等級の対応を確認します。人事評価が個人の能力や成果を見るのに対し、職務評価が見るのは担当している仕事です。両者を混同すると、仕事の価値による差と個人差の説明がつかなくなります。
正社員、パート、有期契約社員、派遣労働者について、業務内容、責任、配置転換の範囲、基本給、賞与、各種手当、福利厚生を並べます。賃金だけを見ていると、休暇や教育訓練の差を見落とします。
「正社員だから」「契約社員だから」という説明では足りません。賞与なら会社業績への貢献を評価するものか、手当ならどの費用や負担を補うものかを確認し、その目的が双方に当てはまるかを検討します。
異なる職種を比べる場合は、技能、責任、負担、労働条件などを共通の尺度で評価します。評価項目の中に「転勤できること」など、特定の性や雇用区分を不必要に有利にする要素が紛れ込んでいないかも確認します。
合理的な理由を示せない差は、支給条件や金額、対象者を見直します。正社員の待遇を一律に引き下げて差を解消しようとすると、労働条件の不利益変更として別の問題が生じます。労使で制度の目的と変更内容を共有し、就業規則や賃金規程へ反映します。
改正後の施行規則・指針は2026年4月28日に公布され、同年10月1日から施行・適用されます。パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れる際の明示事項に、待遇差の内容や理由などについて説明を求められる旨が追加されます。
ガイドラインには、裁判例を踏まえて賞与や退職手当などの考え方が追加・明確化されました。待遇差は基本給や賞与など個々の待遇ごとに判断すること、正社員の待遇を引き下げるだけで差を解消することは法の趣旨に反することも、より明確に示されています。企業は施行前に労働条件通知書、説明資料、賃金規程を確認しておく必要があります。
参考:厚生労働省|2026年10月1日適用 同一労働同一賃金ガイドラインの主な改正事項
職種が違うだけで比較対象から外れるわけではありません。ただし、職務評価で価値が同等と判断されても、経験、成果、勤続年数など性別と無関係な基準に基づく差まで一律に禁止されるわけではありません。評価基準と差の理由を説明できる状態にしておくことが必要です。
職務分析や制度改定には時間と費用がかかり、評価基準が粗いと新たな不公平感を生みます。一方で、仕事の内容と賃金の対応が明確になれば、採用時の説明や配置、人材育成にも使えます。負担を減らすには、全職種を一度に見直さず、人数が多い職種や格差が疑われる職種から着手する方法があります。
ILO第100号条約の批准、労働基準法4条による男女の賃金差別禁止などが法的な基盤です。ただし、異なる職務の価値を評価し、同価値なら必ず同額にする手続きが一つの法律で包括的に定められているわけではありません。実務では、男女間の差と、正社員・非正規労働者間の不合理な待遇差を分けて法的根拠を確認します。
同一価値労働同一賃金は、職種名ではなく仕事の価値を客観的に比べ、同じ価値の仕事に男女同等の報酬を求める原則です。日本の同一労働同一賃金制度とは対象と法的な仕組みが異なります。企業が取り組む際は、職務評価と待遇差の点検を組み合わせ、差がある項目ごとに理由を説明できる賃金制度へ改める必要があります。
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