弁護士とマッチングできます
企業法務弁護士ナビでは完全非公開で相談可能です。貴社の課題に最適解を持つ弁護士、最大5名とマッチングできます。
企業法務の用語集
早期退職制度とは、定年を迎える前の従業員が、本人の意思で退職を選べる社内制度です。企業は、通常の退職より有利な条件として、退職金の割増、再就職支援、特別休暇などを設けることがあります。「早期退職優遇制度」とも呼ばれます。
人員構成の見直しや従業員のセカンドキャリア支援に役立つ一方、運用を誤ると退職強要や不公平な取扱いをめぐる紛争につながります。導入時は、対象者、優遇内容、申込手続、会社が承認しない場合の条件などを明確にし、従業員が自由に判断できる環境を整える必要があります。
早期退職制度では、一定の年齢や勤続年数を満たした従業員に、定年前に退職する選択肢を示します。制度を利用するかどうかは、原則として従業員本人が決めます。
会社によって内容は異なりますが、次のような優遇措置が一般的です。
制度に申し込めば必ず優遇を受けられる設計だけでなく、業務上必要な人材の流出を防ぐため、会社の承認を条件とする設計もあります。承認制にする場合は、承認・不承認の基準をあらかじめ示し、恣意的な判断を避けることが大切です。
両者に法律上の統一された定義があるわけではなく、企業によって名称や内容が異なります。一般には、次のように区別されます。
| 比較項目 | 早期退職制度 | 希望退職制度 |
|---|---|---|
| 位置付け | 恒常的な社内制度 | 期間限定の臨時施策 |
| 主な目的 | セカンドキャリア支援、人員構成の適正化 | 事業再編、人件費削減、経営改善 |
| 募集時期 | 毎年の一定期間など、規程に基づき運用 | 会社が必要に応じて募集期間を設定 |
| 対象者 | 年齢・勤続年数などの恒常的な要件に該当する人 | 施策ごとに会社が定める範囲 |
| 優遇措置 | 規程で定めた割増退職金や支援 | 募集ごとに設定した割増退職金や支援 |
希望退職の募集と同時に、対象者へ個別に退職を促すこともあります。しかし、募集に応じるかどうかは従業員の自由です。繰り返し面談を迫る、拒否した従業員に不利益を示唆するなど、自由な意思決定を妨げる行為は違法な退職強要と評価されるおそれがあります。
退職勧奨は、会社が特定の従業員に退職を勧め、合意による退職を目指す行為です。早期退職制度は一定の要件を満たす従業員へ広く選択肢を示す制度であり、特定の人への働きかけとは区別されます。
ただし、制度の案内を名目に特定の従業員だけを何度も呼び出せば、実態は退職勧奨と判断され得ます。面談では、応募が任意であること、応募しなくても直ちに不利益を受けないことを明確に伝えます。
整理解雇は、経営上の理由から会社が労働契約を一方的に終了させるものです。従業員との合意を前提とする早期退職とは法的な性質が異なります。希望者が予定人数に達しなかったからといって、そのまま対象者を解雇できるわけではありません。解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められ、整理解雇では人員削減の必要性や解雇回避努力などが検討されます。
参考:厚生労働省|就労条件総合調査における早期退職優遇制度の定義
従業員にとっては、通常より有利な退職金を受け取り、再就職や独立へ早く動ける点がメリットです。会社の支援を使って、職務経歴の整理や求人探しを進められる場合もあります。
一方、次の勤務先が決まるまで収入が途切れる可能性があります。退職後は健康保険や年金の手続も必要です。雇用保険上の離職理由は、制度の名称だけで一律に決まるものではなく、募集の目的、導入時期、退職に至った経緯などを踏まえて判断されます。会社は「必ず会社都合になる」などと断定せず、ハローワークが判断することを説明すべきです。
退職金は原則として退職所得として扱われますが、勤続年数や同じ年に受け取るほかの退職手当などによって計算が変わる場合があります。会社は「退職所得の受給に関する申告書」などの手続を案内し、個別の税額は税理士や税務署への確認を促します。
制度規程や募集要項には、少なくとも次の項目を記載します。
恒常的な制度として設ける場合は、就業規則や退職金規程との整合性を確認します。常時10人以上の従業員を使用する事業場で就業規則を変更する場合は、労働者側の意見を聴き、労働基準監督署への届出と従業員への周知も必要です。
従業員の自由意思を確保するには、説明の内容だけでなく、面談の回数、時間、場所、出席者、発言の仕方にも配慮します。次のような対応は避けるべきです。
従業員には検討期間を与え、家族や専門家へ相談できるようにします。面談担当者向けの台本や禁止事項を用意し、説明内容を記録すると、現場の行き過ぎを防ぎやすくなります。
参考:ハローワークインターネットサービス|雇用保険における離職理由
事業規模の縮小や事業転換などにより、ひとつの事業所で1か月以内に30人以上の常用労働者が離職を余儀なくされる見込みがある場合、事業主は原則として再就職援助計画を作成し、最初の離職者が生じる日の1か月前までにハローワークへ提出して認定を受ける必要があります。
また、自己都合などを除き1か月以内に30人以上の離職者が生じる場合は、大量雇用変動の届出が必要となることがあります。高年齢者や障害者の離職については別の届出・支援措置が必要な場合もあるため、募集を公表する前に管轄のハローワークへ確認しましょう。
参考:厚生労働省|再就職援助計画と大量離職届・大量離職通知書
合意内容の認識違いを防ぐため、退職合意書には退職日、退職理由、退職金と特別加算金の額、支払日、貸与品の返却、引継ぎなどを記載します。秘密保持や競業避止義務を定める場合は、対象となる情報、期間、地域、業務の範囲が必要以上に広くならないよう検討が必要です。
清算条項を設けても、会社が把握していない未払賃金などを当然に消滅させられるとは限りません。合意書への署名を急がせず、内容を確認する時間を設けることも自由意思を確保するうえで欠かせません。
規程や募集要項で会社の承認を条件としていれば、不承認とできる場合があります。ただし、判断基準が曖昧だと不公平をめぐる争いになりやすいため、事前に基準を定め、一貫して運用する必要があります。
申込みの法的性質や会社が承諾した時期によって結論が変わります。募集要項に撤回できる期限と方法を定め、申込み・承諾・退職合意の各段階を区別して運用すると、トラブルを防ぎやすくなります。
制度の対象条件と支給基準を合理的に定め、規程どおりに運用することが前提です。対象外となる従業員との違いを説明できるようにし、個人の好き嫌いによる選別を避けます。
【関連記事】