弁護士とマッチングできます
企業法務弁護士ナビでは完全非公開で相談可能です。貴社の課題に最適解を持つ弁護士、最大5名とマッチングできます。
企業法務の用語集
整理解雇の四要件とは、経営上の理由で従業員を解雇する「整理解雇」の有効性を判断する際に用いられる四つの基準です。「人員削減の必要性」「解雇回避努力」「被解雇者選定の合理性」「手続の妥当性」で構成され、整理解雇の四要素とも呼ばれます。
整理解雇では、従業員側に非違行為や能力不足などの原因がないまま、会社側の事情で雇用が失われます。そのため、単に売上が落ちた、部門を廃止したというだけで当然に有効になるわけではありません。裁判では、労働契約法16条の解雇権濫用に当たるかを判断する際、四つの事情が中心的に検討されます。
整理解雇とは、不況、経営不振、事業所の閉鎖、事業再編など、企業経営上の必要から人員を削減するために行う解雇です。従業員の責任を理由とする普通解雇や、重大な企業秩序違反に対する懲戒解雇とは理由が異なります。
労働契約法16条は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇を権利濫用として無効としています。整理解雇について、この原則を具体的に判断するために裁判例が形成してきたのが四要件(四要素)です。
| 要件・要素 | 主な確認事項 |
|---|---|
| 人員削減の必要性 | 経営上、人員を減らす必要がどの程度あるか |
| 解雇回避努力 | 配置転換や希望退職など、解雇を避ける措置を検討・実施したか |
| 被解雇者選定の合理性 | 対象者を選ぶ基準が客観的で、運用も公正か |
| 手続の妥当性 | 必要性や基準について十分に説明し、誠実に協議したか |
四つのうち一つでも欠ければ常に無効になると捉える裁判例がある一方、それぞれを重要な判断要素として総合考慮する裁判例もあります。名称が「四要件」か「四要素」かだけで結論が決まるものではありません。企業は四つすべてについて、事実と資料をそろえて検討する必要があります。
最初に検討されるのは、人員を削減する経営上の必要性です。債務超過や倒産寸前でなければ整理解雇ができない、と一律に決まっているわけではありません。しかし、必要性が弱いほど、従業員の雇用を失わせる措置を正当化するのは難しくなります。
裁判で確認され得る資料には、次のようなものがあります。
経営状況が厳しいと説明しながら、大規模な新規採用、多額の役員報酬、不要不急の投資を続けている場合は、説明の整合性が問われます。会社全体では黒字でも特定事業から撤退する事情など、削減の必要性は事案ごとに判断されます。
整理解雇に踏み切る前に、会社が解雇を避けるためどのような手段を検討し、実行したかが確認されます。求められる措置は、会社の規模、経営状態、事業内容、グループ内での配置可能性などによって異なります。
解雇回避措置の例は次のとおりです。
すべての措置を必ず実施しなければならないわけではありません。たとえば、配置先が存在しない、緊急の資金繰り対応が必要といった事情も考慮されます。ただし、「検討したができなかった」という場合も、検討した選択肢、実施できなかった理由、判断過程を記録しておくべきです。
賃金の引下げや勤務日数の削減は、労働条件の不利益変更となる可能性があります。解雇回避を目的としていても、会社が自由に実施できるとは限らないため、労働契約や就業規則に沿った手続が必要です。
人員削減の必要があっても、誰を解雇するかを会社の好き嫌いで決めることはできません。選定基準が客観的で合理的であり、対象者へ公平に適用されているかが問われます。
選定基準として検討される項目には、次のようなものがあります。
勤務成績を使う場合は、評価期間、評価項目、評価者、配点を明確にし、既存の人事評価資料と整合しているか確認します。整理解雇の直前だけ評価を厳しくする、基準を後から変えるといった運用は、合理性を損なう原因になります。
性別、国籍、信条、労働組合への加入・活動、育児休業の取得など、法令上不利益取扱いが禁止される事情を基準にしてはいけません。年齢や家族構成などを用いる場合も、業務上の必要との関係を慎重に検討すべきです。
会社は、整理解雇の必要性、削減予定人数、解雇回避措置、選定基準、退職条件などを説明し、労働組合や従業員と誠実に協議することが求められます。結果として合意に至らなくても、十分な情報を示し、意見を聴く機会を設けたかが問題になります。
実務では、次の事項を記録します。
就業規則や労働協約に整理解雇の協議条項がある場合は、その手続を守らなければなりません。説明の直後に解雇を通知するなど、検討や協議の余地がない進め方は避けるべきです。
四要件説は、四つを整理解雇が有効となるための要件として捉える考え方です。四要素説は、四つを解雇権濫用の有無を判断する重要な要素とし、事案全体を総合して判断する考え方です。
裁判例の中には、四つのいずれかを欠けば直ちに無効になるという硬直的な要件ではないと明示したものがあります。一方で、四つの観点を厳格に検討する裁判例もあります。企業側が「近年は四要素だから一項目が弱くても問題ない」と考えるのは危険です。各項目は相互に関係し、人員削減の必要性が低ければ、より丁寧な回避努力や手続が求められることもあります。
整理解雇を決定してから形式的に希望退職を募るのではなく、計画の早い段階から代替策を検討することが大切です。各段階の資料を保存すれば、後から判断の合理性を説明しやすくなります。
整理解雇であっても、原則として少なくとも30日前に解雇を予告するか、不足日数分の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。解雇予告の手続を守っただけで、整理解雇が有効になるわけではありません。四要件(四要素)や労働契約法16条の判断は別途行われます。
従業員から解雇理由について証明書を請求された場合、会社は遅滞なく交付しなければなりません。通知書や証明書では「会社都合」だけで済ませず、事業所閉鎖や対象業務の廃止など、実際の理由と整合する記載を検討します。
契約期間の途中で有期契約労働者を解雇する場合、労働契約法17条1項により「やむを得ない事由」が必要です。無期契約における解雇よりも厳しい制限と解されており、経営上の必要があるだけで期間途中の解雇が当然に認められるわけではありません。
契約期間満了時に更新しない雇止めでも、更新を繰り返している場合や、更新への合理的な期待が認められる場合には、労働契約法19条が問題になります。無期雇用の従業員より先に一律で雇止めすればよいとは限らず、契約内容と運用実態の確認が必要です。
事業規模の縮小などにより、ひとつの事業所で1か月以内に30人以上の常用労働者が離職を余儀なくされる見込みがある場合、原則として再就職援助計画を作成し、最初の離職者が生じる日の1か月前までにハローワークへ提出して認定を受ける必要があります。
自己都合などを除き1か月以内に30人以上の離職者が生じる場合は、大量雇用変動の届出が必要となることもあります。高年齢者や障害者が対象に含まれる場合には別の手続が必要なケースもあるため、早い段階で管轄のハローワークへ確認しましょう。
参考:厚生労働省|再就職援助計画と大量離職届・大量離職通知書
資料は訴訟への備えだけではなく、意思決定の矛盾や見落としを早期に見つけるためにも役立ちます。結論を先に決め、その結論に合う資料だけを集めるような運用は避けなければなりません。
赤字かどうかだけで有効性が決まるわけではありません。将来の経営危機を避けるための事業再編などが考慮される場合もあります。ただし、人員削減の具体的な必要性を客観的な資料で説明する必要があります。
希望退職の募集は代表的な回避措置ですが、それだけで十分とは限りません。募集条件、期間、応募人数に加え、配置転換、出向、経費削減など他の選択肢を検討したかも個別に判断されます。
勤務成績を基準の一つにすることは考えられますが、評価方法が客観的で、一貫して運用されている必要があります。評価の裏付けが乏しい場合や、整理解雇のために評価を変更した場合は、人選の合理性が否定されるおそれがあります。
常に同意が法的要件になるわけではありませんが、労働協約に同意・協議条項があればその内容に従います。同意が不要な場合でも、必要な情報を開示し、誠実に説明・協議したかは手続の妥当性を判断する重要な事情です。
【関連記事】
リストラにおける2つの方法を解説!従業員も納得する進め方とは?