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職種別賃金

読み: しょくしゅべつちんぎん 

職種別賃金とは、営業、技術、事務、製造などの職種ごとに賃金水準や賃金表を設定する仕組みです。同じ会社でも、担当職種の仕事内容、必要な技能、人材市場での賃金水準などに応じて、基本給の決め方を分けます。

職種別賃金という名前の法律上の制度があるわけではありません。企業が自社の人材戦略や事業特性に合わせて設計する賃金制度の一つです。

職種別賃金の決め方

職種を区分しただけでは、納得できる賃金制度にはなりません。各職種の仕事を棚卸しし、賃金差の根拠を言葉と数値で示す必要があります。設計時に確認する項目は次のとおりです。

  • 職務内容:日常的に担当する業務と責任の範囲です。
  • 難易度:判断の複雑さ、裁量、ミスが事業に与える影響などを確認します。
  • 必要な能力:知識、技能、経験、資格などを整理します。
  • 社内での役割:部下の管理、プロジェクト責任、売上への関与などを確認します。
  • 社外の賃金水準:採用競争がある職種では、求人市場や公的統計の水準も参考にします。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、雇用形態、職種、性、年齢、勤続年数などの区分で賃金の実態を確認できます。ただし、統計上の平均値をそのまま自社の賃金表に当てはめるのは適切ではありません。職種の定義、地域、企業規模、経験年数などの条件をそろえて比較します。

参考:厚生労働省|令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況:調査の概要

職務給・職能給との違い

職種別賃金は、職種というまとまりごとに賃金体系を分ける考え方です。一方、職務給は個々の職務の価値や責任を基準に賃金を決め、職能給は従業員が保有・発揮する職務遂行能力を基準にします。

  • 職種別賃金:営業職、技術職、事務職など、職種ごとに賃金水準や賃金表を分けます。
  • 職務給:職務記述書などで個々の職務を定義し、その価値に応じて賃金を決めます。
  • 職能給:従業員の能力を等級に分け、職能等級に応じて賃金を決めます。

実務では、技術職と営業職で賃金表を分けたうえで、各職種内の等級を職務や能力で決めるなど、複数の方式を組み合わせることがあります。2024年8月に公表された「ジョブ型人事指針」も、企業ごとの導入事例を通じて、職務の明確化や報酬制度との連動を示しています。

参考:内閣官房・経済産業省・厚生労働省|ジョブ型人事指針

職種別賃金を導入するメリット

  • 採用市場に合わせやすくなります:人材が不足する専門職について、全社一律の賃金表に縛られず水準を検討できます。
  • 賃金差の説明がしやすくなります:職種ごとに求める技能や責任を定義すれば、処遇の根拠を従業員へ示しやすくなります。
  • 専門人材の育成に使えます:職種内の等級と必要能力を示すことで、その職種で昇格する道筋を作れます。

職種別賃金を運用する際の課題

  • 職種間の公平性を保ちにくくなります:職種ごとに賃金表を分けるほど、異なる職種の水準をどう比較したか説明が必要です。
  • 配置転換が難しくなることがあります:異動先の賃金表が低い場合、本人の同意や経過措置を含めた検討が欠かせません。
  • 市場水準が変動します:特定職種の採用相場だけが上がると、既存従業員との逆転や他職種との不均衡が生じます。
  • 職種区分が古くなります:事業や技術の変化で仕事内容が変わるため、定期的な職務の棚卸しが必要です。

職種別賃金を設計する手順

  1. 導入目的を決めます:採用力の強化、専門職の定着、賃金の説明可能性など、解決する課題を絞ります。
  2. 職種を定義します:名称だけで分けず、仕事内容、責任、必要能力の違いから区分します。
  3. 職種内の等級を設けます:各等級で担う仕事や責任を明文化します。
  4. 賃金水準を調べます:社内の現行賃金と、公的統計や採用市場の水準を比較します。
  5. 賃金表と評価基準を作ります:昇給、昇格、降格、職種転換時の取扱いを含めて定めます。
  6. 影響を試算します:従業員ごとの移行後賃金と総額人件費を確認し、必要なら経過措置を設けます。
  7. 説明と試行を行います:評価者研修や仮評価を行い、基準のばらつきを直してから本運用へ移ります。

導入・変更時に確認する法的な注意点

就業規則と賃金規程を整備する

賃金の決定、計算・支払方法、締切り・支払時期、昇給に関する事項は、就業規則の記載事項です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を変更したときも労働基準監督署長へ届け出ます。職種の定義、賃金表、異動時の扱いが複数の規程に分かれる場合は、規程間の矛盾がないかも確認します。

参考:e-Gov法令検索|労働基準法

不利益変更の合理性を検討する

制度移行によって基本給が下がるなど、従業員に不利益が生じる場合は、労働契約法第10条との関係を検討します。変更後の就業規則を周知するだけでは足りません。不利益の程度、変更の必要性、変更内容の相当性、労働組合などとの交渉状況その他の事情を踏まえ、合理性が認められるかを判断します。

賃金を据え置く経過措置、段階的な移行、手当の設定は、不利益を緩和する方法です。制度の目的と影響を従業員へ具体的に説明し、協議の記録を残します。

参考:e-Gov法令検索|労働契約法

雇用形態による不合理な待遇差を避ける

職種別賃金を採用しても、正社員とパートタイム・有期雇用労働者の待遇差が自動的に合理化されるわけではありません。職務内容、職務内容・配置の変更範囲、そのほかの事情を踏まえ、不合理な待遇差に当たらないかを待遇ごとに確認します。

同一労働同一賃金ガイドラインは、不合理な待遇差に関する原則と具体例を示しています。改正ガイドラインは2026年10月1日から適用されるため、職種別の手当や福利厚生を含めて点検しておく必要があります。

参考:厚生労働省|同一労働同一賃金ガイドライン

職種別賃金でよくある疑問

職種別賃金はジョブ型雇用と同じですか?

同じではありません。職種別賃金は賃金の区分方法を表す言葉です。ジョブ型人事は、職務の明確化を軸に採用、配置、評価、報酬などを組み立てる人事管理の考え方を指します。

職種ごとに賃金差を設ければ適法ですか?

職種が違うという理由だけで、すべての賃金差が認められるわけではありません。仕事内容、責任、必要能力など賃金差の根拠を明確にし、雇用形態による待遇差や差別的な取扱いに当たらないかを確認します。

配置転換で職種が変わると賃金を下げられますか?

一律には判断できません。労働契約や就業規則の根拠、減額の幅、異動の必要性、制度の運用状況などを確認します。大きな減額を伴う場合は、本人の同意や経過措置を検討し、実施前に弁護士へ相談したほうが安全です。

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