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企業法務の用語集
職能資格制度とは、従業員が仕事を遂行するために備えている能力を基準に職能等級を定め、その等級を賃金、昇格、人材育成などの処遇に結び付ける人事制度です。担当している職務そのものではなく、従業員の能力を軸に格付けする点に特徴があります。
人事評価制度や賃金制度と組み合わせて運用されるのが一般的です。どの能力をどの水準まで身に付け、仕事で発揮すれば上位等級へ進めるのかを明文化することが、制度の納得感を左右します。
会社は、職種や階層ごとに必要な知識、技能、経験、職務行動などを整理し、複数の職能等級を設けます。従業員を各等級に格付けし、人事評価の結果や昇格要件に基づいて等級を見直します。
制度を構成する主な要素は次のとおりです。
厚生労働省の「職業能力評価基準」では、仕事に必要な知識・技術・技能に加え、成果につながる職務行動例が業種別、職種・職務別に整理されています。自社の職能要件を作る際の参考資料として利用できます。
| 制度 | 主な格付け基準 | 特徴 |
|---|---|---|
| 職能資格制度 | 従業員の職務遂行能力 | 担当業務が変わっても、能力評価を基礎に等級を維持しやすい |
| 職務等級制度 | 担当する職務の価値や難易度 | 職務内容と処遇の関係を示しやすい |
| 役割等級制度 | 組織内で担う役割や責任 | 職務より広い役割や成果責任を処遇に反映しやすい |
企業によっては、管理職に役割等級制度を、一般職に職能資格制度を用いるなど、複数の考え方を組み合わせています。自社の人材戦略や職種構成に合わせて設計することが大切です。
これらの課題を抑えるには、職能要件を観察可能な行動で記載し、評価者研修や評価調整会議を設ける方法があります。能力評価に業績評価や役割評価を組み合わせることも選択肢です。
職能資格制度の導入や変更によって賃金、昇格、降格の条件を定める場合は、雇用契約書、就業規則、賃金規程などとの整合を確認します。常時10人以上の従業員を使用する事業場では、就業規則を変更したときも所轄の労働基準監督署長への届出が必要です。
既存の賃金を引き下げるなど、従業員に不利益な変更を行う場合は、労働契約法第10条との関係が問題になります。変更後の就業規則を周知したうえで、不利益の程度、変更の必要性、内容の相当性、労働組合などとの交渉状況その他の事情に照らして合理性が認められるかを慎重に検討しなければなりません。
制度上の根拠がある場合でも、個別の降格・降給が当然に有効になるわけではありません。基準の明確性、評価の公平性、手続き、本人への説明を含め、運用の妥当性を確認する必要があります。大きな処遇変更を伴う制度改定は、実施前に弁護士や社会保険労務士へ相談するとよいでしょう。
職能資格制度は、従業員の職務遂行能力を格付けの中心に置く制度であり、成果主義と同じではありません。ただし、能力評価に業績評価を組み合わせ、成果を賞与や昇給へ反映する設計は可能です。
職能資格制度は「人の能力」を、職務等級制度は「担当する職務の価値や難易度」を主な格付け基準にします。そのため、配置転換した場合の等級や賃金の扱いに違いが生じます。
必ずしも上がりません。職能等級と役職は別の仕組みであり、両者を連動させるかどうかは会社の制度設計によります。等級、役職、賃金の関係を規程で明確にしておくことが重要です。