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二重派遣

読み: にじゅうはけん 

二重派遣(多重派遣)とは、派遣先が、派遣会社から受け入れた労働者をさらに別の会社で働かせ、その会社の指揮命令を受けさせる状態をいいます。派遣先はその労働者を雇用していないため、適法な労働者派遣として扱うことはできません。契約書に「業務委託」「準委任」「SES」などと書かれていても、実際の働かせ方が二重派遣に当たれば違法です。

たとえば、派遣会社Aから労働者を受け入れたB社が、その労働者を取引先C社の職場に常駐させ、C社の担当者が日々の作業内容や順序、勤務時間などを直接指示するケースが典型です。

二重派遣の仕組み

適法な労働者派遣では、派遣会社と労働者との間に雇用契約があり、派遣会社と派遣先との間に労働者派遣契約があります。労働者に指揮命令をするのは、その派遣契約上の派遣先です。

ところが二重派遣では、派遣契約上の派遣先が中間に入り、契約関係のない第三者に労働者を送り出します。労働者は最終的な受入企業の指揮命令で働くため、雇用主、契約上の派遣先、実際の指揮命令者が分断されます。この状態は、派遣先が雇用していない労働者を第三者へ供給する「労働者供給」に当たり得ます。

なお、派遣会社と実際に指揮命令する会社との間に直接の労働者派遣契約があり、別会社が契約を単に仲介しているだけなら、通常は二重派遣とは判断されません。会社が何社登場するかだけでなく、雇用関係、派遣契約、指揮命令の実態を確認する必要があります。

二重派遣とみなされやすい具体例

  • 派遣労働者を子会社や取引先の事業所へ送り、送り先の担当者が直接指示を出している
  • 派遣先が受託した業務に派遣労働者を従事させ、発注者が作業手順や人員配置を決めている
  • 複数のSES事業者が契約上は連なっているものの、最終顧客が技術者へ日常的に業務命令をしている
  • 派遣労働者の勤務場所を第三者の職場へ変更し、勤怠、休暇、残業を第三者が実質的に管理している

現場で仕様や納期を伝えただけで、直ちに二重派遣になるわけではありません。誰が仕事の割り振り、遂行方法、勤務時間、配置、評価などを決めているかを総合的に見ます。

二重派遣が禁止される理由

二重派遣になると、労働者に対する雇用管理、安全衛生、苦情処理などの責任の所在が曖昧になります。また、中間会社が増えることで手数料が重なり、労働者の待遇が不当に低下するおそれもあります。

職業安定法44条は、労働者供給事業を原則として禁止しています。厚生労働省の業務取扱要領でも、派遣先が受け入れた派遣労働者をさらに業として派遣する二重派遣は、労働者供給事業として同条により禁止されると示されています。

職業安定法44条に違反した場合、同法64条により、供給元・供給先となった者は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象となり得ます。2025年6月の刑法改正施行後は、従来の「懲役」ではなく「拘禁刑」という表記です。

さらに、他人の就業に介入して利益を得る行為は、態様によって労働基準法6条の中間搾取に該当する可能性があります。同条違反の罰則は、同法118条により1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。ただし、二重派遣であれば必ず労働基準法6条違反にもなるわけではなく、利益を得た事実や介入の態様に応じて判断されます。

二重派遣と偽装請負の違い

二重派遣は、派遣会社から受け入れた労働者を、派遣先がさらに第三者の指揮命令下で働かせるものです。一方、偽装請負は、契約書上は請負や業務委託であるにもかかわらず、発注者が受託会社の労働者へ直接指揮命令をするなど、実態が労働者派遣になっている状態を指します。

両者は重なることがあります。たとえば、派遣労働者を受け入れた会社が業務委託契約を結んで取引先へ送り出し、取引先が直接指示をすれば、二重派遣と偽装請負の双方が問題になり得ます。

請負・準委任なら二重派遣を避けられるのか

契約名を変えるだけでは避けられません。請負や準委任として業務を行うなら、受託会社が自社の労働者に対し、業務の進め方、労働時間、配置、服務規律などを自ら管理し、発注者から独立して業務を処理する体制が必要です。

厚生労働省の区分基準では、業務遂行の指示、労働時間の管理、配置の決定を受託会社自身が行っているか、事業者として業務上・法律上の責任を負っているかなどが判断要素として挙げられています。契約書だけでなく、チャット、勤怠システム、会議での指示経路なども実態を示す資料になります。

二重派遣を防ぐために企業が確認すべきこと

  • 指揮命令系統を一本化する:派遣労働者には、派遣契約で定めた派遣先の指揮命令者だけが業務指示を出す
  • 再配置を勝手に行わない:別会社や別の契約主体の現場で働かせる必要が生じたら、派遣元へ事前に相談する
  • 委託業務の運用を点検する:発注者から現場の労働者へ直接指示が流れていないかを確認する
  • 契約と実態を突き合わせる:就業場所、業務内容、指揮命令者、勤怠管理者が契約書と一致しているかを定期的に監査する
  • 相談窓口を設ける:労働者が契約と異なる指示を受けた場合に、派遣元や自社の管理部門へすぐ報告できるようにする

二重派遣が疑われる場合の対応

まず、契約上の権限がない第三者からの直接指示を止めます。そのうえで、対象労働者、雇用主、各社の契約関係、就業場所、実際の指揮命令者、勤怠管理の方法を洗い出してください。

次に、派遣元を含む関係各社で事実関係を確認し、適法な形に改めます。選択肢としては、実際に指揮命令する会社と派遣元が直接に労働者派遣契約を結ぶ、派遣先が労働者を直接雇用する、受託会社が独立して業務を処理できる真正な請負へ変更する、問題のある業務を停止する、といった方法があります。どの方法が適切かは事業内容や許可の有無によって異なるため、都道府県労働局や労働法務に詳しい弁護士へ早めに相談しましょう。

二重派遣に関するよくある質問

二重派遣はどのような基準で判断されますか?

中心となるのは、派遣労働者を誰が雇用し、誰と誰が労働者派遣契約を結び、実際には誰が指揮命令しているかです。会社の数や契約書の名称だけでは決まりません。業務の割り振り、作業方法、勤務時間、配置などを第三者が実質的に決めていれば、二重派遣が疑われます。

二重派遣と知らなかった場合も問題になりますか?

担当者が認識していなくても、実態が違法な労働者供給であれば、行政指導や是正の対象になり得ます。刑事責任の有無は故意など個別の事情を踏まえて判断されますが、「知らなかった」だけで当然に免責されるわけではありません。

派遣労働者が二重派遣に気づいたら、どこへ相談できますか?

まず派遣元の相談窓口へ、契約と異なる就業場所や指揮命令の状況を伝えます。改善しない場合は、都道府県労働局の需給調整事業担当部署や総合労働相談コーナーに相談できます。指示の内容、日時、担当者、就業場所を記録しておくと、状況を説明しやすくなります。

まとめ

二重派遣は、派遣先が受け入れた労働者をさらに第三者へ送り、その第三者の指揮命令で働かせる違法な労働者供給です。契約を請負や業務委託に変えても、実態が同じなら適法にはなりません。関係各社は、雇用関係、派遣契約、指揮命令系統を現場の運用まで確認し、疑いがあれば直接指示を止めて速やかに是正する必要があります。

参考:e-Gov法令検索「職業安定法」

参考:e-Gov法令検索「労働基準法」

参考:厚生労働省「労働者供給事業の意義等」

参考:厚生労働省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」

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