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企業法務の用語集
転進支援制度とは、従業員が社外で新たな仕事や事業を始める際に、会社が再就職、独立、起業などを支援する仕組みです。法律上の決まった制度名ではなく、企業ごとに対象者や支援内容が異なります。人員削減の場面だけでなく、従業員のキャリア形成を後押しする福利厚生として設けられることもあります。
転進支援制度の内容は会社ごとに設計できます。よく用いられる支援は次のとおりです。
国税庁は、社外講座や試験の費用を補助する転進助成金について、退職前に支給が確定する場合は給与所得、退職後に確定する場合は雑所得に該当する事例を示しています。実際の課税関係は支給条件によって異なるため、個別に確認しましょう。
転進支援制度は、退職後のキャリアを支える施策に重点があります。これに対して、早期退職優遇制度は、定年前の自主的な退職に割増退職金などの優遇措置を付ける制度として常設されるのが一般的です。希望退職募集は、事業再編や人員構成の見直しなどに伴い、対象者と募集期間を定めて退職者を募る方法です。
もっとも、名称だけで法的な扱いが決まるわけではありません。転進支援制度と早期退職の優遇措置を組み合わせる場合もあります。対象者、応募条件、会社が応募を承認できるかどうか、退職日、支援内容を規程や募集要項で明確にすることが大切です。
会社が特定の従業員に制度の利用を勧めると、その働きかけが退職勧奨に当たることがあります。退職勧奨は解雇ではなく、退職するか拒否するかを従業員が自由に決めるものです。従業員の自由な意思決定を妨げる態様で繰り返した場合は、違法な権利侵害と判断されるおそれがあります。
面談では制度の説明と退職の強要を切り分け、その場で回答や退職届の提出を求めない運用が必要です。拒否した従業員への不利益な扱いを示唆することも避けます。面談日時、参加者、説明内容、本人の回答は記録し、一定の検討期間を設けましょう。
求人と求職の申込みを受け、雇用関係の成立をあっせんする行為は職業紹介に当たります。求人情報の提供やキャリア相談だけを行うサービスとは区別され、職業紹介を事業として行うには原則として許可などの手続が必要です。委託先のサービス範囲と許可番号を契約前に確認しましょう。
履歴書、職歴、評価情報などを委託先へ渡す場合は、利用目的と提供する情報の範囲を整理します。個人データの取扱いを委託する会社には、適切な委託先の選定、必要な契約の締結、取扱状況の把握を通じた監督が求められます。転進支援に不要な人事評価や健康情報まで渡さないよう、提供項目を絞ることも重要です。
参考:個人情報保護委員会|個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)
事業規模の縮小や事業転換などにより、1つの事業所で1か月以内に30人以上の常用労働者が離職する見込みの場合、事業主は再就職援助計画の認定申請または大量離職届の提出が必要です。30人未満でも再就職援助計画を任意で作成できます。制度の対象人数だけで判断せず、実際に見込まれる離職者数と離職理由を確認してください。
再就職支援を職業紹介事業者へ委託するほか、求職活動のための休暇や訓練を実施した事業主が、一定の要件を満たすと助成対象になる制度もあります。利用を検討するときは、実施前に必要な計画や申請時期を確認しましょう。
参考:厚生労働省|「再就職援助計画」と「大量離職届・大量離職通知書」
参考:厚生労働省|早期再就職支援等助成金(再就職支援コース)
制度を設けただけで退職を求めることはできません。応募や退職合意は本人の自由な意思に基づく必要があります。制度の利用を拒否したことを理由に不利益を与えたり、執拗に応募を迫ったりすると、退職強要として争われるおそれがあります。
当然に保証義務が生じるわけではありません。ただし、募集要項や合意書で成果を約束すると、その内容が会社の義務となり得ます。「求人紹介を受けられる期間」「面談回数」「支援終了の条件」など、提供するサービスの範囲を具体的に記載しましょう。
制度名に法的な制限はありませんが、金銭だけでは再就職や独立に向けた支援内容が伝わりにくくなります。制度の目的に応じて、キャリア相談、教育訓練、求職活動のための休暇などを組み合わせると、従業員が利用を判断しやすくなります。
転進支援制度は、従業員の次のキャリアを支える一方、設計や勧め方によっては退職強要、差別的な対象者選定、個人情報の不適切な取扱いなどの問題が生じます。人員削減を伴う場合は、制度を公表する前に弁護士へ相談し、対象基準、説明方法、募集要項、合意書、委託契約を一体として確認してもらうとよいでしょう。
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