用語集

企業法務の用語集

お気に入り追加

転進支援制度

読み: てんしんしえんせいど 

転進支援制度とは、従業員が社外で新たな仕事や事業を始める際に、会社が再就職、独立、起業などを支援する仕組みです。法律上の決まった制度名ではなく、企業ごとに対象者や支援内容が異なります。人員削減の場面だけでなく、従業員のキャリア形成を後押しする福利厚生として設けられることもあります。

転進支援制度で受けられる主な支援

転進支援制度の内容は会社ごとに設計できます。よく用いられる支援は次のとおりです。

  • キャリア相談 これまでの経験や技能を整理し、転職先や働き方を検討するための面談を実施します。
  • 再就職支援 応募書類の作成、面接対策、求人情報の提供、職業紹介などを外部事業者へ委託します。
  • 教育訓練 転職や独立に必要な講座の受講料、資格試験の受験料などを補助します。
  • 求職活動のための時間 面接や職業訓練に参加できるよう、特別休暇や勤務時間上の配慮を設けます。
  • 経済的な支援 退職金の割増や一定の助成金を支給します。支給時期や目的によって税務上の扱いが変わる場合があるため、制度設計時の確認が必要です。
  • 独立・起業支援 事業計画の相談、創業研修、業務委託による取引機会の提供などを行います。

国税庁は、社外講座や試験の費用を補助する転進助成金について、退職前に支給が確定する場合は給与所得、退職後に確定する場合は雑所得に該当する事例を示しています。実際の課税関係は支給条件によって異なるため、個別に確認しましょう。

参考:国税庁|定年前退職者等に支給する転進助成金

早期退職優遇制度や希望退職募集との違い

転進支援制度は、退職後のキャリアを支える施策に重点があります。これに対して、早期退職優遇制度は、定年前の自主的な退職に割増退職金などの優遇措置を付ける制度として常設されるのが一般的です。希望退職募集は、事業再編や人員構成の見直しなどに伴い、対象者と募集期間を定めて退職者を募る方法です。

もっとも、名称だけで法的な扱いが決まるわけではありません。転進支援制度と早期退職の優遇措置を組み合わせる場合もあります。対象者、応募条件、会社が応募を承認できるかどうか、退職日、支援内容を規程や募集要項で明確にすることが大切です。

退職勧奨と組み合わせる場合の注意点

会社が特定の従業員に制度の利用を勧めると、その働きかけが退職勧奨に当たることがあります。退職勧奨は解雇ではなく、退職するか拒否するかを従業員が自由に決めるものです。従業員の自由な意思決定を妨げる態様で繰り返した場合は、違法な権利侵害と判断されるおそれがあります。

面談では制度の説明と退職の強要を切り分け、その場で回答や退職届の提出を求めない運用が必要です。拒否した従業員への不利益な扱いを示唆することも避けます。面談日時、参加者、説明内容、本人の回答は記録し、一定の検討期間を設けましょう。

参考:厚生労働省|退職勧奨とはどのようなものでしょうか

制度を設計・運用する手順

  1. 目的と対象者を決める キャリア形成支援なのか、事業再編に伴う再就職支援なのかを整理し、年齢、勤続年数、部門などの基準に合理性があるか確認します。
  2. 支援内容と条件を定める 利用できるサービス、費用負担、休暇、割増退職金、申請期限、退職日を具体化します。
  3. 社内規程と説明資料を整える 既存の就業規則や退職金規程との関係を確認し、従業員が判断に必要な情報を読み取れる資料を作成します。
  4. 外部事業者を選ぶ 職業紹介まで委託する場合は、必要な許可を受けている事業者かを確認します。契約では、業務範囲、料金、再委託、個人情報の管理、報告方法を定めます。
  5. 説明と申込みを分ける 制度説明後に検討期間を置き、本人の意思に基づく申込みであることを確認します。
  6. 退職条件を書面化する 退職日、金銭の支払日、支援期間、秘密保持、会社資産の返還などを合意書に記載します。清算条項を置く場合は、対象となる権利関係を確認します。

外部の再就職支援会社へ委託するときの法務

職業紹介の許可を確認する

求人と求職の申込みを受け、雇用関係の成立をあっせんする行為は職業紹介に当たります。求人情報の提供やキャリア相談だけを行うサービスとは区別され、職業紹介を事業として行うには原則として許可などの手続が必要です。委託先のサービス範囲と許可番号を契約前に確認しましょう。

参考:厚生労働省|募集情報等提供と職業紹介の区分

従業員の個人データを適切に扱う

履歴書、職歴、評価情報などを委託先へ渡す場合は、利用目的と提供する情報の範囲を整理します。個人データの取扱いを委託する会社には、適切な委託先の選定、必要な契約の締結、取扱状況の把握を通じた監督が求められます。転進支援に不要な人事評価や健康情報まで渡さないよう、提供項目を絞ることも重要です。

参考:個人情報保護委員会|個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)

多数の離職者が出る場合に必要な手続

事業規模の縮小や事業転換などにより、1つの事業所で1か月以内に30人以上の常用労働者が離職する見込みの場合、事業主は再就職援助計画の認定申請または大量離職届の提出が必要です。30人未満でも再就職援助計画を任意で作成できます。制度の対象人数だけで判断せず、実際に見込まれる離職者数と離職理由を確認してください。

再就職支援を職業紹介事業者へ委託するほか、求職活動のための休暇や訓練を実施した事業主が、一定の要件を満たすと助成対象になる制度もあります。利用を検討するときは、実施前に必要な計画や申請時期を確認しましょう。

参考:厚生労働省|「再就職援助計画」と「大量離職届・大量離職通知書」

参考:厚生労働省|早期再就職支援等助成金(再就職支援コース)

転進支援制度についてよくある質問

制度を設ければ、従業員に退職してもらえますか

制度を設けただけで退職を求めることはできません。応募や退職合意は本人の自由な意思に基づく必要があります。制度の利用を拒否したことを理由に不利益を与えたり、執拗に応募を迫ったりすると、退職強要として争われるおそれがあります。

再就職先が決まるまで会社が保証する必要はありますか

当然に保証義務が生じるわけではありません。ただし、募集要項や合意書で成果を約束すると、その内容が会社の義務となり得ます。「求人紹介を受けられる期間」「面談回数」「支援終了の条件」など、提供するサービスの範囲を具体的に記載しましょう。

退職金の割増だけでも転進支援制度と呼べますか

制度名に法的な制限はありませんが、金銭だけでは再就職や独立に向けた支援内容が伝わりにくくなります。制度の目的に応じて、キャリア相談、教育訓練、求職活動のための休暇などを組み合わせると、従業員が利用を判断しやすくなります。

転進支援制度を導入する際は専門家へ相談を

転進支援制度は、従業員の次のキャリアを支える一方、設計や勧め方によっては退職強要、差別的な対象者選定、個人情報の不適切な取扱いなどの問題が生じます。人員削減を伴う場合は、制度を公表する前に弁護士へ相談し、対象基準、説明方法、募集要項、合意書、委託契約を一体として確認してもらうとよいでしょう。

【関連記事】

退職勧奨の方法とは?その手順と退職勧奨が違法とならない対策

退職勧奨とは?適切なプロセスを通じた実践と弁護士の活用に関するベストプラクティス

リストラにおける2つの方法を解説!従業員も納得する進め方とは?

関連用語集

36協定 ARCSモデル BPO CDP CSR IFRS T型人材 アクティブレスト アセスメントセンター アダプティブラーニング アルハラ イノベーション インクルージョン インディペンデント・コントラクター イントラプレナー インバスケット・トレーニング インフルエンサー採用 ウォームシェア ウォームビズ エクスパッツ エグゼクティブ・サーチ オフショアリング オーセンティック・リーダーシップ カスタマーハラスメント対策 カフェテリアプラン カーブアウト キャッシュ・バランス・プラン キャリアパス ギャップイヤー クロスファンクショナルチーム グリーン雇用 グローバル人事 ケースメソッド コンピテンシー コンプライアンス コース別人事制度 コーチング コーピング コーポレートガバナンス サクセッション・プラン サテライトオフィス サバティカル休暇 サラリーマン法人化 サードプレイス サーバントリーダー サービス残業 シェアードサービス シャドウワーク ジェンダーギャップ指数 ジェンダーフリー ジュニアボード制 ジョブシャドウイング ジョブホッピング ジョブローテーション ジョブ・カード ジョブ・ディスクリプション ジョブ・リターン制度 ストックオプションとは ストライキ スローキャリア セカンドキャリア タレント・マネジメント ダイバーシティ チームビルディング テレワーク ディーセント・ワーク デジタルネイティブ デュアル・システム トライアル雇用 トータル人事制度 ナレッジマネジメント ハインリッヒの法則 ハッピーリタイア ハロー効果 バランス・スコアカード バーチャルデータルーム パフォーマンス・デベロップメント パートタイム・有期雇用労働法(旧パートタイム労働法) ホワイトカラーエグゼンプション ポイント制退職金制度 ポジティブ・アクション ポテンシャル採用 マイスター制度 マザーズハローワーク ミドル・マネジメント メンター制度 モラルハラスメント モラールサーベイ ラーニング・オーガニゼーション リスケ レガシーコスト ワークシェアリング ワークショップ ワークプレイスラーニング ワーク・ライフ・バランス ワールド・カフェ 一時帰休 三角合併 不定愁訴 中小企業基盤人材確保助成金 二重派遣 人事システム 人事デューデリジェンス 人事考課 人材市場価値 人材投資促進税制 人気企業ランキング 介護基盤人材確保助成金 企業内大学 企業年金制度 休み方改革 休暇分散化 個人情報保護法 個人請負労働者 個別労働紛争解決制度 偽装請負 公務員の身分保障 内部統制 分離課税 初回雇用契約 助成金 労働基準法 労働契約法 労働施策総合推進法(旧雇用対策法) 労働災害 労働生産性 労働者派遣法 同一価値労働同一賃金 国会議員年金 国家公務員の給与 在宅勤務 地域限定型採用 変形労働時間制 多面評価制度 定年後再雇用 定期昇給制度 家族手当 就業率 就業規則 就職内定率 市場化テスト 希望留年制度 年俸制 年功制 年金改革 役割等級制度 役員退職慰労金 役職定年制 従業員満足 抜擢人事 教育訓練給付金 整理解雇の四要件 日雇い派遣 早期退職制度 春闘 時短促進法 最低賃金 服務規律 業績連動型賞与制度 次世代リーダー育成 次世代法 次世代育成支援 法定外補償制度 源泉徴収 環境教育 産業カウンセラー 発明対価 益金不算入 監査法人 看護休暇 睡眠負債 知的財産権 短時間正社員制度 確定拠出年金 社会人基礎力 社会保険労務士 社内公募制度・社内FA制度 社外取締役 社外監査役 競業避止義務 簿外債務 粉飾決算 紹介予定派遣 経済連携協定 継続雇用制度 継続雇用定着促進助成金 職務給・役割給 職種別賃金 職能資格制度 育休切り 育児介護休業法 自己申告制度 衛生要因・動機付け要因 裁判員休暇 裁量労働制 複線型人事制度 要員計画 証券取引等監視委員会 試用期間 転進支援制度 退職勧奨 退職年金制度 退職給付制度会計 通年採用 過労死 配偶者同行制度 間接差別 障害者雇用 障害者雇用率 隠れ失業者 集中ボーナス 雇用調整助成金 高学歴ワーキングプア 高年齢者等共同就業機会創出助成金 高年齢者雇用安定法
貴社の課題解決に最適な
弁護士とマッチングできます
契約書の作成・レビュー、機密性の高いコンフィデンシャル案件、M&A/事業承継など、経営者同士でも話せない案件も、
企業法務弁護士ナビでは完全非公開で相談可能です。貴社の課題に最適解を持つ弁護士、最大5名とマッチングできます。
弁護士の方はこちら