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企業法務の用語集
社会保険労務士とは、社会保険労務士法に基づき、労働・社会保険に関する手続や労務管理を扱う国家資格者です。一般に「社労士」と呼ばれ、企業から依頼を受けて社会保険・労働保険の書類を作成・提出したり、就業規則や労務管理について助言したりします。
試験に合格しただけで、直ちに社会保険労務士として業務を行えるわけではありません。社会保険労務士となる資格を得たうえで、全国社会保険労務士会連合会の社会保険労務士名簿に登録する必要があります。
社会保険労務士の業務は、実務上「1号業務」「2号業務」「3号業務」と呼ばれます。内容は次のとおりです。
労働社会保険諸法令に基づく申請書、届出書、報告書などを作成し、行政機関等への提出手続を代行します。具体例として、健康保険・厚生年金保険の資格取得届や資格喪失届、労働保険の年度更新、労災保険・雇用保険の各種手続などがあります。
労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類を作成します。労働者名簿、賃金台帳、就業規則などが代表例です。ただし、就業規則はひな形を当てはめるだけでは足りません。実際の勤務制度や賃金制度と整合させ、労働基準法上の届出・周知まで見据えて整備する必要があります。
採用、労働時間、賃金、休職、育児・介護休業、ハラスメント防止、退職など、人事労務に関する相談に応じます。2025年6月施行の改正社会保険労務士法では、法令、労働協約、就業規則、労働契約の遵守状況を確認する「労務監査」が、この業務に含まれることも明記されました。
1号・2号にあたる業務の多くは、法令上の例外を除き、社会保険労務士または社会保険労務士法人でない者が、他人の依頼を受け、報酬を得て業として行うことを制限されています。一方、一般的な労務相談・指導にあたる3号業務は、社会保険労務士だけの独占業務ではありません。
社会保険労務士のうち、所定の研修を修了し、紛争解決手続代理業務試験に合格して登録に付記を受けた人を「特定社会保険労務士」といいます。特定社会保険労務士は、都道府県労働局の紛争調整委員会によるあっせんなど、法律で定められた裁判外紛争解決手続で当事者を代理できます。
ただし、特定社会保険労務士であっても、労働訴訟の訴訟代理人になれるわけではありません。個別の紛争が深刻化し、仮処分、労働審判、訴訟への対応が見込まれる場合は、早い段階で弁護士に相談する必要があります。
社会保険労務士は、労働・社会保険に関する訴訟等で、弁護士である代理人とともに裁判所へ出頭し、補佐人として陳述できる場合があります。この陳述は、依頼者や弁護士に代わって単独で訴訟代理を行う制度ではありません。
2025年6月25日に社会保険労務士法の一部改正法が施行され、制度の目的規定が改められました。社会保険労務士の使命として、適切な労務管理の確立や、個人の尊厳が保持された適正な労働環境の形成への寄与が明記されています。
同時に、労務監査が社会保険労務士の業務に含まれることが明文化されました。また、社会保険労務士が補佐人として裁判所で陳述する際に同行する弁護士について、条文上の表現が「訴訟代理人」から「代理人」に改められ、この部分は2025年10月1日に施行されています。「社労士」「社労士法人」といった類似名称の使用制限も明確になりました。
参考:厚生労働省|社会保険労務士法の一部を改正する法律の概要
一般的には、年1回実施される社会保険労務士試験に合格し、一定の実務経験を積んだうえで社会保険労務士名簿への登録を受けます。実務経験が不足する場合は、全国社会保険労務士会連合会が実施する事務指定講習を修了する方法があります。
試験には、学歴、実務経験、一定の国家試験合格などによる受験資格があります。合格後も登録を受けていなければ、社会保険労務士を名乗って受任業務を行うことはできません。企業が依頼先を確認するときは、本人の申告だけでなく、連合会の名簿で登録状況を調べると確実です。
社会保険労務士は、労働・社会保険手続と日常的な労務管理を主な専門分野とします。弁護士は、解雇、残業代、ハラスメントなどの紛争について、交渉から労働審判・訴訟まで代理できます。就業規則の整備や定例手続は社会保険労務士へ、紛争性の高い案件や法的責任の判断は弁護士へ依頼するなど、案件に応じた使い分けが必要です。
税理士は税務の専門家です。給与計算を社会保険労務士に委託する場合でも、年末調整や税務書類の作成など税理士法上の税務業務を誰が担当するかは分けて確認します。社会保険労務士、弁護士、税理士が連携する体制を整えると、人事労務に伴う手続・紛争・税務を切れ目なく処理しやすくなります。
企業は、次のような業務を社会保険労務士へ依頼できます。
顧問契約にするかスポット契約にするかは、従業員数、手続件数、相談頻度によって決めます。依頼前に、対象業務、納期、資料の受渡方法、追加料金、制度改正時の対応範囲を明確にしておくと、認識のずれを防げます。
社会保険労務士は、従業員の氏名、生年月日、賃金、健康情報、マイナンバーなど、機密性の高い情報を扱います。委託契約では、利用目的、アクセス権限、再委託、データの保管・削除、事故発生時の報告、契約終了時の返却方法を定めてください。
また、社会保険労務士には業務上知り得た秘密を守る義務がありますが、それだけで会社側の安全管理措置が不要になるわけではありません。クラウドサービスや電子申請を利用する場合は、認証方法、ログ管理、担当者変更時の権限削除まで確認します。
依頼先を選ぶ際は、登録の有無に加え、自社と同じ業種・規模への対応経験、相談への回答速度、紛争が生じた場合の弁護士との連携体制も比較するとよいでしょう。
いいえ。資格要件を満たしたうえで、社会保険労務士名簿への登録が必要です。登録には、原則として一定の実務経験または事務指定講習の修了も求められます。
日常の労務相談や規程整備は依頼できます。一定のあっせん等は特定社会保険労務士が代理できますが、交渉や労働審判・訴訟など弁護士でなければ扱えない業務もあります。紛争の段階と依頼内容に応じて選んでください。
一律ではありません。顧問料や手続報酬は、従業員数、委託範囲、手続件数、相談対応の内容などで変わります。複数の事務所から見積もりを取り、料金に含まれる業務と追加料金の条件を確認すると安心です。
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